2024 Volume 66 Issue 7 Pages 1478-1484
症例は22歳男性.右上腹部痛を主訴に来院した.CTにて十二指腸に胆管を圧排する約60mm大の囊胞性腫瘤を認めた.胆管炎をきたしていたことから超音波内視鏡下に穿刺を行い囊胞内に内視鏡的経鼻胆道ドレナージチューブを留置し胆管炎は改善した.後日側視鏡にて再検し,洗浄にて胆石を排出,超音波内視鏡検査および内腔からの生検結果より十二指腸重複症と診断した.その後,ERCPにて総胆管が内腔と直接交通する十二指腸重複症と診断し,膵炎や消化管出血,鬱滞による悪性化の可能性は低いと考え経過観察の方針とした.
A 22-year-old man was referred to our hospital with right upper abdominal pain. Blood tests revealed elevated levels of hepatobiliary enzymes. CT revealed a cystic mass, approximately 60 mm in size, in the duodenum compressing the bile duct. Based on these examinations, a duodenal duplication cyst was suspected, and upper gastrointestinal endoscopy was performed. A pouch-like structure occupying the lumen was observed in the descending duodenal limb. After endoscopic ultrasound guided puncture and placement of an endoscopic nasobiliary drainage tube in the cyst, cholangitis quickly resolved. Endoscopy was performed again at a later date, the gallstones were removed by lavage, and a duodenal duplication cyst was diagnosed based on the biopsy results. Subsequently, ERCP was performed, and a duodenal duplication cyst communicating with the common bile duct was identified.
消化管重複症は本来の消化管とは別の消化管構造が隣接して存在する先天性疾患である.好発部位は小腸であり,その中でも特に回腸,回盲部が多く,十二指腸は重複症のうち4.7~7%とされ非常にまれである 1),2).新生児期あるいは小児期に診断・治療されることが多いが,成人例では約82%でなんらかの腹部症状を呈し発症することが知られている 3).今回,胆管炎にて発症し総胆管と交通を認めた十二指腸重複症の1例を経験した.胆道が重複症の内腔と直接交通する十二指腸重複症の過去の報告は少ないため報告する.
患者:22歳男性.
主訴:右上腹部痛.
既往歴:なし.
現病歴:来院2日前より右上腹部痛を自覚した.近医を受診し十二指腸狭窄が疑われ入院した.その後,疼痛は改善せず精査および加療目的に当院に転院となった.
入院時現症:身長 157.5cm,体重 59.2kg,血圧 144/85mmHg,脈拍 106/分整,体温37.5度,眼瞼結膜に貧血なし,眼球結膜に異常なし,腹部平坦軟,右季肋部に自発痛および圧痛を認めたが反跳痛や筋性防御は認めなかった.蠕動音の減弱や亢進はなく,明らかな腫瘤は触知しなかった.
臨床検査成績:白血球 17,100/μL,CRP 0.17 mg/dLと軽度炎症反応の上昇を認め,AST 263U/ L,ALT 413U/L,ALP 312U/L,γGTP 127U/Lと肝胆道系酵素の上昇を認めた.ビリルビンやアミラーゼの上昇は認めなかった.他,血液一般,腎機能などに異常を認めなかった.
腹部CT検査:近医にて2年前に十二指腸に約40mm大の囊胞性腫瘤を指摘されており経過観察となっていた.入院時のCTで十二指腸に約60 mm大の緊満感のある囊胞性腫瘤を認めた.腫瘤は胆管を圧排していたが,胆管や主膵管の拡張はなく,腫瘤の内部には胆石を疑う高吸収域を認めた.典型的な所見であり,十二指腸重複症が第一に疑われた(Figure 1).
造影CT検査.
CTでは約60mm大に増大した緊満感のある囊胞性腫瘤を認め,胆管を圧排していた.胆管や主膵管の拡張はなく,囊胞性腫瘤の内部には胆石を疑う高吸収域を認めた.
