Public Health Nursing Education
Online ISSN : 2433-6890
Survey Reports
Steering Committee on the Evaluation of Public Health Nurses’ Education of JAPHNEI: Member School Survey Report on the Evaluation System of Public Health Nurses’ Education
[in Japanese]Naoko NakayamaYuki KanzakiAyako OkochiEmiko SaitoMasae YajimaMikako ArakidaYuka DaiSachiyo Murashima
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2023 Volume 7 Issue 1 Pages 39-45

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I. はじめに

一般社団法人全国保健師教育機関協議会(Japan Association of Public Health Nurse Educational Institutions:JAPHNEI,以下,全保教)は,2021年度に教育評価準備委員会(以下,委員会)を臨時の委員会として設置し,将来的な認証評価の仕組み作りを含めて,保健師教育の評価について検討することとした.委員会では,1年目に保健師教育評価の方向性や性質,望ましい像について検討し(教育評価準備委員会,2022),2年目は,1年目の結果を基盤として会員校を対象とした意向調査を実施した.

意向調査の目的は,会員校の「保健師教育の評価」についての考えや,評価方法等についての意見等を明らかにし,今後の検討のために活用することである.特に保健師教育の評価で目指すものや評価の意義を明確にし,「保健師教育の評価の必要性」と全保教の教育体制委員会で作成した「保健師教育課程の質を保証する評価基準」(教育体制委員会,2017)を参考に,会員校の意向,評価方法,評価内容等を明らかにすることとした.

本稿では,委員会が実施した調査結果の概略を紹介し,全保教における保健師の教育評価の意義や今後の方向性について考察する.

II. 活動結果

1. 調査目的

「保健師教育の評価」について,必要性や評価方法・評価内容や活用方法等,会員校の意向を把握し,今後の検討のために活用することを目的とする.

2. 方法

1)対象:一般社団法人全国保健師教育機関協議会会員校232校の教員

2)方法:Google formを用いた無記名自記式質問紙調査

3)調査内容:

(1)保健師教育の必要性や評価方法に関する考え

必要性,受審する場合の頻度,受審費用,方法とした.

(2)保健師教育の評価で必要な項目について

保健師教育の理念と目的,保健師教育課程の編成,授業科目の配置と授業計画,保健師課程学生の選抜,保健師教育の体制整備,教育内容・指導方法と学生の学習状況,学習・生活支援,保健師としての実践能力習熟度,教育の内部質保証システム,その他自由記載とした.

(3)保健師教育の評価の結果の活用等についての考え

教育内容の評価・特長の明示と改善点の示唆,学内からの保健師教育への評価・関心の向上,学外からの貴校および貴校の保健師教育に対する評価・関心の向上,受審した場合の評価をどのような形で報告してほしいか,評価を受審した証をどのような形で示してほしいかという5項目とした.

(4)保健師教育課程の評価の受審の可能性について

頻度,受審費用,審査方法の3水準の組み合わせについて問い,10項目とした.

4)調査期間:2022年10月11日~2022年11月8日

3. 結果

回収数(率)は106校(45.7%)であった.基本属性については,表1に示す.会員校の所属ブロックは,北海道・東北ブロック11校(10.4%),南関東ブロック23校(21.7%),北関東・甲信越ブロック12校(11.3%),東海・近畿北ブロック22校(20.8%),北陸・近畿南ブロック15校(14.2%),中国・四国ブロック12校(11.3%),九州ブロック11校(10.4%)であった.設置主体別(率)は,国立16校(15.1%),公立15校(14.2%),私立75校(70.8%)であった.教育機関別(率)は,大学院12校(11.3%),大学90校(84.9%),短期大学1校(0.9%),専修学校3校(2.8%)であった.教育課程別(率)は,大学院修士課程11校(10.4%),大学学士課程(選抜制・人数制限あり)79校(74.5%),大学学士課程(選択制・人数制限なし)7校(6.6%),大学学士課程(全員履修)1校(0.9%),専攻科(1年課程)5校(4.7%),専修学校(1年課程)2校(1.9%),専修学校(4年課程)1校(0.9%)であった.なお,専攻科は大学4校,短期大学1校であった.

