2025 Volume 67 Issue 3 Pages 249-257
【目的】大腸内視鏡検査の抜去時間は腺腫検出割合(adenoma detection rate:ADR)と関連している.しかし,ADRと大腸挿入時間との関係は十分に明らかにされていない.個人の大腸内視鏡挿入・抜去時間の平均値を含めた,ADRに関与する内視鏡医関連因子を評価することを本研究の目的とした.
【方法】本観察研究では,病理データを含む日常診療の大腸内視鏡データベースを検討に用いた.ADRに関連する内視鏡医関連因子のオッズ比を,一般化線形混合モデルを用いて検討した.
【結果】研究期間中に実施された186,293件の大腸内視鏡検査のうち,4病院の189人の内視鏡医による47,705件の大腸内視鏡検査についてADRを解析した.全体のADRは38.3%(95%信頼区間[CI]:37.8~38.7)であった.平均盲腸挿入時間が5分未満の内視鏡医と比較して,平均盲腸挿入時間が5~9分,10~14分,15分以上の内視鏡医のADRのオッズ比は,それぞれ0.84(95%CI:0.71,0.99),0.68(95%CI:0.52,0.90),0.45(95%CI:0.25,0.78)であった.平均抜去時間が6分未満の内視鏡医と比較して,平均抜去時間が6~9分,10~14分,15分以上の内視鏡医のADRのオッズ比は,それぞれ1.38(95%CI:1.03,1.85),1.48(95%CI:1.09,2.02),1.68(95%CI:1.04,2.61)であった.内視鏡医の専門,性別,総検査数によるADRの有意差はみられなかった.
【結論】個人の平均大腸内視鏡挿入時間はADRと関連しており,抜去時間と同様に大腸内視鏡検査の質の指標と考えられる(UMIN000040690).
Objectives: Colonoscopy withdrawal times are associated with the adenoma detection rate (ADR). However, the relationship between ADR and cecal insertion time has been inadequately characterized. We aimed to evaluate endoscopist-related factors involved in the ADR, including the average individual colonoscopy insertion and withdrawal times.
Methods: This observational study used a colonoscopy database with pathology data from routine clinical practice in Japanese institutions. The odds ratios (OR) of endoscopist-related factors related to ADRs were examined using a generalized linear mixed model.
Results: Of the 186,293 colonoscopies performed during the study period, 47,705 colonoscopies by 189 endoscopists in four hospitals were analyzed for ADR. The overall ADR was 38.3% (95% confidence interval [CI] 37.8, 38.7). Compared to endoscopists with mean cecal insertion times of < 5 min, the OR of ADR for those with mean cecal insertion times of 5-9, 10-14, and ≥15 min were 0.84 (95% CI 0.71, 0.99), 0.68 (95% CI 0.52, 0.90), and 0.45 (95% CI 0.25, 0.78), respectively. Compared to endoscopists with mean withdrawal times of < 6 min, the OR of ADR for those with mean withdrawal times of 6-9, 10-14, and ≥15 min were 1.38 (95% CI 1.03, 1.85), 1.48 (95% CI 1.09, 2.02), and 1.68 (95% CI 1.04, 2.61), respectively. There were no significant differences in ADRs by endoscopist specialty, gender, or the total number of examinations performed.
Conclusion: Individual mean colonoscopy insertion time was associated with ADR and might be considered as a colonoscopy quality indicator as well as withdrawal time.
Trial registration: This study was registered in the University Hospital Medical Information Network as UMIN000040690.
大腸ポリープを切除して大腸癌を予防するために,大腸内視鏡は世界中で広く利用されている 1)~3).大腸内視鏡検査における病変の検出率は内視鏡医によって異なる.腺腫検出割合(adenoma detection rate:ADR)は,大腸内視鏡検査後の大腸癌 4)と関連するため,大腸内視鏡検査の質の重要な指標である.
大腸内視鏡検査の個人の平均抜去時間はADRに関連している 5),6).米国消化器内視鏡学会および欧州消化器内視鏡学会のガイドラインでは,大腸内視鏡検査に少なくとも6分の適切な抜去時間を推奨している 7),8).2021年日本消化器内視鏡学会(JGES)ガイドラインでも,少なくとも6分の抜去時間を推奨している.しかし,これらの推奨の根拠となった文献の多くは欧米諸国のものである 9).
最近の研究では,年齢,性別,専門分野,経験年数,内視鏡検査件数など,ADRと関連する平均抜去時間以外の内視鏡医関連因子が検討されている 10)~15).しかし,内視鏡手技の習熟度に関係すると思われる盲腸までの大腸内視鏡挿入時間の個人平均とADRとの関連はあまり研究されておらず,両者の関係は不明なままである 16),17).
