2022 Volume 39 Issue 2 Pages 76-81
日本における女性医師の割合は年々増加傾向であり,今後女性医師の活躍が我が国の医療を支える鍵となるのは揺るがない事実である。当科においては構成員の半数以上が女性医師であり,入局者も毎年半数以上が女性医師である。このような環境下で当院独自の工夫は,「女性医師キャリアアップ支援システム」の存在である。これはいわゆる時短勤務であるが勤務時間や曜日の設定を自ら決めることができ,週30時間以上であれば常勤として雇用され専門医取得や維持を目指すものである。さらに休日・夜間のオンコールや当直は免除が可能である。また科の所有する有給枠外での雇用となるため人員の削減になることもない。筆者も当システムを利用し3人の育児と仕事を両立した経験があり,当科の現状も踏まえダイバーシティ時代における女性外科医のキャリア形成における問題と今後の展望について述べる。
日本における女性医師の割合は年々増加傾向であり,厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師調査」によると2018年には21.9%まで増加した(図1)[1]。しかし日本の女性医師の割合はOECD諸国36カ国中では最低であり[2],その根底には未だに社会的役割意識が強く,女性が家事・育児をするのが当たり前という考えがある。診療科別にみた医療施設に従事する女性医師の内訳をみても,やはり外科系を選択する女性医師はまだまだ少ないのが現状である(図2)[1]。しかしながら一方で外科系を選択する女性医師の割合は年々増加傾向であり[3],外科医不足の原因は女性医師の割合の増加ともいえない。今日では診療科の選択傾向は男女関係なく多様化しつつある。

男女別医師数年時推移
平成30年(2018年)医師・歯科医師・薬剤師調査(厚生労働省)より筆者作成。日本における女性医師の割合は年々増加傾向であり,2018年には21.9%まで増加した。

診療科別にみた医療施設に従事する女性医師の内訳
平成30年(2018年)医師・歯科医師・薬剤師調査(厚生労働省)より筆者作成。外科系を選択する女性医師はまだまだ少ない。
政府の取り組みとしては平成19年12月18日「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」・「仕事と生活の調和推進のための行動指針」を策定した。ワーク・ライフ・バランスが実現した社会とは,国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き仕事上の責任を果たすとともに,家庭や地域生活などにおいても子育て期,中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会である[4]。
このように社会全体でも働き方改革が求められている中で,当科の女性医師の現状を報告する。
図3に示すように,当科の男女比は女性が83%と全国的にも珍しく女性外科医が多く存在する。女性医師だけに注目すると既婚率は74%,1人以上の子供がいる割合は54%と過半数を超えている。このうち未就学児のいる割合は42%,就学児は16%と子供に保育を要する家庭背景が多い。また当科の既婚の女性医師のうち配偶者の職業は79%が医師であり,家庭と仕事の両立を要する女性医師が多く存在している。さらに当科の女性医師のうち外科専門医取得者は47%,サブスペシャリティ専門医取得者は32%,学位取得者は26%,留学経験者は11%と,まさに今後キャリアアップを目指す若い世代を中心に構成されている。

当科の女性医師の現状
当科の男女比は女性83%男性17%,女性医師において既婚率は74%,子供の人数が1人以上の割合は過半数を超え(54%),未就学児を持つ女性医師は42%,就学児を持つ女性医師は16%である。また配偶者の職業は79%が医師である。外科専門医を取得している女性医師は47%であり,サブスペシャリティ専門医を取得している女性医師は32%である。学位を取得している女性医師は26%であり,留学を経験している女性医師は11%である。
このような環境下で当院の取り組みとして,子育て世代の子を持つ医師を対象とした「女性医師キャリアアップ支援システム(以下女性支援システムと記載する)」の存在である。これはプライベートライフと両立しながら単なる人手ではなく,専門職としてやりがいを感じながらキャリアを重ねていく働き方を目指すもので,キャリアカウンセリング,環境整備,診療・研修コーディネートの3本の柱を中心に構成されている。特徴としては診療研修が週に16~32時間までオーダーメイドに設定でき,個々の家庭環境に合わせた働き方が構築可能である。
当科での女性支援システム使用例の週間予定表を表1に示す。A医師はクリニカルフェローとして外科専門医およびサブスペシャルティ専門医取得を目的として7.5時間/日,週4日間の勤務形態を取っていた。またB医師は病院助教としてサブスペシャリティ専門医取得を目指し,週5日の時短勤務の形態を取っていた。筆者は現在3人の子育てをしながら働いているが,以前にこのシステムを利用して働いていた。外科医になりたての頃と比較すると,子育て・プライベートライフと仕事をうまく両立しながら働くことが可能であり,とてもありがたい制度であったと感じている。

当科での「女性医師キャリアアップ支援システム」使用例の週間予定表
ここで乳腺内分泌外科専門医取得のための筆者独自のモデルプランを提案する(図4)。初期研修開始後より人によってはライフイベントがすでにスタートしており,ライフイベントは専門医取得までの,どの期間であっても制限されるものではないと考える。また新専門医制度は少し変わるが,2015年までに医籍に登録された医師の外科専門医取得は,一般的に修練開始登録後通算5年以上の修練施設での研修(初期研修期間を含むことを可能とする)を経て,必要手術症例数や業績が集まった段階で取得可能となる。内分泌外科専門医に関しては初期研修終了後5年間以上の研修,このうち3年間以上の認定・関連施設での研修を経て必要症例数や業績などの条件を満たした場合に取得可能となる。また乳腺専門医においては2003年までの医師免許取得者は取得後7年以上,このうち5年以上認定施設で修練を経て取得可能となり,それ以降の者は臨床研修医修了後,認定・関連施設において5年以上の修練の研修を経て,必要症例数や業績などの条件を満たした場合に取得可能となる。専門医取得前後と同じタイミングで大学院や留学を検討する先生も少なくない。

