Japanese Journal of Conservation Ecology
Online ISSN : 2424-1431
Print ISSN : 1342-4327
Effects of eco-friendly canal improvements on the distribution and abundance of dragonfly larvae: A citizen-science-based survey in Tama City, Tokyo, Japan
Yasuhito Yamamoto Kazuya Nishida
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Article ID: 2325

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Abstract

要約:多摩川の低平地水田地帯を流れる一ノ宮用水は主に二面・三面コンクリート張り護岸の用排兼用水路である。一部に残存していた未改修区間の護岸崩壊の進行等に伴い、2014年の第1四半期に改修工事が行われたが、生物の生息に配慮した護岸工法として片岸を木杭護岸とし(I-3区間)、隣接する橋下の水底を30cm切り下げた深みが造成された(I-2区間)。これらの上流側に位置する二面コンクリート張り区間(I-4区間)を対象区とし、また下流側に位置する二面コンクリート張り護岸横にキショウブが植栽された区間(I-1区間)を含めて、2014年から2021年にかけて市民参加によるモニタリング調査を実施し、トンボ目幼虫の生息状況と環境条件の推移を記録して工法の効果を検証した。なお、事業直前の2013年11月にも予備的な調査を行っている。調査の結果、全区間を合計すると6科9種の生息が確認された。2014年の改修後の工法間の比較では対象区(I-4区間)と比較して、木杭護岸のI-3区間においては、垂下植物が生育するとともに、シオカラトンボ及びホンサナエ幼虫が他の区間と比べて多く採捕された。また、対象区(I-4区間)と同様に、砂泥が水路床を覆い、沈水植物が繁茂した。深みが造成されたI-2区間では落葉落枝や砂泥が堆積し、緩やかかつ安定した流水環境が保たれるとともに、コオニヤンマ及びコヤマトンボ幼虫が他の区間と比べて多く採捕された。キショウブが植栽されたI-1区間では、ギンヤンマ、アジアイトトンボ及びハグロトンボ幼虫が他の区間と比べて多く採捕された。I-3区間における改修前後の比較では、水路改修前である2013年11月の調査で確認されたのはシオカラトンボ幼虫1種だったのに対し、改修後の同区間において2014年から2021年にかけて実施した調査の結果、5科6種のトンボ目幼虫が確認された。調査を行った各区間において流速、水深、落葉落枝や砂泥の堆積深、植生の繁茂状況は大きく異なっており、既改修区間も含め、これらの多様な水路環境が複合して、トンボ目の種の多様性に関連している可能性があると推察された。こうした推移は、長年調査をしたことによって明らかになった事象であり、継続した調査を行うことの重要性と、そのために市民参加型の調査形態が有効である可能性が示唆された。

Translated Abstract

The Ichinomiya Canal is an irrigation and drainage channel, lined with two- and three-sided concrete revetments, that flows through paddy fields alongside the Tama River in Tokyo, Japan. The progressive collapse of these revetments in various sections of the canal prompted a construction project in early 2014. To enhance biological habitats associated with the canal, various improvements were undertaken, including a timber piling revetment constructed on one bank (section I-3), and lowering of the canal bottom by 30 cm beneath a bridge that spans the canal (section I-2). A preliminary larval survey was conducted in November 2013 (immediately before construction began). Between 2014 and 2021, with the aid of public participation, four canal sections were surveyed to determine the effects of the improvements on dragonfly populations. The target area extended from upstream (section I-4) to a downstream section where Iris pseudacorus L. had been planted along one bank (section I-1); sections I-1 and I-4 had been lined with two-sided concrete revetments during previous repair works. In all sections, we recorded the numbers of each species of dragonfly larvae, as well as various environmental parameters. The surveys identified a total of nine dragonfly species belonging to six families in all sections combined. Comparisons of each section after construction revealed that overhanging plants thrived better in section I-3 than in section I-4, and that Orthetrum albistylum speciosum and Shaogomphus postocularis were more abundant in section I-3 than in the other sections. In sections I-3 and I-4, sand and mud covered the canal bottom and submerged plants thrived; in section I-2, mud and leaf litter covering the bottom maintained a gentle, stable aquatic environment that led to greater abundance of Sieboldius albardae and Macromia amphigena amphigena than in the other sections. Anax parthenope julius, Ischnura asiatica, and Atrocalopteryx atrata were more abundant in section I-1, where Iris pseudacorus L. was planted on one bank, than in the other sections. In section I-3, the larvae of only one species, Orthetrum albistylum speciosum, were observed in November 2013, prior to canal improvement, whereas surveys conducted between 2014 and 2021 recorded six species of dragonfly larvae belonging to five families, following the construction of timber piling revetments. Water flow velocity and depth, litter and mud depth, and vegetation cover differed significantly among the surveyed sections. This environmental diversity along the canal may have a complex relationship with dragonfly species diversity. Our findings demonstrate the effectiveness of continuous monitoring with the aid of public participation.

