Article ID: 2324
要 約:神奈川県では1950年前後にクリハラリスCallosciurus erythraeusが定着し、今なお分布拡大が続いている。その起源には諸説あり、飼育個体の逸脱や伊豆大島を経由した導入が挙げられてきたが、未だ明確な結論は得られていない。そこで本研究では、県内における本種の遺伝的集団構造を明らかにし、地理的由来や分散経路を推察することを目的として、鎌倉市と横浜市および横須賀市において駆除された個体のミトコンドリアDNA cytochrome b(cyt b)領域および調節領域の一部(D-loop)のハプロタイプ組成を調べた。解析の結果、検査した214個体すべてが台湾に由来するcyt bハプロタイプを有していた。さらに、得られた各cyt bハプロタイプに対応する38個体を任意に選抜し、台湾内でのデータが充実しているD-loopの配列と比較したところ、東部系統および東部・南部系統の姉妹グループ(以下、姉妹グループ)に加え西部系統の存在が認められた。鎌倉市では東部系統および姉妹グループが混在しており、従来から有力視されてきた伊豆大島経由の導入およびペットとして飼育されていた個体の逸脱を由来とする可能性が改めて支持された。横浜市ではこれら2系統に加えて西部系統が混在し、さらには東部系統および姉妹グループのハプロタイプ組成も異なるため、鎌倉市とは異なるルートで複数回に渡り人為的に個体が持ち込まれた複雑な導入の経緯が推察された。横須賀市に関しては、鎌倉市と同じ2系統が認められたものの、独自のハプロタイプ組成が見られ、これまで記録されていない未知の導入歴が示唆された。神奈川県ではクリハラリスの更なる拡散を防ぐために分布最前線における積極的駆除が求められており、ソースとなる集団の判別や拡大ルートの推定に対して、今回得られた遺伝情報の有効活用が期待される。
Abstract: In Japan, Pallas’s squirrel (Callosciurus erythraeus) is an invasive species that was introduced from its native range in Southeast Asia through human activity. Using liver tissue samples obtained from C. erythraeus specimens collected from 2018 to 2022, we investigated the genetic structure of this invasive species in the cities of Kamakura, Yokohama and Yokosuka in Kanagawa Prefecture, Japan. Genomic DNA was extracted from each individual, and nucleotide sequences of the mitochondrial cytochrome b (cyt b) and D-loop regions were subjected to polymerase chain reaction and direct sequencing analyses. The cyt b sequence (1080 bp) analysis successfully identified 28 haplotypes (from 214 individuals) that were separated into three clades, all of which appear to have originated from Taiwanese populations. We subsequently identified the geographical origin of the three cyt b clades using D-loop sequences for which data were accumulated within their native range. For each cyt b clade, 38 representative individuals were selected and investigated their D-loop sequences (1079–1080 bp). The results showed that these representatives belonged to three native C. erythraeus populations in Taiwan: the eastern and western populations, and a population that was previously described as unknown, but sister to the eastern and southern populations. All haplotypes of this latter group were found in southern Taiwan. We classified all cyt b haplotypes from our sampling area into the three identified lineages and analysed their lineage distribution. In Kamakura, the eastern lineage and its sister group were mixed, suggesting two previously described introduction routes. In one pathway, pets escaped from a private owner in Kamakura prior to World War II; in the second pathway, individuals were introduced onto Izu Oshima, an island off Tokyo, and later transported to a botanical garden in Enoshima, from which they escaped in the 1950s. In Yokohama, the western lineage was intermixed with the eastern group and its sister group. In the eastern group and its sister group in Yokohama, however, haplotype composition was different from those in Kamakura, implying a complicated history of multiple introductions through different routes, other than those detected in Kamakura. Both lineages observed in Kamakura were also detected in Yokosuka; however, singleton haplotypes were more often observed in the latter city than former, suggesting a history of unrecorded introductions into Yokosuka. These findings will be useful for developing an effective control plan and preventing distribution expansions for this invasive mammal species.