乳腺内分泌外科専門医取得のためのモデルプラン
2015年までに医籍に登録された医師の外科専門医取得は,一般的に修練開始登録後通算5年以上の修練施設での研修(初期研修期間を含むことを可能とする)を経て,必要手術症例数や業績が集まった段階で取得可能となる。内分泌外科専門医に関しては初期研修終了後5年間以上の研修,このうち3年間以上の認定・関連施設での研修を経て必要症例数や業績などの条件を満たした場合に取得可能となる。また乳腺専門医においては2003年までの医師免許取得者は取得後7年以上,このうち5年以上認定施設で修練を経て取得可能となり,それ以降の者は臨床研修医修了後,認定・関連施設において5年以上の修練の研修を経て,必要症例数や業績などの条件を満たした場合に取得可能となる。大学院や留学のタイミングは人それぞれであり,ライフイベントもどの期間においても制限されるものではない。
筆者の場合,まずライフイベントとしてレジデント期間の4年目に結婚,6年目に出産し1年間の育休を取得した。元々は獨協医科大学第二外科という消化器・一般外科に所属していたが,産後から職場を筑波大学附属病院に移動し女性支援システム枠で復職した。同年8年目に外科専門医を取得,その後第二子の妊娠・出産を経て筑波大学附属病院に復職した。ここでは産後休暇のみ取得し育児休暇は取得しなかったが,その理由は女性支援システム枠で働いていたため育児の時間が十分に確保できていたからである。その後大学院期間中に第三子を出産し12年目には病院助教として復職したが,この際も女性支援システム枠で勤務し学位と乳腺専門医を取得した(図5)。

筆者の経験
2年間の初期研修を経てオーバーレジデントも含め5年間のレジデント期間を終了した。レジデント期間に結婚・第一子出産・育児休暇を経て,8年目にクリニカルフェローとして筑波大学附属病院乳腺甲状腺内分泌外科に女性支援システム枠で復職した。同年に外科専門医取得と第二子出産を経て9年目には大学院に入学し,大学院時代に第三子を出産,12年目には病院助教として復職し同年に乳腺専門医と学位を取得した。
一方で近年,新専門医制度により乳腺外科も内分泌外科も基本領域とサブスペシャリティ領域の連動研修の導入が進んでいる。専門医取得の期間や条件は従来の研修(筆者の経験)とは異なるが,その状況においても女性支援システムを有効に活用することで,専門医機構の認定する基本領域の専門医・サブスペシャリティ領域の専門医取得,さらには複数のサブスペシャリティ専門医取得・学位取得・留学といったキャリア形成が可能になると考える。
このような女性医師を支援するシステムは全国的には稀ではなく,おそらく多くの機関で取り入れられている。非常に良いシステムであるが,メリット・デメリット双方存在すると考える。メリットとしては,自身のキャリアプランに合わせた働き方が可能で時間外の仕事が免除されること,そして家事・育児の時間が保証されることである。また当院のシステムにおいては就学児であっても利用可能であることや,科の所有する有給枠外での雇用となるので各部署でのプラス人員になることである。しかしながら女性支援システムを利用する医師ばかりで構成されてしまうと,手術や外来の症例は増える一方で時間外を他の医師にお願いすることになるため,他の医師への負担がかかること,システム利用者は罪悪感や罪責感を少なからず感じること,また同世代の医師と比較し精神的不安や焦りを感じること,さらに期間限定であることや時間外手当が出ないなどの報酬面での問題も生じる。
医師は世代によって目標が変わるものであり,例えば1~4年目は診療の手技や知識の向上を目指し,臨床>研究といった,臨床に重きを置く医師が多数である。しかし5年目以降は目標が少し変わり,論文を書く,研究する,学位を取得するといった臨床=またはやや研究よりになる先生が多いかもしれない。さらに9年目以降は指導者として後輩の育成を目標に,臨床と研究の両立を図る先生が多いと考えられる。ここで問題となるのがライフイベントは歳を重ねるごとに比重が増し,働き盛りの30代40代ではキャリアとの両立が必要とされる。この時点で多くの女性外科医は考え方や価値観の変化を感じ,さまざまな葛藤を経て,中にはキャリアを中断する選択肢を選ぶ先生も少なくないのではないかと推測される。おそらく多くの女性外科医はこのようにライフ=ワークの調和がうまく取れている先生は少なく,現状はまだまだ社会の認識や整備が追いつていない可能性がある。
女性外科医のキャリア支援において今後求められるものは保育環境の充実といった労働環境の整備のみならず,主治医制に頼らないオンコールシステムの構築や時間外労働削減といった物理的要素の改善に加え,働き方の多様性の許容や男性医師への子育支援といった社会全体の意識改革である。さらに未婚者や子育てをしていない医師への負担の配慮といった,女性外科医のみならないメンタルヘルス対策も必要である。
女性医師・女性外科医の割合は増加傾向であり,今後ますます女性医師の活躍が期待される。あくまでもキャリア形成の価値観は人それぞれであり明確な基準は存在せず,個々の目標に合わせた支援と理解が必要である。性差や子供の人数といった家庭環境にとらわれず,その人の能力を最大限に発揮できる環境や制度の整備や意識改革を社会全体で行っていくことが重要である。さらに男女関係なく男性であっても子育てに積極的に参加するのが当然であるといった,社会全体の意識改革は必要不可欠である。