はじめに

水田地帯は「里地里山」に象徴されるような二次的自然の構成要素として、我が国を含むモンスーンアジア地域特有の生物・生態系の保全に重要であることが指摘されている(守山 1997)。かつて江戸・東京の穀倉地帯であった多摩地域は、戦後、都市化・宅地化が著しく進行したものの(薄井 2000)、同地域には小規模でありながら未整備の水田地帯が残存しており、水田地帯にはドジョウMisgurnus anguillicaudatus、ギンブナCarassius sp.、キンブナCarassius buergeri subsp. 2 、ホトケドジョウLefua echigonia、トウキョウダルマガエルPelophylax porosus porosusなどの特有の生物が生息している(西田・千賀 2004;皆川ほか 2010;山本・千賀 2012;西田 2015)。また、東京都庁の実施したインターネット都政モニタリングアンケートでは、東京の農地に対して「新鮮な農産物の供給場」、「緑や環境を保全する場」としての役割が期待されており、また、回答者の8割以上が「東京に農地が必要と思う」と回答している(東京都 2020)。このような世論を背景に、「都市農業振興基本法」が2015年に施行されるなど、都市における農地の存在意義が法的にも認められている。

以上のような二次的自然としての水田地帯の重要性が認識されたことにより、農業農村において生物の生息に配慮した水路改修が実施されてきているものの(平松ほか 2010;門脇ほか 2017)、効果検証が十分に行われた事例は限られている。また、水路環境の指標生物として魚類が用いられることが多く(例えば、西田ほか 2011)、水生昆虫については松井(2009)や松井・佐藤(2004, 2006)等において議論されているものの、事例は少ない。

水路改修における工法など保全対策の効果の検証では、同一水路における改修前後の比較(before-after)と、保全対策を行わない対照区と各種の保全対策を行った区の比較(control-impact)を組み合わせたbefore-after control-impact形式の調査が推奨されている(Stewart-Oaten et al. 1986)。しかし現実には改修前の調査を十分に行うことは難しい。本調査では改修後における対照区と各種の保全対策を行った区の比較(control-impact)を主とし、改修直前に予備的に調査されたデータ(補足的なbefore-after)も含めた比較を行った。

東京都多摩市では2014年から「市民協働による川の生き物調査」を実施している(多摩市環境部環境政策課 2023)。この取り組みは従来、同市が生物・環境調査会社に業務委託して実施していた市内の水辺の生き物調査を、同市環境政策課、市民団体、地域住民及び専門家等が連携し、市民協働の活動として実施するものである。調査は多摩市内を流れる農業用水路において、水生生物を対象にそれぞれ年1-3回の頻度で実施されている。

本論文では、市民協働による川の生き物調査の活動を紹介するとともに、ハビタットの環境状況を反映する指標生物として適しているとされるトンボ目(李ほか 2001)を対象とし、生き物の生息に配慮して改修された水路区間及び既改修区間における同調査によって得られたトンボ目幼虫の生息状況と環境条件の変化を報告する。

方 法

調査地概要

調査対象とする多摩市を流れる一ノ宮用水は、多摩地域に典型的な主に二面・三面コンクリート張り護岸の用排兼用水路であり、管理は多摩市と地域農家が行っている。当該水路は揚水機により多摩川支流の程久保川から年間を通して取水されているが、夜間に取水を停止するため水位が低下する区間が存在する。本調査区間は、護岸崩壊の進行等に伴い改修工事が必要となった。改修にあたっては、生物の生息に配慮した護岸工事が計画された。残存していた土水路区間約40mについて、左岸側は木杭護岸、右岸側はコンクリート護岸に改修された(図1CのI-3)。木杭護岸は、水生生物が当該区間で可能な限り留まりやすい環境が形成されることを考慮して施工された。トンボ目に関しては、木杭の隙間における抽水植物の生育により、植物等にしがみつく生活型をもつ種の生息場が形成されることが期待された。一方、右岸側は隣接する敷地と水路床との高低差が大きく(図1C)、崩落の危険性があったためコンクリート護岸の施工が採用された。また、水路底の洗堀を懸念して粒径2-3cmの礫が敷かれた。また、当該改修区間の下流に設置された橋の下が30cm切り下げられた(図1CのI-2)。この施工は、段落ちにより水深の大きい緩流域が造られることで、流量が小さいあるいは大きい時も水生生物がその区間に留まれるような配慮として実施された。トンボ目に関しては、緩流域の形成に伴い、砂泥や落葉落枝が蓄積することで、幼虫期にこれらに潜り込んで生活する種の生息場が形成されること及び幼虫越冬する種が定着することが期待された。これらの施工は、2014年1月から3月の間に実施された。また、調査区間では年2回(5月または7月及び10月から11月の間)、多摩市が業者に委託して岸際の草刈りが実施されている。

調査方法

改修前には2013年11月に、改修後には2014年から2021年の間の4月、9月、11月に計21回、多摩市民を主体に調査を行った。調査における参加者数情報を表1に示す。なお、2020年の4月、9月、11月と2021年9月は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で調査を実施できなかった。改修前には改修予定の土水路区間下流側の20m(I-3)において、改修後はI-3に加えて造成された橋下の深み(I-2)、また比較対象として、これら以前に多摩市により改修された隣接区間20m(I-1、I-4)の計4区間(図1)において、調査を実施した。各調査区間の構造的な特徴を表2に示す。I-1及びI-4については、当該水路の他の区間において施工されている2面コンクリート張り及び礫の敷設がなされている。なお、I-1については景観に配慮してキショウブが植栽されており、抽水植物が安定して存在する一方で、I-4には抽水植物がほぼ存在しない。このような抽水植物の有無といった特徴を踏まえて、I-1及びI-4をI-3との比較対象とした。