クリハラリスCallosciurus erythraeus (Pallas, 1779) はインド東部、ミャンマー、マレー半島とインドシナ半島の一部、中国南東部および台湾にかけて生息する樹上性リスの一種である(Thorington et al. 2012; Tamura 2015)。日本では1930年代に愛玩動物として伊豆大島(東京都)へと持ち込まれたのが最初の記録であり(宇田川 1954)、現在では関東から九州までの幅広い地域で定着が認められている(Tamura 2015; Tamura and Yasuda 2023)。本種は樹木や果樹を食害するのみならず、在来種との競合や病原体の持ち込みが指摘されており(田村 2002; 江口ほか2022; Katahira et al. 2022)、2005年に特定外来生物へ指定されて以降、各地で対策が進められている(Tamura 2015)。
神奈川県では、1950年前後から県の南東部にあたる藤沢市江の島や鎌倉市長谷周辺においてクリハラリスの生息が確認されている(中村 1990; 小野 2001; Tamura and Yasuda 2023)。本県におけるクリハラリスの由来については、個人的な持ち込みなど諸説あるが、聞き取りに基づく情報としては1)戦前に別荘地として利用されていた鎌倉において、ペットとして飼育されていた個体の逸脱や放獣によって野生化し、分布を拡大した、あるいは、2)1950年代に伊豆大島から江の島の植物園へと展示目的で持ち込まれた個体が逃げて江の島内で繁殖し、その後、徐々に広まった、という2ルートが挙げられている(中村 1990; 小野 2001)。他にも第三、第四のルートとして、3)横浜市で1960年代に台湾から持ち込まれた個体が野毛山公園で放し飼いにされていたとする記録や、4)伊豆大島から漁船で持ち込まれた個体が横浜で販売されていたという証言もあり、県内では複数回の導入が示唆されているが(中村 1990)、侵入履歴の詳細やその実態について明確な結論は得られていない。その後、神奈川県では分布拡大が進行し、2002年に西は茅ヶ崎市、東は三浦半島、北は横浜市にまで定着が確認されている(図1; 園田・田村 2003)。現在では本種の分布がさらに拡大しており、今後、県西部の丹沢地域にまで侵入した場合、ニホンリスSciurus lis Temminck, 1844 やムササビPetaurista leucogenys (Temminck, 1827) など在来リス類との生息地重複および競合が危惧される(園田・田村 2003; 日本哺乳類学会 2019 https://www.mammalogy.jp/doc/20190130.pdf, 2023年2月1日確認)。
外来種の起源や導入圧の推定および定着後の分布拡大履歴を知るためには、遺伝解析が有用である(Fitzpatrick et al. 2012; Sherpa and Després 2021)。東アジアおよび東南アジアの樹上性リス類では、ミトコンドリアDNAのcytochrome b領域(cyt b領域)および調整領域の一部(D-loop領域)を対象とした解析が盛んに行われ、原産地における情報が蓄積されてきた。前者のcyt b領域に基づく先行研究では、中国やベトナム、タイなどの大陸部および台湾における近縁種間の系統関係が調査されており(Oshida et al. 2001b; Chang et al. 2011; Oshida et al. 2011, 2013; Hu et al. 2016; Boonkhaw et al. 2017; Salleh et al. 2017; Balakirev and Rozhnov 2019)、後者のD-loop領域を対象とした先行研究では、特に台湾内におけるクリハラリスの遺伝的集団構造が明らかにされている(Oshida et al. 2006)。日本国内においては、D-loop領域の先行研究に基づき(Oshida et al. 2006)、伊豆大島や静岡県および九州地方に定着したクリハラリス集団の遺伝情報が蓄積されてきた(Oshida et al. 2007; Ikeda et al. 2011; Kuramoto et al. 2012; 江口ほか 2023)。
これらの先行研究に倣い、本研究では、神奈川県におけるクリハラリスの地理的由来および遺伝的集団構造を明らかにすることを目的に、駆除個体のcyt b領域およびD-loop領域を分析し、原産地および国内のデータベースと比較した。cyt b領域の塩基配列は、先行研究(Oshida et al. 2001b; Chang et al. 2011; Oshida et al. 2011, 2013; Hu et al. 2016; Boonkhaw et al. 2017; Salleh et al. 2017; Balakirev and Rozhnov 2019)によって、原産地である中国や東南アジアの国々および台湾の広い範囲から報告があるため、まずそれらと比較することで国レベルでの由来推定を行った。その後、cyt b解析で得られたハプロタイプクラスターについてさらに詳しい情報を得るため、Oshida et al.(2006)で台湾における詳細な地域集団の情報が報告されているD-loop領域の塩基配列を用いた。
供試検体
神奈川県鎌倉市、横浜市および横須賀市において、2018年11月から2022年6月の間に被害防除または有害鳥獣対策として捕獲・駆除され、冷凍保管されていたクリハラリス214個体(鎌倉市で捕獲されたオス15個体とメス15個体、横浜市で捕獲されたオス15個体とメス15個体、横須賀市内の27地点で捕獲されたオス77個体とメス77個体)をcyt b領域の解析に用いた(表1)。駆除個体は一時的に冷凍保管された後に、日本獣医生命科学大学保全生物学研究分野へと移送され、そこで解剖された。解剖時に各個体の全長(mm)および体重(g)を測定したのち、肝臓の一部をDNAサンプルとして切り出し、1.5 mLマイクロチューブに入れて冷凍保管した。検体の解剖に際しては、麻布大学動物実験倫理委員会の承認を得た上で実施した(承認番号190701-3)。
