Official Journal of the Japan Association of Endocrine Surgeons and the Japanese Society of Thyroid Surgery
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The board certified endocrine surgeon for general surgeons
Katsuhiro TanakaYutaka Yamamoto
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2017 Volume 34 Issue 4 Pages 234-237

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抄録

日本外科学会を基盤とする外科医を対象とした内分泌外科専門医制度を解説する。消化器外科,呼吸器外科,心臓血管外科,小児外科に加えて乳腺(外科)と内分泌外科の6つの専門医が外科専門医のサブスペシャリティとして正式に承認されている。新機構のサブスペシャリティの最低研修期間は3年とされており,新しい専門医制度が開始される時点で変更になるが,現制度では外科専門医取得後,最短で卒後8年目で内分泌外科専門医が取得可能である。専攻医の教育としては基盤学会ごとではなく各疾患別(甲状腺・副甲状腺・副腎)の到達目標と経験すべき症例を掲示している。

1.はじめに

内分泌・甲状腺外科専門医制度に基づく内分泌外科専門医は基盤学会に日本外科学会,日本耳鼻咽喉科学会,日本泌尿器科学会(順不同)を持つ専門医制度である(両学会のホームページからのリンクで共通として,( http://square.umin.ac.jp/thyroidsurgery/cn24/pg176.html)。新制度での内分泌外科専門医は,日本内分泌・甲状腺外科学会と機構が承認する資格となる。この項では,日本外科学会を基盤とする外科医を対象とした内分泌外科専門医制度を解説する。

2.日本外科学会のサブスペシャリティ

新専門医制度機構の定める19の基盤学会に含まれる日本外科学会が認定する外科専門医制度の2階建ての部分(サブスペシャリティ)に当内分泌・甲状腺外科専門医制度が認定された。この件に関して,現在までの推移を解説する。

2016年12月21日の外科関連専門医制度委員会・日本外科学会専門医制度委員会合同会議における委員会決定事項として,従来の4つに加え乳腺・内分泌外科で計6つのサブスペシャルティで話を進めることが決定された。この時点で当専門医制度が外科学会のサブスペシャリティとして認められたわけである。2017年2月3日に第1回目の「外科領域とサブスペシャルティ6領域の検討委員会(仮称)」を開催され,サブスペシャルティ領域の制度設計として日本専門医機構に,乳腺と内分泌外科の領域は本会が基盤となる旨の回答を行うことが決議された。また,専門医制度新整備指針( http://www.japan-senmon-i.jp/program/doc/new_guideline.pdf)によって,日本外科学会の専門医制度委員会,外科関連学会専門医制度委員会,サブスペシャリティ検討委員会での審議を経て,消化器外科,呼吸器外科,心臓血管外科,小児外科に加えて乳腺(外科)と内分泌外科の6つの専門医が外科専門医のサブスペシャリティとして正式に承認され,外科専門医と6サブスペシャリティを育成する「専門研修プログラム整備基準」が機構へ申請された段階である。

3.現在の取得条件と将来の取得条件案(外科系)

2008年から当専門医制度が発足し,当初は暫定規則による専門医の誕生であったが,2012年からは本則による専門医が誕生している。取得条件の基本条件としては本則第7章第24条に以下の通り記載されている。

①日本国の医師免許証を有すること。

②基本的領域診療科の認定医,専門医または同等の経歴(当該学会名誉会員相当)を有すること。

③連続5年以上本学会会員であること。

④初期臨床研修終了後5年以上の研修を行い,このうち3年以上は学会が認定した認定施設(関連施設を含む)において所定の修練カリキュラムにしたがい修練を行っていること。

現制度では外科学会専門医を取得後,専攻医宣言なしに最短で卒後8年目から取得できることになっている。新しい専門医制度では,外科学会の専攻医の宣言後,1年遅れで,内分泌外科専門医専攻医の宣言が可能であろうと考えている。つまり外科学会の研修と,サブスペシャリティ領域の研修が連動して行える予定で,この点は,現在の研修や診療経験の連動と変わることはない。しかし新機構のサブスペシャリティの最低研修期間は3年とされており,新しい専門医制度が開始される時点で上記の④は変更されることになり,外科専門医取得後が条件になるため,最短で卒後7年目で内分泌外科専門医が取得可能になる予定である(図1)。現制度では研修施設は認定施設か関連施設での研修を3年以上必須としているが,新機構制度では,基幹施設と連携施設の構築が19の基盤専門医では要求されているが,同様の構造をサブスペシャリティの専門医制度にも要求されるかどうかは不明である。さらに専門研修指導医1名につき3名までの専攻医が募集可能とするような人数の制限もあるが,現制度では指導医の認定は行っておらず,変更は急務と考えられる。最終的には各専門研修プログラムで教育資源に基づいて登録可能数を定めるが,地域性などに配慮して各基本領域学会の指導と機構の助言により調整することになっている。つまり専攻医を育成する基幹施設・連携施設の認定に関しても,現制度のように各施設の申請・承認制度ではなく,都市と地方,大学病院・センター病院と一般病院での育成に偏りがないように配慮した上で学会が行うことになる予定である。

図 1 .

