Japanese Journal of Medical Technology
Online ISSN : 2188-5346
Print ISSN : 0915-8669
ISSN-L : 0915-8669
Technical Articles
Evaluation of the screening test for disease-specific antinuclear antibodies by chemiluminescence enzyme immunoassay
Kenichi UTONobuhide HAYASHIChinami OYABUItsuko SATOJun SAEGUSA
Author information
JOURNAL FREE ACCESS FULL-TEXT HTML

2017 Volume 66 Issue 3 Pages 234-241

Details
Abstract

抗核抗体検査は膠原病の診断において重要である。近年,化学発光酵素免疫測定法(CLEIA法)を原理とした疾患特異的抗核抗体のスクリーニング試薬が開発された。しかし,DNA感作磁性粒子においてプロゾーン様の現象が確認されたため,その後に試薬の改良がなされている。今回,我々はこの改良された試薬(CLEIA-ANA)について,従来試薬(ELISA-ANA)との相関性や一致性を検討するとともに,間接蛍光抗体法(IF-ANA)との比較解析等により臨床的有用性を評価した。CLEIA-ANAとELISA-ANAには有意な相関関係が認められた。両法の判定一致率は88.2%であり,使用抗原,測定環境や測定感度の違い等により不一致が生じたと考えられた。臨床的有用性の評価では,CLEIA-ANAは健常人での陽性率が低率であり,健常人および各種膠原病患者での陽性率はカットオフ値160倍を使用したIF-ANAと同等であった。両法の判定一致率は86.3%と低率であったが,CLEIA-ANAは,IF-ANAで見落としやすい抗SS-A抗体や抗Jo-1抗体を含む8項目の疾患特異的抗核抗体のみを効率よく検出できていた。以上より,CLEIA-ANAは全自動で迅速(19分)な疾患特異的抗核抗体のスクリーニング検査として有用である。しかしながら,使用抗原や測定環境により捉えることのできない抗核抗体があり,今後の課題である。

I  はじめに

抗核抗体検査は膠原病の診断において重要である1)。抗核抗体のスクリーニングには間接蛍光抗体法(IF法)が標準法として現在最も広く用いられているが,臨床的意義が不明な抗核抗体も多く,健常人での陽性率が高いことも問題点として指摘されている2)。さらに,操作の煩雑さや判定が目視のため客観性に乏しいのも難点である3),4)

これらの問題点を解決するために,核抽出抗原あるいは限定した核抗原を使用した酵素免疫測定法(ELISA法)をはじめ様々な検査が開発され,自動化への応用から操作が簡便となり客観的な評価が可能となった5)~12)。特に限定した核抗原のみを使用した検査は健常人での陽性率が低く,疾患特異的抗核抗体のみを効率よくスクリーニングできる点で有用である8)~12)。近年,化学発光酵素免疫測定法(CLEIA法)を原理とした8項目(抗dsDNA抗体,抗RNP抗体,抗Sm抗体,抗SS-A抗体,抗SS-B抗体,抗Scl-70抗体,抗セントロメア抗体および抗Jo-1抗体)の疾患特異的抗核抗体のスクリーニング試薬が開発され12),従来のELISA法と比較して全自動で簡便かつ迅速(19分)に検出,定量が可能となった。しかし,古村ら12)の検討試薬に含まれていたDNA感作磁性粒子においてプロゾーン様の現象が確認されたため,その後に試薬の改良がなされている。

今回,我々はこの改良されたスクリーニング試薬について,従来試薬(ELISA法)との相関性や一致性を検討するとともに,IF法との比較解析や抗体価の分布により臨床的有用性を評価した。

II  材料および方法

1. 対象

全身性エリテマトーデス(SLE)45例(男性3例,女性42例),混合性結合組織病(MCTD)10例(女性のみ),強皮症(SSc)22例(男性3例,女性19例),多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM)20例(男性5例,女性15例),シェーグレン症候群(SS)16例(男性2例,女性14例)および関節リウマチ(RA)48例(男性9例,女性39例),の合計161例(男性22例,女性139例)の膠原病患者血清を用いた。健常人として,本院職員健診で特に異常の認められなかった250例(男性125例,女性125例)の血清を使用した。試料は血清分離後,−40℃以下で保存した。なお,本研究は神戸大学大学院医学研究科医学倫理委員会の承認を得て,検体の採取や分析は患者の同意の元に実施した(承認番号:1574)。

2. 試薬と分析機器

疾患特異的抗核抗体のスクリーニング検査には,検討試薬として「ステイシアMEBLuxテストANA」(以下CLEIA-ANA,医学生物学研究所:MBL社)を使用し,全自動臨床検査システム ステイシア(LSIメディエンス社)で測定した。従来試薬には「MESACUP ANAテスト」(以下ELISA-ANA,MBL社)を使用し,用手法で測定した。

IF法を用いた抗核抗体スクリーニング検査には,「フルオロHEPANAテストFシリーズ」(以下IF-ANA,MBL社)を使用し,染色操作は用手法で行った。鏡検はB励起用の補助励起フィルターEY455および補助吸収フィルターO530を装着した蛍光顕微鏡BH-2(オリンパス社)を用いた。カットオフ値には,40倍(IF-ANA (1:40))および160倍(IF-ANA (1:160))を使用した。