横須賀市および周辺地域における捕獲場所は、環境省生物多様性センターが発行する「第6-7回自然環境保全基礎調査植生調査」における「神奈川県」のGISデータ(環境省生物多様性センター http://gis.biodic.go.jp/webgis/sc-025.html?kind=vg67, 2022年11月21日確認)を使用し、協力機関から得た捕獲地点情報と合わせて、QGIS version 3.2.2.0(QGIS Development team 2022)を用いて視覚化した。なお、鎌倉市および横浜市の具体的な捕獲地点については協力機関の意向を考慮し、本稿での明記を控える。
ゲノムDNA抽出-塩基配列解読
DNAの抽出には簡易抽出法であるテイル溶解法を用いた(井伊ほか 2017)。テイル溶解液(ナカライテスク)100 µLとProteinase K(Qiagen)2 µLを添加した1.5 mLマイクロチューブに、切り出した肝臓サンプルの一部を入れ、56℃で1時間インキュベートし溶解した。溶解を確認後、90℃で10分間インキュベートしてProteinase Kを失活させ、高分子キャリアー(Ethachinmate, ニッポン・ジーン)を用いた共沈エタノール沈殿を行い、得られたDNAを20 µLの精製水に溶解した。
抽出DNAをテンプレートとし、cyt b領域とD-loop領域を対象とするPCR増幅に用いた。前者についてはKocher et al.(1989)とOshida et al. (2000) に従ってL14724(5’-GAT ATG AAA AAC CAT CGT TG -3’)と H15910(5’-GAT TTT TGG TTT ACA AGA CCG AG-3’) を、後者についてはOshida et al.(2001a)に従い L15933(5’-CTC TGG TCT TGT AAA CCA AAA ATG-3’)とH637(5’-AGG ACC AAA CCT TTG TGT TTA TG-3’)のプライマーセットを用いた。反応条件はどちらの領域においても、94℃で30秒(熱変性)、50℃で30秒(アニーリング)、72℃で1分(伸長反応)を1サイクルとし、これを35サイクル繰り返した後、さらに最終伸長反応を72℃で7分間行った。ポリメラーゼはTks Gflex DNA Polymerase(Takara Bio Inc.)を用い、溶液組成は試薬に添付されたプロトコルに準じて、25 µLの反応系とした。プライマーの終濃度は0.5 µMとした。その後、アガロースゲル電気泳動法により目的のDNA増幅を確認したのち、市販キット(Wizard® SV Gel and PCR Clean-Up System, Promega社)を用いてPCR産物を精製し、ユーロフィンジェノミクス株式会社に塩基配列解読を委託した。D-loop領域の配列解読には上記のプライマーに加えてインターナルプライマーL-cer(5’-CGG CAC ATA CCC CAT TCA GTC-3’; Oshida et al. 2006)を併せて用いた。
なお、cyt b領域での解析は全個体を対象に行ったが、D-loop領域については、cyt b領域の解析で見つかったハプロタイプクラスターを参考に、各新規ハプロタイプから1~4個体を選び、それらについて解析した。
系統解析
解読されたcyt b領域およびD-loop領域それぞれの配列データは、DNA Data Bank of Japan(DDBJ)、European Molecular Biology Laboratory(EMBL)およびGenBankに登録されているクリハラリスの同領域配列(Oshida et al. 2001b, 2006, 2007; Chang et al. 2011; Ikeda et al. 2011; Oshida et al. 2011, 2013; Hu et al. 2016; Boonkhaw et al. 2017; Salleh et al. 2017; Balakirev and Rozhnov 2019; 付録1, 2参照)に揃えてアライメントした。その後、cyt b領域では最適な塩基置換モデルを探索し、AIC(赤池情報量基準)に基づきHasegawa-Kishino-Yanoモデルを採択し、最尤法により系統樹を推定した。D-loop領域では、遺伝的距離モデルにKimura 2-parameter を採用し近隣結合法により系統樹を推定した。また、外群としてcyt b領域においてはフィンレイソンリスCallosciurus finlaysonii (Horsfield, 1823) の配列を(AB043878; Oshida et al. 2001b)、D-loop領域では中国から報告されたクリハラリスの配列(GU474436; Guo et al. 2011)をそれぞれを用いた。各ノードの信頼性については、ブートストラップ法(1000回)により推定した。配列のアラインメントから系統樹の作成には、ソフトウェアMEGA X(Kumar et al. 2018)を用いた。さらにcyt b領域については、今回観察されたハプロタイプ間の塩基置換レベルや頻度を視覚化するため、PopART(Leigh and Bryant 2015)を用いてTempleton, Crandall and Sing:TCS(Templeton et al. 1992)法によるハプロタイプネットワーク図を作成した(Clement et al. 2002)。
また、今回の調査地におけるcyt bハプロタイプの分布を地図上に可視化し、地域ごとの偏りを検討した。
cyt b領域のハプロタイプ
