2020 Volume 4 Issue 1 Pages 1
2017年創刊の「保健師教育」は,2020年に第4巻が発行されました.保健師教育に焦点化されたオンライン学術定期刊行物は他にはないように思いますので,保健師教育としての実践や,学術としてのコミュニケーションの貴重な場にもなっています.2018年発行の第2巻からは,「研究」と「活動報告」の2種類の査読付きの論文も掲載されています.これまでに,「研究」では実習の教育方法や評価についての論文が掲載され,「活動報告」では,大学院での保健師教育についての論文が掲載されています.それぞれ,保健師教育の最前線の知見や取り組みであり,読み応えのある論文でした.
また,「保健師教育」は,本法人の公式サイトやJ-Stage,医学中央雑誌にも登載され,完全にオープンアクセス化されています.これまでも,Google検索で「保健師教育」と入力すると,本法人の公式ホームページがトップに表示されていましたが,J-Stage上での「保健師教育」のサイトも上位に定着するようになっています.これは,他の保健医療福祉専門職の基礎教育・継続教育に関するオンライン上での情報公開の状況と比較しても先行している状況であり,国内での「保健師教育」や「保健師」の認知度(visibility)の向上にも貢献できていると思います.さらに,国外や国内の多様な国籍の方々への認知度を高める必要性も感じています.日本は人口が減少しており,労働力を外国人の住民の方々にますます頼ることになりますので,すでに多様な言語の課題が生じていますが,少なくとも英語での情報やコンテンツを増やしていくことは必須ではないかと考えます.国際的にみると,保健師(public/community health nurse)という資格が規定されている国は少ないのですが,日本は平均寿命の長い国として男女ともにトップ3であるという実績(厚生労働省,2019)があり,国民の健康的な生活習慣や充実した医療制度の一翼を担う専門職として,予防を重視した実践を展開してきた保健師の価値は高いと思います.さらに,このような実績を背景にした場合,国際的に少数派であることが,むしろ価値を高めることになると思います.
国内での活用方法の話に戻りますが,オンラインジャーナルのプラットフォームが整備されているJ-Stageのサイトは,とても利用しやすくなっています.このサイトの「保健師教育」の「月間アクセス数ランキング」をみると,保健師教育に関心のある方々が何を求めているのかが感じ取れます.2020年1月のランキングでは,自治体保健師のキャリアラダー,公衆衛生看護学教育モデル・コア・カリキュラム,保健師基礎教育,大学院教育に関する報告や論文が多くアクセスされていました.2020年度中には保健師助産師看護師学校養成所指定規則の一部を改正する省令の公布が予定されており,教育機関ではカリキュラム改正についての活発な議論が展開されていることと推察されます.「保健師教育」に加えて,本法人の公式サイトでも,「保健師教育課程のカリキュラム検討に役立つ資料」のページを新設していますので参考になさってください.
本団体が発行するオンライン学術定期刊行物として,情報発信と知の集積のためのしくみが整備されたことにより,今後も継続的に保健師や保健師教育に関する知見が迅速に公開され,アーカイブされていくこととなります.10年後,20年後を見据えて,会員校の皆さまとともに,保健師教育を発展させていきたいと考えております.