GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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CLINICAL COURSE AND MANAGEMENT OF ADVERSE EVENTS AFTER ENDOSCOPIC RESECTION OF SUPERFICIAL DUODENAL EPITHELIAL TUMORS: MULTICENTER RETROSPECTIVE STUDY
Osamu DOHI Motohiko KATOYoji TAKEUCHIShu HOTEYATsuneo OYAMASatoru NONAKAShoichi YOSHIMIZUMasao YOSHIDAKen OHATAYoshimasa MIURAYuko HARAShigetsugu TSUJIYasushi YAMASAKIHiroya UEYAMAKoichi KURAHARATomoaki TASHIMANobutsugu ABEAtsushi NAKAYAMAIchiro ODANaohisa YAHAGI
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2025 Volume 67 Issue 1 Pages 70-82

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要旨

【目的】本研究は,表在性十二指腸上皮性腫瘍(superficial duodenal epithelial tumor:SDET)に対する内視鏡的切除術(endoscopic resection:ER)後の有害事象(adverse event:AE)の臨床経過とマネジメントを明らかにすることを目的とした.

【方法】日本の18施設で2008年1月から2018年7月までにSDETに対するERを受けた連続患者を後方視的に登録した.研究アウトカムは,SDETに対するER後の臨床経過,マネジメント,周術期AEに伴う手術移行のリスクなどであった.

【結果】AEを呈した226例のうち,手術移行率は8.0%(18/226例)であり,その内訳は術中穿孔が3.7%(4/108例),遅発性出血が1.0%(1/99例),遅発性穿孔が50.0%(12/24例)であった.多変量ロジスティック解析では,乳頭部浸潤(オッズ比[odds ratio:OR],12.788;95%信頼区間[confidence interval:CI],2.098-77.961,P=0.006)および遅発性穿孔(OR,37.054;95%CI,10.219-134.366,P<0.001)が,AE後の手術移行の有意な危険因子であった.遅発性出血は術後1~14日目以降に発生したが,遅発性穿孔は全例で3日以内に発生した.

【結論】SDETに対するER後AEの中で,遅発性穿孔は他のAEよりも手術移行率が高かった.乳頭部浸潤と遅発性穿孔は,AE後の外科手術移行の有意な危険因子であった.また,外科的介入の必要性を防ぐためには,十二指腸ER後3日間は遅発性穿孔の確実な予防が必要である.

Abstract

Objectives: This study aimed to elucidate the clinical course and management of adverse events (AEs) after endoscopic resection (ER) for superficial duodenal epithelial tumors (SDETs).

Methods: Consecutive patients who underwent ER of SDETs between January 2008 and July 2018 at 18 Japanese institutions were retrospectively enrolled. The study outcomes included the clinical course, management, and risk of surgical conversion with perioperative AEs after ER for SDETs.

Results: Of the 226 patients with AEs, the surgical conversion rate was 8.0%(18/226), including 3.7% (4/108), 1.0% (1/99), and 50.0% (12/24) of patients with intraoperative perforation, delayed bleeding, or delayed perforation, respectively. In the multivariate logistic analysis, involvement of the major papilla(odds ratio [OR] 12.788; 95% confidence interval [CI] 2.098-77.961, P=0.006) and delayed perforation (OR 37.054; 95% CI 10.219-134.366, P<0.001) were significant risk factors for surgical conversion after AEs. Delayed bleeding occurred from postoperative days 1-14 or more, whereas delayed perforation occurred within 3 days in all cases.

Conclusions: The surgical conversion rate was higher for delayed perforation than those for other AEs after ER of SDETs. Involvement of the major papilla and delayed perforation were significant risk factors for surgical conversion following AEs. In addition, reliable prevention of delayed perforation is required for 3 days after duodenal ER to prevent the need for surgical interventions.

