GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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EMR USING AN OVER-THE-SCOPE CLIP FOR GASTROINTESTINAL TUMORS (WITH VIDEOS)
Tomoaki TASHIMA Tomonori KAWASAKI
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2025 Volume 67 Issue 1 Pages 55-69

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要旨

EMRは世界中に広く普及してきたなかで,病変を断端陰性で確実に切除するため従来法に工夫や改良を加えた“modified EMR”としての様々な手技が開発されてきた.近年,筆者は新たなmodified EMRとして,エムロ(EMR with an Over-The-Scope Clip(OTSC):EMR-O)を考案した.EMR-Oはあらかじめ病変の下に消化管全層縫合デバイスであるOTSCを留置し,その直上をスネアによって切除する手技である.いわば「穿孔させない内視鏡治療」であるため,十二指腸や大腸などの壁の薄い臓器の病変の切除に適している.さらに症例によっては全層切除も可能である点は従来のmodified EMRにはない特徴である.EMR-Oは使用するOTSCの規格により,切除可能な病変はおよそ10-15mmまでに制限されるが,従来の内視鏡治療では切除困難な消化管腫瘍に対する治療の選択肢の1つになる可能性がある.本稿ではEMR-Oの実際と手技のコツ,治療成績などについて解説する.

Abstract

With the widespread use of EMR and improvements and refinements to conventional EMR, various modified EMR techniques have been developed to ensure complete resection of lesions with negative margins. Recently, the authors have devised a novel modified EMR using an over-the-scope clip (OTSC) called endoscopic mucosal resection using an OTSC (EMR-O). In EMR-O, an OTSC, a device for gastrointestinal full-thickness suturing, is deployed under the lesion in advance, and the lesion is resected using a snare just above the OTSC. Therefore, EMR-O is considered as a “modified EMR without perforation.” EMR-O is suitable for resecting lesions in thin-walled organs, such as the duodenum and colorectum. Depending on the standard OTSC used, the size of resectable lesions is limited to approximately 10-15 mm. In some cases, full-thickness resection is possible, a feature that is unavailable with conventional modified EMR. EMR-O may be an option for endoscopic treatment of gastrointestinal tumors that are difficult to resect using conventional EMR. This article describes the practices of EMR-Os, procedural tips, and treatment outcomes.

Ⅰ はじめに

消化管腫瘍に対する内視鏡治療は内視鏡的粘膜切除術(EMR)や内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)をはじめとして世界中に広く普及し,その過程においてより確実な切除を行うため従来法に工夫や改良を加えた手技が開発されてきた.例えばEMRにおいては,食道静脈瘤結紮用デバイスを併用したEMR with a ligation device(EMR-L)や,スコープ先端に装着した透明キャップ内に病変を吸引しスネアリングするEMR using a cap-fitted endoscope(EMR-C)などがその代表であり,いわゆるmodified EMRとされる切除法である 1),2.これらの方法はOリングによる結紮やキャップ内への吸引によりスネアリングをしやすくし,腫瘍部の粘膜下層深部まで切除することができる反面,切除深度の調整が困難なため壁が薄い臓器,特に十二指腸では穿孔の危険性が危惧される 3.そこでこれらの切除法と同様のコンセプトを持ち,さらに切除時の穿孔を確実に回避できる新たなmodified EMRとして筆者が考案したのが,消化管全層縫合デバイスであるOver-The-Scope Clip(OTSC; Ovesco Endoscopy社,チュービンゲン,ドイツ)を併用したエムロ(EMR with an OTSC:EMR-O)である 4.これは病変の下にあらかじめOTSCを留置することで切除時の穿孔を未然に防ぎ,そのうえで病変をスネアによって切除する手技である.症例によっては全層切除も可能であり,これは従来のmodified EMRにはない特徴の1つである(Figure 1).

Figure 1 

OTSC併用内視鏡切除(EMR-O)の手技シェーマ.

a:キャップ内に病変を吸引し,OTSCを留置する.

b:OTSCの上に形成されたポリープ様の隆起をスネアで切除する.

c:切除時に穿孔することはなく,筋層から全層を含んだ切除も可能である.

