Gout and Uric & Nucleic Acids
Online ISSN : 2435-0095
Original Article 4
Questionnaire survey on gout and hyperuricemia patients who returned to clinic after discontinuing treatment
Rion KajiyaHiroshi OoyamaHitoshi MoromizatoYoko ToyaMinako HamamuraChisato YamawakiYurie IsonoChisa OsakoKeiko OoyamaShin Fujimori
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2025 Volume 49 Issue 1 Pages 55-62

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Abstract

痛風・高尿酸血症の治療は,血清尿酸値6.0mg/dL以下を維持することが望ましいが,通院中断によって治療を継続できない患者が少なからず存在する.1年以上通院を中断していたが,後に再通院した患者104例(男性100例,女性4例)を対象としてアンケート調査を実施し,他院での治療継続例28例を除いた76例の調査結果を分析した.通院中断の理由については,仕事の多忙さや転勤,転居など生活スタイルやライフイベントの変化による来院困難が過半数を占めた.次いで痛風発作の消失や検査データの改善から治癒したとの思い込みによる中断例が多かった.新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴う外出制限も少なからず存在した.再通院の契機となった理由については,痛風発作の再発と健診での血清尿酸値の再上昇が大半を占めていた.仕事や転居などの生活変化により治療中断を余儀なくされている例に関しては,オンライン診療の提案や転居先で治療を継続するよう指導していく必要があると考えられる.また,痛風発作などの顕著な症状が出現していない時期にも病識を持ってもらえるような,継続的で具体的な指導が必要であると考えられた.

Translated Abstract

In the treatment of gout and hyperuricemia, it is desirable to maintain the serum uric acid level at 6.0 mg/dL or lower. However, there are a number of patients unable to continue treatment due to interruption of visiting the clinic. A questionnaire survey was conducted involving 104 patients (100 men and 4 women) who had discontinued treatment at the clinic for more than a year but later returned, and then survey results for 76 (excluding 28 patients who continued treatment at other clinics) were analyzed. The main reasons given for treatment interruption were that it was difficult to visit due to changes in lifestyle or life events, such as being busy at work, job transfers, or relocation. Next, there were many discontinuing treatment because they believed that the disease had been cured due to the disappearance of gout attacks and improvement in test data. There were also a number of restrictions on going out due to the spread of COVID-19. The majority of reasons for returning to the clinic were due to a recurrence of gout attacks and re-elevation of the serum uric acid level during a health check. In cases where patients have been forced to interrupt treatment due to lifestyle changes such as work or relocation, it may be necessary to suggest online medical consultations and instruct them to continue treatment at their new address. It was also considered that continuous and specific guidance was necessary to help patients recognize their illness even when no noticeable symptoms such as gout attacks were present.

背景・目的

痛風・高尿酸血症の治療は,血清尿酸値6.0mg/dL以下を維持することが望ましいとされている1).当院ではその重要性を,診療日に医師を始めとして看護師や管理栄養士など多職種が関与して繰り返し指導している2,3).看護部では治療開始時,半年後,2年後と定期的に指導を行っている2).また,当院では2001年から通院患者のみならずホームページ閲覧者に対してメーリングリストを作成して,痛風・高尿酸血症の病態,食事療法,薬物療法などについての情報を発信するとともに,患者からの疑問に回答する双方向性の対応で啓蒙活動を行ってきた4).さらに,遠方患者に対しては保険診療制度が制定される前から,電話ないしインターネットを利用した遠隔診療で対応してきた5).痛風発作が治まり,尿酸降下薬によって血清尿酸値が6.0mg/dL以下にコントロールされた患者に対しては,希望があればオンライン診療も行っている.このような試みを通じて,痛風・高尿酸血症患者に対して治療継続を促しているが,通院を中断してしまう患者が毎年30%程度見られるのが現状である6).通院中断に至る原因や,再通院する契機となった理由を明らかにすることで,今後の患者指導に生かして治療継続の向上に寄与することを目的として再通院アンケート調査を行った.

