2019 Volume 3 Issue 1 Pages 63-64
内閣府の災害情報によると平成30年度の自然災害は風水害が西日本豪雨を代表として5件,地震が北海道胆振東部地震,大阪北部を震源とした地震など5件,その他火山,雪害等3件と多発している.以前は東海地震のみが注目されていたが,災害は全国的に発生し,保健師教育機関の講義や実習等への影響は避けられず,どの教育機関にとっても対策が求められている.東海,近畿北ブロック,北陸,近畿南ブロックでは,平成30年度の活動方針として「災害時の教育支援体制の整備等,ブロック会員校間の連携強化を図る.」をあげ,自然災害時における教育体制の整備についての研修会を実施した.
研修会は平成30年12月23日(日)ウインクあいちにおいて,平成30年度第2回合同ブロック研修会として開催した.熊本保健科学大学の中村京子氏を講師とし,「熊本地震からの教訓―大学での教育保証と備えの大切さ―」というテーマの講義をふまえて,各校の災害対策に関する現状・課題の共有や,全保教への協力依頼の要望等についてのグループワークを実施した.参加は29校,36名であった.中村先生の講義の主な内容は,被災した環境下で講義・演習・実習等の教育を保証していく大変さと,災害時に学生・教職員・地域の人々のいのちを守るための教育と体制整備の必要性に関するものであった.震災後の災害に備えての取組みとして,全学生1,600人同時の避難誘導訓練として水・電気を止めての宿泊訓練や,災害時に地域で活躍できる減災型リーダーの養成として200人の防災士を育成してきていることなどが報告された.
グループワークでは,参考になる各校での災害の備えとしては,「災害時連絡ツールとしてLINEが一番つながることから,大学全体のシステムとして確立させた.」「災害時の組織的な連絡体系を確立している.分野ごとの動きまで災害対応を想定しており,各教室に災害時のタイムラインを設置している.災害マニュアル(名刺サイズ)を配布している.3日分の備蓄をしている.」「地震が起きたときの実習はどうするか,事前に施設と調整しておくことが必要,日頃の顔の見える関係が,受け入れ体制に影響する.」などが出された.また,教育の質保証として出された案では「授業を映像で保存し,後日eラーニングで単位認定する.他大学への教員の調整,学生の移動などが必要ないので実現可能性が高い.大学のサーバーが復旧したらデータをupしweb上で閲覧できるようにする.」「避難所での活動を実習として読み替える:保健師について,地区診断,健康教育,健康相談を実施.学生による避難所支援を学生の住所地ごとにマッピングし,物理的に近いところで支援活動を実施」などが出されたグループがあった.全保教への依頼としては「実際にコーディネートしてくれる担当者と,講義及び実習指導をお願いしたい.」「実習施設の届出は,実習後でも認めてもらえるよう全保教から要望書を出してほしい.」「ブロックごとに連絡先を明確化し,メーリングリストを作成する.但し,窓口が事務よりも教員の窓口がよい.」「全保教での支援がシステム化しているのであれば,各校として受援体制についてそれを生かしていく方向で体制整備が求められる.」「教授できる分野,科目などマッチングサイトを全保教で設立してはどうか.その際のコーディネート役を全保教で担っていただきたい.」などが出された.また,災害時に被災状況の確認の連絡がいろいろなところから来るが,被災している場合は,全部に答えていくのが難しいため,一つに絞って行ってほしいなどの意見が出された.
2. 研修終了後のアンケート結果アンケート回答者は32名(回収率88.9%)であった.参加のきっかけは,全保教の最新情報を得るためが18人(50%),テーマに関心があったが14人(38.9%),同僚の勧めが7人(19.4%)であった.講義及びグループワークの満足度については,全員が「大変満足」「満足」と回答していた.自由記載では「具体的な内容で,直ちに対応・検討しないといけないと思った.」「避難して終わりでなく,その先のことを考えないといけないと思った.」「実習中の被災は考えてなかったので,対策を考える必要性に気付いた.」などがあった.
災害時の教育支援体制は学生への教育の質保証のため,重要な課題であるが,災害の規模によりブロック会員校として協力可能な内容はまちまちとなる.そのため,マニュアルに何をどこまで上げるとよいかまだまだ検討が必要である.
教育の質保障のために,東海,近畿北ブロック,北陸,近畿南ブロックは,31年度の活動方針として引き続き「災害時の教育支援体制の整備等,ブロック会員校間の連携強化を図る」をあげ,会員校間で検討を継続して行っていく予定である.
担当:深江久代(静岡県立大学)
蒔田寛子(豊橋創造大学)
大野あかね(名古屋医専)
畷 素代(白鳳短期大学)
松本泉美(幾央大学)
前田則子(関西看護医療大学)