表1  回答校の基本属性(n=106)
回答校 %
【ブロック】
北海道・東北ブロック 11 10.4
南関東ブロック 23 21.7
北関東・甲信越ブロック 12 11.3
東海・近畿北ブロック 22 20.8
北陸・近畿南ブロック 15 14.2
中国・四国ブロック 12 11.3
九州ブロック 11 10.4
【設置主体別】
国立 16 15.1
公立 15 14.2
私立 75 70.8
【教育機関別】
大学院 12 11.3
大学 90 84.9
短期大学 1 0.9
専修学校 3 2.8
【教育課程の種別】
大学院修士課程 11 10.4
大学学士課程(選抜制・人数制限あり) 79 74.5
大学学士課程(選択制・人数制限なし) 7 6.6
大学学士課程(全員履修) 1 0.9
専攻科(1年課程) 5 4.7
専修学校(1年課程) 2 1.9
専修学校(4年課程) 1 0.9

保健師教育の評価の必要性については,全体では「とても必要である」38校(35.8%),「必要である」46校(43.4%)であった(表2).教育課程別では,「とても必要である」,「必要である」と回答した教育機関は,上乗せ教育課程である,大学院修士課程が10校(90.9%),専攻科(1年課程)と専修学校(1年課程)は7校(100%)であり,大学学士課程(全員履修),大学学士課程(選択制・人数制限なし)と専修学校(4年課程)は,8校(88.9%)大学学士課程(選抜制・人数制限あり)は,59校(74.7%)であった.「あまり必要でない」という回答が7校,大学学士課程(選抜制・人数制限あり)(8.9%)であり,「必要ではない」という回答は0校であった.

表2  評価の必要性(教育課程別)(n=106)
教育課程別 とても必要である 必要である どちらかといえば必要 あまり必要ではない 必要ではない 合計
校数 % 校数 % 校数 % 校数 % 校数 %
大学院修士課程 6 54.5 4 36.4 1 9.1 0 0.0 0 0.0 11
専攻科・専修学校(1年課程) 3 42.9 4 57.1 0 0.0 0 0.0 0 0.0 7
大学学士課程(選抜制・人数制限あり) 26 32.9 33 41.8 13 16.5 7 8.9 0 0.0 79
大学学士課程(選択制・人数制限なし/全員履修),専修学校(4年課程) 3 33.3 5 55.6 1 11.1 0 0.0 0 0.0 9
合計 38 35.8 46 43.3 15 14.2 7 6.6 0 0.0 106

※小数点第二位を四捨五入のため,一部100%とならない.

受審に関する頻度・費用・方法については,表3に示す.受審の頻度については,全体では,「8年」が53校(50.0%),「6年」が44校(41.5%)であった.その他9校(8.5%)として,「わからない」「評価が難しい」といった回答が5件,「4–5年」が2件,「教育課程による」が1件,「JABNEも受審予定で様々な負担から審査は1か所で実施してほしい」が1校の意見があった.

表3  受審に関する頻度・費用・方法(n=106)
回答校 %
【受審する頻度】
8年 53 50.0
6年 44 41.5
その他 9 8.5
【受審する場合の費用】
15万円 65 61.3
30万円 21 19.8
45万円 2 1.9
その他 18 17.0
【受審する場合の方法】
書面+訪問調査 52 49.1
書面+オンライン調査 36 34.0
書面のみ 15 14.2
その他 3 2.8

受審の費用の妥当さについては,全体では,15万円という回答が65校(61.3%),30万円が21校(19.8%),45万円が2校(1.9%)であった.「その他」としては18校(17.0%)の回答があった .「その他」に記載された意見としては,「無料から10万円」が4件,「費用が高いと受審が難しい要因になること」や「安価であるほど受審しやすいが評価側の業務量を考えると妥当な金額とは思えない」などであった.

受審する場合の方法の妥当さについては,全体では,「書面+訪問による調査」が52校(49.1%),「書面+オンラインによる調査」が36校(34.0%),「書面のみ」が15校(14.2%)であった.「その他」としては,3校より,「感染症の流行状況などその時の状況に応じて」,「オンラインのみ」のほか,「判断が難しい」といった意見があった.

保健師教育の評価で必要な項目については,9分野30項目と自由記載から回答を得た(表4表5).保健師教育の理念,目的,目標に関する3項目については,「必要」「とても必要である」との回答が,それぞれ102校(96.2%)と9割以上を占めた.保健師教育課程の編成に関するカリキュラムの編成,工夫についての2項目についても,「必要」「とても必要である」との回答が,103校(97.2%),97校(91.5%)と9割以上を占めた.授業科目の配置,内容の2項目についても,「必要」「とても必要である」との回答が,97校(91.5%),98校(92.5%)と9割以上を占めた.保健師教育の目的に沿ったアドミッションポリシーや履修者の選抜方法については,「必要」「とても必要である」との回答が,それぞれ99校(84.0%),76校(71.7%)であった.