改修前のトンボ目幼虫の採捕は、I-3において3名により手網(間口30cm、網目2-3mm)を用いて30分間行った。改修後の採捕は、I-1、I-3及びI-4では改修前と同じ規格の手網3名により各区間につき30分間行った。ただし、採捕者の技量の違いが採捕結果に与える影響を小さくするため、10分間隔で採捕者を交代した。I-2は橋下であり暗所かつ作業空間が限られ、また、砂泥等が大量に堆積したことから、他区間と同様の方法で採集することが困難であったため、この区間では、大きさの異なる手網(間口60cm、網目2-3mm)を用いて20分間行った。採捕は1名で行い、6分40秒の間隔で採捕者を交代した。また、いずれの調査区間においても上下流を網で仕切り(網目:上流10mm、下流3mm)、生物の逃避を防いだ。なお、改修後の調査には親子連れが参加することがあった。子供が小学生以下の場合は、親1名・子供1名のペアで採捕を行い、1名での採捕とみなした。採捕したトンボ目幼虫は石田ほか(1988)に従って同定し、種別に個体数を記録後、標本として保存した一部を除き、生きたまま元の場所に放流した。

各調査区間において5m間隔で流路幅を4等分した左岸・中心・右岸の各点における水深、水路床の礫の上に堆積した砂泥や落葉落枝の堆積深をコンベックスにより1mm単位で、6割水深流速を一次元電磁流速計(VE-10、ケネック製)で測定し、また、各調査区間において水面面積に占める沈水植物、抽水植物、垂下植物(護岸等の水上に生息し水面を覆う植物)のそれぞれの被覆率を目視で記録した。10時半から14時の間に、I-2の直上で水温、水質(pH、溶存酸素濃度(DO)、電気伝導度(EC))を測定した。これらの測定には温度テスター(HI 98501 Checktemp、ハンナ インスツルメンツ・ジャパン製)、コンパクトpHメータLAQUAtwin(B-712、堀場アドバンスドテクノ製)、溶存酸素計(PDO-519、FUSO製)、コンパクト電気伝導率計LAQUAtwin(B-771、堀場アドバンスドテクノ製)を使用した。また、毎月から数か月間隔で、取水停止時や降雨時などを除く流量が安定している時にI-2の直上の流路断面を3等分した各断面の面積と中央6割水深を測定し、それらを元に流量を算出した。2017年5月20日から21日には取水停止時の状況を観察した。

市民協働による調査活動

一ノ宮用水の未改修区間の護岸等の老朽化に伴い、2013年に多摩市による同用水の改修工事が計画された際、同市で水辺の活動を行っている市民団体である「よみがえれ、大栗川を楽しむ会」(以降、「楽しむ会」)や、これまで同市の生きもの観察会等を支援してきた筆者らに、多摩市環境政策課から改修工法に関する相談があった。改修前の2013年に市職員1名、市民1名及び筆者1名で調査を実施し、その結果も踏まえて、「楽しむ会」及び筆者らが水生生物の生息しやすい工法として、木杭の護岸、水路床構造への配慮及び橋の下の切り下げを提案した結果、それらの案を盛り込んだ改修工事が実施された。

ちょうど同時期の2014年に、多摩市において「市民協働による川の生き物調査」が計画され、その方法について筆者らに相談があった。筆者らは同用水をこの調査の対象地の一つとして改修後のモニタリング調査を行うことを市や関係する市民団体に提案し、採用された。2014年以降、多摩市主催で「楽しむ会」、「多摩市水辺の楽校運営協議会」、「多摩市民環境会議」の支援の下、筆者らを講師としつつ、市民を主体として継続されている。これらの市民団体は多摩市民を中心に設立されており、多摩市域の河川において多摩市とともに市民等を対象とした生物観察会を共催してきた経験のある団体であるため、生物採捕やその指導の実績がある。一ノ宮用水の調査における役割分担としては、筆者らは採捕の補助、種の同定、環境要因の計測及び結果のとりまとめを行い、多摩市担当職員は採捕道具の準備及び運搬、調査における時間及び安全管理を行った。各市民団体の参加者は、多摩市とともに採捕道具の準備及び運搬を行い、また、調査の際は一般市民とともに採捕を行った。

調査当日は、生物採捕前に環境要因の計測を行った。生物採捕では、開始前に筆者らが調査の目的と手順及び役割分担を参加者に説明した後、I-1、I-3、I-4、I-2の順に1地点ずつ採捕と同定・計数及び記録を実施した。採捕終了後には、筆者らが採捕された生物と水路環境及びその変化について解説した後、質疑応答の時間を設けた。

結 果

水路環境条件の変化

一ノ宮用水の水質環境情報として、計測した5項目の変化を示す(図2)。流量は最大0.053 m3/s(2013年11月)から0.004 m3/s(2021年11月)の間の値を示し、変動はあるものの明確な季節変化は認められなかった(図2a)。また、2017年5月20日から21日に実施した取水停止時の状況観察の結果、取水停止により上流側(I-3、I-4)では夜間から早朝に水路底が露出する箇所が認められたが、I-1及びI-2では一日を通して湛水した状態が保たれており、取水停止時に生物のへい死は認められなかった。水温は最高が26.1℃(2016年9月)、最低が13.8℃(2013年11月)であり、おおむね4月から9月に高く、11月に低いという明瞭な季節性がみられた(図2b)。pH、DO、電気伝導度は季節間に大きな差はなかった(図2c、d、e)。