本稿では消化管腫瘍に対するEMR-Oの現状や限界などを理解いただき,実臨床において有意義に生かせるよう手技の細かなコツや注意点,治療成績などについて解説する.

Ⅱ EMR-Oの適応の考え方と注意点

EMR-Oは「穿孔させない内視鏡治療」であるため十二指腸や大腸などの壁が薄い臓器の病変や,内視鏡治療後の遺残再発病変など,従来の内視鏡治療では切除に難渋し穿孔が危惧される病変などに適している.またEMR-Oを行う際はOTSCのキャップ内に病変全体を吸引し,病変を巻き込まずにOTSCを留置する必要がある.そのため適応病変サイズはOTSCのキャップの先端径や深さに制約を受けてしまうが,使用するOTSCの種類に応じておよそ10-15mmまでの病変は切除可能である.

次にEMR-Oを行う際に注意が必要な臓器や部位について述べる.当然ながら十二指腸Vater乳頭および副乳頭近傍はOTSCを留置することで圧迫すると,各乳頭部からの膵液の排泄を妨げ急性膵炎を発症させるリスクがあるため注意が必要である 5.また大腸では,虫垂開口部にOTSCを留置することで虫垂内圧が上昇し急性虫垂炎を発症するリスクや,そのために緊急手術が必要となる症例が報告されている 6.したがって虫垂開口部に進展した病変に対してEMR-Oを行う場合は慎重に対応する必要があり,われわれは虫垂炎の発症を避けるため,外科的虫垂切除の既往がある症例に限定している.

Ⅲ EMR-Oに用いる機器・機材(Table 1)
Table 1 

EMR-Oに用いる機器・機材.

・OTSC

OTSCシステムはアプリケーターキャップとそれに装填されたクリップ,ハンドホイール,スレッドリトリーバーが1セットになったデバイスである(Figure 2).スレッドリトリーバーを用いてキャップに付属した糸を内視鏡の鉗子口内に引き込むことでホイールに巻き付け,最終的にホイールを回すことでキャップに連結した糸が引っ張られ,内視鏡先端からクリップがリリースされる仕組みとなっている.クリップは形状別にgcタイプ(gastrostomy closure clip)とtタイプ(traumatic clip)の2種類が本邦では販売されているが,EMR-Oには若干丸みのある短い歯を有し,壁が薄い小腸や大腸などに適用されるtタイプを使用している.クリップのサイズは9mm径,10 mm径,11mm径の3種類のバリエーションがあり,使用スコープが上部用の場合は9mm径,下部用の場合は10mm径または11mm径のクリップを選択している.なかでも11mm径はキャップの最大外径が21mmと非常に大きく,下咽頭および食道入口部など内腔が狭い部位では安全な通過が保証されないため上部消化管での使用は推奨されていない(Figure 3).したがって直腸や,管腔が狭くなくスコープ挿入が容易な結腸などにおいて,そしてEMR-Oの適応のなかでも比較的大きな10-15mmの病変を切除対象とする際に11mm径のクリップを選択するようにしている.

Figure 2 

OTSCシステムとクリップの種類.

a:OTSCシステムの構成部品.

b:OTSCセットアップ後のスコープとスコープ先端の外観.

上図については,医学書院より許可を得て著書「十二指腸腫瘍の内視鏡治療とマネジメント」から転載した.

Figure 3 

OTSCのサイズバリエーションと規格表.

OTSCは消化管全層縫合が可能な強力なクリップであり消化管瘻孔,術後縫合不全,消化管穿孔などの閉鎖や縫縮に適応がある 7.一方でESD後の粘膜欠損部縫縮 8や,EMR-OにおけるOTSCの使用は適応外使用に該当する.EMR-Oを行うにあたってはOTSCの特性,使用の方法ならびに注意点などを十分に理解しておく必要があるが,本稿ではその詳細は割愛し,既報の詳細な解説を参照されたい 9),10

・スコープ

OTSCシステムに適合するには3.2mm以上の鉗子チャンネル径を有する処置用スコープが推奨される.特に十二指腸や大腸の屈曲の強い部位などでは十分にアングルが効くスコープが有用である.

