2022 Volume 39 Issue 4 Pages 261-265
両側副腎悪性腫瘍は極めて稀であり,副腎皮質癌や褐色細胞腫,副腎原発悪性リンパ腫,悪性腫瘍の副腎転移などが存在する。両側副腎皮質癌の治療は片側の治療と同様に,原則は手術による根治的切除が第一選択である。一方で根治的切除ができない場合は,ミトタンと抗がん剤の併用療法などが検討される。両側副腎皮質癌を認めた場合は,遺伝性疾患の存在も検討する必要があり,既往歴や家族歴の十分な問診を要する。遺伝性疾患が存在した場合は家族を含めた遺伝カウンセリングが必要となる。その他の両側副腎悪性腫瘍については原疾患の治療方針に則るが,診断や治療のために副腎摘除術が選択されることがある。悪性腫瘍の病勢コントロールのみならず内分泌学的な全身管理も治療経過を通して重要である。
両側副腎腫瘍は稀であるが,中でも両側副腎悪性腫瘍は極めて稀である。原疾患としては副腎皮質癌や褐色細胞腫,他臓器癌の副腎転移,副腎原発悪性リンパ腫などが存在し,治療方法はそれぞれ異なる一方で,いずれも迅速な診断と治療の開始が求められる。本稿では副腎皮質癌を中心に,両側副腎悪性腫瘍のマネージメントについて述べる。
副腎皮質癌(adrenocortical carcinoma:ACC)は希少癌であり,年間100万人あたり0.72例の発症率である。両側ACCについてはまとまったデータはなく,症例報告に限られる。両側ACCを認めた際は背景の遺伝子異常を疑う一方で,小児ACCと遺伝性癌症候群の関連はよく知られているが,成人患者におけるACCと遺伝性素因症候群の関連は明らかでない。Li-Fraumeni症候群では,TP53の生殖細胞系列変異によるゲノム不安定性の結果,IGF2の過剰発現がACCの発癌に寄与する。小児のACCはLi-Fraumeni症候群と強く関連し,ACCと診断された全小児の約50~80%はLi-Fraumeni症候群の診断である[1~4]。成人発症のACC患者では,約3.9~5.8%にLi-Fraumeni症候群が基礎疾患として同定される[5,6]。
成人発症のACCは多発性内分泌腫瘍症1型(Multiple Endocrine Neoplasia type1:MEN-1)でも報告されている[7,8]。715例のMEN-1症例の解析では,10個のACCを8症例に認め(発症率1.1%),1cm以上の腫瘍が見られた場合のACCであるリスクは約13.9%であった(72個中10個)[9]。8例中1例が両側ACCであり,1例が同側にACCを2個認めた。
Lynch症候群と家族性腺腫性ポリポージスの患者でも報告されている[10]。Lynch症候群は常染色体優性遺伝であり,生殖細胞系列のMLH1,MSH2,MSH6,PMS2のいずれかにヘテロ接合性の病的バリアント,もしくはEPCAMの欠失が病因である。ACC患者におけるLynch症候群の有病率は3.2%であり,大腸癌や子宮内膜癌におけるLynch症候群の有病率と同程度である[11]。
Beckwith-Wiedemann症候群では,11番染色体短腕(11p15.5)のゲノムインプリンティング異常により,IGF2の過剰発現がACCと関与する。その他の遺伝子変化として,ATRXやCTNNB1の体細胞変異や11番染色体短腕におけるHPV-6のintegrationがある[12]。
成人におけるACCは約60%がホルモン活性を伴いその症状や腹部腫瘤により発見される一方で,約10~15%は偶発的に発見される。両側ACCを疑う場合も,包括的にホルモン産生能を検査する必要がある。機能性ACCはグルココルチコイド産生か,グルココルチコイドと性ホルモンの両方を産生していることが多い[13]。そのため男性化や女性化を伴う副腎皮質腫瘍はACCを疑う必要がある。アルドステロンを産生するACCは稀である。複数種のステロイド合成(Combined Steroidogenesis)はACCに特有の所見であり,副腎皮質腺腫で見られることは少なく,成人小児を問わずACCを疑う必要がある。
画像診断には,胸腹骨盤部CTや腹部MRI,または[18F]FDG-PET/CTを施行する。ACCを疑う腫瘍に対する生検は,通常は避けるべきである。病期分類には,European Network for the Study of Adrenal Tumours(ENSAT)が提唱するTNM分類を用いるのが一般的である(表1)。

副腎皮質癌のENSAT病期分類
病理組織学的にはWeiss基準が使用されているが,2022年のWHO分類において,副腎皮質腫瘍における血管浸潤(vascular invasion)の診断および予後への影響が強調された(表2)[14]。その他にも,reticulinアルゴリズムや,Lin-Weiss-BiscegliaシステムHelsinkiスコアリングシステムなども使用される[15~17]。2022年のWHO分類において,副腎皮質癌は,その形態学的特徴に基づいて,conventional型,oncocytic型,myxoid型,およびsarcomatoid型に分類される。Ki-67 indexは再発リスクの層別化に有用である。