本領域では1080 bpの配列が解読され、これまで報告のなかったハプロタイプ28個(Ceb1-Ceb28)の存在が認められた(表1; 付録1; アクセッション番号LC769173-LC769200)。既報の配列を含めて作成した系統樹において、28個のハプロタイプは全て台湾を起源とするB0678とB0683およびB0692(Chang et al. 2011)を含むクレードに属しており、中国、ベトナム、タイから報告されたハプロタイプとは別の系統であった(図2)。これによって、本研究で配列を解読した個体のすべてが台湾由来であると強く示唆された。さらに、クレード内で3つのクラスターが認められた:クラスター1(ハプロタイプCeb1・Ceb4・Ceb5・Ceb6・Ceb7・Ceb8・Ceb9・Ceb10・Ceb11・Ceb12・Ceb13・Ceb14・Ceb15・Ceb16)、クラスター2(Ceb2・Ceb17・Ceb18・Ceb19・Ceb20・Ceb21)、クラスター3(Ceb3・Ceb22・Ceb23・Ceb24・Ceb25・Ceb26・Ceb27・Ceb28)。本研究では各クラスターの単系統性を支持するほどの十分なブートストラップ値(クラスター1;68、クラスター2;62、クラスター3;< 60)を得ることはできなかったが、後述のハプロタイプネットワーク(図4)およびD-loop領域の解析結果(図3)と照らし合わせ、3つのクラスターを区別して扱うこととした。解読した神奈川県のクリハラリス集団からは、それぞれクラスター1ではハプロタイプCeb1(144個体, 85.71 %)が、クラスター2ではハプロタイプCeb2(19個体, 70.37 %)が、クラスター3ではハプロタイプCeb3(7個体, 36.84 %)が最も高い出現頻度を示した(表1; 図2)。また、クラスター1には、Oshida et al.(2001b)で報告された伊豆大島の個体および淡路ファームパークで飼育されていた産地不明の個体に加え(ハプロタイプCER1とCER2)、Boonkhaw et al.(2017)で報告されている日本国内で得られた個体の配列(ハプロタイプC2)が含まれていた。クラスター2には、Boonkhaw et al.(2017)で報告されている日本国内で得られた個体の配列(ハプロタイプC3)が、クラスター3には、Chang et al.(2011)で報告されている台湾の個体と(ハプロタイプB0678とB0692)、Boonkhaw et al.(2017)で報告されている日本国内で得られた個体の配列(ハプロタイプC1)がそれぞれ含まれた(図2)。
D-loop領域のハプロタイプ
Oshida et al.(2006)では台湾全域から得たD-loop領域のハプロタイプから4つの地域系統グループ(phylogroup; 西部、北部、南部、東部)を特定し、残る4つのハプロタイプをいずれの地域系統グループにも含まれないハプロタイプとしている。これら4つのハプロタイプは、いずれも台湾の南部地域から得られているが、他の地域系統グループのような明確な単系統性を示さず、東部系統および南部系統よりも起源的な部分に位置している(Oshida et al. 2006)。そこで、本論文ではこれら4つハプロタイプを便宜上1つの由来不明系統として扱い、東部・南部系統の姉妹グループ(以下、姉妹グループ);Sister group of Eastern and Southernと呼ぶこととする。
当該領域の解析では、cyt b領域で確認された新規ハプロタイプそれぞれから1~4個体を選定した:クラスター1{ハプロタイプCeb1(3個体)・Ceb4(3)・Ceb5(2)・Ceb6(1)・Ceb7(1)・Ceb8(2)・Ceb9(1)・Ceb10(1)・Ceb11(1)・Ceb12(1)・Ceb13(1)・Ceb14(1)・Ceb15(1)・Ceb16(1)}、クラスター2{Ceb2(4)・Ceb17(1)・Ceb18(1)・Ceb19(1)・Ceb20(2)・Ceb21(1)}、クラスター3{Ceb3(1)・Ceb22(1)・Ceb23(1)・Ceb24(1)・Ceb25(1)・Ceb26(1)・Ceb27(1)・Ceb28(1)}。解析の結果、各個体1079 bp ~ 1080 bpのD-loop配列を得た。クラスター1のcyt b領域ハプロタイプは全てOshida et al.(2006)で定義された東部系統と同じ単系統グループに属し、ハプロタイプCeb1、Ceb4、Ceb5、Ceb6、Ceb7、Ceb8、Ceb9、Ceb10、Ceb11、Ceb13、Ceb15、Ceb16を有する個体は、過去に浜松から得られているD-loop領域ハプロタイプCeJ5(Oshida et al. 2007)を有していた(図3)。その他のハプロタイプCeb12、Ceb14は既知のD-loop領域ハプロタイプとは異なる配列を有していたため、Oshida et al.(2007)およびIkeda et al.(2011)にあるハプロタイプ名に準じてCeJ15およびCeJ16と定義した(表1; 付録 2参照; アクセッション番号LC789104-LC789105)。クラスター2のcyt b領域ハプロタイプは全てOshida et al.(2006)における由来不明系統、即ち姉妹グループに識別され、ハプロタイプCeb2、Ceb18、Ceb20 、Ceb21を有する個体は伊豆大島から得られたD-loop領域ハプロタイプCeJ2(Oshida et al. 2007)を有していた(図3)。ハプロタイプCeb17とCeb19については、既知のD-loop領域ハプロタイプとは異なる配列を有していたため、CeJ17とCeJ18の新規ハプロタイプとして定義した(表1; 付録 2参照; アクセッション番号LC789106-LC789107)。クラスター3のcyt b領域ハプロタイプCeb3、Ceb22、Ceb23、Ceb24を有する個体はD-loop領域において同じ配列を有しており(図3)、同クラスターのcyt b領域ハプロタイプCeb25、Ceb26、Ceb27およびCeb28を有する個体とともにそれぞれ台湾の西部系統に識別されたが、すべて既知のD-loop領域ハプロタイプとは異なる配列を有していたため、Oshida et al.(2007)およびIkeda et al.(2011)にあるハプロタイプ名の続きとしてCeJ10からCeJ14までの新規ハプロタイプとして定義した(表1; 付録 2参照; アクセッション番号LC769201-LC769205)。以上の結果をもとに、以後、cyt b解析で支持されたクラスター1、2、3を、それぞれ東部系統、姉妹グループ、西部系統に対応するものと看做した。