近年,日本では内視鏡検査レポートの大規模データベース化を目指したJapan Endoscopy Database(JED)プロジェクトがJGES主導で開始された 18),19).本研究では,JEDで作成された内視鏡データベースと病理データベースを統合した.病理データを含む大規模な内視鏡検査データベースの構築は,われわれの知る限り日本初である.
本研究の目的は,個人の平均挿入・抜去時間を含む日本の実臨床における内視鏡医関連因子とADRとの関連を評価することである.
本研究は,大腸内視鏡検査データベースを用いた観察研究である“J-SCOUT研究”の主要な結果の1つであり,2010年4月から2020年3月まで,国内8施設において,日常臨床における大腸内視鏡検査成績に影響する因子を評価した.今回の報告では,腺腫検出に影響する内視鏡医の要因に焦点を当てた.J-SCOUT研究の詳細な方法は,過去の研究 20),21)に記載されている.本研究はJGESの倫理委員会(E20-002)および各病院の承認を得た.本研究の計画,実施,報告,普及計画に患者や一般市民は関与していない.本研究はUMIN000040690として大学病院医療情報ネットワークに登録された.
参加者研究期間中に参加施設で大腸内視鏡検査を受けた20歳以上のすべての人を対象とした 20).除外基準は以下の通りである.(1)研究への参加を拒否した患者,(2)前回より6カ月以内に実施された大腸内視鏡検査,(3)過去に確認された大腸病変に対する大腸内視鏡検査,(4)炎症性腸疾患,(5)緊急内視鏡検査,(6)大腸内視鏡検査の適応が不明.サンプルサイズは調査期間中に実施された大腸内視鏡検査の回数に依存した.
変数とデータソースADRが本研究のアウトカムとして用いられた.ADRは,少なくとも1つの腺腫が検出された大腸内視鏡検査の割合として定義された.腺腫は病理所見に基づいて定義されるが,日本ではガイドラインで6mm未満の腺腫は切除する必要がないとされている 22).さらに,大腸内視鏡検査へのアクセスが比較的容易なため,大腸ポリープが見つかってもその場では切除せず,別の日に切除する方針の病院もある.このため,日本では病理所見からADRを算出することが困難なことがある 20).したがって,5mm以下の腺腫を残す,あるいはその場でポリープ切除を行わないという方針をとっている病院のデータは今回の調査から除外した.
内視鏡医に関連する因子として,内視鏡医の性別と専門性,平均盲腸挿入時間,ポリープがない場合の平均抜去時間,調査期間中の大腸内視鏡の総回数を検討した.内視鏡医の性別と専門は,各施設へのアンケート調査の記載に基づいた.
挿入時間と総検査時間は,内視鏡システムのタイムスタンプまたはストップウォッチを使用して測定し,検査直後に内視鏡検査報告書に記入した.ポリープがない場合の平均抜去時間は,ポリープのない被験者の総検査時間から盲腸挿入時間を差し引くことにより算出した.抜去時間は,カットオフ値として6分と10分を設定した 8).本研究で使用したカテゴリーは,6分未満,6~9分,10~14分,15分以上である.挿入時間については,日本の内視鏡医が盲腸挿入時間5分を基準としていることが多いため,カットオフ値は5分とした 23).
年齢,性別,大腸内視鏡検査経験(初回か非初回か),大腸内視鏡検査の適応,腸管前処置の状態を患者因子とした.腸管前処置の状況は,日本のガイドライン 9)で推奨されているAronchickスケールを用いて評価した.
統計各因子についてADRの推定値と95%信頼区間(CI)を算出した.各因子のオッズ比は,各因子の欠損データを除外した集団において一般化線形混合モデルを用いて算出した.内視鏡医と施設は,一般化線形混合モデルのランダム効果として使用した.すべての統計解析にSAS version 9.4(SAS Institute,Cary,NC,USA)を用いた.
186,293件の検査のうち,除外基準を満たしたものを除いた82,005件が対象となった(Figure 1).このうち,検査時にポリープを切除しない4病院のデータを除いて,47,705症例に対してADRを分析した.

研究のフローチャート.†除外症例の一部は重複している.
患者の特徴をTable 1に示す.多くを占めたのは男性(55%)で,70歳代が最多であった.約3分の1の患者が初めて大腸内視鏡検査を受け,多かった検査適応はスクリーニング,便潜血免疫法(fecal immunochemical test:FIT)陽性,内視鏡治療後のサーベイランスであった.前処置の状態が不良であった症例は4.7%にすぎず,ほとんどの症例で前処置の状態は良好であった.

患者の特徴.