上部消化管内視鏡検査(EGD)・超音波内視鏡検査(EUS):十二指腸下行部内側に内腔を占めるように袋状の構造物を認め,粘膜下腫瘤様であった.Vater乳頭は視認できなかった(Figure 2).コンベックス型EUS GF-UCT260(オリンパス,東京)を用いて観察すると,腫瘤は56mm大の球状の無エコー域を呈し,内部に可動性のある絨毛状の隆起性病変と胆石を疑うAcoustic shadowを伴う高エコー域を多数認め十二指腸重複症に矛盾しない所見であった.
上部消化管内視鏡検査.
十二指腸下行部内側に内腔を占めるように袋状の構造物を認める.表層の粘膜面は周囲の正常粘膜と連続しており粘膜下腫瘍の形態を呈する.Vater乳頭は認識できなかった.
入院後経過:血液所見,CT・内視鏡所見から十二指腸重複症およびそれに伴う胆管炎が第一に疑われた.外科との協議の末,手術を行うとなると膵頭十二指腸切除術となる可能性が高く,まずは内視鏡にてドレナージを予定した.囊胞内の減圧目的にEUS下にてSharkCore 19G(Covidien,アメリカ合衆国)を用いて穿刺を行い囊胞内にガイドワイヤーを留置し,つづけて6Fr ENBDチューブを留置した(Figure 3).穿刺液は混濁した茶褐色であり,細菌培養より大腸菌が検出された.内視鏡的ドレナージ施行後は補液・抗菌薬点滴静注による治療を行い胆管炎は改善された.
超音波内視鏡検査.
GF-UCT260(オリンパス,東京)を用いて観察.病変は径56mm大の球状の無エコーを呈しており,内部に粘膜と思われる可動性のある高エコーを呈する隆起性病変と胆石を疑うAcoustic shadowを伴う高エコーを呈する陰影を多数認めた.内部に有意な血流シグナルは認めなかった.囊胞の内腔側高エコー層(白矢印)と囊胞の外側高エコー層(黒矢印)に挟まれて一層の低エコー層を認めた.高エコー層は十二指腸粘膜上皮に,低エコー層は粘膜筋板と粘膜下層にそれぞれ相当すると考えられた.超音波内視鏡下にてSharkCore 19G(Covidien,アメリカ合衆国)を用いて穿刺を行い囊胞内にガイドワイヤーを留置し,つづけて6Fr ENBDチューブを留置した.
つづいて開窓術施行目的のため,第7病日に側視鏡にて再検した.
EGD:ENBDチューブはすでに逸脱していたが,中央に約10mm大の開口部が視認され,内部に胆石を多数認めた.また病変背側には乳頭を認めた.洗浄にて胆石を排出した後に,囊胞内腔より生検を行った(Figure 4-a,b).スネアでの開窓術を予定していたが,囊胞の壁が厚く硬かったため,スネアが滑ってしまいうまく開窓術を行うことはできず手技に難渋した.胆石を十分に排出したことで内腔もある程度観察できるほどとなり,すでに十分に開窓されたと考えられたため追加処置は行わずに終了とした.組織検査では胆管上皮ではなく正常な十二指腸粘膜がみられ十二指腸重複症と診断した.経過は良好で第6病日に退院された.
上部消化管内視鏡検査(ENBDチューブ留置6日後).
a:開口部の所見.ENBDチューブはすでに逸脱していた.病変の中央には10mm程度の開口部を視認でき,内部に胆石を多数認め,病変の背側には乳頭を認めた.
b:洗浄にて胆石を排出後,内腔より生検を行った.
その後外来にて施行した磁気共鳴胆道膵管撮影(Magnetic Resonance cholangiopancreatography:MRCP)にて膵胆管合流異常が疑われたため,2カ月後に側視鏡での観察および内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)を行った.