cyt b領域に基づくハプロタイプネットワークおよびハプロタイプの分布
得られた配列に基づくcyt b領域のハプロタイプネットワークを作成した結果、3つのクラスター、即ち東部系統、姉妹グループ、西部系統は、互いに6以上の塩基置換があり、それぞれ独立していることが確認された(図4)。これによりcyt b領域を対象に推定された系統樹では単系統性が明確に表れなかった西部系統も、十分に独立したグループと看做せることが明らかとなった。
これらcyt b領域の情報を基に神奈川県におけるクリハラリスの地理的な遺伝構造を精査した結果、神奈川県鎌倉市では、東部系統と、姉妹グループとの混在が認められた(図5)。横須賀市では東部系統が優占し、市北部の一部地域では姉妹グループが見られた。横浜市ではこれらの2系統に加えて、西部系統が混在していた。
本研究では、cyt b領域について多くのハプロタイプが検出された。クリハラリスは日本に導入されてから個体数を急速に増やし、神奈川県ではその数が今や10万頭以上にも及ぶと推測されている(Tamura and Yasuda 2023)。このような個体数の増加とともにハプロタイプが多様化したかどうかについては、分子進化の速度を考えると、侵入後の数十年間のうちにこれほどまで分岐したとするのは難しいように思われる。一般的に、侵入初期における外来種の遺伝的多様性は人為的なボトルネックを経験し、その程度は持ち込まれた回数や個体数に依存する(Dlugosch and Parker 2008)。したがって今回観察されたハプロタイプの多さは、侵入初期時における複数回に渡る人為的移入や1回あたりの移入個体数あるいはトータルとして県内に持ち込まれた個体数の多さを反映していると考えられる。
上記のcyt b領域にD-loop領域を照らし合わせた系統解析を通じて、神奈川県に定着したクリハラリスが台湾に起源を持ち、少なくとも3系統からなることも明らかになった。これらの系統は原産地である台湾の地域系統、即ちOshida et al.(2006)で示された東部系統、由来不明系統、西部系統に該当する。「由来不明系統」については、結果の項で述べた通り本論文では便宜的に「東部・南部の姉妹グループ(姉妹グループ)」として扱うこととした。これらのうち、東部系統および姉妹グループはそれぞれ伊豆大島や静岡県および九州などの他地域でも定着が報告されていたが(Oshida et al. 2007; Ikeda et al. 2011)、西部系統については今回初めて国内における存在が認められた。
なお、これら3系統は神奈川県内で明瞭に異なる地理的分布を示していた。調査地間における遺伝的集団構造の違いは、同県におけるクリハラリスの起源として想定される導入ルート、すなわち1)戦前に鎌倉でペットとして飼育されていた個体、2)1950年代に伊豆大島から江の島の植物園に持ち込まれた個体に加え、3)1960年代に横浜の野毛山公園で放し飼いにされていた個体、あるいは4)伊豆大島から漁船で持ち込まれ横浜で販売されていた個体に起因している可能性がある。そこで本稿では、これらの導入ルートが今回得られた3系統とどのように対応するか以下に検討してみる。
まず、神奈川県で初期にクリハラリスが侵入したとされる鎌倉市では(中村 1990; 小野 2001)、東部系統および姉妹グループの混在が明らかとなった。中でも後者の系統において、伊豆大島から報告されているハプロタイプ(CeJ2)と同じ配列を有する個体が認められたことは、上記2)の伊豆大島から江の島への導入ルートを改めて支持するものである(中村 1990; 小野 2001)。前者の東部系統も伊豆大島での定着が認められているが、鎌倉市で見られた東部系統の個体は先行研究において伊豆大島から報告された同系統の個体(CeJ1)とは異なるハプロタイプ(CeJ5・CeJ15・CeJ16)を有していた。Oshida et al.(2007)において解析した伊豆大島の個体は4個体と少数であるため、これら新規ハプロタイプがまだ検出されていないだけの可能性もあるが、2)以外のルートとして、ペット個体の逸脱に由来する1)の導入ルートが考えられる(中村 1990; 小野 2001)。上述した鎌倉市におけるクリハラリスの導入履歴および国内における本種の由来をさらに精査するためにも、伊豆大島の個体を対象とした再調査が望まれる。
横浜市では東部系統および姉妹グループに加えて西部系統の混在が見られたため、鎌倉市とは異なるクリハラリス導入の経緯が示唆される。台湾のクリハラリスが横浜の野毛山公園に直接持ち込まれていたとする過去の記録を踏まえると(中村 1990)、西部系統の起源はこの導入ルート3)に起因している可能性がある。なお、横須賀市では全体に東部系統が優占し北部の一部に姉妹グループが確認された。これまでの記録と各地域の遺伝的集団構造を踏まえて、神奈川県内における時系列的な3系統の侵入過程を推察すると、本研究の調査範囲において最初に侵入したのは、鎌倉市と横浜市に加えて横須賀市すべての調査地で確認された東部系統であると考えられる。この地域系統に次いで、鎌倉市と横浜市および横須賀市北部で見られた姉妹グループが侵入し、最後に横浜市限定で西部系統が侵入したシナリオが考えられる。