Table 2に内視鏡医の特徴を示す.合計189人の内視鏡医がADR解析の対象となった.ほとんどの大腸内視鏡検査は消化器内科医によって行われ,約80%が男性であった.調査期間中に1,000件以上の内視鏡検査を行った内視鏡医の割合は15.3%(29人)であった.平均抜去時間6〜9分,平均挿入時間5〜9分の内視鏡医が最も多かった.

内視鏡医の特徴.
Table 3に大腸内視鏡検査の適応別のADRを示す.内視鏡治療後のサーベイランス症例でADRが最も高かった.日本では,大腸癌の集団検診としてFITが行われている.しかし,日常診療では,FITを受けたことのない患者も無症候性スクリーニングとして大腸内視鏡検査を受けることがある.本研究における「スクリーニング」という適応は,FITを施行していない無症状の患者に対して大腸内視鏡検査を実施したことを意味する.FIT陽性例のADRは42.2%であり,スクリーニング群より高かった.スクリーニング群とFIT陽性群のADRの詳細をTable S1(電子付録)に示す.50代以上のFIT陽性者のADRは40%を超えた.

大腸内視鏡検査適応別の腺腫検出割合.
ADRに関する一般化線形混合モデルを用いた解析結果をTable 4に示す.このモデルは,欠損データのない参加者のみのデータに基づいており,この参加者は対象症例の67.9%(32,382/47,705)であった.前処置の状況が不十分であった症例数が少なく(4.7%),欠損データの割合が比較的大きいため,前処置の状態は多変量解析には含めなかった.

一般化線形混合モデルによる分析結果(n=32,382).
平均盲腸挿入時間が5分未満の内視鏡医と比較して,平均盲腸挿入時間が5~9分,10~14分,15分以上の内視鏡医のADRのオッズ比は,それぞれ0.84(95%CI:0.71,0.99),0.68(95%CI:0.52,0.90),0.45(95%CI:0.25,0.78)であった.このことは,個人の盲腸への平均挿入時間とADRが逆相関していることを示している.平均抜去時間が6分未満の内視鏡医と比較して,平均抜去時間が6~9分,10~14分,15分以上の内視鏡医のADRのオッズ比はそれぞれ1.38(95%CI:1.03,1.85),1.48(95%CI:1.09,2.02),1.68(95%CI:1.04,2.61)であり,抜去時間が6分未満の内視鏡医と比較して,抜去時間が長い内視鏡医のADRは有意に高かった.内視鏡医の専門性,性別,調査期間中の総検査回数によるADRの有意差は認められなかった.
本研究は,病理組織学的データを含む大規模な内視鏡データベースを用いて内視鏡医を評価した日本初の研究である.平均盲腸挿入時間が短い内視鏡医はADRが高く,これは内視鏡技量と密接な関係があると思われる.
挿入時間が長いほど,つまり困難な症例であるほど,ADRが低いことを示す報告がいくつかある 16),24).しかし,個々の内視鏡医の平均挿入時間がADRに影響するかどうかを検討した研究はほとんどなく,最近までこの関連性は指摘されていなかった 16),17).スウェーデンの前向き臨床研究において,Sekiguchiらは平均挿入時間が20分以上の大腸内視鏡医はADRが有意に低いことを報告している 17).本研究では,平均挿入時間が短い内視鏡医ほどADRが高かった.挿入時間の短縮を達成するためには適切な手技が必要であり,盲腸挿入時間が短い内視鏡医は熟練度が高いと考えられる.これらの結果から,盲腸への平均挿入時間は内視鏡医の質を示す指標の1つである可能性が示唆された.
病理学的に証明された腺腫の検出を増加させるためには,腺腫を検出するだけでなく,適切な診断,切除,回収を行うことが必要である.挿入手技が改善されれば,これらの手技が適切に行われ,結果としてADRが改善されるであろう.高いADRのもう1つの要因は,盲腸への挿入時間が短いため,十分な観察とポリープ切除に最適な条件が得られることであろう.
本研究では主に内視鏡医に注目し,内視鏡医の平均盲腸挿入時間とADRについて検討した.一方,患者に注目した研究では,長時間の挿入を必要とする患者ではADRが低いと報告されている 16),24).今回のデータベースを用いて,患者データをもとに挿入時間とADRの関係を検討したところ,挿入に15分以上を要した挿入困難例でADRが低い傾向にあることがわかった(データ示さず).日本のガイドラインによると,高齢,女性患者,腹部手術歴,低体重指数,前処置不良が挿入困難の一因となる可能性がある 9).さらに,これらの因子を有する患者は,盲腸までの平均挿入時間が短い内視鏡医が大腸内視鏡検査を実施したにもかかわらず,挿入に長時間を要する可能性がある.内視鏡先端アタッチメントの使用は挿入時間を短縮する可能性がある 25).挿入時間を短縮し,観察のための良好な条件を維持するための器具を使用することは極めて重要である.また,本研究でも繰り返し述べられているように,抜去時間は依然として高いADRの独立した要因である.したがって,挿入に長時間を要する場合でも,十分な抜去時間を確保することが重要である.
