Official Journal of the Japan Association of Endocrine Surgeons and the Japanese Society of Thyroid Surgery
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Until I have decided to join the department of breast and thyroid surgery: the choice of a female surgeon
Azusa Sasaki
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2022 Volume 39 Issue 2 Pages 70-75

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抄録

私は2020年度まで川崎医科大学附属病院で初期研修を行い,2021年度から同病院乳腺甲状腺外科学に入局した。乳腺甲状腺外科への入局を考えていたが,入局先を決める際,将来に目を向けるととても怖くなり,非常に悩み,同期の中で一番最後に入局を決めた。

自分の未来を想像した時,結婚や出産,育児についても浮かび,外科医のキャリアとの両立を考えるとお互いが大きな障害になり得るのではないか,専門医の取得と継続,外科医として働き続けることができるのかと不安になった。あえて理想の実現が難しいかもしれない道に進む必要があるのか,仕事は仕事として両立が楽な道を選ぶべきではないのかと考えもした。

このような不安を抱える医師は私だけではないと思う。私が乳腺甲状腺外科へ入局するまでの経緯,どのように考え最終的な選択に至ったのかを悩んでいる後輩たちの役に立てばと,また少しでも多くの女性医師の活躍に貢献できればと思う。

はじめに

女性医師数は1990年頃から少ないながらも増加している。若い世代ほどその割合は高い。しかし,特定の診療科へ偏在している傾向もみられ,特に,皮膚科,産婦人科,眼科,麻酔科などで女性医師の割合が高い。いずれも女性患者の割合が多かったり,長時間・不規則勤務が比較的少ないとみられたりする職場である。一方で,一般外科,整形外科の女性医師数は少ない。長時間手術や緊急手術,夜間の呼び出しが多い印象のある診療科である。ライフワークバランスがとりにくく,女性にとっては出産や育児などのライフイベントとの両立が難しいと考える医師は女性のみならず多いのではないだろうか。私もそう考える一人であった。そのように考えていた私が,外科医の道を進むことになった経緯について述べる。

女性医師の割合

厚生労働省による,平成30(2018)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況[]によると,平成30年12月31日現在における全国の届出「医師数」は327,210人で,男性255,452人(総数の78.1%),女性71,758人(同21.9%)となっている。平成30年届出医師数を平成28年と比べると7,730人,2.4%増加している。

主たる診療科の構成割合を性別にみると,男性は「1 内科」(20.6%)が最も多く,次いで「25 整形外科」(8.5%),「16 外科」(5.3%)となっており,女性は「40 臨床研修医」を除くと「1 内科」(14.9%)が最も多く,次いで「13 小児科」(8.9%),「28 眼科」(7.6%)となっている。 女性医師のうち「16 外科」,「17 呼吸器外科」,「18 心臓血管外科」,「19 乳腺外科」,「21 消化器外科」,「23 肛門外科」,「30 小児外科」の合計は3.9%であり,「19 乳腺外科」は1.2%である(表1)。外科医の男女割合も90%以上が男性医師で,女性医師の割合は10%以下である。乳腺外科のみ女性割合が約40%を占めている(表2)。

表1.

主たる診療科別にみた医療施設に従事する医師数および平均年齢

表2.

医療施設従事医師数,主たる診療科,施設の種別,性別

また,臨床研修終了後の診療科については,小児科,産婦人科,乳腺外科や皮膚科,形成外科,眼科,麻酔科を選択する女性医師が多く,女性医師割合が高い。乳腺外科は外科の中で唯一,臨床研修医終了後の選択科として女性が男性を上回っている(表3)。

表3.

臨床研修医の2年後の動き

小児科,産婦人科,乳腺外科に関しては,女性疾患の割合が高いことや女性に関連した診療を行うため比較的女性医師が多いと思われる。皮膚科,形成外科,眼科,麻酔科に関しては外来業務をメインで行うこともでき仕事の分量を調整しやすいことや,長時間・不規則勤務が比較的少ないとみられ,出産や育児などの将来のことを考えると比較的女性に選ばれやすいのだと考える。

乳腺甲状腺外科が入局先の候補に挙がった理由

・学生の臨床実習と研修医でローテーションして手術をしたいと思った

・早期から術者として手術を経験できる

・診断から手術,治療まで一貫して行うことができる

・研修医の際に学会発表を経験し,勉強する機会も多く興味を持った

入局を考え始めたのは研修医でローテーションした後からである。5年生の実習で興味を持ち,6年生で1カ月ローテーションをした,研修医の外科必修診療科として選択しようと決めてはいた。しかし,明確に診療科まで決定していたわけではないものの,将来は内科系の医局に入局しようと考えており,外科医になることは考えていなかった。初期研修医でローテーションし,手術で助手として筋鈎を持つのも楽しく,手術の楽しさを感じた。また,手術だけではなく周術期管理や薬物治療,終末期治療,緩和治療など内科的な面も多くあることを知った。また,当院の乳腺甲状腺外科では早期から術者として手術を経験できるのがとても魅力に感じた。

さらに,研修医の際から内分泌外科の地方会などで発表する機会が数回あり,はじめは緊張もあり,憂鬱な気持ちもあったが,発表のために勉強したことでさらに興味を持った。

乳腺甲状腺外科入局において悩んだ点

・外科医としてやっていけるのか

・出産や子育てなどのライフイベントと仕事を両立できるのか

・手術をしなくなった場合の働き先も含めどうなるか

・乳腺外科専門医,内分泌外科専門医取得のため外科専門医が必要であること

前述したとおり,外科というと長時間手術などハードなイメージもあり体力的にもやっていけるのかという心配があった。また,入局するまでは実際に術者として手術を経験することはなく正直自分がどこまでできるのか想像ができないところもあり不安であった。