既知の導入ルート1)から3)が今回得られた3つの地域系統に対応している可能性に加え、出現頻度の低いマイナーハプロタイプがどの地域系統内にも含まれている状況は、他にも様々なルートを介してクリハラリスが持ち込まれていることを示唆する。すなわち現在把握されているよりも多数回にわたる複雑な導入履歴、あるいは導入時にハプロタイプの異なる複数の個体が持ち込まれた可能性を含めて検討する必要がある。特に横浜市では、鎌倉市や横須賀市の東部系統や姉妹グループでは見られなかったマイナーハプロタイプが存在し、たとえ同系統であっても導入先ごとに異なる経緯やタイミングの導入があったと推察される。残りの導入ルート4)のように、東部系統と姉妹グループからなる伊豆大島から(Oshida et al. 2007)、漁船を通じて個体が持ち込まれていた可能性と合わせて(中村 1990)、複雑な導入の履歴を改めて考慮して良いかもしれない。例えば横須賀市では、2002年以降にクリハラリスの定着が報告され(園田・田村 2003; 日本哺乳類学会 2019 https://www.mammalogy.jp/doc/20190130.pdf, 2023年2月1日確認)、これらの個体は鎌倉方面からの分散に起因するとされてきた(園田・田村 2003)。しかし今回、横須賀市で得られたマイナーハプロタイプは鎌倉市の個体から検出されず、独自の遺伝的組成が認められている。したがって、横須賀市内のクリハラリスは単純に鎌倉市からの分布拡大のみに由来するとは考えにくい。また、これらマイナーハプロタイプの組成は、横浜市の組成とも異なっており、同市から分散してきたとするよりも導入歴がそもそも異なると考える方が矛盾しないように思われる。横須賀市を含む三浦半島でクリハラリスが導入されたとする記録は確認されていないが、もしかしたらこれまで知られていなかった導入が過去に行われていた可能性もある。
本研究の調査地やそれらに隣接する地域は、いまなおクリハラリスの分布拡大が続いているため継続的な調査が必要である。特に横浜市は、神奈川県のクリハラリスにおける現在の分布北限域に該当する(クリハラリス情報ネット http://sakaigawa.eco.coocan.jp/kurihara/kuriharalis_distriburion_a.html, 2023年2月6日確認)。本種がさらに北へと分布を拡大する場合、横浜市に定着している集団がソースとなる可能性があるため、横浜市および周辺地域で散発的に目撃されるクリハラリスの動向を遺伝子型と合わせて注視していく必要がある。なお今回、鎌倉市と同時期にクリハラリスが持ち込まれたとされる江の島集団についてはサンプルを入手しておらず分析できていない。江の島は鎌倉市よりも西に位置し、藤沢市や相模川よりもさらに西側の平塚市および大磯町などで散見される個体のソースとなっている可能性がある。神奈川県西部への分布拡大を理解するうえでも江の島集団を対象とした調査も望まれる。
神奈川県に定着したクリハラリスに対しては、本種が在来リス類や在来生態系に与える影響への危惧から、より一層の対策が必要とされている(日本哺乳類学会 2019 https://www.mammalogy.jp/doc/20190130.pdf, 2023年2月1日確認)。本種の更なる分布拡大を防ぐためには、特に分布の最前線で見られる個体の積極的な駆除が求められる(田村・宮本 2005)。本研究で明らかにした3系統の地理的分布をベースとして、分布の最前線で駆除される個体の遺伝情報と照らし合わせれば、分散ルートの特定や分布拡大に寄与している集団を判別できるかもしれない。最近では、行政や教育機関、博物館および自然保護NPOが協同してネットワークを立ち上げ(クリハラリス情報ネット http://sakaigawa.eco.coocan.jp/kurihara/kuriharalis_TP.html, 2023年2月6日確認)、神奈川県内におけるクリハラリスの生息調査や分布の最前線における駆除活動が進められつつある。こうした地域主導の駆除活動と協同し、駆除すべき集団の選定や分布拡大を防ぐための防衛ライン設定など包括的な取り組みへ本研究の成果が有効活用できると期待される。
本研究で使用した検体は、鎌倉市、横浜市、横須賀市、NPO法人三浦半島生物多様性保全、有限会社ゼフィルス、国立研究開発法人森林総合研究所多摩森林科学園の田村典子氏に提供して頂いた。解剖に際し、日本獣医生命科学大学保全生物学研究分野および麻布大学環境生物学研究室の皆さまにご協力頂いた。また、2名の査読者および編集者の方には、原稿の改善にあたり大変有益なご意見とご指導を頂いた。ここに深く御礼申し上げる。
付録1 表1.本研究で用いたミトコンドリアDNA cytochrome b領域におけるハプロタイプリスト。Ceb1-Ceb28は本研究で得られたハプロタイプ。Accession NumberはDDBJ/EMBL/GenBankへのアクセス番号を示す。
Appendix 1
Table 1. List of mitochondrial DNA cytochrome b region haplotypes used in this study. Ceb1–Ceb28 were obtained in this study. Accession numbers refer to the DNA Data Bank of Japan (DDBJ)/European Molecular Biology Laboratory (EMBL)/GenBank database.
付録2 表2.本研究で用いたミトコンドリアDNA D-loop領域におけるハプロタイプリスト。CeJ10-Ceb18は本研究から得られたハプロタイプ。Accession NumberはDDBJ/EMBL/GenBankへのアクセス番号を示す。
Appendix 2
Table 2. List of mitochondrial DNA D-loop region haplotypes used in this study. CeJ10–CeJ18 were obtained in this study. Accession numbers refer to the DDBJ/EMBL/GenBank database.
表1.本研究で使用したクリハラリスの捕獲地およびハプロタイプデータ。Table 1. List of collection sites and haplotype data for Callosciurus erythraeus specimens in this study.
