2019 Volume 3 Issue 1 Pages 21-34
公衆衛生看護は,すべての健康レベルにある人々を対象に,生活の場で,多様な健康課題の解決を支援するものである.またその対象も個人とともに組織や地域を対象とし,同時にそれらの対象支援を連動して展開している.さらに,これらのすべての健康課題や対象レベルに対しジェネラリストとしての方法論をもって支援を行っている.丸谷(2018)は,保健師のもつジェネラリストとしての専門性について「家庭訪問・組織化・アウトリーチ・政策化まで多様な方法を用い,公衆衛生学・社会学等の多様な学門を基盤として活動している.また,個人・地域・国家まで対象を連動して捉え,地域と健康問題を連動させ時代に応じた問題に対応する,という柔軟性がある」と述べている.これらの家庭訪問等の方法論は,公衆衛生看護学の専門的方法論といえる.そして母子保健活動や成人保健活動といった各健康課題領域の実践においては,その課題や背景の特性に応じて「家庭訪問・組織化・アウトリーチ・政策化」などの方法論を適用した「公衆衛生看護技術」をもって展開している.しかし,それぞれの保健活動においてどのような「公衆衛生看護技術」が用いられているかについての整理とその体系化については,十分な検討がなされてきたとは言い難い.
さらに,「看護技術」や「公衆衛生看護技術」についてもさまざまな捉え方がある.日本看護科学学会看護学を構成する重要な用語集(2011年6月)では,看護技術について「看護の問題を解決するために,看護の対象となる人々の安全・安楽を保証しながら,看護の専門的知識に基づいて提供される技であり,またその体系をさす.看護技術は,目的と根拠をもって提供されるものであり,根拠に基づく専門的知識は熟練・修練により獲得され,伝達される.また,看護技術は,個別性をもった人間対人間の関わりの中で用いられるものであり,そのときの状況(context)の中で創造的に提供される.」と説明されている.また川島(2010)は,看護技術について看護実践における経験法則も含む客観的法則性の意識的適用と説明している.さらに陣田(2010)は,技術の成立要件は意思を持った主体と客体,用具や道具の手段の3要件であるが,看護の技術ではこれら3要件以外に,関連する社会的要因が存在していることを指摘している.その上で,看護技術は,それぞれの状況の中で客体に対し,瞬時に優先順位なども含めて複合的に判断され,よりふさわしいものへと転換されて提供されると述べている.川島,陣田ともに技術の定義に当たって主体の「意図」に着目している.同様に,田島(1994)は,原理に基づく看護技術の文節を「基本動作」とし,それらの基本動作を術者が組み立てて「看護技術」となると説明している.一方で陣田は,看護技術には,知識(認知領域),技術(精神運動領域),態度(情意領域)が含まれていると指摘している.
これらを踏まえると,看護技術とは,対象の多様な状況を判断しながら,対象のもつ看護問題の解決という目的にむけて,意図をもって複数の客観的法則に基づく基本技術を統合して提供する行為といえる.すなわち,「看護技術」自体が複合的なものであるといえる.こうした看護技術の構造の複合性が,「看護技術」が示す範囲とレベルについて,多様な見解を生む背景ともいえるであろう.
一方で川島(2003)は,「看護」と「看護でないもの」を分けるものが看護技術であると述べ,看護が社会的に有用な機能として確立するうえで技術論が重要であると指摘している.また加納(1997)は,看護専門職としての成立に,職業的アイデンティと看護技術の明示化が必要であると述べている.これらの論者が示すように,公衆衛生看護活動における技術の体系化は,保健師の専門性をその技術の創造的知識体系から明示化することであるといえる.
そこで全国保健師教育機関協議会教育課程委員会では2017年度から,保健師の技術をその技術の習得に必要な知識とあわせて,明確化することを目的に,親子保健活動における公衆衛生看護技術の体系化を試みてきた.2017年度の検討経過は,本誌第2号で,「平成29年度保健師教育課程委員会事業報告~母子保健活動における技術の体系(中間報告)~」(教育課程委員会,2018)として報告した.その後,パブリックコメント等によって意見を受け精緻化を図った.本報告では,前記の中間報告以降の検討結果を中心に報告する.
また2017年度は,「母子保健活動」として検討を行ってきたが,「公衆衛生看護教育におけるモデル・コア・カリキュラム」(全国保健師教育機関協議会,2018)での表現に準じ,妊娠期をスタートとして子どもを養育する父と母を中心とした家族への保健活動を「親子保健活動」とし,「親子保健活動における公衆衛生看護技術」として整理を行った.ただし,思春期保健については今回の検討からは除外した.