調査した4地点において計測した水路環境の変化を示す(図3)。改修された区間において砂泥が経年的に堆積し、I-2では改修3年後の2017年4月の時点で、切り下げた深みが砂泥と落葉落枝によってほぼ満載になった。そのため、2017年9月、2018年9月及び2019年11月の採捕調査の終了後に泥上げを実施し、砂泥・落葉落枝が除去されたことにより水深が増加したが(図2a)、翌年4月の調査時には堆積深が約4-16cm増加した(図2b)。なお、上げた泥は一時的に橋上に仮置きし、紛れていた生物は同区間に戻すよう配慮した。流速はI-2において小さい傾向にあった(図2c)。沈水植物の被覆率はI-3では改修前の2013年11月の調査で0%だったのに対し、改修後1年半を過ぎた2015年11月に被覆率が20%を超えるようになった。一方、I-4では2014年9月以降2016年4月にかけて高い値となったが、調査ごとの変動が大きく、近年は減少傾向にある(図2d)。また、2016年11月とその前後で流量が減少し、それに伴い水深や流速が減少した。沈水植物はそのタイミング以降で割合が低下し、一方で2017年以降垂下植物の割合がI-3において一時増加している。全区間を併せた傾向として、沈水植物は、コカナダモElodea nuttallii (Planch.) H.St.John.が大部分であり、一部にアイノコイトモPotamogeton × orientalis Hagstr.、ホザキノフサモMyriophyllum spicatum L.、セキショウモVallisneria asiatica Miki.などが認められた。生息していた抽水植物は、主にミゾソバPolygonum thunborgii Siebold & Zucc.とI-1に植栽されているキショウブIris pseudacorus L.であった。これらの被覆率は9月に高くなるという季節性を示しつつ、経年的には漸増傾向にあった(図2e)。垂下植物の被覆率はI-3において9月に高くなるという季節性を示した。なお、2017年から2019年の9月に、アメリカセンダングサBidens frondosa L.が木杭の間に繁茂したため、垂下植物の割合が上昇したが、本種は外来植物であるため調査時に除去した。なお、キショウブは過去のI-1区間の改修時に植栽されたものである。本種は日本の侵略的外来種ワースト100指定種(日本生態学会 2002)であるとともに、生態系被害防止外来種リストにおいて重点対策外来種として選定されており(環境省・農林水産省2015)、取り扱いには注意を要する。筆者らと市民は多摩市に対し、中嶋・沖(2017)を参考に種子散布抑制に有効な刈り取り時期を提案し、2019年以前には5月に実施されていた刈り取り時期が2020年以降は種子を散布する前の7月に変更された。将来的には在来植物への置き換えが進むように働きかけていきたいと考えている。

トンボ目幼虫の採捕状況

 改修工事後において採捕されたトンボ目幼虫は、トンボ科:シオカラトンボOrthetrum albistylum speciosum、サナエトンボ科:ホンサナエShaogomphus postocularis、ダビドサナエDavidius nanus、ヤマサナエAsiagomphus melaenops、コオニヤンマSieboldius albardae、ヤンマ科:ギンヤンマAnax parthenope julius、イトトンボ科:アジアイトトンボIschnura asiatica、カワトンボ科:ハグロトンボAtrocalopteryx atrata、ヤマトンボ科:コヤマトンボMacromia amphigena amphigenaの計6科9種795個体であった(表3)。その中には2023年版東京都レッドデータブック(東京都環境局 2023)の南多摩地区において、絶滅危惧種として記載されているホンサナエ(Ⅱ類(VU))、ヤマサナエ(Ⅱ類(VU))、コヤマトンボ(準絶滅(NT))が含まれた。

採捕個体数が多かったシオカラトンボ及びホンサナエ幼虫の推移をグラフに示す(図4)。シオカラトンボ幼虫は2019年9月を除くすべての調査で採捕された。また、採捕個体数は調査ごとに大きなばらつきがあり、例年9月に減少する傾向がみられた。区間別にみると、I-3及びI-4で多く採捕された。ただし、I-4においては、2014年9月時をピークに、徐々に減少傾向にある。ホンサナエ幼虫は、2018年以降に増加している傾向がみられ、2021年11月時は採捕数が急増した。区間別にみると、I-2、I-3及びI-4で採捕される傾向にあり、2021年11月時には全区間で採捕された。また、切り下げを行ったI-2において、11月時の調査で採捕数が増加する傾向がみられた。

アジアイトトンボ幼虫は2015年4月以降確認されていないのに対し、ダビドサナエ、ヤマサナエ及びギンヤンマ幼虫は2018年以降の調査において初めて確認された(表3)。また、各種の区間ごとの分布状況(表4)について、シオカラトンボ及びホンサナエ幼虫はI-1からI-4の全ての区間において確認されたが、他のトンボについては、確認されない区間が存在した。コオニヤンマ及びコヤマトンボ幼虫は他の区間に対して、I-2の区間で採捕される割合が高かった。