Area | Site | Latitude, Longitude | Sex | Number of examined | cyt b haplotypes | D-loop haplotypes |
---|---|---|---|---|---|---|
Kamakura | 1_Kamakura | – | M | 15 | Ceb1 (8), Ceb2 (7) | – |
F | 15 | Ceb1 (9), Ceb2 (5), Ceb17 (1) | CeJ17 (1) | |||
Yokohama | 2_Yokohama | – | M | 15 | Ceb1 (2), Ceb2 (1), Ceb3 (3), Ceb10 (1), Ceb20 (1), Ceb22 (2), Ceb23 (2), Ceb24 (1), Ceb25 (1), Ceb26 (1) | CeJ5 (1), CeJ10 (2), CeJ11 (1), CeJ12 (1) |
F | 15 | Ceb1 (2), Ceb3 (4), Ceb18 (1), Ceb19 (1), Ceb20 (3), Ceb24 (2), Ceb28 (1), Ceb27 (1) | CeJ2 (3), CeJ10 (2), CeJ13 (1), CeJ14 (1), CeJ18 (1) | |||
Yokosuka | 3_Shonanntakatori 3cho-me | (35°18' 21.726", 139°36' 52.8114") | M | 6 | Ceb1 (3), Ceb2 (1), Ce8 (1), Ceb21 (1) | CeJ2 (1), CeJ5 (1) |
F | 5 | Ceb1 (3), Ceb2 (1), Ceb14 (1) | CeJ2 (1), CeJ16 (1) | |||
4_Tauraosakucho | (35°15' 34.6574", 139°40' 18.0950") | M | 2 | Ceb1 (2) | – | |
F | 3 | Ceb1 (2), Ceb2 (1) | CeJ2 (1) | |||
5_Tauraizumicho | (35°16' 52.2948", 139°37' 55.347") | M | 2 | Ceb1 (2) | – | |
F | 3 | Ceb1 (2), Ceb4 (1) | – | |||
6_Yamanakacho | (35°16' 38.3982", 139°38' 17.181") | M | 2 | Ceb1 (1), Ceb9 (1) | CeJ5 (1) | |
F | 3 | Ceb1 (2), Ceb2 (1) | CeJ2 (1) | |||
7_Abekura b | (35°15' 22.179", 139°38' 28.6728") | M | 2 | Ceb5 (1), Ceb12 (1) | CeJ5 (1), CeJ15 (1) | |
F | 2 | Ceb1 (1), Ceb2 (1) | CeJ2 (1) | |||
8_Koyabe 2cho-me | (35°15' 8.0928", 139°39' 34.452") | M | 6 | Ceb1 (6) | – | |
F | 5 | Ceb1 (4), Ceb16 (1) | CeJ5 (1) | |||
9_Sanocho 5cho-me | (35°15' 34.6572", 139°40' 18.0948") | M | 4 | Ceb1 (4) | – | |
F | 1 | Ceb1 (1) | – | |||
10_Uraga 2cho-me | (35°15' 6.1122", 139°42' 16.8336") | M | 5 | Ceb1 (5) | – | |
F | 7 | Ceb1 (7) | CeJ5 (1) | |||
11_Kamoi 4cho-me | (35°15' 18.4788", 139°44' 23.2974") | M | 6 | Ceb1 (6) | – | |
F | 5 | Ceb1 (3), Ceb5 (1), Ceb11 (1) | CeJ5 (3) | |||
12_Nishiuraga 2cho-me | (35°14' 21.4218", 139°43' 5.7792") | M | 5 | Ceb1 (3), Ceb8 (2) | CeJ5 (1) | |
F | 0 | – | – | |||
13_Nobi 5cho-me b | (35°12' 50.1258", 139°42' 12.69") | M | 3 | Ceb1 (3) | – | |
F | 2 | Ceb1 (2) | – | |||
14_Nobi 5cho-me a | (35°12' 58.5504", 139°42' 0.4746") | M | 2 | Ceb1 (2) | – | |
F | 2 | Ceb1 (2) | – | |||
15_Shinnmeicho | (35°13' 12.9468", 139°41' 54.7368") | M | 3 | Ceb1 (2), Ceb7 (1) | CeJ5 (1) | |
F | 2 | Ceb1 (1), Ceb4 (1) | – | |||
16_Nagasawa 1cho-me | (35°12' 31.6686", 139°40' 19.8906") | M | 2 | Ceb1 (1), Ceb4 (1) | CeJ5 (1) | |
F | 3 | Ceb1 (3) | CeJ5 (1) | |||
17_Nagasawa 5cho-me | (35°12' 51.2856", 139°40' 14.5992") | M | 3 | Ceb1 (3) | – | |
F | 2 | Ceb1 (2) | – | |||
18_Tsukui 5cho-me | (35°12' 56.631", 139°39' 27.1404") | M | 2 | Ceb1 (2) | – | |
F | 3 | Ceb1 (2), Ceb4 (1) | – | |||
19_Hayashi 4cho-me | (35°12' 58.6044", 139°38' 26.253") | M | 2 | Ceb1 (2) | – | |
F | 0 | – | – | |||
20_Abekura a | (35°13' 30.0072", 139°39' 35.2398") | M | 0 | – | – | |
F | 1 | Ceb1 (1) | – | |||
21_Oyabe 6cho-me | (35°14' 9.2364", 139°39' 52.812") | M | 3 | Ceb1 (3) | – | |
F | 7 | Ceb1 (7) | – | |||
22_Kinugasamati | (35°14' 32.3838", 139°39' 11.9334") | M | 2 | Ceb1 (1), Ceb4 (1) | – | |
F | 3 | Ceb1 (3) | – | |||
23_Ohtawa 4cho-me | (35°13' 57.6618", 139°38' 30.7824") | M | 3 | Ceb4 (3) | CeJ5 (2) | |
F | 2 | Ceb1 (1), Ceb15 (1) | CeJ5 (1) | |||