次に出産や子育てなどのライフイベントと仕事の両立ができるのか,育児休暇などでブランクがあくと外科医は復帰が難しいという話も聞き,不安に感じた。また,いずれ手術をしなくなった場合にも働き続けることができるのかが心配であった。実際に子育てをしながら働いている先生に話を聞き,サポートがあることや緊急手術や夜間の呼び出しは比較的少ないと知った。

一番気になっていたのは,万一手術をしなくなった場合にどこか働けるところはあるのだろうかということであったが,検診業務をやっている先生や,外来で化学療法などを行っている先生もいると聞き,安心した。また,先のことを見据えることも大切であるが,まずは近い将来のことを考え興味があることをしてみようとも思った。

最後に,専門医取得も乳腺外科,甲状腺外科ともに外科専門医の取得が必要なこと,専門医の更新も大変なのではないかと思った。乳腺外科も甲状腺外科も外科専門医の取得が必要であり,合計3回の試験を受ける必要がある。日々の業務をこなす傍ら,試験勉強などが両立できるのか不安であった。

他に悩んでいた入局先

・形成外科

・消化器内科

形成外科への入局を考えていた理由として,手術がしたいという気持ちがあったこと,形成外科の手術の場合,外来などで可能な手術があることが魅力であった。しかし,形成外科には手術といっても様々な分野があり,中にはまったく興味のないものがあることは引っかかっていた。また,当院では入局先として人気があり,入局者があまりに多かったことも結果として候補から外れる要因となった。

消化器内科については,両親がともに内科であるため,はじめは内科を考えており,またそのために家庭との両立などの将来像を想像しやすかった。研修医で様々な内科をローテーションし,内視鏡検査など,内科の中でも手技の多い科であることがよいと考えたが,内視鏡はあまり上手くならなそうだと感じてしまったことや,体表の手術をしたいと思い入局には至らなかった。

乳腺甲状腺外科に最終的に入局を決めた理由

・手術をしたかった

・早期から術者として手術に携わることができると思った

・腫瘍を対象に臨床をしたかった

・比較的女性医師が多い

・夜間の呼び出し,緊急手術が少ない

・手術だけではなく,内科的治療も含め多くを経験できると感じた

手術をしたいと思う気持ちがあり,それを考えた際に比較的女性医師も多い外科が乳腺甲状腺外科であった。また,比較的緊急の呼び出しも少なく,緊急手術も少ないと聞き働きやすのではないかと感じた。学生時代には,手術をしているというイメージが強かったが,実際に研修すると,手術だけではなく病棟での術後管理や化学療法など手術以外の治療も多く,内科的なことも含め多くのことを学ぶことができると考えた。

おわりに

以上の理由から私は乳腺甲状腺外科への入局を決めた。実際に,当科の手術は比較的手術時間も短く女性でも体力的には問題ない。また,病院によると思われるが,当院では夜間に緊急手術をすることは稀で,夜間の呼び出しも比較的少なく,比較的働きやすい診療科であると入局してから改めて感じることも多い。

入局し仕事量が増え,学ぶべきこともたくさんあり,反省点や悔しい思いをすることもあるが,少しずつできることも増えやりがいを感じている。診断から治療,その後のfollowまですべてを一貫して行うことへの魅力も感じている。

また,内分泌外科専門医の数は少なく,専門性も高いため先生方が非常に頼りにされている姿をみて,私もそうなりたいと思いモチベーションも上がっている。

手術については早期から術者として手術に携わった。一年間で81症例,うち甲状腺疾患は28例,術者としては10症例を経験した(2022年3月)。少しずつではあるが手術の手順や,ポイント,テクニックを習得し1年前よりは上達したと感じているものの,まだまだ経験数は少なく,反省点や未熟な部分があり,さらなる経験を積んでいきたい。

不安点としては,今後出産や育児で手術をしない期間ができた場合,ブランクで復帰するのが難しいのではないかという点や,上級医の先生たちのように手術が上手くなっていくのかという点,内分泌外科専門医を取得するにあたり,外科専門医を取得する必要があることや,専門医取得後の更新は大変ではないのかという点があがる。

このような不安を抱える若手医師や研修医は多くいるのではないかと思われ,周囲のサポートは必要不可欠であると考える。専門知識を習得し,専門医を習得するまではまだまだ長い道のりだとは思うが,多くの経験を積み,新しい知識を習得していけるよう,精進していきたい。

約一年の外科医としての生活を終え,乳腺甲状腺外科に入局してよかったと思っている。特に女性は外科医としての道を進むことに対し不安が多いと思うが,たくさんの人のサポートを受けながら,外科医として働き成長していくことは可能であろう。少しでも多く女性外科医が増え,働きやすい環境がさらに整えばよいと思う。

謝 辞

第54回日本内分泌外科学会学術大会の特別企画「女性医師の外科領域選択における問題点と課題」でのセッション,さらには「日本内分泌外科学会雑誌」39巻第2号・特集1への執筆の機会を頂きました,川崎医科大学附属病院 乳腺甲状腺外科の田中克浩先生に深謝申し上げます。また,ご指導していただいています川崎医科大学附属病院 乳腺甲状腺外科の先生方にも感謝いたします。

【文 献】
 

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