表4  評価内容の必要性について①(n=106)
とても必要 % 必要 % どちらかといえば必要 % あまり必要ではない % 必要ではない % 無回答 % 合計
(1)保健師教育の理念と目的
保健師教育の理念 58 54.7 44 41.5 4 3.8 0 0.0 0 0.0 0 0.0 106
保健師教育の目的 59 55.7 43 40.6 4 3.8 0 0.0 0 0.0 0 0.0 106
保健師教育の目標 56 52.8 46 43.4 4 3.8 0 0.0 0 0.0 0 0.0 106
(2)保健師教育課程の編成
カリキュラムの編成 63 59.4 40 37.7 2 1.9 1 0.9 0 0.0 0 0.0 106
カリキュラムの工夫 52 49.1 45 42.5 6 5.7 3 2.8 0 0.0 0 0.0 106
(3)授業科目の配置と授業計画
授業科目の配置 49 46.2 48 45.3 5 4.7 4 3.8 0 0.0 0 0.0 106
授業科目の内容 54 50.9 44 41.5 7 6.6 1 0.9 0 0.0 0 0.0 106
(4)保健師教育課程学生の選抜
保健師教育の目的に沿ったアドミッションポリシー 44 41.5 45 42.5 11 10.4 3 2.8 1 0.9 2 1.9 106
履修者の選抜方法 40 37.7 36 34.0 21 19.8 5 4.7 2 1.9 2 1.9 106
(5)教育内容・指導方法と学生の学習状況
講義・演習の内容と工夫 52 49.1 46 43.4 7 6.6 1 0.9 0 0.0 0 0.0 106
実習の内容と工夫(家庭訪問,継続実習,地域診断,実習先との連携など) 51 48.1 50 47.2 4 3.8 1 0.9 0 0.0 0 0.0 106
(6)学習・生活支援
学習支援の体制 29 27.4 54 50.9 18 17.0 5 4.7 0 0.0 0 0.0 106
生活支援の体制 15 14.2 46 43.4 36 34.0 7 6.6 2 1.9 0 0.0 106
(7)保健師としての実践能力習熟度
卒業時の到達評価 40 37.7 52 49.1 11 10.4 2 1.9 1 0.9 0 0.0 106
国家試験合格率 48 45.3 45 42.5 9 8.5 3 2.8 1 0.9 0 0.0 106
就職実績 32 30.2 48 45.3 20 18.9 3 2.8 3 2.8 0 0.0 106
卒業生の活躍 22 20.8 49 46.2 29 27.4 5 4.7 1 0.9 0 0.0 106
(8)教育の内部質保証システム
保健師教育に関する自己点検状況 26 24.5 59 55.7 18 17.0 3 2.8 0 0.0 0 0.0 106
FDの実施 28 26.4 54 50.9 21 19.8 3 2.8 0 0.0 0 0.0 106
表5  評価内容の必要性について② つづき(n=106)
とても必要 % 必要 % どちらかといえば必要 % あまり必要ではない % 必要ではない % 合計
(9)保健師教育の体制整備
教育に関する組織(委員会など)の設置状況 28 26.4 48 45.3 23 21.7 5 4.7 2 1.9 106
教員の研究論文数,学会報告数 14 13.2 51 48.1 33 31.1 7 6.6 1 0.9 106
教員の資質(保健師教員としての準備状況など) 38 35.8 51 48.1 15 14.2 2 1.9 0 0.0 106
教員の量(人数・充足状況) 63 59.4 39 36.8 3 2.8 1 0.9 0 0.0 106
実習室の整備 30 28.3 55 51.9 14 13.2 7 6.6 0 0.0 106
環境の整備 37 34.9 52 49.1 12 11.3 4 3.8 1 0.9 106
地域との連携 55 51.9 40 37.7 8 7.5 3 2.8 0 0.0 106
教員と地域が連携して事業を行っていること 28 26.4 45 42.5 29 27.4 3 2.8 1 0.9 106
教員と地域が連携して研究を行っていること 20 18.9 43 40.6 37 34.9 3 2.8 3 2.8 106
教員と地域が連携して教育を行っていること 33 31.1 51 48.1 17 16.0 5 4.7 0 0.0 106
保健師の現任教育へかかわっていること 21 19.8 47 44.3 32 30.2 6 5.7 0 0.0 106

講義・演習の内容と工夫や実習の内容と工夫(家庭訪問,継続実習,地域診断,実習先との連携など)については,「必要」「とても必要である」との回答が,それぞれ98校(92.5%),101校(95.3%)と9割以上の回答を占めた.この他,講義では学生や地域の特性に応じた教育および地域との連携による教育,実習では実習場の数や質,実習地との連携や実習指導者の指導力向上のための取り組みについてなど,評価すべき項目が挙げられた.

