Official Journal of the Japan Association of Endocrine Surgeons and the Japanese Society of Thyroid Surgery
Online ISSN : 2758-8777
Print ISSN : 2186-9545
Current status of robot-assisted surgery for adrenal tumor
Masashi HondaShuichi MorizaneKatsuya HikitaAtsushi Takenaka
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2022 Volume 39 Issue 1 Pages 40-43

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抄録

1999年に最初のロボット支援副腎摘出術が報告された。Da Vinci Surgical Systemの登場以降,副腎腫瘍に対するロボット支援副腎摘出術についての報告が増加している。現在までに複数のメタ解析の結果が報告され,ロボット支援手術の出血量,合併症発生率,入院期間は開腹手術と比較して良好であった。また,ロボット支援手術の出血量,合併症発生率,開腹移行率,入院期間は,腹腔鏡手術と同等もしくは良好な成績が示されている。ロボット支援副腎部分切除術についても良好な手術成績とともに,術後ステロイド補充の回避についての優位性も示唆されている。

はじめに

ロボット支援手術は,高精細で安定した3D画像,自由度が高く繊細な操作が可能な多関節鉗子などにより,腹腔鏡手術の難点の多くを克服し本邦でも広く普及している。最初のロボット支援副腎摘出術は,1999年にZEUS AESOP 2000を用いて行われた[]。Da Vinci Surgical Systemの登場以降,ロボット支援副腎手術についての報告が徐々に増加してきており,海外においては選択肢の一つに追加されている。本稿では,本邦での保険適用が期待される,副腎疾患に対するロボット支援手術の現況について概説する。

ロボット支援副腎摘出術

ここ10年間でロボット支援副腎摘出術と腹腔鏡手術を比較した報告が散見され,系統的レビューやメタ解析を行った研究も報告されてきている(表1)。ロボット支援副腎摘出術の主な合併症は出血,血腫形成,創部感染,腸管損傷,無気肺などである。ロボット支援手術と腹腔鏡手術の合併症発生率は多くの研究で同等であることが示されている。27編の論文,1,162例(ロボット支援手術747例,腹腔鏡手術415例)を対象としたメタ解析で,ロボット手術と腹腔鏡手術の間で術中合併症発生率,術後合併症発生率,死亡率,開腹手術移行率に有意差を認めなかった[]。これらの合併症に関するデータは,最近の系統的レビューによっても同様の結果が報告されている[]。一方,21編の論文,2,997例のデータを用いてメタ解析を行った研究では,ロボット支援手術の合併症発生率,死亡率は腹腔鏡手術と比較して有意差がないものの,開腹手術移行率は腹腔鏡手術と比較して有意に減少していた(OR:1.79;95% CI:1.10,2.92)[]。300例以上のロボット支援手術を対象とした研究では,周術期合併症の独立したリスク因子として年齢と開腹手術移行があり,開腹手術移行の唯一のリスク因子は腫瘍径(5cmを超える)であった[]。

表1.

ロボット支援副腎摘出術に関するメタ解析

最近,Economopoulosらによって報告されたメタ解析の結果で,ロボット支援手術の手術時間は腹腔鏡手術と比較して有意に延長していた[]。一方,開腹手術または低侵襲手術1,710例を対象としたメタ解析では,開腹手術の手術時間はロボット支援手術よりも有意に短く,ロボット支援手術と腹腔鏡手術の間に有意差を認めなかった[]。また,ロボット支援手術と腹腔鏡手術について,13編の論文,798例のデータを用いてメタ解析を行った研究で手術時間に有意差を認めなかった[]。さらにロボット支援手術の手術時間は10~20例でほぼ一定となることも報告されている[]。Brunaudらの報告では,術者および第1助手の副腎手術経験が,手術時間に有意な影響を与えることが示されている[]。

ロボット支援手術379例と腹腔鏡手術419例を比較したメタ解析では,年齢,性別,患側,腫瘍サイズに有意差はなく,ロボット支援手術の出血量は有意に少なく,入院期間は有意に短かった[]。また,26編の論文,1,710例を対象としたメタ解析でも,腹腔鏡下手術と比較して出血量および入院期間の優位性を認めた[]。

