2023 Volume 7 Issue 1 Pages 60-61
健康危機管理対策委員会は,近年の自然災害の多発や新型コロナウイルス感染症の感染拡大など,健康危機管理に対応できる保健師育成のための臨時委員会として2021年度に発足した.今年度は,活動方針1として,健康危機管理に関する公衆衛生看護技術を明確化し視聴覚教材を作成すること,活動方針2として,災害等発生時に会員校に対し迅速かつ適切な対応を図るため,情報収集,活動の調整と支援,情報発信等を行うことを掲げた.さらに年度途中で日本看護協会からの研究助成を得られたのでその経過を含めて報告する.
感染症の健康危機管理に強い保健師養成に必要な技術を明確化するため,2021年度,国内外の文献・教科書の分析,さらに委員会での検討を経た上で,項目案を作成し,会員校への項目の妥当性に関するアンケート行った.2022年度はアンケートの結果を踏まえて委員会での検討を重ね,最終的に,中項目3項目,小項目10項目,下位項目39項目の「感染症の健康危機管理に強い保健師養成のための卒業時の到達目標」(以下,到達目標)を作成した.
到達目標の報告に関して,①開発プロセスおよび項目の詳細を「保健師教育」の事業報告に報告した.②2022年8月20日に開催された本協議会夏季教員研修の教育体制委員会の分科会にて,③さらに10月10日に開催された秋季教員研修にて鈴木良美委員長が報告した.④2021年度の活動の中で教科書の分析などから「感染症の健康危機管理に関する公衆衛生看護技術」の概念分析を行い,その成果を井口理委員が中心となってまとめ「保健師教育」に研究として投稿した.
2. 視聴覚教材の作成・配布・報告2021年度,感染症および自然災害に関して保健所・保健センター等の協力を得て,現場での対応を撮影した.2022年度は,感染症に関しては前述した到達目標も参照しながら,台本を作成し,映像教材の完成に向けて検討を重ねた.特に学生に学んで欲しい点は,あらかじめ設問を用意し,学生は設問について検討した上で映像を視聴するよう工夫するなど,学生の主体的な学びを促進でき,なおかつ来年度からの健康危機管理の講義・演習に活用しやすい方法を検討しながら作成した.2023年3月に教材を完成し,会員校に配布した.
活動報告として,2023年1月24日に石田千絵副委員長が第2回関東・甲信越ブロック定例会議・研究会にて,「新カリに沿った健康危機管理対策(特に災害対策)に関する教育上の⼯夫」をテーマに視聴覚教材の紹介を行った.
3. 災害に関する情報収集2022年度も災害発生時に会員校に迅速かつ適切な対応を図るための情報収集を継続した.
4. 日本看護協会の研究助成金の獲得と調査の実施2022年7月に日本看護協会の「感染拡大に備える看護提供体制の確保に関する調査研究助成」において,本委員会が提出した研究課題「感染症の健康危機管理に強い保健師育成のための調査研究:保健師学生および新任期保健師の能力向上を目指して」が採択された.本研究は保健師学生および新任期保健師の感染症の健康危機管理に関する能力向上を目指して,①全国の保健師教育機関の教員および学生への質問紙調査,②新任期の保健師を対象にしたインタビュー,③管理期の保健師を対象にしたインタビューを実施予定である.研究期間は2023年10月までである.この事業に関して,2022年度は計画書の作成およびデータ収集を行った.成果は2023年度に報告したい.
5. 保健師教育課程の教員・学生による新型コロナウイルス感染症に関わる保健医療福祉業務の実態調査結果の報告2021年度に実施した健康危機管理に強い保健師養成に必要な技術の妥当性に関するアンケート調査では,同時に保健師教育課程の教員および学生による新型コロナウイルス感染症に関わる保健医療福祉業務従事の実態も調査した.その分析結果を呉珠響委員が中心となってまとめ「保健師教育」の調査報告として報告した.
委員会活動2年目となり,2021年度の成果を踏まえつつ,さらに活動を発展していくことができた.喫緊の課題である健康危機管理に強い保健師養成のために,会員校のニーズに見合った調査および活動をさらに推進していきたい.
日本看護協会の助成事業においては,全国保健師長会副会長の河西あかね様にオブザーバーとして委員会にご出席いただき,貴重なご助言をいただきました.厚くお礼申し上げます.
担当:鈴木良美(東京医科大学)
石田千絵(日本赤十字看護大学)
山下留理子(徳島大学)
井口 理(日本赤十字看護大学)
嶋津多恵子(国際医療福祉大学大学院)
佐藤太地(日本赤十字看護大学)
堀池 諒(大阪医科薬科大学)
呉 珠響(東京医科大学)
奥田博子(国立保健医療科学院)