Weissスコアリングシステム
Mete O, et al., Endocr Pathol, 2022[14]より引用
副腎皮質癌の治療は,2018年に欧州内分泌学会が,2020年に欧州臨床腫瘍学会がそれぞれガイドラインを作成している[18,19]。
外科的切除が最も有効であり,転移を認めないものに対しては積極的に根治手術を検討する。術後の再発症例に対して再発巣切除が有効とする報告がある[20]。そのため,両側副腎皮質癌の場合でも,副腎のみに限局している場合は手術による根治的切除がまず検討される。両側副腎摘除術ではなく,一側を完全切除し,もう一側を部分切除し正常副腎機能を温存する術式もありうるが,腫瘍の大きさや位置や制癌性を十分に評価し慎重に検討しなければならない。ACCの手術は,十分な専門知識と経験を有する外科医が行うべきであり,ESE-ENSATガイドラインでは,副腎摘出術を年間20件以上経験していることが望ましいと述べている。
腫瘍をen bloc切除することが治癒率を上げ,開腹手術が標準治療である。局所浸潤を認めない6cm未満の腫瘍では,腹腔鏡下副腎摘出術も考慮されるとESMOのガイドラインでは記載されている。所属リンパ節郭清を行うことが推奨される。またコルチゾールの自律的な分泌を認めるACCでは,術後のステロイドカバーが必要である。術後の治療計画については図1に示す。

根治的切除が可能な副腎皮質癌の管理
Fassnacht M, et al., Ann Oncol, 2020[19]より引用し一部改変
進行癌・転移性癌の場合,ミトタンと抗がん剤の併用療法が初期治療となる。エトポシド・ドキソルビシン・シスプラチンを併用したEDP-ミトタン療法が第一選択肢である。腫瘍が小さい,あるいは病勢が緩徐である一部の症例ではミトタン単独療法も選択肢となりうる。全身療法に加えて,手術や局所療法(放射線治療,ラジオ波焼灼療法,冷凍焼灼術,マイクロ波焼灼術,化学塞栓療法)を考慮すべきである。2次治療で十分なエビデンスのある治療法はなく,他の抗がん剤や臨床試験への登録が行われている。また最近では,がん遺伝子パネル検査により臓器横断的な治療や臨床試験への登録も検討されるべきである。進行癌・転移性癌の治療計画については図2に示す。

根治的切除が不可能な副腎皮質癌の管理
Fassnacht M, et al., Ann Oncol, 2020[19]より引用し一部改変
ACC以外の両側副腎悪性腫瘍としては,褐色細胞腫,悪性腫瘍の副腎転移,副腎原発の悪性リンパ腫などが挙がる。偶発腫瘍や原疾患の画像評価の際に発見される他に,後天性の原発性副腎皮質機能低下症(Addison病)の症状で発見されることもある。
褐色細胞腫は約10%が両側性である一方で,すべての腫瘍が潜在的に悪性であると考えられており,転移の出現をもって悪性褐色細胞腫と診断される。治療はACCと同様に外科的切除が第一選択となるが,血圧・血糖・内分泌を始めとした周術期の全身管理を要する。転移性の褐色細胞腫については,腫瘍減量手術を含む集学的治療となる[19]。また本邦においてはMIBG集積陽性の治癒切除不能な褐色細胞腫に対して3-ヨードベンジルグアニジン(131I)(ライアットMIBG-I131静注)が保険適用下で2022年より使用可能となった。詳細は本特集の褐色細胞腫の項を参照されたい。
転移性副腎腫瘍の原疾患として,肺癌,腎癌,乳癌,膵癌,肝細胞癌・肝内胆管癌などが多い[21]。副腎偶発腫瘍208例(片側性172例,両側性36例)を対象とした研究では,19例に副腎転移があり,そのうち10例が両側副腎腫瘍であった[22]。その他に両側性副腎転移はメラノーマ,甲状腺癌,肉腫様肝細胞癌,膀胱癌で報告がある。転移性腫瘍の治療は原疾患の全身治療が原則であるが,転移巣切除を目的とした副腎摘除術が選択されることもある。
副腎原発悪性リンパ腫は予後不良と考えられる。副腎原発悪性リンパ腫は稀であるが,両側腫瘍の有病率は高いことが知られている。副腎原発悪性リンパ腫を対象とした研究では,両側性副腎リンパ腫の有病率は71%(28例中20例)と報告されている[23]。診断は腫瘍針生検によるものが一般的だが,診断に十分な組織量が採取されない場合は腹腔鏡下生検なども検討される。治療は,化学療法を中心とした全身治療となる。
その他の両側副腎腫瘍として頻度は稀だが,左右で異なる腫瘍が同時性あるいは異時性に発見されることも考えなければならない。片側が副腎皮質癌,もう一方が副腎腺腫である症例も報告されている。ホルモン検査だけではその診断に至らないことがあり,CTやMRI,FDG-PET検査による画像所見の左右差を確認することも必要である。
両側ACCの治療の原則は片側ACCの治療と同様に,手術による根治的切除をまず考えるべきである。根治的切除が困難な症例ではミトタンと抗がん剤の併用療法など検討される。ACCの早期発見のために,上述の遺伝性疾患の既往や家族歴を有する症例では,ACCの存在を考慮すべきである。またACC診断の際は遺伝性疾患がないか調べることも検討される。その際は家族を含めた遺伝カウンセリングが必要である。また,ACC以外の両側副腎悪性腫瘍については原疾患の治療方針に則るが,制癌のための副腎摘除術が選択されることがある。機能性副腎腫瘍に伴う,あるいは両側副腎摘除や薬物治療に伴う内分泌学的な全身管理が悪性腫瘍の治療と並行して必要である。