外科専攻医と内分泌外科専門医取得年数の比較

現行の外科専門医取得は研修期間最低5年(初期研修含む),内分泌外科専門医は研修期間最低5年(初期研修終了後)であるが,2018年4月から開始される新制度では外科専門医取得は研修期間最低3年(初期研修終了後)であることは決定しているが,内分泌外科専門医の研修期間最低3年?(外科専攻医宣言後1年遅れ?)は予定であり,決定事項ではない。

また乳腺と甲状腺・副甲状腺を同時に診療している外科医も多く,2つのサブスペシャリティ(カリキュラム制どうし)の専攻を同時に宣言することに関して興味があると思われるが,新専門医制度機構では,サブスペシャリティの詳細が決定されていない面もあり将来的には,幾つかの点が変更になるかもしれないため,日本内分泌外科学会などのホームページで最新情報を得るようにしていただきたい。

その他の研究・研修・診療業績は細則に記載されており以下の通りである。

研究および研修業績はそれぞれ30点以上であり,

診療業績は

本学会認定施設(関連施設も含む)における術者(手術の主な部分を担当したものに限る)または指導者として,次の各号に定められた診療実績のいずれかを有していなければならない。ただし本学会認定施設での診療実績は,認定または関連施設の認定日以降のものに限る。

①甲状腺,副甲状腺疾患合計100例以上(甲状腺癌による音声改善手術,声帯外方移動術などは30例未満であればこれに含めることができる)

②副甲状腺,副腎疾患合計60例以上

③副甲状腺疾患のみ50例以上

④副腎疾患のみ20例以上

以上を持って,専門医の申請が可能となり,年に1度,専門医認定のための筆記試験(選択枝方式)と面接を持って,合否判定を行っている。

専門医の更新は5年ごととしており,これにも研究・研修・診療業績の条件があるが(両学会評議員へのアンケート結果から診療業績の数は新規申請よりも減じている),筆記試験や面接は必要としていない。この専門医更新条件に不足する場合には登録認定医の制度もあるので,更新できないからといってすぐに専門医をあきらめる必要はない。

新制度の更新要件として,5年間に医療安全・医療倫理を含めた研修を重視した単位制(クレジット制)の導入を検討していき,将来的には現制度で内分泌外科専門医を取得された方も新制度での更新に切り替えていただく必要がでてくるが,時期や内容の詳細はまだ決定されていない。

4.専攻医の達成目標

現専門医制度には,基盤学会ごとではなく各疾患別(甲状腺・副甲状腺・副腎)の到達目標を掲示している。診療科別では選択する疾患によって多くの種類が必要となるため今後も各専攻医が目指す疾患によって研修内容を選択してもらう現在の形式を維持する予定である。各疾患の目標はさらに改善する予定であるが,筆者が担当している甲状腺疾患の到達目標2の現在の改変案(到達目標一部の抜粋)を記載しておく。

B.治療

1)甲状腺の良性疾患および悪性疾患に対して問診・視触診・画像診断などの結果に基づいた適切な治療方針を決定することができる。

2)バセドウ病の治療方法を理解し,外科治療の適応を決定できる。

3)甲状腺良性腫瘤に対する手術適応の決定ができ,適切な術式選択ができる。

4)甲状腺癌に対する外科治療,放射線治療(外照射,内用療法),化学療法および内分泌療法の役割を理解し,それぞれの適応を決定することができる。

5)甲状腺癌の組織型別および,それぞれの進行度や危険分類ができ,各症例に合わせた適切な術式決定ができる。

6)甲状腺術後リハビリテーションの意義と内容を理解できる。

7)放射線生物学の原理と,放射線治療の根治的および緩和的医療としての適応について基礎的知識と副作用を述べることができる。

8)内用療法の適用と前処置および投与後の副作用について述べることができる。

9-1)個々の患者に対する抗がん剤治療(分子標的薬を含む)の危険性と利点を比較するため,患者の合併症や臓器機能異常について評価し対応できる。

9-2)さまざまな薬剤に関する体内動態および薬理ゲノム学・薬理学的知識を述べることができる。

9-3)長期障害を含む各抗がん剤の毒性プロファイル,臓器機能不全を有する個々の患者に対する投与量の設定,投与スケジュールの調整,さらに合併症について対応できる。

C.緩和ケアと終末期ケア

1)疼痛部位と強さを適切に把握し,世界保健機関(WHO)の疼痛ラダーの実用的知識を持ち,オピオイド麻薬や他の鎮痛薬の薬理と毒性について述べることができる。

2)可能な方法でがん性疼痛を管理し,緩和のため侵襲的医療が必要となった場合,紹介する時期を(適切に)判断できる。

3)癌の精神社会的影響について理解し,疾患のすべての病期において介入すべき利用可能な手段を実践できる。

4)患者とその家族と意思疎通を図り,困難な状況において悪い知らせを開示すること,的確に行動することを実践できる。

5)他のチーム内の他のプロフェッショナル・ヘルス・ケア担当者と意思疎通を図り,共同して患者ケアを実践できる。

5.おわりに

新専門医制度機構では専門医制度に研修プログラムと教育プログラムの充実を要求している。プログラム作成委員会(筆頭著者が委員長)が昨年,専門医制度委員会内に新たに作成されており,外科学会のサブスペシャリティとして全国の各基幹施設と連携施設とで提出可能な研修プログラムを策定中である。

新整備指針では,専門医制度としてプログラム制とカリキュラム制が認められている。内分泌・甲状腺外科専門医制度は,新しい専門医機構での専門医制度の開始段階でカリキュラム制(年次で規定されるのではなく,研修実績達成で規定される)で修練を行う予定である。カリキュラム制であれば,複数の領域のサブスペシャリティ専門医を同時に保持できる可能性があり,今後の動勢に注目する必要がある。

 

利益相反

田中 克浩:エーザイ株式会社(講演料・研究助成金)

 

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