Official Journal of the Japan Association of Endocrine Surgeons and the Japanese Society of Thyroid Surgery
Online ISSN : 2758-8777
Print ISSN : 2186-9545
Prognostic factors after radioisotope therapy in patients with differentiated thyroid cancer
Tatsuya Higashi
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2013 Volume 30 Issue 1 Pages 23-25

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抄録

甲状腺分化癌に対するアイソトープ治療の有用性はすでに確立され,予後因子としての解析も数多く報告されている。我が国でも2010年版甲状腺腫瘍診療ガイドラインが出版されたが,直前の2009年に米国甲状腺協会(American Thyroid Association/ ATA)の甲状腺癌診療ガイドライン改訂版も出版され,我が国のガイドラインには反映されていない新知見が掲載されている。本稿では甲状腺分化癌アイソトープ治療後の予後において,アブレーションに関連する予後因子,転移癌に関する予後因子,FDG-PETに関する予後因子の解析などを取りまとめて,2009年以降を中心とする文献的な検索結果として報告する。

はじめに

Mazzaferriらの論文以来,甲状腺分化癌に対する放射性ヨードI-131を用いたアイソトープ治療(RIT)は遠隔転移のない症例の再発や癌死に関与する独立予後因子とされ,ハイリスク群でも局所再発,遠隔転移,癌死の低下が期待されている[]。本特集の狙いに沿って,2010年版甲状腺腫瘍診療ガイドライン[]以後の最新の報告を紹介する。

アブレーション

我が国でも平成22年1,110MBq(low dose)外来アブレーション,平成24年リコンビナントTSH(rhTSH)製剤を用いたアブレーション準備法が保険適応となった。昨年にはNew England Journal からrhTSHと従来法,low doseとhigh doseの大規模ランダマイズ試験の報告が出た[,]。rhSTHとlow doseを組み合わせても良好なアブレーション完遂率が得られるとの結果であり,我が国でもlow dose外来アブレーションのさらなる普及が望まれる。

リスク分類は数多くあるものの優劣はつけがたいが,2009年にATAの甲状腺癌診療ガイドライン改訂版が出版され,再発に対するリスク分類が示された[]。TNM分類が死亡に対するリスク分類であるのに対し,このATAリスク分類は再発に対するもので,アブレーションなどの初回治療結果も加味して再評価可能なことが特徴である。中間リスク群はmicroな被膜外浸潤,頸部リンパ節転移ないしアブレーション時の甲状腺床外のI-131集積,高悪性度の組織型の4因子,高リスク群はmacroな被膜外浸潤,非完全切除,遠隔転移,治療後サイログロブリン(Tg)高値の4因子である。このリスク分類を用いた後顧的研究では再発率に有意差があったとされる[]。RIT後の予後因子として重要な提案であろう。Tg高値や低リスク群の定義の問題や,また低リスク群のRIT不要論もあり[1012],さらなる評価を待ちたい。

われわれは被膜外浸潤・転移のある分化癌術後RIT例の予後を解析し,全摘術後の初回RITまでの期間が180日を超えると経過中の死亡率が4倍以上上昇することを報告した[13]。多変量解析で有意な予後因子はその他に年齢(45歳以上),初回RITでのI-131集積,骨転移以上の転移の有無であった。全摘術後迅速なRITを行うことが良好な予後につながることが示唆された。

転移・再発症例

転移症例に対するRIT後の予後因子の解析も散見される。初発時および経過観察中の骨転移症例においてRITは単変量解析で最も良い治療法で,「転移骨病変の切除+RIT」が最も良い予後因子との報告がある[14]。同様に骨転移症例で,単発骨転移,骨以外に遠隔転移がないこと,転移骨病変の切除+RITが多変量解析上有意な予後因子との報告もある[15]。一方,Itoらの報告では初発時遠隔転移症例においてRITでの集積の有無は予後に影響せず[16],多変量解析では年齢(55歳以上),腫瘍径4cm以上,massiveな被膜外浸潤が有意な予後因子だった。また術後経過中の遠隔転移出現例においてRITは若年者で集積を示した場合には有効だが,全例の検討では予後因子は年齢(55歳以上),massiveな被膜外浸潤のみだった[17]。

遠隔転移症例においてRIT後の5年生存をrhTSHと従来法で比較検討した報告があり,準備法の違いは予後の差に繋がらないとしている[18]。我が国でもrhTSHを用いた転移症例へのRIT準備法の早期承認が望まれる。

再発症例での因子の検討は当誌の拙著をご覧頂きたい[19]。

FDG―PET

FDG集積とI-131集積が相補的とする報告以来[20],FDG集積を甲状腺癌の予後因子とする報告は散見される。近年も転移腫瘍へのFDG集積を予後因子とする報告がある[21]。

ATAガイドライン改訂版ではFDG-PETの予後因子としての有用性は依然不明としているが,遠隔転移への高集積は疾患特異的死亡のリスク因子であり,持続的な病変が治療量のI-131投与で集積を示さない場合FDG-PET/CTが推奨されている[]。I-131集積陰性の場合には積極的にFDG-PET/CTを用いるべきであろう(図1)。

図 1 .

60歳代男性,肺転移例

初発は20歳代で甲状腺全摘,乳頭腺癌で肺転移ありと診断されたが,治療は自己中断した。その後多発肺結節を指摘され,60歳代で初回RITを受けた。初回は良好なI-131集積を認めた(プラナー像の上半身前面像a)。その後半年おきに2回のRIT施行もI-131集積は減少傾向を示した(同b)。退院後半月のFDG-PETで縦隔,鎖骨上窩や腹部傍大動脈領域に強い集積を示した(冠状断像正面c)直後に気管支内転移腫瘍から大量喀血し死亡された。

おわりに

RIT治療病室の不足は解消されていないが,外来アブレーションがさらに普及し,全国的な長期入院待ちが少しでも改善されることを期待したい。

【文 献】
 

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