なお本検討では,親子保健活動における公衆衛生看護技術とは,子どもとその家族が地域で健康に生活するために提供される技術であり,専門的知識に基づいた判断および行為とした.行為とは,外部から観察可能な人間や動物の反応を示す「行動」と対比して用いており,ある意思をもった行いや哲学であり,目的観念を伴う動機があり,思慮・選択によって意識的に行われる行動をさしている.すなわち,技術には,行動のみならず,その行動を起こす意図が含まれているものと捉え整理した.
2017年度からの検討の方法は表1のとおりである.検討方法①の分類枠組みは「対象」と「展開過程」の2軸で設定した(表2).「対象」区分は,「公衆衛生看護学教育モデル・コア・カリキュラム(2017)」(全国保健師教育機関協議会,2018)に準じた.また「展開過程」区分は,「情報収集の技術」,「アセスメントの技術」,「支援技術」を設定した.ここでの「アセスメントの技術」は,分析,判断を含む概念として用いた.さらに,対象区分「個人・家族」の「支援技術」では,支援課題の背景要因に応じた下位分類を設定した.これらの「支援技術」の下位分類は,本検討によって収集された現段階での課題への支援技術であり,今後さらに課題が増えていくことを想定している.検討方法②から⑥では公衆衛生看護学教育において用いられているテキストから,親子保健活動における技術の記述について,技術を表現している内容とそれが用いられている場面を抽出し,抽出した記述を分類枠組みに沿って分けた.さらに用いられている場面を踏まえて,抽出した記述の意味内容をもとにコード化し,内容の類似比較によって,小技術項目の抽出と中技術項目への統合を行った.収集したテキストから十分な記述が見いだせない分類枠組みの区分については,雑誌の記事を検索し,技術の抽出を追加した.検討方法①から⑥の詳細は前報を参照されたい.
①委員会メンバーで公衆衛生看護学技術項目の分類枠組みの検討 |
②公衆衛生看護学教育において用いられているテキストから,親子保健活動における技術の記述について,技術を表現している内容とそれが用いられている場面を抽出 |
③用いられている場面を踏まえて,抽出した技術内容の記述の意味内容をもとにコード化 |
④コードについて内容の類似比較を行い,小技術を抽出 |
⑤抽出された小技術項目の意味内容について類似比較を行い中技術項目に統合 |
⑥中技術項目の関連性を検討し,技術項目分類による構造図を作成 |
⑦中技術項目のまとまりからグループ化し,大項目として表現 |
⑧技術項目の体系および技術項目についての確認 |
熟練保健師によるエキスパートのチェック |
全国保健師教育機関協議会 夏季研修でのグループワーク |
全国保健師教育機関協議会会員校及び保健師連絡協議会参加団体(パブリックコメント) |
⑨大項目ごとに技術を習得するために必要とされる理論や概念を検討し,対象別に整理 |
対象 | 展開過程 | 支援課題の要因 | 大項目数 | 中項目数 | ||
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A 個人・家族 | 個人・家族に関する情報収集 | A111 | 子どもと家族に関する情報収集 | 8 | 22 | |
個人・家族に関するアセスメント | A211 | 子どもと家族に関するアセスメント | 6 | 16 | ||
個別支援 | 妊娠期から養育期にある家族への一般的な支援 | A311 | 妊婦とその家族への一般的支援 | 4 | 10 | |
A312 | 養育期(産褥期を含む)の家族への一般的支援 | 5 | 15 | |||
子どもの要因による継続的支援課題をもつ子どもとその家族への支援 | A321 | 成長発達の遅れのある子どもと家族への支援 | 2 | 8 | ||
A322 | 長期療養疾患(医療的ケア児を含む)や障がいをもつ子どもと家族への支援 | 9 | 20 | |||
親の要因による継続的支援課題をもつ子どもとその家族への支援 | A331 | 産後うつ病の親と子どもへの支援 | 3 | 6 | ||
A332 | 若年の親と子どもへの支援 | 4 | 8 | |||
A333 | 精神疾患や精神障がいをもつ親と子どもへの支援 | 5 | 11 | |||
A334 | 在日外国人の親と子どもへの支援 | 3 | 5 | |||
A335 | 配偶者等との間で暴力(リスクを含む)のある親と子どもへの支援 | 5 | 9 | |||
A336 | 子どもへの虐待の問題(リスクを含む)がある親と子どもへの支援 | 7 | 21 | |||
A337 | 遺伝性疾患のリスクをもつ家族への支援 | 2 | 5 | |||
生活困窮など社会・経済的要因による課題をもつ家族への支援 | A341 | 生活困窮など社会・経済的要因による課題をもつ家族への支援 | 5 | 9 | ||