改修工事を実施したI-3においては、水路改修前である2013年11月の際に確認されたのはシオカラトンボ幼虫1種だったのに対し(表5)、改修後の2014年から2021年にかけて同11月に実施した計7回の採捕調査の結果、5科6種のトンボ目幼虫が確認された(表5)。また、シオカラトンボ、ホンサナエ及びダビドサナエ幼虫の合計採捕数が他の区間と比べて最も多かった(表4)。

考 察

水路の水質環境

水質測定項目のうち、水温、pH、DOは水生生物の生息に大きく影響する項目である(例えば、中島・宮脇 2021)。今回の結果は、多摩川中流域における水質調査結果(渡邉 2015)や多摩川水系の農業用水路での調査結果(西田・千賀 2004;古旗ほか 2020)と比較して、当該水路との間に大きな違いはなく、地域の農業用水路として標準的な水質だと考えられた。

トンボ目幼虫の生息状況について

 調査期間中に6科9種のトンボ目幼虫の生息が確認されたが、これらの種は、安定して採捕されたことから、調査区間に定着し、この場で成長して成虫に変態すると考えられる種(シオカラトンボ、ホンサナエ)と、年ごとの出現が安定せず、また採捕個体数が少ないことから、調査区間に定着しているか不明な種(ダビドサナエ、ヤマサナエ、コオニヤンマ、ギンヤンマ、アジアイトトンボ、ハグロトンボ、コヤマトンボ)に分かれた。また、本調査で確認されたトンボ目をKadoya et al. (2009)の報告に基づいて生息環境別に分類すると、3種の止水性トンボ目(シオカラトンボ、ギンヤンマ、アジアイトトンボ)と6種の流水性トンボ目(ホンサナエ、ダビドサナエ、ヤマサナエ、コオニヤンマ、ハグロトンボ、コヤマトンボ)であった。

 本調査で最も多く採捕されたのはシオカラトンボであった。シオカラトンボは9月頃に採捕数が減少する傾向がみられた。シオカラトンボ成虫は年2世代発生し、幼虫で越冬する(若杉 2012)。岡山県での野原・中村(2015)の調査においても7月から9月にかけてシオカラトンボ幼虫が採捕されなかったという本調査と同じ傾向がみられており、夏に羽化して大多数が成虫となることで、9月の調査時は生活史の中で幼虫が減少する期間だったと考えられる。なお、シオカラトンボは止水性を好むとされているが(久保田 1995)、調査区間の中で流速の大きいI-3及びI-4においても多く採捕された。I-3及びI-4は底面に礫が敷かれているが、その上を泥が表面を覆い、沈水植物が生育する。シオカラトンボ幼虫は砂泥の底質環境に多く生息するとされており(薬王 1990)、護岸がコンクリート化されて隠れる場所の少ない環境においても、これらが本種の生息場となっている可能性がある。こうした底質環境が整っていれば、シオカラトンボの生息は流速にそれほど制限を受けないのかもしれない。また、シオカラトンボは2016年11月に最多数が採捕されたが、それ以降は減少傾向にある。

 ホンサナエも本調査で継続的に採捕された。ホンサナエ幼虫は流れが弱く、約0.5m以下の水深で、泥を含む底質の場所に生息していたという報告があり(竹原ほか 2009)、本区間もそれに似た環境であると思われた。多摩地域におけるホンサナエは一時期激減した後、1990年代より再びみられるようになった(伊藤 1998;喜多 2021)。ただし、 2020年度版東京都レッドリスト(東京都環境保全局 2021)においてNT(2010年版)からVUに危急度が上昇しており、生息環境の破壊と汚染により減少が懸念されている種である。本調査区間においては、2018年以降個体数が上昇傾向にあり、特に2021年の11月調査時では個体数が急増している。本種幼虫は砂泥に潜って生息することから(杉村ほか 1999)、礫の上に堆積した砂泥に生息したと考えられる一方、改修前のI-3では採捕されていない。また、シオカラトンボが近年減少傾向にある一方で、ホンサナエが2017年以降に増加傾向であるが、その原因は不明であり、今後も注視していきたい。

コオニヤンマについては、I-2で多く採捕された。I-2は落葉・落枝や砂泥が堆積しており、コオニヤンマ幼虫のような緩やかな流れを好む潜伏型の扁平な種にとって(小島ほか 2017)、I-2は適した環境であると考えられる。コヤマトンボについてもI-2において多く観察されており、緩やかな流れの中、落葉・落枝や砂泥等の沈積物に紛れ込んで幼虫が生活していると推察される。

 ギンヤンマ、アジアイトトンボ及びハグロトンボ幼虫は水草を利用するしがみつき型の生活様式であり、成体は抽水植物や浮葉植物に産卵する(長田ほか 1997;吉田・小池 2000;板川・一ノ瀬 2018)。これらの種は、本調査区間では抽水植物の被覆率の高かったI-1において多く採捕されており、既往研究と同様の傾向が確認された。

なお、ダビドサナエやギンヤンマといった採捕個体数の少ないトンボ目については、水源である程久保川、または近接する水田から移動してきた幼虫が、造成した深みのあるI-2や各区間の抽水植物や沈水植物等に退避・定着していた可能性もある。