・フード

病変へのマーキングやOTSC留置後のスネアリング,止血処置などの際の視野確保,そしてスコープ先端に吸着させての切除標本の回収のためにフードは必要なことが多い.OTSCの留置後はスコープからOTSCシステムを取り外さなくても,OTSCのキャップがフード代わりとなり,さらにスネアの挿入や病変の切除・回収なども可能である.しかしOTSCのキャップが長いことが処置の際の視野の妨げになるようであれば,OTSC留置後に一度スコープを体外に抜去し,OTSCシステムをスコープから取り外したうえで普段使い慣れている透明フードを装着してもよい.

・スネア

OTSC上に形成されたポリープ様隆起の基部で,かつクリップに押し当てるようにスネアリングするためにはコシが強い楕円形のスネアが適している.われわれは9mm径のOTSCを使用した場合は10mm径スネア(Boston Scientific社製:CaptivatorⅡ),10mm径または11mm径のOTSCを使用した場合は,OTSC上に形成される隆起の大きさが10mmを超えることがあるため15mm径スネア(OLYMPUS社製:Snare Master)を選択することが多い.ただし15mm径以上のスネアは全開にした後の絞扼の際にOTSC辺縁に引っ掛かる場合があるので注意する.

・高周波発生装置

VIO300DまたはVIO3(ERBE社製)を用いている.病変周囲にマーキングをする場合はスネアの先端を使用しsoft凝固で,切除はendo CUT Qを用いて行う.切除後に粘膜欠損部から出血をきたした場合は,スネアの先端または止血鉗子を用いてsoft凝固で止血する.

Ⅳ 手技の実際

1.術前シミュレーション

EMR-Oを行う際は,病変を巻き込んだOTSCの留置だけは絶対に避けなければいけない.そのため実際の手技とは別日の精査内視鏡検査の際にOTSC留置のシミュレーションも併せて行うようにしている.具体的には「内視鏡先端に装着した円筒形透明フード(種類はTable 1を参照)内に病変全体が十分に吸引されることを確認する」というものである.Figure 3に示したように9mm径や10mm径OTSCのキャップ先端径は約10mm,キャップの深さは6mmに設計されている.したがってEMR-Oの術前シミュレーションを行う際も,先端径がおよそ10mmの円筒形フードの長さを6mmに調整し装着することで,得られる内視鏡画像や視野も実際のOTSC装填時とほぼ同等になる.この条件下で病変全体をフード内に吸引できれば病変基部へのOTSCの留置は可能と判断する.また多発憩室により腸管が固く内腔が狭い結腸などでは,OTSCを装填し先端外径が大きくなったスコープを病変まで挿入できない症例もある.そのため術前にスコープの挿入性や操作性などを確認したうえで,EMR-O施行の可否や使用するOTSCのサイズなどを決定するようにしている.

2.EMR-Oの手順とコツ(電子動画 1

電子動画 1

① マーキング

必須ではないが,スネアの先端を用いてあらかじめ病変周囲にマーキングを行っておくと,アプリケーターキャップ内へ病変を吸引しOTSCを留置する際によい目印となる場合がある.なお,局注は不要と考え省略している.

② OTSC装填

体外でスコープ先端にOTSCを装填し,病変部まで挿入する.OTSC装填の手順については既報を参照されたい 10.OTSCが装填されたスコープは先端径が大きいため愛護的に挿入し,特に咽頭や食道を通過する際には裂傷を生じないよう十分注意する.

③ OTSC留置

病変全体を周囲の正常粘膜まで含めてキャップ内にとらえた状態で,術者は病変をフル吸引し,介助者は指示と同時に躊躇せずにハンドホイールを回転させることでOTSCを留置する.