Ⅰ 背  景

表在性十二指腸上皮性腫瘍(superficial duodenal epithelial tumor:SDET)は,これまでの報告ではまれな腫瘍に分類されていたが,その発見数は徐々に増加している 1),2.内視鏡的切除(endoscopic resection:ER)は,リンパ節転移のリスクが低いことから,十二指腸腺腫および粘膜内癌に対する代替治療である.対照的に,膵頭十二指腸切除術(pancreatoduodenectomy:PD)を含む外科的切除は,リンパ節転移のリスクのある粘膜下層癌に対して推奨される 3),4.内視鏡的粘膜切除術(EMR),浸水下EMR(underwater EMR:UEMR),コールドスネアポリペクトミー(cold snare polypectomy:CSP),内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)など,低侵襲治療としてSDETに対するERの方法がいくつかある.しかし,ランダム化試験によるエビデンスが乏しいこと,腫瘍切除能や手技の難易度に差があること,有害事象(adverse event: AE)のリスクが多様であることなどから,これらの方法の適応基準は明らかではない 3

SDETの内視鏡的切除は,十二指腸壁が薄く,膵蛋白分解酵素が創傷に暴露されるため,AEのリスクが高い 5.最近,ER後の粘膜欠損部に対して,いくつかの予防的閉鎖や内視鏡的組織被覆法を用いることで,遅発性AEリスクが低下するという報告が散見されている 6)~13.しかし,十二指腸ER後に発生するAEは手術移行リスクが高く,日本および東アジアでは,ESD術中穿孔,遅発性出血,遅発性穿孔の発生率がそれぞれ3.5~66.7%,0%,33.3~100%と報告されている 2),6)~10),14)~22.同様に,欧米諸国では,SDETに対するERの遅発性出血および術中/遅発性穿孔について,それぞれ最大16.7%および66.7%までと報告されている 23)~27.しかし,これまでの報告では症例数が少ないため,AE後の臨床経過および外科手術移行の必要性に関するエビデンスは不十分である.

われわれは,最近10年間の国内18施設での大規模コホート研究に基づき,AE発生率を含むSDETに対するERの転帰を報告している 28.しかし,ER後の臨床経過とAEの手術移行リスクは明らかにされていなかった.そこで本研究では,この大規模コホートデータベースを用いて,SDETのER後AEのマネジメントとその臨床経過を明らかにすることを目的とした.

Ⅱ 方  法

研究デザインと適格患者

この後向き観察研究は,2008年1月から2018年7月までの間に日本の18施設で実施されたもので,われわれの以前の研究と同じコホートに基づくサブ解析である 28.これらの施設で初回に診断されたSDETに対してERを受けた連続症例を登録し,臨床情報が十分でない患者は除外した.その後,SDETのER周術期にAEを発症した患者のデータを抽出した.本研究は,慶應義塾大学医学部倫理審査委員会の承認を得て,1964年のヘルシンキ宣言およびその後の改正に示された倫理基準に従って各施設で実施された.また,すべての患者は,SDETを治療するためにERを受けることに書面による同意を得た.

アウトカム

本試験の主要アウトカムは,SDETのER後の周術期AEのマネジメントとその臨床経過とした.副次的アウトカムは,SDETのER後AEに伴う手術移行とした.

SDETに対する内視鏡的切除

この研究では,ERにはCSP,UEMR,EMR,ESDの4つの内視鏡的手技が含まれていた.CSPはコールドスネアを用いて局注や通電なしで行われた.EMRは主に局注液およびホットスネアによる通電で行われた.UEMRは,主に水または生理食塩液の浸水下にホットスネアまたはコールドスネアを用いて通電を行ったが,局注液は用いなかった.ESDは主に局注液とエンドナイフによる通電を用いて行われた.

予防的閉鎖

粘膜欠損部の完全閉鎖は遅発性AEのリスクを減少させることが,2019年から2021年にかけて報告されている 8.さらに,内視鏡的鼻胆膵管ドレナージ(endoscopic nasobiliary and nasopancreatic duct drainage:ENBPD)の挿入は,粘膜欠損部の予防的閉鎖の代替治療となりうる報告もある 29),30.しかし,これらの報告結果は本研究期間中には明らかではなかった.したがって,ER後の予防的閉鎖と閉鎖方法については,各施設の内視鏡医が決定した.粘膜欠損部の予防的閉鎖または内視鏡的組織被覆は,従来クリップ閉鎖法 6),7,エンドループ/クリップ閉鎖法 8,over-the-scope-clip(OTSC;Ovesco Endoscopy社,チュービンゲン,ドイツ)閉鎖法 9),10,ストリングクリップ縫縮法 11,またはフィブリン接着剤を用いたポリグリコール酸(polyglycolic acid:PGA)シート 12を用いて行われた.本研究では,それぞれの手技の導入時期が異なっており,2008年以前は従来のクリップ閉鎖術とエンドループ/クリップ閉鎖術が,2013年以降はOTSC閉鎖術とフィブリン糊を用いたPGAシートが,2016年以降はストリングクリップ縫合法が用いられた.