複数の研究において,サイズの大きい腫瘍に対するロボット支援副腎摘出術の有効性および安全性が検討されている[10]。Agcaogluらは,5cm以上の腫瘍に対するロボット支援手術24例と腹腔鏡手術38例を検討し,ロボット支援手術が手術時間および入院期間を有意に短縮し,また開腹手術移行率も有意に低いことを明らかにした[]。また,2009年から2014年までのthe Scandinavian Quality Register for Thyroid, Parathyroid and Adrenal Surgery(SQRTPA)に登録された副腎摘出術659例(37.9%がロボット支援手術)を解析した研究で,腫瘍サイズが大きい場合,有意にロボット支援手術が選択されていた[11]。一方,最近の系統的レビューでは,腹腔鏡手術は6cmを超える大きな腫瘍に対しても安全に実施可能であり,8cmまでの腫瘍に対しても後腹膜アプローチで実施可能であることが示されており[12],熟練した執刀医であれば,ロボット支援手術,腹腔鏡手術とも,大きな腫瘍に対して安全に実施可能であることが示唆された。また,副腎癌に対するロボット支援手術の有効性および安全性に関する報告は少ない。以上より,サイズが大きい,または副腎癌の疑いがある場合,施設や執刀医の技量などを十分に考慮し,術式選択を慎重に行うことが肝要であると考えている。

ロボット支援手術の重要な課題の一つは,コスト面において従来の術式と比較して超過することが懸念される点である。Bodnerらの研究では,ロボット支援手術は腹腔鏡手術と比較して約1.5倍の費用がかかると報告されている[13]。しかし,両者の費用に有意差がないとする報告も散見される[14]。Fengらの最近の報告では,ロボット支援手術58例,腹腔鏡手術64例について,麻酔費用,手術時間および消耗品費用を用いて手術費用の計算を行い比較している[15]。ロボット支援手術と腹腔鏡手術の費用は,それぞれ3,527ドル,3,430ドルであり有意差を認めなかった[15]。この研究でのロボット支援手術の麻酔費用,手術時間は腹腔鏡手術と同等であった[15]。これらの結果より,一定の経験を積んだ手術チームにおいてロボット手術に使用する器具を必要範囲内で制限するなどの対応を取ることで,ロボット支援手術の費用を腹腔鏡手術と同等レベルに削減できる可能性があると考えられる。

ロボット支援副腎部分切除術

副腎腫瘍に対する標準手術は副腎全摘出術であるが,両側副腎腫瘍,単一副腎に発生した腫瘍,遺伝性疾患などで複数の副腎腫瘍を発症するリスクが高い場合では,副腎部分切除術を考慮する場合がある。副腎部分切除術を行うことで副腎皮質機能を維持し,ステロイド補充の回避ができる可能性がある。

2006年にロボット支援副腎部分切除術が初めて報告された[16]。複数の研究で,ロボット支援副腎部分切除術の有効性が報告されている(表2)。経腹膜アプローチにてロボット支援副腎部分切除術を施行した13例についての報告で,良好な手術成績とともに,開腹手術への移行と術後合併症がなかったことが示されている[17]。フォローアップ期間中央値12カ月で,ステロイド補充を要した症例や再発例は認められなかった[17]。また,褐色細胞腫12例を対象とした報告では,開腹手術移行を1例に認めたものの,術中異常高血圧は認められなかった[18]。これらの良好な成績は他のケースシリーズ研究でも報告されている[1921]。しかし,ロボット支援副腎部分切除術に関する報告はいずれも症例数が少なく,また,腹腔鏡手術と比較検討した報告も認められない。

表2.

ロボット支援副腎部分切術に関するケースシリーズ研究

副腎部分切除術では機能温存のために,腫瘍周囲組織に対する最小限の操作と残存副腎組織の血流維持が重要と思われる。ロボット支援手術では安定した拡大明視野の下,繊細な操作が可能であり,本術式はロボット支援手術の利点を最も生かせる術式の一つと考えられる。

おわりに

Da Vinci Surgical Systemの登場以降,ロボット支援副腎摘出術に関する報告は徐々に増加してきている。複数の系統的レビューやメタ解析の報告において,ロボット支援手術の出血量,合併症発生率,開腹移行率,入院期間は,腹腔鏡手術と同等もしくは良好な成績が示されている。また,大きな腫瘍に対するロボット支援手術の有用性を示唆する報告も散見される。ロボット支援副腎部分切除術についても,良好な手術成績とともに,副腎機能温存および術後ステロイド補充の回避についての有用性が示唆されている。ロボット支援副腎手術に関する研究はいずれも症例数が十分とはいえないものの,ロボット支援手術の利点を生かせる術式の一つとして,本邦での保険適用が期待される。

【文 献】
 

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