④ スネアリング

OTSCは留置されるとU字の形状となるため,その上でのスネアリングはしばしば難渋することがあるが,これをスムーズに行うためには前述した適切なサイズのスネア選択の他にもコツがある.まず1つ目のコツは「OTSCの歯が付いている,彎曲が緩やかな辺縁に向かってスネアを開くこと」である(Figure 4-a,b).逆に彎曲が急峻な辺縁に向かって開くとスネアが浮き上がり,十分な切除断端が確保できない可能性があるため推奨しない(Figure 4-c,d).2つ目のコツは「スコープにOTSCを装填する前に病変に対するスネアの向きや開き具合を確認し,スネアの向きとクリップの歯の向きが一致するよう調整しOTSCをスコープに装填すること」である.これによりスコープを無理にローテーションさせずとも,スネアは自然とOTSCの彎曲が緩やかな辺縁に向かって開かれることになる(Figure 4-e~h).

Figure 4 

留置されたOTSC上でのスネアリングのコツ.

a:歯が付いている彎曲が緩やかな辺縁(赤色辺).

b:この辺縁に向かってスネアを開けば,OTSCとスネアの干渉が少なく,OTSC直上でのスネアリングが可能となる.

c:彎曲が急峻な辺縁(青色辺).

d:この辺縁に向かってスネアを開くとOTSCとの干渉が強く,スネアが浮き上がってしまうため推奨しない.

e:スコープにOTSCを装填する前に病変(黄矢印)に対するスネアの向きや開き具合を確認する.

f,g:確認したスネアの向きとクリップの歯の向きが一致するよう調整し,スコープにOTSCを装填する.

h:e~gの手順でOTSCを病変下に留置すれば,スネアは自然とOTSCの彎曲が緩やかな辺縁に向かって開き,OTSC直上でスネアリングすることができる.

上図(a~d)については,医学書院より許可を得て「十二指腸腫瘍の内視鏡治療とマネジメント」より転載した.

⑤ 病変の切除

高周波発生装置のendo CUT Qを用いて一瞬で切除するため,OTSCへの通電は問題にならない.より深層まで含んだ切除ができれば筋層切除や全層切除となる場合がある.

⑥ 切除後

OTSCの内側の切除面から出血する場合はスネアの先端や止血鉗子などを用いて出血点を焼灼することが可能である.十分に焼灼してもOTSCが留置されているため穿孔はしないことがEMR-Oの利点の1つであるが,OTSCへの長時間の通電は避ける.

Ⅴ 上部消化管におけるEMR-O

上部消化管においては食道や胃でEMR-Oが有用であった症例の報告もあるが 11),12,本稿では筆者が主に検討を重ねている十二指腸神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor:NET)に対するEMR- Oについて述べる.

a.十二指腸NETに対する内視鏡治療

NETはこれまで比較的まれな腫瘍とされてきたが,近年の内視鏡検査の受診機会の増加や内視鏡機器および診断技術の進歩により発見される頻度は以前より増している 13.本邦における消化管NETの発生部位は直腸,十二指腸,胃が多く,それぞれ消化管NETの55.7%,16.7%,15.1%を占めると報告されている 13

本邦の治療ガイドラインでは「1cm未満かつ固有筋層への浸潤がなく,かつリンパ節転移のないもの」が内視鏡治療の適応とされている 14.NETは粘膜深層から発生する粘膜下腫瘍様の形態を呈し,サイズが小さくても容易に粘膜下層に浸潤する性質があるため,通常のEMRでは垂直断端が陽性となるリスクが高い.そのため十分に粘膜下層まで含んだ切除が可能なEMR-LやEMR-Cなどのmodified EMRが主に行われている 15),16.しかし十二指腸は他の消化管と比較しても特に壁が薄いため切除の際に穿孔するリスクが高く,さらに垂直断端陰性切除割合もさほど高くないことが問題とされている 17),18.その他の治療としてESDや腹腔鏡内視鏡合同手術(laparoscopic and endoscopic cooperative surgery:LECS)による全層切除なども行われているが 19),20,十二指腸ESDは技術的難易度と偶発症リスクの高さから選択される施設は限られ,LECSは治療時間の長さが課題とされている 20.これらの問題を解決する新たな内視鏡治療としてEMR-Oの有用性を検証すべく,筆者は2018年の手技の考案以降,十二指腸NETに対してはEMR-Oを積極的に行い,治療成績について検討している(Figure 5 21