学習支援の体制については,「必要」「とても必要である」との回答が83校(78.3%),生活支援の体制については,61校(57.6%)であった.卒業時の到達評価,国家試験合格率,就職実績,卒業生の活躍の4項目について,「必要」「とても必要である」との回答はそれぞれ,92校(86.2%),93校(87.8%),80校(75.5%),71校(67.0%)であり,具体的には卒業生へのキャリア支援や送り出した人材が定着しているかなど,必要な評価項目であるとの回答が得られた.保健師教育に関する自己点検状況やFDの実施の2項目について,「必要」「とても必要である」との回答は,85校(80.2%),82校(77.3%)であった.

教育に関する組織(委員会など)の設置状況,教員の研究論文数・学会報告数,教員の資質(保健師教員としての準備状況など),教員の量(人数・充足状況)については,「必要」「とても必要である」との回答はそれぞれ,76校(71.7%),65校(61.3%),89校(84.0%),102校(96.2%),実習室の整備や環境の整備については,85校(80.2%),89校(84.0%)であり,教員の資質では,教員の現場経験年数や専門領域なども評価に必要ではないかとの自由記載が得られた.

地域との連携や,教員と地域が連携して事業を行っていること,教員と地域が連携して研究を行っていること,教員と地域が連携して教育を行っていること,保健師の現任教育へかかわっていることについてはそれぞれ,95校(89.6%),73校(68.9%),63校(59.4%),84校(79.2%),68校(64.2%)であった.また,教員が行政等の委員会へ参画するなどの政策への関与,ボランティアや地域活動などの社会貢献,学術組織への貢献なども,評価に値する項目として回答が得られた.さらに,評価においては,保健師課程内のことだけでなく,保健師養成課程が大学等の組織にどう貢献しているか,学内や課程間での連携・連動などの視点も必要ではないかとの回答が得られた.

また,その他自由記載として,評価を実施するにあたり,保健師教育の養成校間での格差をなくすために評価は重要である一方,異なる教育課程でも同一項目でよいか,評価基準の示し方や査定の方法,養成校内で保健師課程のみを取り上げて評価する難しさなどの回答が得られた.

保健師教育の評価結果をどのように活用したいかについては,5つの項目に分類した(表6).教育内容の評価・特徴の明示と改善点の示唆として,「教育の改善点の見える化・共有化」については81校(76.4%),「保健師教育の見直し」は80校(75.5%),「改善に向けた方向性の提示」は68校(64.2%),「教員のモチベーションの維持・向上」は66校(62.3%),「優れているところの見える化」は63校(59.4%)であった.

表6  評価をどのように活用したいか(複数回答)
項目 n %
【教育内容の評価・特徴の明示と改善点示唆】(n=106)
教育の改善点の見える化・共有化 81 76.4
保健師教育の見直し 80 75.5
改善に向けた方向性の提示 68 64.2
教員のモチベーションの維持・向上 66 62.3
優れているところの見える化 63 59.4
【学内からの保健師教育への評価・関心の向上】(n=105)
所属する教育機関の管理者へのアピール 75 71.4
教育体制上の改善点の示唆 74 70.5
他領域の教員へのアピール・報告 69 65.7
保健師教育に携わる教員の確保 57 54.3
学内からの保健師教育の評価の向上 45 42.9
【学外からの保健師教育に対する評価・関心の向上】(n=106)
貴校の保健師教育の評価の向上 75 70.8
学生募集におけるアピール 64 60.4
学外からの貴学の評価の向上 63 59.4
保健師教育に携わる教員の確保 55 51.9
特色のある取り組みの顕彰 42 39.6
研修会での報告・事業発表者としての推薦 17 16.0
【評価結果の報告について】(n=106)
評価の詳細についてコメントが記載された結果表があるとよい 89 84.0
レーダーチャートのような結果表があるとよい 74 69.8
全体の段階評価(A・B・Cなど)のような結果表があるとよい 55 51.9
全体の点数評価(100点満点)のような結果表があるとよい 23 21.7
その他 2 1.9
【受審した証の形式について】(n=105)
認証マークのようなデジタルで表記できるものがほしい 88 83.8
一定レベルの評価に達した学校一覧として,全保教のHPに学校名を登載してほしい 59 56.2
表彰楯のような学内に飾れる形のあるものがほしい 20 19.0
その他 4 3.8

