Official Journal of the Japan Association of Endocrine Surgeons and the Japanese Society of Thyroid Surgery
Online ISSN : 2758-8777
Print ISSN : 2186-9545
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2014 Volume 31 Issue 2 Pages 98

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抄録

甲状腺腫瘍の術前診断では,他臓器では必須の組織診の代わりに,穿刺吸引細胞診が行われる。甲状腺の細胞診は超音波ガイド下に行われ,微小腫瘍も的確に穿刺が可能なため,臨床的に高い正診率が求められる。しかし,甲状腺細胞診の正診率(感度,特異度)は,施設間や診断医間でのバラツキが大きい。その原因として,甲状腺腫瘍の組織・細胞学的特徴とともに,甲状腺細胞診の報告様式や標本作成上の問題などがあげられる。具体的には以下の点があげられる。1)甲状腺細胞診の報告様式に対するコンセンサス形成が世界的に十分でなかった。国内の細胞診報告様式としては,パパニコロウ協会ガイドラインを修正した甲状腺癌取扱い規約(第6版)の判定区分が推奨されていたが,必ずしも統一して使われていなかった。結果として2)濾胞性腫瘍の細胞診での良悪性判定は不可能とされ,甲状腺腫瘍診療ガイドラインでは推奨グレードはC3(エビデンスはなく,診療で利用・実践しないことを勧める)となっている。3)甲状腺のFNA標本は,大量の血液が混入や吹きつけ手技の良否などにより不適正な標本になり易く,また,免疫染色や遺伝子学的な分子病理学的検索には必ずしも適さない。これらの点を解決すべく,甲状腺細胞診の新たな報告様式として甲状腺のベセスダシステムが提案されている。ベセスダシステムは,米国のNIHで開発された甲状腺腫瘍に特化した報告様式で,濾胞性腫瘍は別区分とすることにより1)の問題解決がなされている。今年,改訂が予定されている第7版の甲状腺がん取扱い規約では,ベセスダシステムが細胞診の報告様式として採用される方向にある。また,新しい細胞診標本の作成法として液状化検体細胞診(LBC法)が導入されつつあり,分子病理学の細胞診への応用が期待されている。

本特集は,日本の甲状腺腫瘍の診療に,甲状腺細胞診が大きく貢献することを願い企画した。新たに導入されるベセスダシステムによる甲状腺細胞診の報告様式への理解の助けとなることを期待している。同時に,新しい細胞診の標本作成法であるLBC法と分子病理診断の進歩を紹介する。甲状腺細胞診の新しい報告様式と技術が普及し,細胞診の正診率向上ばかりでなく,将来,分子標的治療に細胞診が利用されることが期待される。

 

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