AE後の内視鏡治療

 術中穿孔に対する内視鏡治療は,従来のクリップ閉鎖術,エンドループ/クリッピング閉鎖術,ストリングクリップ縫合法,OTSC閉鎖術,フィブリン糊付きPGAシート,または内視鏡的鼻胆道ドレナージ(endoscopic nasobiliary drainage:ENBD)/ENBPDを用いて行われた.血液検査,CT,または内視鏡検査は,遅発性有害事象が生じた場合に再評価した.遅発性出血に対する内視鏡的止血は,従来のクリップ,止血鉗子,アルゴンプラズマ凝固,またはPGAシートを用いて行った.遅発性穿孔に対する内視鏡的治療は,OTSC,フィブリン接着剤付きPGAシート,またはENBPDを用いて行われた.

定義

各施設の治療期間は,先行研究の治療データをもとに分類して決定した 28.したがって,治療期間は各施設においてESD49例目以前と以後に分けた.AEは既報に基づいて定義した 28.術中穿孔は,ER中の腹膜または後腹膜腔の直接観察により確認された十二指腸壁の全層欠損,またはER直後のCTで観察された腹腔内気腫または後腹膜気腫と定義した.遅発性出血は,手技終了後に内視鏡的止血を必要とする吐血または下血と定義した.再出血は,遅発性出血の止血後に再発した出血と定義した.遅発性穿孔は,処置終了後に何らかの症状が出現した時点で,内視鏡検査で穿孔部位が検出された場合,またはCTで腹膜気腫または後腹膜気腫が観察された場合と定義した.

統計分析

定量的データは,平均値と標準偏差(standard deviation:SD)を用いて要約した.さらに,ロジスティック回帰モデルを用いた単変量解析および多変量解析を行い,手術への移行に関連するさまざまな臨床的特徴および治療因子を評価した.単変量解析で有意であった臨床的関連変数は,多変量解析にも含めた.統計的有意性はP値0.05未満とした.すべての統計解析は,社会科学用統計パッケージソフト(SPSS version 25.0;IBM Corp., Armonk,NY,USA)を用いて行った.

Ⅲ 結  果

患者とAE

全体として,SDETのERを受けた3,107例が登録され,データ不足のため,60例が除外された.3,047例のうち,周術期に何らかのAEを認めた226例が本研究で解析された(Figure 1).術中穿孔4例,遅発性出血1例,遅発性穿孔12例,壊疽性胆囊炎1例を含む18例が追加外科的治療を要した.したがって,SDETのER周術期における手術以降率は8.0%(18/226例)であった.

Figure 1 

患者登録と有害事象解析の概要を示したフローチャート.

Table 1に,何らかのAEを認めた患者の特徴を示す.腫瘍部位は下行部乳頭の肛門側が主たる部位であった(46.9%).平均腫瘍径は22.8mmであった.1/2以上の周在性を有する病変および乳頭部を含む病変の割合は,それぞれ4.9%および9.3%であった.さらに,各施設における49症例目までのESD症例の割合は44.7%であった.前期(2008~2012年)の割合は32.3%であった.ESDと完全閉鎖の割合はそれぞれ70.4%と53.1%であった.主な閉鎖方法は従来のクリップ閉鎖術(42.9%)であった.完全閉鎖率は53.1%であった.

Table 1 

有害事象を伴った患者の特徴.

Table 2に切除方法とAEとの関係を示す.術中AE108例はすべて術中穿孔であり,遅発性AEは遅発性出血99例,遅発性穿孔24例,急性膵炎6例であった.これらのAEではESDが主たるものであった.