学内からの保健師教育への評価・関心の向上として,「所属する教育機関の管理者へのアピール」は75校(71.4%),「教育体制上の改善点の示唆」については,74校(70.5%),「他領域の教員へのアピール・報告」は69校(65.7%),「保健師教育に携わる教員の確保」は57校(54.3%),「学内からの保健師教育の評価の向上」は45校(42.9%)であった.

学外からの貴校および貴校の保健師教育に対する評価・関心の向上として,「貴校の保健師教育の評価の向上」は75校(70.8%),「学生募集におけるアピール」は64校(60.4%),「学外からの貴学の評価の向上」は63校(59.4%),「保健師教育に携わる教員の確保」は55校(51.9%),「特色のある取り組みの顕彰」は42校(39.6%),「研修会での報告・事業発表者としての推薦」は17校(16.0%)であった.

受審した場合の評価結果の報告の仕方については,「評価の詳細についてコメントが記載された結果表があるとよい」は89校(84.0%),「レーダーチャートのような結果表があるとよい」は74校(69.8%),「全体の段階評価(A・B・Cなど)のような結果表があるとよい」は55校(51.9%),「全体の点数評価(100点満点)のような結果表があるとよい」は23校(21.7%),「その他」2校(1.9%)であった.その他としては,「ステレオタイプではない評価を期待したい」「少人数の教員で保健師教育を担当しているため,教員の必要数を明示していただきたい」という意見があった.

評価を受審した証については,「認証マークのようなデジタルで表記できるものがほしい」は88校(83.8%),「一定レベルの評価に達した学校一覧として,全保教のHPに学校名を登載してほしい」は59校(56.2%),「表彰楯のような学内に飾れる形のあるものがほしい」は20校(19.0%),「その他」は4校(3.8%)であった.その他としては,「学生はあまりそのようなものを求めていないように思う」「受審評価の扱いは,自学で示せばよいと思う」のほか必要ないという意見があった.

受審頻度を6年/8年の2段階で,費用を15万円/30万円45万円の3段階で,評価の性質をピアレビュー/認証評価の2段階で10のシミュレーションモデルを作成し,コンジョイント分析 を行った.有効な回答をしていた85件を対象に分析を行った.コンジョイント分析の結果では,ピアソンの相関係数およびケンドールの順位相関係数から,回答者全体がコンジョイントモデルによく一致している傾向があることが示された.また,平均相対重要度から見ると,費用が最も重要度が高く,次いで評価の性質,そして評価年の順で,重要視されている傾向が認められた.シミュレーションモデルについては,モデル2の「受審頻度8年/費用15万円/評価の性質認証評価レベル」が最も高い評価を得られることが予測された(表7).

表7  受審の可能性について(n=85)
受審頻度/費用/評価の性質 受審が可能である % 受審を検討する余地がある % 受審はやや困難である % 受審は困難である % 合計
6年/15万/ピアレビュー 11 12.9 27 31.8 34 40.0 13 15.3 85
8年/15万/認証評価レベル 16 18.8 46 54.1 14 16.5 9 10.6 85
6年/30万/ピアレビュー 4 4.7 14 16.5 31 36.5 36 42.4 85
6年/15万/認証評価レベル 15 17.6 33 38.8 24 28.2 13 15.3 85
6年/45万/認証評価レベル 0 0.0 8 9.4 31 36.5 46 54.1 85
8年/15万/ピアレビュー 13 15.3 38 44.7 18 21.2 16 18.8 85
8年/45万/ピアレビュー 0 0.0 4 4.7 32 37.6 49 57.6 85
8年/30万/認証評価レベル 8 9.4 18 21.2 28 32.9 31 36.5 85
8年/30万/ピアレビュー 5 5.9 16 18.8 28 32.9 36 42.4 85
6年/30万/認証評価レベル 6 7.1 12 14.1 35 41.2 32 37.6 85
平均相対重要度値
受審頻度 10.059
費用 44.863
評価の性質 14.490
相関分析 P
PearsonのR 0.981 <0.001
Kendallのタウ 0.909 0.001
ホールドアウトに対するKendallのタウ –1.000