対象・方法

2023年4月1日から2024年9月30日までの期間に,1年以上通院を中断していたが後に再通院した患者104例(男性100例,女性4例)を対象としてアンケート調査を実施し,他院で治療を継続していた28例を除いた76例の調査結果を分析した(表1).調査項目は,1:通院中断理由(自由回答含む9項目)と,2:再通院の契機となった理由(自由回答含む10項目)とし,さらに当院で実施しているオンライン診療の認知度についても調査した(表2).また,通院を1年未満で中断した患者と通院を5年以上続けた後に中断した患者とで,患者背景に差異が見られるかについても検討した.数値は平均値±標準偏差で表し,統計処理はt検定とχ2検定で行い,P<0.05を有意差有りとした.本研究は医療法人つばさ倫理委員会の承認(承認番号10056)を得て,ヘルシンキ宣言に則って行われた.

Table 1. Clinical characteristics of the 76 subjects

性(男/女) 73/3
再受診時年齢(歳) 53.6±12.6
痛風/無症候性高尿酸血症(例) 72/4
痛風発症年齢(歳) 41.8±12.8
治療開始前血清尿酸値(mg/dL) 8.5±1.2
治療開始前eGFR(mL/min/1.73m2 79.4±14.7
治療開始時BMI 26.0±4.2

合併症(例)

(尿路結石/高血圧/脂質異常症/糖尿病)

8/21/10/2

通院中断までの尿酸降下薬(例)

(BBR/ALL/FEB/TPR/DTR)

45/5/18/10/6(併用投与有)

通院中断までの通院期間(年)

 1年以内(例)

 5年以上(例)

3.3±3.3

19

18

通院中断期間(年) 4.3±3.8

BBR:ベンズブロマロン,ALL:アロプリノール,FEB:フェブキソスタット,TPR:トピロキソスタット,DTR:ドチヌラド

Table 2. Questionnaire contents

1 治療を中断した理由は何ですか?該当する番号に〇をつけてください.複数回答可です.

  ①仕事が忙しい(時間に余裕がない,休みがない)

  ②転勤や引っ越しで,遠くなり通院できなくなった

  ③診察に関する事情(予約が取りにくい・診察の待ち時間が長い)

  ④定期受診を忘れてしまい,そのまま中断してしまった

  ⑤経済的な理由

  ⑥痛風発作を起こさなくなったため完治したと思った

  ⑦尿酸値が6mg/dL以下と正常値になったため内服は必要ないと感じた

  ⑧コロナ感染の拡大で外出を控えていた

  ⑨その他の理由(                                 ) 

2 再通院をしたきっかけは何ですか?該当する番号に〇をつけてください.複数回答可です.

  ①時間の都合がついた(仕事の都合がついた)

  ②転勤や引っ越しで,戻ってきた

  ③発作が再度起きた(治療中断後から再通院までに起きた発作の回数  )

  ④健診などで尿酸値の再上昇を指摘された

  ⑤経済的な理由がなくなった

  ⑥家族・友人などから再通院を勧められた

  ⑦痛風以外の症状(高血圧・腎機能低下・血糖値上昇など)が気になった

  ⑧転院したが,また専門医に通院したくなった

  ⑨コロナ感染が落ち着いたため

  ⑩その他の理由(                                 ) 

3 オンライン診療についてお聞きします.該当する方に〇をつけてください.

  ①オンライン診療を行っていることをご存じですか?    はい   いいえ         

  ②オンライン診療を組み合わせた通院を希望しますか?   はい   いいえ   わからない 

結 果

アンケート調査結果を検討した76例のうちで痛風患者は72例,無症候性高尿酸血症患者は4例存在し,女性の痛風患者も3例含まれていた(表1).通院中断までの経過期間は,初診時のクリアランス検査とその結果報告の2日間のみの受診にとどまる1週間が最短であったが,最長は15年間であり,平均通院期間は3.3年間であった(表1).通院1年未満での中断例は19例(25.0%)で通院5年以上継続後の中断例は18例(23.7%)であった(表1).通院中断までの治療薬としてはベンズブロマロンが45例(59.2%)で最も多く,次いでフェブキソスタットが18例(23.7%)であり,ベンズブロマロン投与者では尿酸生成抑制薬との併用投与している例が7例存在した(表1).合併症は高血圧が21例(27.6%)で最も多く,既往歴と超音波検査診断を含めての尿路結石が8例(10.5%)に認められた(表1).