以上の傾向は、夜間に水位が低下する水路の限られた範囲から得られたものであるため、一般的な傾向から外れていた可能性は否定できない。したがって、様々な時空間における調査分析によって検証する必要がある。今後、周辺水域の調査を行うとともに、幼虫の採捕調査と併せて成虫の目視観察も実施することで、より広域かつ詳細な評価をすることが可能になると思われる。

改修の影響及び今後の維持管理活動について

I-2は生物の越冬場を想定して改修にて造成された深みの箇所である。I-2においては、コオニヤンマ及びコヤマトンボ幼虫が他区間に比べて採捕される割合が高かった。また、ホンサナエ幼虫において、本区間で11月に採捕数が増加する傾向がみられた。深みの造成による緩やかかつ安定した流水と、落葉落枝や砂泥などの堆積により、2-4年1世代型であるコオニヤンマとコヤマトンボにとって適した環境となっていることが考えられ、生態系配慮施工による効果が発現していると考えられる。

また、I-3においては、土水路から護岸改修(左岸側:木杭護岸、右岸側:コンクリート護岸)及び底面に礫を敷く改修を行ったが、既改修区間であるI-1及びI-2と同様に、改修2年後には砂泥が水路床のほとんどを覆うとともに、堆積深も経年的に増加した。I-3で改修前に確認されたのはシオカラトンボ幼虫のみであったが、改修後も継続してシオカラトンボ幼虫が確認されるとともに、ホンサナエ等の幼虫も新たに確認されるようになった。シオカラトンボ、ホンサナエ及びダビドサナエ幼虫の合計採捕数が他の区間と比べて最も多かった。こうしたことから、I-3においても、砂泥の堆積等の生息環境が形成される余地のある水路改修であったと評価される。

トンボ目幼虫の生息環境として重要と考えられる抽水植物・沈水植物の被覆度(山野ほか 2002)、落葉落枝や砂泥などの堆積物(森川ほか 2013)は、変動はあるものの、改修された区間(I-2、I-3)において漸増傾向にある。一方で、当該水路における落葉落枝の堆積や抽水植物の過度な繁茂は通水阻害を引き起こし、また、I-2における砂泥や落葉落枝の過度の堆積は生息空間の減少をもたらすことから、草刈りや泥上げなどの定期的な維持管理が多摩市や農家、市民により実施されている。キショウブやアメリカセンダングサのような外来植物に対する管理方針も含め、今後も生物・生態系の保全と農業用水路の機能維持が両立する方法を検討していく必要があり、モニタリングを継続する中で、地域住民等も交えて環境評価や意見交換を定期的に行なっていき、合意形成を図った上で管理をしていくことが重要と考える。

まとめと課題

調査を行った各区間において流速、水深、落葉落枝や砂泥の堆積深、植生の繁茂状況は大きく異なっていた。改修区間であるI-2については、深みの造成に伴う緩やかな流速と落葉落枝等の堆積がみられ、他の区間と比較してコオニヤンマ及びコヤマトンボ幼虫が多く確認された。また、I-3については、木杭護岸の造成に伴い期待していた抽水植物の繁茂はみられなかったが、既改修区間であるI-1及びI-4と同様に、水路床には砂泥が堆積し、沈水植物の増加が認められ、これがシオカラトンボ及びホンサナエ幼虫の個体数増加に関連していると推察された。また、I-1においては、抽水植物が安定して繁茂し、ギンヤンマ、アジアイトトンボ及びハグロトンボ幼虫が多く確認された(図5)。これらのことから、既改修区間も含め、造成した深みと植栽及び水路底に堆積した砂泥や沈水植物が、改修区間における前述のトンボ目幼虫の生息場を形成したと推測された。なお、調査区が少ないため、工法の効果を統計的に検定すること、また、工法を検証するために繰り返しのある大規模な実験を行うことは難しかった。農業用水路におけるトンボ目幼虫に関する研究は少ないことから、本調査結果を参考に調査研究を重ねることで、当該調査で得られた知見の一般性を検証していくことが可能になるものと思われる。

なお、東京都は面積的に狭小な地域であり、高度成長期以降の大規模開発や社会環境の変化に伴い、多くの種において衰亡がみられ、トンボ目においても、全国的に最も貧弱な地域のひとつとされている(東京都環境局 2023)。当該水路が位置する多摩川中流域では、同川本流や支流(伊藤 1998, 2000;石田 1999)、公園内の池(春田・吉田 2018)におけるトンボ目の分布調査は実施されていたものの、農業用水路は対象とされてこなかった。その中で、都市域において改修された農業用水路におけるトンボ目幼虫の出現状況の変化を調査した結果、東京都レッドリスト掲載種が確認され、本水路は当該地域のトンボ目幼虫の生息環境として重要な役割を持っていると考えられた。また、羽化までに複数年を要する流水性のトンボ目には、上流域において産卵し、幼虫が流れ下って下流域で成長・羽化し、成虫は上流域に戻って産卵するという生活環のものも存在する(新井 1989;伊藤 1998)。シオカラトンボやホンサナエについて、幼虫が定着し生育する場として、本水路は機能していると考えられ、流域全体としてみた場合、上流域だけではなく、こうした中下流域の低平地に広がる農業用水路の環境を保全していくことが、地域のトンボ相の個体群維持に貢献すると考えられた。