III. まとめ

1. 保健師教育課程の評価の必要性について

会員校106校(45.7%)から回答を得た.保健師教育課程の評価の必要性については,84校(79.2%)からは,「とても必要である」,「必要である」という回答であり,回答のあった会員校からは,保健師教育課程の評価の必要性が支持された.これまでの議論(教育評価準備委員会,2022)を踏まえ,今回の調査結果から「保健師教育の質保証」のための保健師教育評価の意義を明確にし,そのあり方や具体的な方法,内容について引き続き検討し,実施するための準備や体制を整えることが必要である.

2. 評価内容について

評価内容については,教育体制委員会の作成した評価基準(教育体制委員会,2019)を参考にして,同委員会へ確認しながら,保健師教育課程の評価内容について9項目(30設問と自由記載)を設定した.

「保健師教育の理念と目的」,「保健師教育課程の編成」,「授業科目の配置と授業計画」,「教育内容・指導方法と学生の学習状況」に関する設問については,それぞれで「とても必要である」「必要である」の回答が9割以上であったことより,保健師教育課程の質評価のための基本的な項目になると考えられた.今後,教育体制委員会の作成した評価基準とも併せて評価内容を整えて行く必要がある.

また,「保健師課程学生の選抜」,「保健師教育の体制整備」,「学習・生活支援」,「保健師としての実践能力習熟度」,「教育の内部質保証システム」に関する項目の設問に対しては,「とても必要である」「必要である」への回答の割合が5–8割と差が見られている.回答校の状況や教育課程によって温度差があると思われる.さらに自由記載においても,学部教育に関すること,実習や地域へのかかわりに関することでの評価内容の提案がみられており,これらの内容も含めて,教育課程別にもどのような回答がみられているのか今後詳細について分析し,評価内容として評価項目に反映していくか検討していく必要がある.

3. 評価結果の活用について

評価を受審した場合,それらの結果をどのように活用したいかについて,回答校の7割以上が「活用したい」と回答した項目は,『教育内容の評価・特長の明示と改善点示唆』では,「教育の改善点の見える化・共有化」「保健師教育の見直し」,『学内からの保健師教育への評価・関心の向上』では,「所属する教育機関の管理者へのアピール」「教育体制上の改善点の示唆」,『学外からの保健師教育に対する評価・関心の向上』では,「貴校の保健師教育の評価の向上」であった.これらのことから,本委員会が評価の目的やメリットとしてこれまでに検討してきた,保健師教育の質保証,体制の保証,教育の到達度(教育課程委員会),質保証の基準(教育体制委員会)を踏まえて,まずはこれらをどう活用し動かしていくか,次に中身が見えて改善につながるような評価システムをどのように創り,自己評価や自己点検を基盤として学内教員へのアピールや最終的には大学の広報・宣伝につなげていくかを検討する必要性が示された.

4. 評価受審の可能性と評価体制について

評価受審の可能性について尋ねたところ,頻度としてはできるだけ長く,費用は安く,評価の性質としては認証評価レベルが受審の可能性としては「受審は可能である」ないしは,「受審を検討する余地がある」という回答が見られる傾向であった.評価受審におけるハードルを低くする工夫として,①認定のための申請業務の負担の軽減,②費用負担を抑制,③保健師課程担当の少人数の教員でも対応できる内容・方法等を検討することが本委員会でも提案されており,会員校の意向や教育課程別の回答も分析しながら評価体制を構築していく必要がある.

また,評価方法や体制については,昨年度までの本委員会での活動から,①自己評価・自己点検,②第三者評価,③利害関係者(ステークホルダー)による評価などが示され,全国保健師長会や,日本産業保健師会等と連携を取り,後援を依頼する等,実践現場と連携する必要性も提案されており,保健師教育課程の質の評価に向けて,全保教での教育課程委員会と教育体制委員会の活動を基盤として,成果をつなぎ全保教として継続して検討していく必要性が示された.

謝辞

新型コロナウイルス感染症による影響が継続し,多忙な中,調査にご協力くださった会員校の皆様に心より感謝申し上げます.

文献
 
© 2023 The Japan Association of Public Health Nurse Educational Institutions
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