Table 2 

内視鏡的切除法に基づく有害事象数.

ER後の術中AEの臨床経過

Table 3は,ER後に術中穿孔を来した患者の臨床経過の詳細である.術中穿孔108例のうち,7例は絶食と抗生剤静脈投与のみによる保存的治療を受け,外科的治療を受けずに回復したが,101例は穿孔直後に内視鏡的治療を行った.この101例中97例は外科的治療なしで回復した(従来のクリップ閉鎖術85例,フィブリン糊付きPGAシート2例,従来のクリップ閉鎖術および/またはフィブリン糊付きPGAシートとENBDまたはENBPDを併用したもの10例).従来のクリップ閉鎖術が不成功に終わった4例が緊急手術に移行され,その内訳はPD1例,開腹ドレナージ1例,開腹ドレナージを伴う単純閉鎖術2例であり,術中穿孔を来した患者の手術移行率は3.7%(4/108)であった.一方,他の閉鎖術あるいは被覆法を用いた症例では,全例手術なしで回復した.

Table 3 

内視鏡的切除法に基づく有害事象数.

ER後遅発性AEの臨床経過

遅発性出血を来した99例のうち,8例は保存的治療,90例は内視鏡的止血術,1例はインターベンショナルラジオロジー(interventional radiology:IVR)を受けた(Table 4-a).内視鏡的止血のほとんどの症例は止血鉗子または従来のクリップを用いて止血された.IVRによる治療に失敗した1例はPDを受けた.内視鏡的治療後に再出血を経験した6例中5例は追加的な内視鏡的止血術を受け,1例はIVRによる治療を受けた.遅発性出血を来した患者の手術移行率は1.0%であった. 遅発性穿孔の患者は24例で,そのうち10例が絶食と抗生物質の静脈内投与による保存的治療を受け,5例が内視鏡的治療を受け,9例が外科的治療を受けた(Table 4-b).最初に保存的治療を受けた10例のうち,7例は良好な臨床経過をたどったが,3例は外科的治療を要した(PD,開腹ドレナージによる単純閉鎖術,開腹ドレナージによる単純閉鎖術と十二指腸吻合術が各1例).5例全例が意識下鎮静下で緊急内視鏡治療を受けた.OTSCまたはフィブリン糊併用PGAシートを用いた4例は,閉鎖または被覆に成功した.1例はフィブリン糊併用PGAシート被覆とENBPDチューブの挿入を行ったが,後者の方がより効果的であった.5例とも他の侵襲的治療を必要とせず,臨床経過は良好であった.9例が外科的治療を受けたが,その内訳は,開腹ドレナージによる単純閉鎖3例,開腹ドレナージと大網充填閉鎖2例,開腹ドレナージ,空腸ストーマおよび大網充填閉鎖2例,開腹ドレナージによる十二指腸空腸吻合2例であった.したがって,遅発性穿孔患者の手術転換率は50.0%(12/24)であった.ER後にAEを来した患者の入院中の死亡率は0.44%(1/226)であった.下行部に10mmの粘膜内癌を有し,ESDとOTSC閉鎖が成功した患者は,ワルファリンによる慢性心不全の治療を受けていた.術後1日目に遅発性出血を来し,一旦止血に成功したが,術後2日目に再度出血し,左心不全と循環血液量減少性ショックによる致死的不整脈で死亡した.

Table 4 

遅発性有害事象の一次治療と転帰.

遅発性AEの期間

Figure 2にER後の遅発性出血と遅発性穿孔の時期を示す.遅発性出血は術後2日目にピークに達し,14日目以降には徐々に減少した.一方,遅発性穿孔は全例で3日以内に発生した.ER後の遅発性出血の中央値は,遅発性穿孔の中央値(0.79日[SD,0.48日],P<0.001)よりも有意に長かった(2.0日[SD,0.82日]).

Figure 2 

内視鏡的切除後の遅発性出血と遅発性穿孔の発生時期.