また、当該水路はシオカラトンボ幼虫の恒常的な生息場となっていることに加え、原因は不明だが、ホンサナエ幼虫も個体数が改修約5年後に増加しており、生息場として機能している可能性がある。こうした推移は、継続して調査した結果、明らかになった事象であり、改修前後の影響評価についても、早急に結果を評価するのではなく、継続した調査を行うことの重要性が改めて示唆された。

本活動が継続している大きな要因として、多摩市環境基本条例に基づいて策定される多摩市みどりと環境基本計画(多摩市役所環境部環境政策課 2012)及び多摩市生物多様性ガイドライン(多摩市役所環境部環境政策課 2017)の中に、市・市民・市民団体等・事業者との協働による取り組みの推進とそのための役割分担が具体的に明記されていることにあると考える。同市にとっても、地域の多様なニーズや課題に対するきめ細やかな施策を具体化して持続的な地域づくりを進めていくためには協働の視点が不可欠とされており、同市環境政策課において、年度が変わって担当者が異動となった場合でも、本案件は業務の一環として引き継がれ、調査への参加及び安全管理等、当初と変わらぬサポートを受けている。また、同一の専門家が本取組における調整役・とりまとめ役として一貫して関わり続けていることも重要だと考えられる。

財政難により国や地方自治体が生物のモニタリング調査を継続あるいは新規に実施することが困難になりつつある一方、市民の身近な自然への関心は年々高まっており、各地で水辺の生き物観察会が実施されている。多摩市では、本論文で紹介した事例以外にも、河川の生物モニタリング調査を兼ねた市民を対象とする生き物観察会が実施されており、市民の参加申し込みが予定定員を超過して抽選になる場合もあるなど、人気を博している。これらの市民活動を生物モニタリング調査として位置づけて実施している事例は未だ少なく、萌芽的であるものの(西田 2016)、近年その報告が増えつつある(例えば、諸澤ほか 2023)。科学的な方法を用いて経年的にデータ収集することができれば、身近な自然の改善のための知見を得るとともに、それに基づいた実践活動を行うことが可能だと考えられる。

謝 辞

本調査を続けるにあたって、多摩市環境政策課の皆様、よみがえれ、大栗川を楽しむ会、多摩市水辺の楽校運営協議会、多摩市民環境会議の会員をはじめとする市民の皆様にご協力いただいた。また、同市下水道課の皆様には一ノ宮用水の維持管理の状況についてご教示いただいた。匿名の査読者2名の方からは原稿の改訂にあたって、有益な助言をいただいた。本研究の一部は、とうきゅう環境財団(現東急財団)の助成(一般研究No.236)を受けて行われた。厚くお礼申し上げる。

データ利用

本論文における調査期間中に各区間で採捕されたトンボ目幼虫の個体数はJ-STAGE Dataから公開されている。

表1.年ごとのイベント実施状況及び参加者数情報  Table 1 Citizen involvement in each year of the survey.

実施回数 延べ参加者数 平均参加者数
2013 1 3 3
2014 3 32 10.7
2015 3 46 15.3
2016 3 40 13.3
2017 3 32 10.7
2018 3 43 14.3
2019 3 34 11.3
2021 2 24 12

表2.調査区間の構造的な特徴  Table 2 Structural features of each of the four canal sections monitored in this study.

調査区間 改修年 水路の構造的な特徴
I-1 2011-2012

コンクリート2面張り、底面に礫を敷設しその後砂泥が堆積、

右岸にキショウブIris pseudacorus L.を植栽

I-2 2014 橋下を30cm程掘り下げて深みを造成、コンクリート3面張り
I-3 2014 左岸:木杭護岸、右岸:コンクリート護岸、底面に礫を敷設しその後砂泥が堆積、(改修前の2013年時点は土水路)
I-4 2008-2009 コンクリート2面張り、底面に礫を敷設しその後砂泥が堆積

表3.工事後において採捕されたトンボ目の幼虫リストと個体数の時系列変化。全4区間の合計を示す。Table 3 Numbers of dragonfly larvae collected in the canal sections following construction.

 和名 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2021 Tolal
  Scientific name 4月 9月 11月 4月 9月 11月 4月 9月 11月 4月 9月 11月 4月 9月 11月 4月 9月 11月 4月 11月
シオカラトンボ 31 13 29 75 49 46 56 13 81 42 5 9 30 23 18 21 0 23 54 9 627
 Orthetrum albistylum speciosum
ホンサナエ 0 2 1 0 0 1 1 0 3 0 0 6 0 12 11 5 11 17 3 57 130
 Shaogomphus postocularis
ダビドサナエ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 1 0 1 4
 Davidius nanus
ヤマサナエ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1
 Asiagomphus melaenops
コオニヤンマ 0 1 0 1 1 1 1 0 1 0 0 4 1 2 0 1 0 0 0 0 14
 Sieboldius albardae
ギンヤンマ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 1 0 2
 Anax parthenope julius
アジアイトトンボ 0 2 0 4 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 6
 Ischnura asiatica
ハグロトンボ 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 3 0 0 0 0 0 1 0 5
 Atrocalopteryx atrata
コヤマトンボ 0 1 0 0 0 1 1 1 0 1 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 6
 Macromia amphigena amphigena