適切な挿入時間を達成するためには,トレーニングが必要である 26),27).Sedlackらの報告によると,トレーニングにより平均挿入時間15分が達成可能な症例は約100例であり,平均挿入時間10分未満は約350例で,挿入時間9分でプラトーとなる 27).本研究では,内視鏡医の大半(58.5%)が平均挿入時間5~9分のカテゴリーに属していた.理想的な平均挿入時間は5分未満であるが,盲腸への挿入時間が10分未満であることは,スクリーニング大腸内視鏡検査の妥当な目標と考えられる.
冒頭で述べたように,適切な大腸内視鏡検査の抜去時間は,各国のガイドライン 7)~9)で推奨されている.Shaukatらは,平均大腸内視鏡抜去時間はADRと中間期癌 28)に関連していると報告しているが,いくつかの報告では,大腸内視鏡抜去時間とADR 29)~31)の関連に否定的な結果を示している.今回の報告は,大腸内視鏡の抜去時間がADRと関連するというエビデンスを強化するものである.
今回の調査では,内視鏡医の専門性,性別,期間中の検査件数によるADRの有意差はみられなかった.専門性に関しては,今回の大腸内視鏡検査の多くは消化器内科医が行っており,外科医が行った症例数は少なすぎるために十分な検討ができなかった.また,参加病院における各内視鏡医の在職期間や検査頻度が不明であったため,本データベースで検査件数の少ない内視鏡医でも他の病院でより多くの大腸内視鏡検査を行っていた可能性がある.したがって,この期間の検査数は十分信頼できる指標ではなかったかもしれない.
この研究にはいくつかの限界があった.第1は,欠損データの存在である.挿入時間と抜去時間の入力は各内視鏡医に依存していたため,33.9%(64/189人)の内視鏡医には挿入時間のデータがなく,31.2%(59/189人)の内視鏡医には抜去時間のデータがなかった.他の要因の欠損データを合わせると,ADRの多変量解析に使用したデータは症例の67.9%のみであった.第2に本研究では10年間にわたるデータの収集を行ったため,内視鏡医の年齢や生涯検査回数など考慮できない因子が存在することとなった.さらに,研究期間中の個々の内視鏡医の技術の向上や機器の進歩は考慮されていない.第3に本研究のデータのほとんどは,大学病院または大規模施設から収集されたものである.スクリーニングが大腸内視鏡検査の理由であった対象者でもADRが高いことは,スクリーニングを受けた患者が高リスク患者であることを示している.最後に本研究ではADRよりも重要なエンドポイントである大腸内視鏡検査後に発生する大腸癌を検討することができなかった.
以上の限界はあるものの,本研究は大規模なデータセットにおいて,日本の実臨床におけるADRの推定値および内視鏡医関連因子を示すことができた.個人の盲腸までの平均大腸内視鏡挿入時間はADRに関与しており,質の指標と考えられる.
謝 辞
データ管理および業務にご尽力いただいた船木修氏,鈴木丈洋氏,佐藤大介氏,三浦泰弘氏,森千咲氏(日本消化器内視鏡学会)に深く感謝いたします.また,病理データ収集にご協力いただいた各病院病理部の先生方,スタッフの方々に感謝いたします.また,英文校正にはエディテージ(www.editage.com)にご協力いただいた.
本論文内容に関連する著者の利益相反:河村卓二はDigestive EndoscopyのAssociate editorであり,オリンパス株式会社から講演料を受け取っている.高丸博之は,公益財団法人内視鏡研究振興財団より研究助成を受けている.辻陽介は,株式会社AIメディカルサービスの寄附講座に所属している.竹内洋司はオリンパス株式会社から講演料を受け取っている.松田尚久はオリンパス株式会社およびEAファーマ株式会社から講演料を受け取っている.他の著者は開示すべき利益相反はない.
資金調達情報:本研究は日本医療研究開発機構(20lk1010026h0003)の助成を受けた.
データ・アクセシビリティ・ステートメント:本研究のデータは,合理的な要求があれば連絡著者から入手可能である.
補足資料
Table S1 スクリーニングおよび便潜血免疫法陽性者の腺腫検出割合の詳細.
本論文はDigestive Endoscopy(2024)36, 51-8に掲載された「Endoscopist-related factors affecting adenoma detection during colonoscopy: Data from the J-SCOUT study」の第2出版物(Second Publication)であり,Digestive Endoscopy誌の編集委員会の許可を得ている.