グループ(小集団)を用いた支援 | A411 | 子どもや親のグループ(小集団)を用いた支援 | 5 | 13 | ||
B 生活基盤としての地区/小地域 | 生活基盤としての地区/小地域に関する情報収集・アセスメント | B111 | 生活基盤としての地区/小地域の情報収集・アセスメント(地域診断) | 未抽出 | ||
生活基盤としての地区/小地域を対象とした支援活動 | B211 | 生活基盤としての地区/小地域での子どもと家族を支えるネットワークづくり | 未抽出 | |||
B221 | 生活基盤としての地区/小地域での親子保健に関する活動計画・活動評価 | 未抽出 | ||||
C 地域の住民組織/地域組織 | 地区組織活動に関する情報収集・アセスメント | C111 | 親子保健の推進や子育てを支援する住民組織/地域組織の情報収集・アセスメント | 4 | 10 | |
地区組織活動 | C211 | 親子保健の推進や子育てを支援する地区組織活動 | 7 | 17 | ||
D 地域の制度や仕組みを構築する機能を持つ組織(自治体) | 組織(自治体)に関する情報収集・アセスメント | D111 | 地域の制度や仕組みを構築する機能を持つ組織(自治体)の情報収集・アセスメント(地域診断) | 6 | 17 | |
組織(自治体)を対象とした支援活動 | D211 | 子どもと家族を支える社会資源開発・地域ケアシステムづくり | 7 | 17 | ||
D221 | 親子保健活動の事業化・事業評価 | 8 | 16 | |||
D231 | 親子保健に関する計画や関連施策の計画策定・計画評価 | 9 | 18 |
注1:「アセスメント」には,分析・判断を含むものとした.
注2:今回の技術体系の構成では「B 生活基盤としての地区/小地域」の技術は十分な記述データが得られなかったため,含まれていない.
検討方法⑦では,中技術項目の内容のまとまりからグループ化し,それらをグループ名(大項目)で表現した.次に検討方法⑧で,分類枠組みおよび大項目,中技術項目,小技術項目について,委員会外部の意見聴取を行った.まず全保教夏季研修会にて参加者によるグループワークをとおして意見聴取をするとともに,現場の熟練保健師に内容確認を依頼した.さらに会員校及び保健師連絡協議会参加団体にパブリックコメントを募り,251件の意見が寄せられた.これらの意見に基づき,委員会で検討・修正を行った.検討方法⑨では,整理された技術の習得に必要とされる理論や概念を検討した.
2. 技術名の抽象度の検討小技術名,中技術名の表現は,本検討での技術の定義に基づき,客体(対象)や意図とともに,主体である保健師の判断および行為として表現することを原則とした.その上で,親子保健活動の技術としての特性を示す表現,すなわち技術名から親子保健活動をイメージできる表現とした.なお,分類枠組みと技術名の表現や抽象度については,検討段階ごとに,委員会メンバー間で議論を重ねて決定した.
親子保健活動における公衆衛生看護技術の分類にあたって,技術の関連性を基に構造図を作成した(図1).構造図では,対象区分ごとの技術の関連性を示している.また「個人・家族」を対象とした「展開過程」区分のうち,「情報収集の技術」,「アセスメントの技術」および「支援技術」の「妊娠期から養育期にある家族への一般的な支援」は,支援課題の要因に関わらず対象者に共通して適応される公衆衛生看護技術である.すなわち,「子どもの要因による継続的支援課題をもつ家族への支援」,「親の要因による継続的支援課題をもつ子どもとその家族への支援」,「生活困窮など社会・経済的要因による支援課題をもつ家族への支援」は,一般的な支援技術を基にして重ねて展開する技術である.従って,「個人・家族」を対象とした親子保健活動で,「情報収集の技術」,「アセスメントの技術」についても,初期的対応として行う「情報収集の技術」,「アセスメントの技術」である.それらに基づき判断された支援課題の背景要因に応じたさらなる情報収集やアセスメントは,各支援課題の要因に対する支援技術に含まれるものとした.
母子保健活動における看護技術の構造図
「親子保健活動における公衆衛生看護技術の構造」全般については,前報で概説しているので参照されたい.
2. 親子保健活動における公衆衛生看護技術 1) 技術コード番号の設定抽出された技術には,コード番号をつけた.コード番号のルールは,最初の1桁は対象をアルファベットで示し,次の3桁は展開過程と支援課題の要因,次の2桁は大項目,下2桁を中技術項目とした(図2).例えば,「個人・家族」を対象とした技術コードには「A」を用い,「個人・家族」の情報収集の技術項目は「A111」,アセスメントの技術項目は「A211」とした.「個人・家族」の「展開過程」と「支援課題の要因」には分類枠組みを基に,「A311」から「A341」のコード番号を付した.