側視鏡観察(Figure 5-a,b)・ERCP(Figure 5-c):側視鏡で観察すると腫瘤は縮小し緊満感の消失を認めたが開口部は残存していた.ERCPで病変背側の乳頭からカニュレーションを行うとガイドワイヤーはまず主膵管に挿入され,膵管造影を行ったところ,主膵管のみ描出された.つづいてカテーテル抜去後胆管挿管を試みると重複症内腔にガイドワイヤーは進み,抜去しながら角度の調整を行うと総胆管にカニュレーションされたため,総胆管が重複症の内腔と直接交通していることが示唆された.重複腸管および総胆管内で造影するも膵管は造影されないことから重複腸管と膵管との交通はなく膵・胆管合流異常は否定的であった.また,今回のドレナージにより病変は縮小したためこれ以上介入は不要であると判断した.
側視鏡観察・ERCP.
a,b:側視鏡での観察では腫瘤は縮小傾向であり緊満感の消失を認め,開口部は残存していた.
c:乳頭にCannulationを行うとGWは重複腸管内に進み(矢頭),その後総胆管にCannulationされ,総胆管と重複腸管は交通があることが示唆された.
以上の特徴的画像所見および検査所見から,本症例は総胆管と交通のある十二指腸重複症と最終的に診断した.開窓術により重複腸管が縮小していることや99mTc−pertechnetateシンチグラフィ検査で異所性胃粘膜を認めないことから膵炎や消化管出血の可能性は低いと考えられた.また,悪性化に関しては異所性胃粘膜を認めないことに加え,膵管とは交通がなく膵液暴露がないことから本症例ではリスクが低いと考えられ,本人・家族に説明した上で追加の処置は行わず慎重な内視鏡・画像検査でのフォローとし,定期的に生検を行う方針とした.現在初診時から約1年が経過しているが,腫瘤の増大や胆管炎の再燃はなく経過している.
消化管重複症(duplication of the alimentary tract)は,全消化管にみられるまれな先天性疾患であり,①平滑筋層を有すること,②内面が消化管粘膜に覆われていること,③正常消化管に隣接して存在していること,の3項目を満たすものとLaddらにより定義されている 4).成因として腸管再開通阻害説 5)や胎生早期血行障害説 6)などが提唱されている.また,消化管重複症は多くの場合,粘膜下腫瘍様所見として観察され,86%が新生児期に診断されているか小児期の腹部症状で診断されるとの報告があるが,成人でも本症の報告は散見され,腹痛や通過障害に伴う嘔吐などを契機に発見されている報告が多い 7).また他にも,嘔吐や腹部腫瘤,囊胞内の異所性胃粘膜が潰瘍化して出血・穿孔をきたすことがあることが知られており,特に十二指腸重複症では解剖学的特性より胆管や膵管との交通がある場合,膵炎や胆管炎の合併を認めることがある 8).発生部位はすべての消化管に発症し得るとされているが,本邦の報告では回盲部が33.0%,小腸が30.2%,大腸が19.6%,胃が4.6%とされ,十二指腸は重複症のうち4.7〜7%とされ非常にまれであり,その報告例は極めて少ない 1),2).
われわれは医学中央雑誌で「十二指腸」「重複腸管」をキーワードとして1993年から2021年までについて検索すると,評価可能な報告例は医中誌で本邦では70例あり,うち総胆管と交通する十二指腸重複症の報告は5例のみであり,自験例は6例目に相当するものと考えられた(Table 1).Chenらは47例の十二指腸重複症のうち膵管と胆管が重複腸管内腔に開口するのは15例と報告している 9).また,過去の報告によると十二指腸壁と発生部位との関係から,A:管状憩室型,B:外側型,C:内側型,D:内腔型に分類できる 10).
胆道が重複症の内腔と直接交通する十二指腸重複症の報告例.