Figure 5 

十二指腸NETに対するEMR-O.

a:十二指腸球部に6mmの粘膜下腫瘍様の隆起を認め,生検にてNETの診断となった.

b,c:病変周囲に置いたマーキングを含むようにキャップ内に病変を吸引しOTSCを留置する.OTSC上に形成されたポリープ様隆起の基部で,クリップに押し当てるようにスネアリングし切除する.

d:粘膜欠損部には筋層断面とその中心部にスリット状に腸管外の脂肪が確認されたため全層切除と判断した.

e:切除標本.標本裏にも固有筋層の付着を確認した.

f:切除標本の病理HE染色像.切除断端には固有筋層を認め(青矢印),NET(WHO分類G1),脈管侵襲陰性,切除断端陰性で治癒切除となった.

上図については,Endoscopy International Open誌より許可を得て転載した.

b.治療成績

当院でこれまでにEMR-Oを施行した十二指腸NET24例の治療成績をTable 2に示す.腫瘍径中央値は6mm,治療時間中央値は15分,全例で一括切除を達成し,R0切除割合は87.5%(21/24例)であった.非R0切除となった3例は病理学的に粘膜下層深層で切除されていたが,垂直断端不明瞭が2例,陽性が1例であった.また全層切除となった症例は33.3%(8/24例)で全例が球部の病変であり,下行部では1例も認めなかった.この理由として以下のことが考えられる.十二指腸下行部の病変の大半はケルクリング襞上に存在しており,そのケルクリング襞は大腸の半月襞と異なり,粘膜および粘膜下層のみからなり筋層以深は入っていない.そのケルクリング襞上の病変を吸引しOTSCを留置しても筋層以深を挙上させ切除することは難しい可能性がある.一方,球部は襞がなくOTSCを留置した際に十二指腸壁全層が下行部よりは挙上しやすいため全層切除される割合が多い,というのが筆者の推察である.

Table 2 

十二指腸NETに対するEMR-Oの成績(n=24).

偶発症に関しては,術中穿孔および遅発性穿孔は1例も認めていない.EMR-O施行翌日のsecond-look内視鏡の際に,OTSC上の粘膜欠損部からの出血を12.5%(3/24例)に認めたが,全例焼灼止血で対応可能であった.経過観察期間中央値46カ月で転移再発例は1例も認めていない.以上より十二指腸NETに対するEMR-Oは垂直断端の確保に若干の課題は残るものの,R0切除および偶発症割合は許容でき,また短時間で十二指腸壁深層での切除が可能であることから治療選択肢の1つになると考える.

c.内視鏡治療手技選択

前述した内容を踏まえ,筆者が考える十二指腸NETに対する適切な治療手技選択について述べる.1cm未満の病変にはEMR-LやEMR-Cなどの従来のmodified EMRの選択を基本とし,ⅰ)何らかの理由でこれらの手技が困難と判断した症例 22,ⅱ)EMR-Lを試みるも十分な吸引が行えずバンドによる絞扼に失敗した症例へのリカバリー治療 23,ⅲ)内視鏡治療後の断端陽性例に対する再治療,などにEMR-Oを選択することは有用だと考える.もちろん切除時の確実な穿孔予防を目的として,初めからEMR-Oを選択することも選択肢の1つであり,EMR-Oを含むmodified EMRが困難な状況であれば1cm未満の病変でもESDやLECSによる切除を検討する.一方,腫瘍のボリュームが大きくmodified EMRでは一括切除困難と判断した場合や,現状では内視鏡治療適応外となる1cm以上の病変に対して診断的治療を行う場合にESDやLECSなどを選択することが適切だと考える.以上のように病変サイズや状況に応じて適切な治療法の選択や切り替えができるよう治療環境を整備しておくことが重要である.