24_Nagasaka 5cho-me b | (35°14' 16.1046", 139°38' 0.258") | M | 2 | Ceb1 (2) | – | |
F | 2 | Ceb1 (1), Ceb4 (1) | – | |||
25_Nagasaka 5cho-me a | (35°14' 12.6924", 139°38' 34.0434") | M | 2 | Ceb1 (2) | – | |
F | 2 | Ceb1 (2) | – | |||
26_Ashina 3cho-me | (35°14' 20.4282", 139°37' 34.2948") | M | 2 | Ceb1 (2) | – | |
F | 3 | Ceb1 (3) | – | |||
27_Ashina 2cho-me | (35°14' 20.1624", 139°36' 59.2986") | M | 2 | Ceb1 (1), Ceb13 (1) | CeJ5 (1) | |
F | 4 | Ceb1 (4) | – | |||
28_Akitani 4cho-me | (35°14' 49.4046", 139°36' 58.8708") | M | 2 | Ceb1 (2) | – | |
F | 2 | Ceb1 (1), Ceb4 (1) | – | |||
29_Shounannkokusai 2cho-me | (35°15' 11.9016", 139°36' 58.449") | M | 2 | Ceb1 (1), Ceb6 (1) | CeJ5 (1) | |
F | 3 | Ceb1 (3) | – |
図1.神奈川県におけるクリハラリスの導入履歴。中村(1990);小野(2001);園田・田村(2003)の情報による。丸印は公式な記録が残る導入(飼育)地、三角は生息が確認された地点を表す。a-dの各パネルにおいて、黒色の丸と三角はその年代に新たに導入・生息が確認された地点、灰色の丸と三角はその時期以前に確認された地点を表す。星印は中村(1990)で述べられている横浜港における伊豆大島および台湾からの導入・販売の履歴を示す。Fig. 1. (a–d) Introduction history of Callosciurus erythraeus in Kanagawa Prefecture (after Nakamura, 1980; Ono, 2001; Sonoda and Tamura, 2003). Circles indicate officially documented introduction (rearing) sites; triangles indicate confirmed habitat sites. Within each period, black and grey symbols indicate new and previously recorded events, respectively. Asterisks indicate a history of introduction from Izu Oshima or Taiwan via Yokohama (Nakamura, 1990).
図2.ミトコンドリアDNA cytochrome b領域(1080 bp)の塩基配列情報に基づき推定された最尤法分子系統樹。塩基置換モデルはガンマ分布と不変サイトを考慮したHasegawa-Kishino-Yanoモデルを使用した。ブートストラップ値が60以上ある場合、該当のノード近傍に表示した。本研究で得られたハプロタイプは系統樹内で太字および丸印で示す。Fig. 2. Maximum likelihood molecular phylogenetic tree estimated from mitochondrial DNA cytochrome b (cyt b) region (1080 bp) sequence information. The base substitution model was the Hasegawa–Kishino–Yano model, which assumes a gamma distribution and invariant sites. Numbers adjacent to nodes are bootstrap values > 60. Haplotypes obtained in this study are indicated in bold and circled in the phylogenetic tree.
図3.ミトコンドリアDNA D-loop領域(1079 bp ~ 1080 bp)の塩基配列情報に基づき近隣結合法によって構築された分子系統樹。塩基置換モデルはKimura 2-parameterモデルを使用した。ブートストラップ値が60以上ある場合、該当のノード近傍に表示した。本研究で得られたハプロタイプは系統樹内で太字および丸印で示す。 Fig. 3. Molecular phylogenetic tree constructed from mitochondrial DNA D-loop region (1079–1080 bp) sequence information using the neighbour-joining method. The Kimura two-parameter model was used as the nucleotide substitution model. Numbers adjacent to nodes are bootstrap values > 60. Haplotypes obtained in this study are indicated in bold and circled in the phylogenetic tree.
図4.cyt b領域の遺伝情報を基にTCS法によって推定されたハプロタイプネットワーク。色付きの不定形は台湾における各系統を示す。Fig. 4. Haplotype network inferred by the Templeton, Crandall and Sing (TCS) program based on genetic information from the cyt b region. Different colours indicate lineages of Taiwanese origin.
図5.神奈川県におけるクリハラリスのcytochrome b領域に基づいたハプロタイプの分布。鎌倉市と横浜市および横須賀市の各地点で確認されたハプロタイプの割合を示す。円グラフ内の色は、台湾での系統を示す(青:東部系統、緑:西部系統、黄:姉妹グループ)。Fig. 5. Distribution of Callosciurus erythraeus haplotypes in Kanagawa Prefecture, Japan, based on the cyt b region. The percentages of haplotypes identified in Kamakura, Yokohama and Yokosuka are shown. Lineages of Taiwanese origin: blue, green, and yellow pie chart colours indicate the eastern, western, and sister group lineages (see text for lineage descriptions).