AE後の手術転換の危険因子

単変量ロジスティック解析において,SDETのERによるAEから手術移行に至る有意な危険因子は,以下の通りであった:各施設1~49例目のESD(オッズ比[odds ratio:OR],6.685;95%信頼区間[confidence interval:CI],1.878~23.798,P=0.003),乳頭部進展病変(OR,5.000;95%CI,1.200-20.828,P=0.027),ESD(OR,7.901;95%CI,1.030-60.634,P=0.047),遅発性出血(OR,0.143;95%CI,0.032-0.638,P=0.011),遅発性穿孔(OR,32.667;95%CI,10.445-102.163,P<0.001).統計学的に有意であった5つの変数のうち,3つの変数(乳頭部進展病変,治療方法,遅発性穿孔)を多変量ロジスティック解析に含めた.多変量解析では,乳頭部進展病変(OR,12.788;95%CI,2.098-77.961,P=0.006)と遅発性穿孔(OR,37.054;95%CI,10.219-134.366,P<0.001)が,SDETに対するERのAE後の外科手術移行の有意な危険因子であった(Table 5).提示症例は,乳頭進展を伴うSDETに対してESDを施行後に遅発性穿孔を来し,外科的治療を受けた(Figure 3).

Table 5 

有害事象による手術移行の危険因子に関するロジスティック回帰分析.

Figure 3 

a:乳頭部に部分的に浸潤した下行部内側の28mm,0-Ⅱa病変.

b:乳頭部を含み一括切除成功.

c:術中穿孔は,内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)後,従来のクリップ閉鎖術により閉鎖され,フィブリン糊併用ポリグリコール酸シートにて粘膜欠損部を被覆した.

d:ESDの24時間後に発生した遅発性穿孔.CTで後腹膜気腫と膿瘍を認めた.絶食と抗生物質の静注による保存的治療が行われたが,効果はなかった.最終的に,術後5日目に幽門温存膵頭十二指腸切除術が施行された.全入院期間は42日であった.

Ⅳ 考  察

われわれの知る限り,本研究はSDETに対するER後のAEに関する最も多い症例数が含まれた研究である.われわれの結果から,術中穿孔および遅発性出血後の手術移行率は低かったが,遅発性穿孔後は比較的高く,過去の報告と一致していた 2),6)~9),14)~27.多変量ロジスティック解析でも,遅発性穿孔と乳頭に進展するSDETが,ER後のAEに対する外科手術移行の有意な危険因子であることが示された.

十二指腸ERでは術中穿孔の発生率が高いことが報告されており,しばしば手術が必要となる 18),22.穿孔の位置や大きさ,スコープの操作性によっては,従来のクリップによる閉鎖が不可能な場合もある.近年,十二指腸ER後のAEを予防するために,ストリングクリップ縫合法,エンドループ/ クリップ閉鎖法,OTSC,PGAシートによる被覆法など,粘膜欠損部を縫合,被覆,保護するさまざまな方法が考案されている 8)~13

残念なことに,本研究の遅発性穿孔症例の半数は,直ちに外科的介入が必要であった.しかし,ほとんどの遅発性穿孔症例は,集学的な内視鏡的アプローチにより治療が成功したと報告されている 29.したがって,重度の炎症や感染を引き起こさない場合には,遅発性穿孔に対して内視鏡的閉鎖を考慮してもよいと考えられる.しかし,保存的治療は危険であり,推奨されない.なぜなら,このような患者の30%が保存的治療後に手術を受けたからである.

十二指腸ESD後遅発性穿孔の発生時期を報告したものはほとんどないが,ある研究では,遅発性穿孔は十二指腸ESDの8~33時間後に発生したことが示されている 29.十二指腸壁は極端に薄く遅発性穿孔のリスクが高いとしても,炎症による組織の反応が組織の浮腫と肥厚を来し,十二指腸壁が強固となることで,たとえ粘膜欠損部が開存し,膵蛋白分解酵素に曝され続けても,72時間以降には遅発性穿孔が起こらない可能性がある.したがって,遅発性穿孔を避けるためには,縫合は少なくとも72時間は維持すべきである.