親子保健活動における公衆衛生看護技術コード分類
親子保健活動における公衆衛生看護技術について,全体の大項目数・中技術項目技術数は表2に示した通りであった.大項目と中技術項目の一覧を表3-1~表3-3に示す.
親子保健活動における公衆衛生看護技術中技術項目一覧(個人・家族への技術)
(続き)
(続き)
(続き)
親子保健活動における公衆衛生看護技術中技術項目一覧(住民組織/地域組織への技術)
親子保健活動における公衆衛生看護技術中技術項目一覧(制度や仕組みを構築する機能を持つ組織への技術)
(続き)
なお,「生活基盤としての地区/小地域」(以下「小地域」)を対象とした技術については,「小地域」を明確に対象特定した技術の記述がみられず,「地域の制度や仕組みを構築する機能をもつ組織(自治体)」を対象とした技術の中に混在した記述であったため,本検討では技術項目として抽出できなかった.
3. 技術の習得に必要な理論・概念対象区分別に提示した技術に関連する理論と概念を整理した.これらの技術教育において必要とされる理論や概念の検討にあたっては,技術の大項目ごとに理論・概念を検討し,それらを対象別に統合した.ただし,対象区分の「個人・家族」は,内容が多いことから,展開過程の分類をもとに「情報収集・アセスメント」と「支援」に分けて整理した.内容の一部を表4-1,表4-2に示す.
基盤となる概念 | |
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・ヘルスプロモーション ・予防(一次予防,二次予防,三次予防) ・ヘルスリテラシー ・健康の社会的規定要因 ・主観的健康感 ・QOL ・セルフケア ・セルフネグレクト ・アドヴォカシー ・エンパワメント |
・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ,セクシュアル・ヘルス/ライツ ・ワーク・ライフ・バランス ・生命倫理 ・説明責任 ・ケアの公平性 ・権利擁護 ・ソーシャルエクスクルージョン,ソーシャルインクルージョン ・ダイバーシティ ・ノーマライゼーション |
相談・支援全般に関連する概念・手法 | |
・コミュニケーション技術 ・アウトリーチ ・ハイリスクアプローチ ・危機介入 ・パーソナルサポート ・相談面接技術(傾聴,受容,繰り返し,質問,感情への応答,沈黙への対処,観察など) ・リフレーミング ・スクリーニング ・リスクマネジメント ・ケースマネジメント ・セルフマネジメント技法(観察,学習,セルフエフィカシー,セルフコントロール,刺激統制等) ・ソーシャルサポートネットワーク,サポートネットワーク,ソーシャルサポート |
・コンフロンテーション ・リンケージ ・セルフヘルプ,ピア・エデュケーション ・ケアの継続性と連続性 ・モニタリング ・ケースカンファレンス,ネットワークミーティング ・スーパーヴィジョン ・ネットワーク ・パートナーシップ,協働 ・多職種連携(Interprofessional Work: IPW) ・グループダイナミクスグループの種類(サポートグループ,課題グループ) ・ファシリテーション |
家族・親への支援に関連する概念・手法 | |
・家族機能不全,アダルトチルドレン ・家族パラダイム,家族コミュニケーションパターン ・エジンバラ産後うつ病自己評価票(Edinburgh Postnatal Depression Scale: EPDS) ・アタッチメント/ボンディング障害 |
・(日本版PBQ(Postnatal Bonding Questionnaire)) ・(日本版MIBQ(mother-to-Infant Bonding Scal)(「赤ちゃんへの気持ち尺度」)) ・母親役割獲得 ・ネウボラ(フィンランド家族政策・子育て支援プログラム) |
子どもの発達支援に関連したする概念・手法 | |
・発達検査法(日本版デンバー式乳幼児精神発達診断法,津守・稲毛式乳幼児精神発達診断法,遠城式乳幼児精神発達診断法,新版K式発達検査 等) ・心理発達検査法(WPPSI,WISC-III,田中ビネー式知能検査,K-ABC検査 等) |
・療育手法(認知行動療法,行動療法,感覚統合療法,赫々統合行動療法) ・社会的養護パーマネンシーの保障 ・あそびの分類(ビューラー:機能遊び,想像(象徴)遊び,受容遊び,構成遊び,ゲーム遊び) |
相談支援全般に関連する理論 | |