自験例での重複症と総胆管・主膵管との関係を模式的に表した図を示す(Figure 6).十二指腸下行部に位置する重複腸管は総胆管と交通していたが,膵管とは交通していないと考えた.緊満した囊胞性腫瘤により胆管が圧排され胆管炎をきたしたと考えた.本症の鑑別疾患として先天性胆道拡張症Ⅲ型(choledochocele),膵囊胞が挙げられるが 11),自験例は生検で腫瘤内腔が正常の十二指腸粘膜上皮からなっていることが確認されたため,内腔粘膜が胆管上皮や膵管上皮であるこれらの疾患は否定的と考えられた.また,十二指腸重複症は球部,下行部の内側に発生することが多く 12),13),自験例も過去の報告の特徴に合致していた.また,十二指腸重複症は十二指腸腔内憩室(Intraluminal duodenal diverticulum:IDD)と鑑別を要し,上部消化管造影検査が鑑別に有用とされる.IDDでは上部消化管造影検査において,囊状・西洋梨状の造影剤貯留とその周囲の薄い透亮像が特徴的な所見とされている.一方,十二指腸重複症では透亮像として認められ粘膜下腫瘍様の形態を示すとされている 3).また,IDDは病理組織学的には憩室の内壁・外壁ともに正常粘膜を認めるが,固有筋層を欠くことが特徴とされている 14).本症例では上部消化管造影検査は行っておらず外科的手術も行っていないため詳細な病理学的評価は難しいがEUS像で層構造を想定することが可能であった.
自験例における重複症と総胆管・主膵管との関係.
十二指腸下行部に位置する重複腸管は総胆管と交通を認めたが,膵管との交通はないものと考えられた.緊満した囊胞性腫瘤により胆管を圧排し胆管炎をきたしたと考えられた.
消化管重複症に対して本邦では外科的治療がひろく行われてきた.特に,十二指腸重複症において急性膵炎を発症した場合や異所性の胃粘膜の迷入が証明された場合,重複腸管内の鬱滞による悪性化が懸念される場合などは原因となる重複腸管の切除が治療の原則となる 15).完全切除のためには膵頭十二指腸切除が必要となるが,手術は侵襲が高く,本症は小児期に多く基本的には良性疾患であることからその治療選択には慎重になる必要があると考えられ,また後述のように内視鏡での開窓術も選択肢となる.
重複腸管の膵管や胆管の圧排または交通による黄疸や急性膵炎/胆管炎を発症することがある 3).自験例ではMRCPおよびERCPにて重複腸管は胆管とは交通があるものの,膵管とは交通はなく,膵炎のリスクはないものと考えた.また,重複症の内面は通常隣接消化管と同様の粘膜よりなるが,異所性の胃粘膜や膵組織の迷入も報告されている 16).自験例では99mTc−pertechnetateシンチグラフィ検査にて明らかな集積像はなく異所性胃粘膜の存在は否定的であり,潰瘍形成による穿孔や出血の危険も低いと考えられた.
なお治療方針を決定するにあたり,悪性化のリスクを吟味することが重要である.Antakiらは開窓術を行い重複腸管内の鬱滞を解除することが悪性化の予防に寄与する可能性を指摘しており,半年から1年毎の定期的な生検も推奨している 17).十二指腸重複症(Duodenal Duplication Cysts)に対して内視鏡治療を行った28例の検討では,内視鏡治療は全例で成功し全員が治療後も再発なく無症状を維持した(平均追跡期間36.5±48.6カ月) 18).合併症は2例で,ニードルナイフを用いた切開治療にて軽度の術中十二指腸出血があり,局所的に内視鏡的に治療された 18).また,Gjeorgjievskiらは19Gの穿刺針を用いて囊胞のドレナージを行った症例を報告している 18).本症例ではドレナージを行うにあたり,在庫の関係でFNB針をやむなく使用したが,一般的に超音波内視鏡下胆道ドレナージ(Endoscopic ultrasound/ultrasonography-guided biliary drainage:EUS-BD)を含むInterventional EUSでは一般にガイドワイヤーの操作性の観点や断裂を防ぐ目的からFNA針が推奨されており 19),本来であればFNA針が望ましいと考えられる.十二指腸重複症に対する,内視鏡治療は合併症も少なく再発率の観点からも有効な治療と考えられる.
総胆管と交通するまれな十二指腸重複症の1例を経験した.十二指腸重複症自体,極めてまれであるが,若年者で腸管に囊胞性腫瘤を認めた際は本疾患を想起することが重要である.
本論文内容に関連する著者の利益相反:なし