通院中断の理由については,「仕事の忙しさ」が62%,「転勤や引っ越しで通院が困難になった」が22%など,生活スタイルやライフイベントの変化により来院が困難であった例が過半数を占めた.次いで「痛風発作を起こさなくなったため」が26%,「尿酸値が6.0mg/dL以下の正常値になったため」が13%と,症状や検査データの改善に伴って,治癒したとの思い込みが関係しての中断例が多かった(図1).また,社会情勢の変化を反映した「コロナで外出を控えていた」が16%存在し,その他には「薬の副作用が怖かったため」,「両親の介護」,「身内が亡くなった」など,治療への不安や家庭環境を中断理由に挙げる回答も1件ずつあった(図1).通院を1年未満で中断した患者19例と通院を5年以上継続した後に中断した患者18例とで患者背景を比較すると,痛風発症年齢,治療開始前の血清尿酸値,腎機能,BMIなどに差異は見られず,通院1年未満の患者では尿路結石の合併が多かった(表3).通院1年未満での中断例で尿路結石の合併が多かったことが,ベンズブロマロンの投与頻度が低いことに関連していると考えられる(表3).両群で通院中断理由を比較すると,「仕事の忙しさ」を理由に挙げたものが通院1年未満の患者で9例(47.4%),通院5年以上の患者では14例(77.8%)で,中断理由として最も多かったが,有意な違いではなかった(P=0.057).両群で唯一差を認めた中断理由は「定期受診を忘れて,そのまま中断」であり,通院1年未満の患者は1例(5.3%)であったのに対して5年以上の患者では7例(38.9%)で5年以上通院後に中断した患者で有意に多かった(P=0.013).

Fig 1. Reasons for discontinuing outpatient treatment

Table 3. Comparison of background factors between patients who discontinued within one year and patients who discontinued after five years or more of treatment

1年未満で中断(19例) 5年以上通院(18例) P値
性(男/女) 17/2 18/0
再受診時年齢(歳) 54.2±13.0 57.4±11.9 0.44
痛風/無症候性高尿酸血症(例) 17/2 18/0
痛風発症年齢(歳) 44.7±14.3 41.2±13.2 0.46
治療開始前血清尿酸値(mg/dL) 8.6±1.0 8.4±1.2 0.68
治療開始前eGFR(mL/min/1.73m2 75.3±13.4 83.1±19.1 0.16
治療開始時BMI 26.4±5.1 24.8±3.2 0.25

合併症(例)

(尿路結石/高血圧/脂質異常症/糖尿病)

6/5/3/0 0/5/2/2 0.006

通院中断までの尿酸降下薬(例)

(BBR/ALL/FEB/TPR/DTR)

7/1/7/2/2

(併用投与有)

15/1/1/4/0

(併用投与有)

0.01
通院中断期間(年) 4.4±3.5 3.3±3.3 0.77

BBR:ベンズブロマロン,ALL:アロプリノール,FEB:フェブキソスタット,TPR:トピロキソスタット,DTR:ドチヌラド

χ2検定,その他はt検定

再通院の契機となった理由については,「発作が再度起きた」が67%,次いで「健診等で尿酸値の再上昇を指摘された」が24%と,症状が再度出現したことや尿酸値の再上昇で再通院を決めた例が大半を占めていた(図2).他に「時間の都合がついた」が17%,「転勤や引っ越しで戻ってきた」が13%と多かった(図2).再通院の理由に関しては,通院1年未満で中断した患者と通院を5年以上継続した後に中断した患者とで差は認められなかった.オンライン診療については74%の患者がその存在を知らず,オンライン診療を希望すると回答した患者も33%と多いものではなかった(図3).