乳頭に進展するSDETは,本研究ではER後AEの外科手術移行の有意な危険因子であった.しかし,このような病変に対するER後AEに関するデータはほとんどない.乳頭進展したSDETに対するERにおける術中穿孔または遅発穿孔に対する内視鏡的閉鎖は,内視鏡が奇異性に動くために技術的に困難である.さらに,乳頭を含む内視鏡的閉鎖は,膵蛋白分解酵素の流出障害による重篤な膵炎のリスクが高い.さらに,完全閉鎖が困難な場合に,経鼻胆管膵管ドレナージにより胆汁や膵液の漏出を防ぐことで,外科手術移行の回避に有用であることが報告されている 29),30.今回,術中穿孔または遅発性穿孔後にENBDまたはENBPDを受けた症例での外科手術移行は認めなかった.したがって,ENBDまたはENBPDは,術中または遅発性穿孔により内視鏡的閉鎖が不可能な場合に,外科手術移行を回避するための選択肢となりうると考えられる.

十二指腸穿孔に対する外科的介入には,通常,一次修復または十二指腸外瘻形成による管理されたドレナージが含まれる.残念ながら,AE後の外科的介入を計画するための明確なガイドラインは存在しない.したがって,外科的治療はAE後の患者の状態に合わせて行われた.リンパ節転移のリスクのある十二指腸癌に対しては,一般的にPDが根治目的の手術として推奨されている.本研究では,ESD後に重篤なAEを来した患者の16.7%のみがPDを受けたが,これはおそらく,外科医が膵タンパク分解酵素の曝露による腹膜または後腹膜の炎症を考慮した結果,PDよりも侵襲の少ない手術を選択したと思われる.

本研究にはいくつかのlimitationがあった.第1に,SDETのER法を含め,治療戦略は各施設で異なっていた.したがって,この研究が後方視的であり,選択バイアスは否定できない.第2に,中央病理判定を行わずに,各施設の病理医によって診断を行っている.したがって,病理学的特徴に関してはロジスティック回帰分析には含めなかった.第3に,内視鏡的手技は各施設の熟練した経験豊富な内視鏡医によって行われた.したがって,われわれのデータは低・中等症施設では標準化できないと考える.第4に,この10年間にいくつかの新しい閉塞方法が開発されたことから,いくつかの施設ではAEを予防または管理するための治療戦略が変更された可能性がある.

Ⅴ 結  論

SDETに対するER後の外科手術移行率は,他のAEよりも遅発性穿孔の方が高かった.さらに,乳頭への浸潤と遅発性穿孔は,AE後の外科手術移行の有意な危険因子であった.したがって,外科的介入を防ぐためには,十二指腸ER後3日間は遅発性穿孔の確実な予防が必要である.

謝 辞

われわれは,九嶋亮治先生(滋賀医科大学 病理学講座),八尾隆史先生(順天堂大学大学院医学研究科 人体病理学),関根茂樹先生(国立がん研究センター中央病院 病理診断科),比企直樹先生(北里大学医学部 上部消化管外科),山本頼正先生(昭和大学藤が丘病院 消化器内科),郷田憲一先生(獨協医科大学 消化器内科),籔内洋平先生,角嶋直美先生(静岡県立静岡がんセンター 内視鏡科),小原英幹先生(香川大学医学部 消化器・神経内科),遠藤昌樹先生(開運橋内視鏡クリニック,岩手医科大学医学部内科学講座 消化器内科学),矢野友規先生(国立がん研究センター東病院 消化管内視鏡科),土山寿志先生(石川県立中央病院 消化器内科),山本博徳先生(自治医科大学 消化器内科),高橋亜紀子先生(佐久医療センター 内視鏡内科),赤澤陽一先生(順天堂大学 消化器内科),三宅宗彰先生(大阪国際がんセンター 消化管内科)の各先生方に,研究コンセプトの検討・評価,データ収集,解析,原稿の解釈にご協力いただいたことに深謝する.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:吉田将雄および小田一郎はDigestive Endoscopy誌の副編集長である.他の著者は本論文について利益相反がないことを表明している.

研究資金:なし

Footnotes

本論文はDigestive Endoscopy(2023)35, 879-88に掲載された「Clinical course and management of adverse events after endoscopic resection of superficial duodenal epithelial tumors: Multicenter retrospective study」の第2出版物(Second Publication)であり,Digestive Endoscopy誌の編集委員会の許可を得ている.

文 献
 
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