Ⅵ 大腸におけるEMR-O

a.対象病変

大腸においては内視鏡治療後の遺残再発病変 24,憩室内腔や虫垂開口部に進展した病変,結腸の粘膜下腫瘍(submucosal tumor:SMT)などを主な対象としている.内視鏡治療後の遺残再発病変は瘢痕上に存在するため局注してもnon-lifting signを呈し,比較的小さな病変でもEMR困難と判断され,より難易度が高いESDが選択されることがある.さらにその場合は術中穿孔のリスクも高いとされる 25.また大腸憩室は一般的に筋層が欠損し,虫垂開口部は筋層が薄いという解剖学的特徴から,同部に進展した病変の内視鏡切除は穿孔のリスクが極めて高い 26),27.結腸でみられる腫瘍径の小さなSMTで鑑別困難なものは無治療で経過観察を継続される症例も多いが,一方で診断的内視鏡切除が選択されることもある.しかしSMTの完全切除のためにはより深部の粘膜下層を剝離する必要があるため,壁が薄い結腸においては術中穿孔のリスクも高い.以上のように質的には通常の内視鏡切除で治癒が想定される病変でも,完全切除のためやむを得ず高難度なESDや過大侵襲となる外科手術を選択しなければならない病変に対して,安全で低侵襲な治療を行うことを目的としてわれわれはEMR-Oを選択している.なお虫垂開口部に進展した病変は前述した理由により外科的虫垂切除歴のある症例(Ⅱ EMR-Oの適応の考え方と注意点を参照),SMTはEUSにて筋層より上層の腫瘤と確認できたものに限定している.

さらに筆者は通常のEMR-Oの適応を超える20 mm以上の内視鏡治療困難病変に対する新たな治療として,他のEMR手技とEMR-Oを組み合わせて計画的に分割切除を行う“Hybrid EMR-O”を考案し,憩室内外に広く進展した病変に行うことで外科手術を回避し得た症例を経験している 28.もちろん多分割切除とすれば局所再発のリスクが高いことは十分留意する必要があるが,高齢で基礎疾患が多い患者への治療機会が増加するなか,外科手術を積極的に選択することが難しい症例などへの治療選択肢の1つとなることを期待している.

b.治療成績

当院でこれまでに大腸EMR-Oを施行した21症例の概要をTable 3に示す.EMR-Oの選択理由の内訳は,内視鏡治療後の遺残再発病変11例,憩室内進展病変5例(Figure 6),虫垂開口部進展病変3例(Figure 7),SMT 2例であり,憩室内進展病変5例中3例は憩室内外に広く進展し,EMR-Oの適応サイズを超える15-25mm程の病変であったためHybrid EMR-Oにより計画的に2分割切除を行った(電子動画 2).EMR-O単独18例(Hybrid EMR-O 3例を除く)について,病変径中央値(範囲)は7(4-15)mm,治療時間中央値(範囲)は10(5-56)分,一括切除およびR0切除割合はともに88.9%,非一括切除となった2例(Table 3:症例No.8,No.14)はOTSC上でのスネアリングに難渋し最終的に3分割切除となった.このようにU字状に彎曲したOTSC上でのスネアリングに難渋する症例がある点はEMR-Oの手技的な課題である.切除深度に関して,筋層から全層を含んで切除された症例は全体の38.1%(8/21例)であった.偶発症についてはHybrid EMR-Oを行った1例に憩室炎を認めたが,抗菌薬投与による保存的加療で軽快し術後9日で退院した.全21例の術後入院期間中央値(範囲)は2(1-9)日であった.非R0切除症例については術後6カ月以内に内視鏡検査を施行し,再発がなければその後は6カ月から1年おきの内視鏡検査を行う方針としている.そのなかでHybrid EMR-Oにより2分割切除を行った憩室内進展症例(Table 3・症例No.18)において術後6カ月で癌の局所再発を認めた.再度の内視鏡治療は困難と判断し,外科手術を行ったことで治癒に至った.その他の症例において現状は無再発であるが,まだ小数例での短期成績にすぎないため,さらなる症例集積と局所再発割合を含めた長期予後に関する検討が必要である.

Table 3 

大腸EMR-Oの症例概要と成績.