Fig 2. Reasons that led to revisits

Fig 3. Questions about online medical care

考 察

痛風は,罹患率が比較的高いこと,激烈な痛みは社会経済的影響を生じさせる可能性があること,効果的な治療薬が存在すること,急性発作と治療中断の間に直接的な関係があることなどがよく知られているにもかかわらず,治療アドヒアランスが低い慢性疾患であると考えられている7,8,9).当院でも通院を中断してしまう患者が毎年30%程度に見られる6).Harroldらは,初回尿酸降下薬治療を受けた4,166例の痛風患者のうちで56%の患者が治療1年以内に治療を中断しており,その傾向は合併症を有しない若年者に多く,特に尿酸降下薬開始前に医師の診察を受けていない若年患者で顕著であったことから,医療従事者は,痛風治療のアドヒアランスの低さを深刻に認識する必要があると忠告している7).英国臨床実践研究データリンク(1987年~2014年)で,年齢40歳以上でアロプリノール投与が開始された痛風患者48,280例を対象に治療アドヒアランスを検討したSceepers LEJMらの報告では,治療1年後の治療非継続率は38.5%で,その頻度は5年後には56.9%に増加しており,治療アドヒアランスの低下が懸念された8).この報告では治療アドヒアランスの不良者は女性患者,若年者,合併症の少ない患者で顕著であった8).市川らは痛風患者の1年以内の通院脱落例148例(55.4%)と1年以上通院を継続した119例(44.6%)について背景因子を比較し,初診時の血清尿酸値の高値と尿路結石の合併が治療継続に有利に働いていたが,痛風の発症年齢や痛風発作回数,肥満,高血圧,脂質異常症などの合併症の存在は治療継続に影響を与えなかったと報告している9)

今回の検討で通院中断理由については,仕事の多忙さや転勤など生活スタイルやライフイベントの変化が多く,痛風や高尿酸血症の有病者が壮年期~中年期の働き盛りの男性に多いという特徴が反映された結果と考えられる.また,尿酸値が安定してくると痛風発作の発症頻度が減ることにより,治癒したと思い込んでか,通院を中断してしまう例が多くみられた.このような例では,痛風治療に関する知識不足や,テレビでの芸能人の発言,専門外の人が発信しているインターネットからの誤った情報なども関係しているのではないかと推察される.尿酸降下薬による治療で5年間血清尿酸値を6.0mg/dL未満に維持しておけば,その後尿酸降下薬を中止しても血清尿酸値が7.0mg/dLを超えない限り痛風発作を起こす可能性は低いとする報告10)を参考にして,当院では患者指導の際に尿酸塩結晶の消失目安をおおよそ5年と伝えている.このこともあってか5年間治療すれば尿酸塩結晶は消失するはずだとの思い込みも,中断理由の一つではないかと推察される.多くの症例で尿酸降下薬を使用して5年間血清尿酸値を6.0mg/dL未満に維持すれば関節内に沈着していた尿酸塩結晶は消失すると推察されるが,20年以上血清尿酸値を6.0mg/dL未満に維持していても関節穿刺で尿酸塩結晶が存在したとの報告もあり11),一概に尿酸降下治療の期間を決定することは難しいかもしれない.また,新型コロナ感染症の蔓延で外出を控えていた例も少なからず存在したことから,コロナ禍での外出制限やリモートワークの増加など,社会情勢の変化による行動変容も通院中断の原因の一つとなることが明らかとなった.市川らは尿路結石症の存在が治療継続者で高頻度に見られたと報告しているが9),今回の検討では尿路結石合併者は通院1年未満の中断例に多くみられ,その存在が通院を継続させる要因と推定される市川らの報告と異なる結果であった.今回対象となった尿路結石合併患者は当院受診時には疝痛発作などの症状を呈していない尿路結石既往例と超音波検査での指摘例であることから,患者にとっては大きな問題と認識されない合併症であったのかもしれない.日常診療の経験から若年者ほど通院継続が難しいのではないかとの印象を持っていたが,検討結果では通院継続の長短に年齢差は影響を与えていなかった(表3).

再通院の契機となった理由については,痛風発作の再発や尿酸値の再上昇により危機感を感じ再通院した例が多く,疼痛などの症状が出現していない時には病識が薄まるという傾向が表れている.これらのことから,仕事や転居などの生活変化により治療中断を余儀なくされている例に関しては,オンライン診療の提案や転居先で治療を継続するよう指導していく必要があると考えられる.また,高尿酸血症のリスクは激烈な症状を呈する痛風発作や尿管結石などに止まらず,長期的には腎障害や心・脳血管障害のリスクを高める病態と考えられていることからも1),痛風発作などの顕著な症状が出現していない時期にも病識を持ってもらえるような,継続的で具体的な指導が必要であると考えられた.今後は,看護部門においても,痛風・高尿酸血症の病態,治療などについて言葉だけでなく図表を用いての繰り返しの指導を行っていきたいと考えている.

COI

本論文発表内容に関連して特に申告なし

References
 
© Japanese Society of Gout and Uric & Nucleic Acids
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