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・ICF(国際生活機能分類) ・支援関係・信頼関係形成のための看護理論(トラベルヴィ看護理論,ペプロ看護理論) ・カウンセリングの理論(ロジャーズの理論,精神分析の理論,認知療法,行動療法 等) ・ソーシャルケースワーク(バイステック:ケースワークの原則,リッチモンド:ソーシャルケースワーク理論) ・生活モデル(ジャーメイン)/社会モデル/医学モデル ・ストレングスモデル(サリーベイ,ラップ) ・コーチング理論 ・保健行動モデル(健康信念モデル,汎理論的モデル(ステージ理論,プロセス理論,決定バランス,自己効力感),計画的行動理論) ・動機づけモデル(動機づけ・衛生理論(ハーズバーグ),欲求階層説(マズロー),x理論,Y理論(マクレガー)) |
・社会学習理論(観察学習,モデリング)(バンデューラ) ・意思決定モデル(パターナリズムモデル(父権主義モデル),シェアードディシジョンモデル(協働的意思決定モデル),インフォームドディシジョンモデル(情報を得た意思決定モデル) ・ソーシャルサポートネットワーク・アプローチ ・倫理的意思決定モデル(10ステップモデル(トンプソン),フライ) ・グループワークモデル(治療モデル〔予防的およびリハビリテーション的アプローチ〕,相互作用モデル〔媒介モデル〕,ヒューマニズム的モデル〔発達アプローチ〕,社会的諸目標モデル〔社会的諸目標アプローチ〕) ・異文化看護(レイニンガー) |
家族・親への支援に関連する理論 | |
・愛着理論(ボルヴィ) ・家族システム理論 ・家族発達理論 ・家族ストレス対処理論 ・家族危機モデル ・家族看護モデル(家族生活機能評価モデル,カルガリー式看護モデル,フリードマン家族看護理論,渡辺式家族看護理論) |
・障害受容モデル(段階モデル,慢性的悲嘆モデル,螺旋型モデル) ・ライフサイクル理論(発達理論)(エリクソン,レヴィンソン) |
子どもの発達支援に関連する概念 | |
・発達理論(認知発達理論(ピアジェ) | ・心理的発達理論(フロイト)) |
本検討は,テキストを中心とした記述内容からの技術の抽出である.そのため,記述されている範囲での体系化という限界を持っている.本検討で,「小地域」を対象とした技術の抽出が困難であった点は,そうした方法論的な限界ゆえである.「小地域」を対象とした公衆衛生看護技術については,実践者からのヒアリング等をとおした実践知の言語化を基にした検討が必要である.
親子保健活動において,看護師や助産師をはじめ,理学療法士や作業療法士,言語療法士,児童福祉領域など多くの専門職種が,妊産婦や子育て家族への支援を展開している.また親子保健活動にとどまらず,超高齢社会の進行を背景に地域包括ケアシステムや共生型社会が推奨され,地域の人々の生活の支援においては,多様な保健医療分野の専門職が協働するインタープロフェッショナルワークが重視されている.先行研究ではインタープロフェッショナルワークの促進要因としては,各専門職種の実践能力に対する相互信頼が重要であることが指摘されている(San Martín-Rodríguez et al., 2005).また,Dahlら(2018)は,小児保健や学校保健サービスにおける保健師と多職種との協働において,対象者に同様に訪問する他の職種との間で,それぞれの専門性の重なる点とともに相違点の相互理解が必要であることを述べている.
これらの実践現場での多職種の連携・協働の重要性の指摘とともに,教育においてもインタープロフェッショナル教育が注目されてきた.加えて高齢化の進展を背景とした専門人材の不足への対応として,キャリアパスの複線化として共通の基礎課程の創設が議論されている.このような共通課程の創設は,人材確保という側面のみならず,共通した学問基盤に基づく専門職種間の相互理解を前提とした連携・協働がより促進されることが期待される.
こうした多職種の連携・協働の前提は,各専門職の専門性を基盤としたパートナーシップである.すなわちそれぞれの専門性が多職種に理解できる形で提示されることが求められる.その点において,専門技術の明示化は,専門職としての責務と機能を発揮するうえで不可欠と考えられる.
人々の健康課題が多次元にわたりさらに深刻化が進む中,健康の格差の解消をめざす公衆衛生看護の専門性を,健康課題領域に応じた保健活動における公衆衛生看護技術の体系として提示する試みは,教育機関,学術団体,保健師職能団体が協働して取り組む重要な課題と考える.
パブリックコメントの実施に際して,会員校の皆様ならびに日本保健師連絡協議会の5団体の皆様からご協力と貴重なご意見をお寄せいただいたことに感謝申し上げます.また,検討経過でご意見をいただいた現場実践者のみなさまにも深謝いたします.