Figure 6 

大腸憩室内進展病変に対するEMR-Oの1例(Table 3・症例No.11).

a:上行結腸の憩室から突出する隆起性病変を認める.病変は憩室内に広く進展していた.

b:病変を憩室とともに吸引しOTSCを留置した.

c:憩室が内反し病変全体が管腔側に露出したため,OTSC上をスネアで切除した.

d:切除断面には腸管外の脂肪組織が確認され全層切除となった.

e:切除標本.病理診断は高分化型管状腺癌,深達度pTis(M),脈管侵襲陰性,切除断端陰性であり治癒切除となった.

f:EMR-O後2カ月の内視鏡像.残存したOTSC上には再生性の隆起(非腫瘍)を認めるのみで病変の遺残再発は認めなかった.

Figure 7 

虫垂開口部進展病変に対するEMR-Oの1例(Table 3・症例No.20).

a:盲腸の虫垂開口部内に深く入り込んだ扁平隆起性病変を認める.病変周囲に4点マーキングを行った.

b:マーキングを目安として,虫垂開口部全体を含むように病変をキャップ内に吸引した.

c:虫垂側深部に入り込んでいた病変がOTSC上に内反し全体が管腔側に露出したためスネアで切除した.

d:EMR-O後の粘膜欠損部.穿孔なく病変を一括切除できた.

e:切除標本.病理診断は高異型度腺腫,切除断端陰性であった.

f:EMR-O後3カ月の内視鏡像.残存したOTSC上には再生性の隆起(非腫瘍)を認めるのみで,腫瘍の遺残再発は認めなかった.

電子動画 2

Ⅶ 手技のピットフォールと対策

1.切除断端・切除深度の確保-OTSCのキャップ長の調整-

前述した十二指腸や大腸におけるEMR-Oの治療成績が示すように,R0切除(病理学的に水平および垂直断端陰性)割合および全層切除の確実性には向上の余地がある.これらを向上させるためには,病変周囲の正常組織をより多く含んだ状態でOTSCを留置し切除する必要がある.そこで筆者はOTSCのアプリケーターキャップの長さを通常の6mmから2倍の12mmに調整することで,キャップ内に吸引できる組織のボリュームを増量させOTSCを留置する工夫をしている(Figure 8).Table 3に示したように,キャップ長を通常の6mmで行った症例における筋層および全層切除はわずか20%(2/10例)であったが,12 mmに調整した症例では55%(6/11例)で達成している.以上より,キャップ長の調整は切除断端や切除深度を確保するための有用な工夫の1つになる可能性がある.

Figure 8 

十分な切除断端・切除深度を確保するための工夫―キャップ長の調整―.

a:OTSC装填時(通常)の内視鏡画像.

b:病変吸引時の外観イメージ(シェーマ):通常のキャップ長は6mmに設計されている.

c:キャップ長を12mmに調整した場合の内視鏡画像.キャップが長くなるため視野は狭くなる.

d:病変吸引時の外観イメージ(シェーマ):通常より多くの組織をキャップ内に吸引できる.

2.治療後出血

OTSCは鋭利な歯が左右から嚙みこみ,組織を持続的に圧迫することで強力な閉鎖や止血に効果を発揮する一方で,クリップ歯間のわずかなスペースにより血流が保たれ組織の壊死を予防する構造となっている.そのためEMR-O後はOTSC上に形成された粘膜欠損部から出血をきたす可能性がある.前述したように,特に十二指腸ではそのリスクがあるため,術翌日に可能なかぎりsecond-look内視鏡を行い,露出血管や活動性出血の有無を確認している.出血を認めた際は止血鉗子で焼灼するが,OTSCが留置されているおかげで壁の薄い十二指腸でも焼灼による穿孔が生じることはない(Figure 9-a,b).ただし焼灼時はOTSCへの直接の通電は極力避けるべきである.また後出血予防や止血目的に粘膜欠損部や出血点に止血クリップを追加する案もあるが,筆者の経験では追加する止血クリップがOTSCと干渉し弾かれ,留置に失敗する症例が多い(Figure 9-c,d).そのため後出血の予防や治療には止血鉗子による焼灼を第1選択としている.