表4.二面コンクリート張り区間(I-4)を対象区(control)とし、生物の生息に配慮した護岸工法(impact)として片岸を木杭護岸とした区間(I-3)、橋下の水底を30cm切り下げた深みを造成した区間(I-2)、二面コンクリート張り護岸横にキショウブを植栽した区間(I-1)における、採捕されたトンボ目の幼虫リストと合計個体数。括弧内は各区間における各種の個体数の割合(%)。工事後であり全区間のデータがそろう2014年4月以降の合計を示す。Table 4 Total species abundance of dragonfly larvae collected in four canal sections with distinct reconstruction treatments: section I-1 (two-sided concrete revetment; Iris pseudacorus L. planted along one bank), section I-2 (canal bottom lowered by 30 cm), section I-3 (timber piling revetment on one bank), and section I-4 (two-sided concrete revetment). All sections were surveyed after construction from April 2014 until 2021 in a control–impact study design, in which sections I-1–3 were thought to improve the biological habitats associated with the canal, and section I-4 was considered a control. The results of all surveys were summed to obtain total numbers for each species per section; numbers in parentheses are percentages of each species in each section.

 和名 I-1 I-2 I-3 I-4
  Scientific name
シオカラトンボ 84 63 311 169
 Orthetrum albistylum speciosum (75.0) (54.8) (85.8) (82.0)
ホンサナエ 18 35 46 31
 Shaogomphus postocularis (16.0) (30.4) (12.7) (15.0)
ダビドサナエ 0 1 2 1
 Davidius nanus (0) (0.9) (0.6) (0.5)
ヤマサナエ 0 0 0 1
 Asiagomphus melaenops (0) (0) (0) (0.5)
コオニヤンマ 0 11 0 3
 Sieboldius albardae (0) (9.5) (0) (1.5)
ギンヤンマ 2 0 0 0
 Anax parthenope julius (1.8) (0) (0) (0)
アジアイトトンボ 5 0 1 0
 Ischnura asiatica (4.5) (0) (0.3) (0)
ハグロトンボ 3 1 1 0
 Atrocalopteryx atrata (2.7) (0.9) (0.3) (0)
コヤマトンボ 0 4 1 1
 Macromia amphigena amphigena (0) (3.5) (0.3) (0.5)
  Total 112 115 362 206

表5.Before-afterデザインによる、工事前(2013年)と工事後(2014-2021年)の11月にI-3区間において採捕されたトンボ目の幼虫リストと個体数。Table 5 Species abundance of dragonfly larvae collected before (2013) and after (2014–2021) construction on section I-3. All data were collected in November.

 和名 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2021 Tolal
  Scientific name

11月

工事前

11月 11月 11月 11月 11月 11月 11月
シオカラトンボ 1 29 46 81 9 18 23 9 216
 Orthetrum albistylum speciosum
ホンサナエ 0 1 1 3 6 11 17 57 96
 Shaogomphus postocularis
ダビドサナエ 0 0 0 0 0 0 1 1 2
 Davidius nanus
コオニヤンマ 0 0 1 1 4 0 0 0 6
 Sieboldius albardae
ギンヤンマ 0 0 0 0 0 1 0 0 1
 Anax parthenope julius
コヤマトンボ 0 0 1 0 0 0 1 0 2
 Macromia amphigena amphigena

図1.調査地(A)と4調査区間(B)の位置。各地点の写真(C)は、I-3(改修前)を除いて2014年9月27日に撮影。I-3(改修前)は2013年11月16日に撮影。図中の片矢印は流向を、両矢印は調査区間を示す。Fig. 1 Locations of (A) the study area and (B) the four canal sections monitored in this study. Black arrows indicate the water flow direction; red arrows indicate the extent of each surveyed section. (C) Photographs of each section taken after construction (September 27, 2014), except for section I-3 taken before construction and shown in the middle left (November 16, 2013).

 

図2.2013年11月から2021年11月にかけての水環境の変化。a:流量、b:水温、c:pH、d:溶存酸素量(DO)、e:電気伝導度(EC)。Fig. 2 Changes in water quality parameters in the canal between November 2013 and November 2021. (a) Discharge; (b) water temperature; (c) pH; (d) dissolved oxygen; (e) electrical conductivity.

 

 

図3.2013年11月から2021年11月にかけての水路環境の変化。a:水深、b:堆積深、c:流速、d:沈水植物被覆率、e:抽水植物被覆率、f:垂下植物被覆率。なお、黒丸はI-2の泥上げ後の値を示している。Fig. 3 Changes in environmental parameters in the four canal sections between November 2013 and November 2021. (a) Water depth; (b) sediment depth; (c) flow velocity; (d) canal bottom surface coverage by submerged plants; (e) surface water coverage by emerged plants; (f) canopy cover. Black circles indicate values for section I-2 after mud removal.

図4.2014年4月から2021年11月にかけてのシオカラトンボ及びホンサナエ幼虫の採捕数の推移。Fig. 4 Changes in the total abundance of Orthetrum albistylum speciosum and Shaogomphus postocularis between April 2014 and November 2021.

  

図5.観察に基づいて推察した一ノ宮用水の構造的な特徴とトンボ目幼虫の生息への効果との関係  Fig. 5 Proposed relationships between the canal’s structural features and species abundance of dragonfly larvae.

References
 
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