2025 Volume 67 Issue 1 Pages 53-54
78歳男性.前立腺癌,狭心症,脳梗塞後で加療中.前医で便潜血陽性精査目的の大腸内視鏡検査でポリープを指摘され紹介受診した.当院の大腸内視鏡検査で,盲腸末端に径5mmのⅠs型ポリープを認めた(Figure 1).腫瘍表面の粘調な黄色苔は洗浄困難であり,腫瘍表面構造の詳細観察は不可であった.内視鏡的粘膜切除術(EMR)を施行したところ,病理所見は,HE染色の弱拡大(Figure 2-a)では粘膜固有層を主座とする境界不明瞭な濾胞様結節を認め,腫瘍の表面は肉芽組織で覆われていた.強拡大(Figure 2-b)では,車軸状に偏在した異型核を有する形質細胞類似の腫瘍細胞の集簇巣を認め,形態的に形質細胞腫と考えた.免疫組織学的染色では,CD 20(-),CD79a(+),CD38(+),IgG(+),κ鎖(+)(Figure 3),λ鎖(-)の所見を有しており,大腸原発の髄外性形質細胞腫として矛盾なかった.切除断端は陰性であった.貧血,腎障害,高カルシウム血症はなく,免疫電気泳動は異常所見なく,尿中Bence-Jones蛋白は陰性であった.胸腹部造影CT,ガリウムシンチグラム,骨シンチグラムは異常所見なし.骨髄穿刺は患者の同意が取れず見送ったが,多発性骨髄腫は否定的で,大腸原発の髄外性形質細胞腫と診断した.その後追加治療なしで10年間再発を認めていない.

大腸内視鏡(通常光).盲腸末端に黄色苔に覆われた5mm大のⅠsポリープを認めた.

a:病理組織検査(HE染色の弱拡大).肉芽に覆われた濾胞様結節を認めた.
b:病理組織検査(HE染色の強拡大).大小の車軸状に偏在した異型核と豊富な細胞質を有する形質細胞類似の腫瘍細胞の髄様で密な集簇巣を認めた.

病理組織検査(IgG-κ鎖免疫染色像).腫瘍細胞の細胞質内にびまん性のκ鎖陽性の所見を示した.
形質細胞腫はBリンパ球系細胞由来の形質細胞が腫瘍性増殖を来したもので①monoclonal gammopathy of undetermined significance(MGUS),②無症候性骨髄腫,③症候性多発性骨髄腫,④非分泌型骨髄腫,⑤骨の孤立性骨髄腫,⑥髄外性形質細胞腫,⑦多発性の孤立性形質細胞腫,⑧形質細胞白血病の8型に分類されている 1).
髄外性形質細胞腫は,形質細胞腫のおよそ3~5%の頻度で 2),骨髄以外の軟部組織に形質細胞腫を形成する.約80%は上気道や鼻腔内に発生し,消化管原発は約7%程度と少ない.胃,小腸の順に多いとされ,大腸原発はまれである 3).医中誌WebとPubMedで検索しえた会議録を除く本邦報告例は,治療と形態で分類すると,手術単独治療の1型腫瘍4例と0-Ⅱc型腫瘍1例,EMRと追加放射線治療の肉芽種様病変1例,EMRと追加外科切除のポリープ状病変2例,本例と同様の内視鏡治療単独のポリープ状病変3例であった 4)~6).本例では腫瘍表面に便汁色の付着物を認め,病理所見の肉芽組織に相当する部分と考えた.内視鏡的切除症例は,炎症性ポリープや神経内分泌腫瘍等の粘膜下腫瘍の所見が指摘されたが特徴的な所見はなかった.髄外性形質細胞腫は放射線感受性が高く,頭頸部腫瘍では放射線治療が有効であるが,頭頸部以外では外科的切除を行い,不完全切除の場合に放射線治療や化学療法の追加をすることが勧められている 7).上気道以外を原発とする症例で21%で再発,14%の症例で多発性骨髄腫への移行を認めるが,65%で再発を認めなかった 3).治療後の局所制御率は10年間で80%以上,10年生存率は60~90%と比較的良好で 7),本例の予後も良好と推測された.
本論文内容に関連する著者の利益相反:なし