Figure 9 

EMR-O後出血への対応.

a:十二指腸下行部のNETに対するEMR-O翌日のsecond-look内視鏡画像.OTSC上の粘膜欠損部より湧出性出血を認めた(矢印).

b:出血点を含め,粘膜欠損部全体を止血鉗子で焼灼したが,OTSCが留置されているため穿孔はしない.

c:十二指腸NETに対するEMR-O直後の粘膜欠損部.

d:後出血予防のため止血クリップによる粘膜欠損部の縫縮を試みたが,クリップがOTSCに弾かれてしまい(矢印)縫縮できなかった.

3.OTSCの切断・除去

OTSCの留置は一発勝負であり,一度留置すれば容易に取り外すことはできない.OTSCは留置後数カ月で自然脱落する場合もあれば長期間残留することもある.万が一誤って不本意な場所に留置した場合や,OTSC残留部での腫瘍の遺残再発,残留に伴う患者の異物感の訴えなどに遭遇した場合は,OTSCを切断し体外へ除去する必要がある.この場合に使用するデバイス(remOVEシステム[Ovesco]) 29が本邦にも導入された.このデバイスの導入はOTSCを使用するうえでの不安解消の一助となるであろう.しかしOTSCは高価なデバイスであるため,切断できることを安易に考えた無計画な使用は絶対に避けるべきである.

4.手技コストの算定

OTSCシステムは償還機材ではなく,値段は1セット;79,800円と安価ではないが,2018年4月より一定の施設基準を満たした条件付きではあるが内視鏡による穿孔や瘻孔閉鎖術の手技点数10,300点が新規に追加され,OTSC使用に要する費用の問題も緩和されている.しかし現状はEMR-O独自の手技点数は定められていないため,われわれの施設では十二指腸NETに対するEMR-Oの場合は「K653内視鏡的胃,十二指腸ポリープ・粘膜切除術(早期悪性腫瘍ポリープ切除術)」,大腸腫瘍に対するEMR-Oの場合は「K721内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術(長径2センチメートル未満)」としてコストを算定している.

Ⅷ OTSC併用内視鏡切除の現状と今後の展望

OTSC併用内視鏡切除として,欧米ではFull-Thickness Resection Device(FTRD;Ovesco Endoscopy社,チュービンゲン,ドイツ)を用いた内視鏡的全層切除(endoscopic full-thickness resection:EFTR)が行われている.FTRDはEMR-Oに使用する通常のOTSCシステムよりも格段に規格が大きく,形状もスネアリングしやすいように改良されたクリップを備え,さらにスネアも内蔵された強力なEFTR専用デバイスである.そのため上下部消化管における2cm以上の内視鏡治療困難または適応外病変などに用いられている 30),31.しかし本邦では未承認のデバイスであり現状は使用することができない.本邦にFTRDが導入されればEFTRの領域に一石を投じることは間違いない.しかし一方でR0切除の課題や強力なデバイスであるが故の偶発症の懸念もあり 32),33,さらには本邦の内視鏡医が持つ内視鏡治療技術や縫縮技術の質の高さを考慮すると,FTRDの本邦への導入については適応や安全性,そして必要性も含めて慎重に検討する必要がある.しかしFTRDの導入の有無にかかわらず,従来の内視鏡治療が困難な小病変に対する新たな内視鏡治療手技としてEMR-Oの存在意義は十分あると思われるため,今後のEMR-Oのさらなる発展とFTRDの動向に期待したい.

Ⅸ おわりに

消化管腫瘍に対するエムロ(EMR-O)は,対象や適応病変の大きさなどは限定されるが,適切に症例を選択すれば内視鏡治療困難例への対応や外科手術の回避も可能な有用な治療法である.そして何よりもEMR-Oが「穿孔させない内視鏡治療」である点は患者や術者にとって大きな安心を与えてくれる.しかし施行するにあたっては,事前の十分な症例検討と手技のシミュレーションを行うことは必須である.本法が今後の内視鏡治療の発展と本稿読者の診療の一助となれば幸いである.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

補足資料

電子動画 1 手順解説:十二指腸NETに対するEMR-O.本動画については,Endoscopy International Open誌より許可を得て転載した.

電子動画 2 憩室内外に広く進展した病変に対するHybrid EMR-O.

文 献
 
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