Official Journal of the Japan Association of Endocrine Surgeons and the Japanese Society of Thyroid Surgery
Online ISSN : 2758-8777
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2019 Volume 36 Issue 3 Pages 151

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甲状腺癌と一口に言っても様々な組織型があり,それらの生物学的態度や予後も多岐にわたる。もっとも頻度の高い分化癌は乳頭癌と濾胞癌,およびそれらから派生する低分化癌からなる。乳頭癌や濾胞癌の多くは予後良好であるが,一部に予後不良群が存在する。予後良好と思われる症例に行きすぎた治療をすることは避けるべきであるが,予後不良群に手控えた初期治療をしてしまうと,時として後に非常に不幸な結果を招く。臨床医として,それは絶対に避けなくてはならない。低分化癌の定義はWHO分類と日本の取扱い規約との間に齟齬があるが,いずれにせよ低分化癌と診断された症例は予後不良であることをきちんと認識して治療に当たらなくてはならない。

髄様癌は遺伝性と散発性の二種類あるが,日本の症例は総じていずれも予後良好である。しかし分化癌同様,一部に予後不良群が存在する。髄様癌の場合は分化癌と異なり,放射性ヨウ素治療や甲状腺刺激ホルモンの抑制療法が無効である。従って,どういう症例が予後不良群であるかを初期に認識して,手術術式や分子標的薬剤導入のタイミングも含めた治療戦略を立てなくてはならない。

上記とは異なり,未分化癌は非常に予後不良な疾患である。しかしどういう症例に対してどういう手術を行うのか,あるいは薬物療法や放射線療法などを優先させるのかを見極めることは非常に重要である。いくら予後不良であるといっても,治療戦略は一律ではないことに留意すべきである。

甲状腺悪性リンパ腫の頻度はさほど多くないとされるが,甲状腺の専門外来をやっていると,比較的よく遭遇する。この疾患は組織型が大きく治療戦略や予後を左右するので,まず組織をきちんと採取して診断をつけなくてはならない。

今回は,甲状腺癌全般の予後因子を特集した。どういう症例が予後不良なのかを初期段階で見極められるか,そして術後経過観察中にどういう風になれば危険と認識できるかは担当医の見識にかかっている。臨床諸家におかれては今一度,甲状腺癌の予後因子をきちんと認識して,正しく治療方針を建てていただきたい。本特集がその一助となれば幸いである。

 

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