8項目の疾患特異的抗核抗体および疾患非特異的な抗ssDNA抗体の検出は,「ステイシアMEBLuxテストシリーズ」(MBL社)を使用し,全自動臨床検査システム ステイシア(同上)で測定した。抗Ribosomal P抗体は,「Ribosomal P ELISA kit」(MBL社)を使用し,用手法で測定した。抗SS-A 52k抗体は,ELISA-ANAに含まれているSS-A 52k抗原を使用し,ELISA法(自家製)は用手法で行った。

3. 原理と方法

CLEIA-ANAは,各々の疾患特異的抗核抗体の測定試薬に含まれる抗原感作磁性粒子を一定の割合で混合することで,8項目の疾患特異的抗核抗体のスクリーニングを可能としている。使用抗原には,従来のELISA-ANAからSS-A 52k抗原とRibosomal P抗原を除いた合成DNA(dsDNA/ssDNA),合成RNA(U1 RNA),リコンビナント抗原(U1-RNP 70k, U1 RNP A, U1 RNP C, CENP-B, Jo-1)および精製抗原(Sm, SS-A 60k, SS-B, Scl-70)を用いている(Table ‍1)。測定にはCLEIA法を原理とした全自動分析装置を用い,検出と定量を行う。結果判定は添付文書記載のカットオフ値10 Index以上を陽性とす‍る。

Table 1  Source of antigen for CLEIA-ANA and ELISA-ANA
Antigens CLEIA-ANA ELISA-ANA
dsDNA/ssDNA λ phage λ phage
RNP-70k Recombinant Recombinant
RNP-A Recombinant Recombinant
RNP-C Recombinant Recombinant
U1 RNA In vitro transcription In vitro transcription
Sm Native Native
SS-A 60k Native Native
SS-A 52k Not used Recombinant
SS-B Native Recombinant
Scl-70 Native Native
CENP-B Recombinant Recombinant
Jo-1 Recombinant Recombinant
Ribosomal P Not used Recombinant

今回,我々はCLEIA-ANAとELISA-ANAの相関性や一致性を検討するとともに,CLEIA-ANAの臨床的有用性を評価した。臨床的有用性は各種膠原病患者および健常人を対象とし,IF法との比較解析(陽性率,判定一致率および疾患特異的抗核抗体の捕捉率)や抗体価の分布により評価した。

4. 統計解析

スピアマン順位相関および各種膠原病疾患と健常人における陽性率の比較(χ2検定)等の統計的解析にはMedCalc(ver. 16.2,ベルギー)を用い,有意水準はp < 0.05を有意とした。

III  結果

1. CLEIA-ANAとELISA-ANAの比較

1) 相関性

膠原病患者161例におけるCLEIA-ANAとELISA-ANAの相関性は,スピアマンの順位相関係数rs = 0.842(p < 0.0001)と良好な相関関係が認められた。

2) 判定一致率と不一致例の解析

膠原病患者161例におけるCLEIA-ANAとELISA-ANAの判定一致率は88.2%となった(Table 2A)。両法で不一致が認められた19例を示した(Table 2B)。ELISA-ANA+/CLEIA-ANA−の不一致と‍なった9例のうち抗dsDNA抗体が2例,抗Ribosomal P抗体が1例,抗SS-A 52k抗体が2例および抗ssDNA抗体が7例陽性であった。ELISA-ANA‍−/CLEIA-ANA+の不一致10例のうち7例は8項目の疾患特異的抗核抗体のいずれかが陽性を示したが,3例は全て陰性で,そのうちの1例は抗ssDNA抗体の単独陽性例であった。

Table 2 

Concordance rate of positive and negative results (A) and discrepancies (B) between CLEIA-ANA and ELISA-ANA

A
ELISA-ANA
Positive Negative Total
CLEIA-ANA Positive 91 10 101
Negative 9 51 60
Total 100 61 161
Concordance rate 88.2%
B
Sample No. Disease CLEIA-ANA ELISA-ANA Disease- specific ANAs Disease-nonspecific ANA
CLEIA ELISA CLEIA
dsDNA RNP Sm SSA SSB Scl-70 CENP-B Jo-1 Ribosomal P SSA 52k ssDNA
25 RA +
26 RA + +
29 SLE + + +
64 PM/DM + +
85 SLE + +
91 RA + +
97 RA + + +
105 RA + +
117 SLE + + + +
6 RA + + Not tested Not tested
16 RA + Not tested Not tested
18 SLE + + Not tested Not tested +
36 RA + Not tested Not tested +
57 RA + Not tested Not tested
101 MCTD + + Not tested Not tested
118 SS + + Not tested Not tested
123 PM/DM + + Not tested Not tested
125 SS + + Not tested Not tested
128 SS + + Not tested Not tested

RA: rheumatoid arthritis, SLE: systemic lupus erythematosus, PM/DM: polymyositis/dermatomyositis, MCTD: mixed connective tissue disease, SS: Sjögren’s syndrome

 

2. 疾患特異的抗核抗体スクリーニング検査としての臨床的有用性

1) IF法との比較解析

① 各種膠原病患者および健常人における陽性率

CLEIA-ANA,IF-ANA (1:40)およびIF-ANA (1:160)の陽性率を示した(Table 3)。膠原病患者のSLE,MCTD,SSc,PM/DM,SS,RAでの陽性率は,CLEIA-ANAは84.4%,100%,77.3%,50%,93.8%,22.9%,IF-ANA (1:40)は93.3%,100%,86.4%,40%,81.3%,39.6%,IF-ANA (1:160)は73.3%,100%,81.8%,25%,62.5%,18.8%であった。一方,健常人での陽性率は,CLEIA-ANA,IF-ANA (1:40),IF-ANA (1:160)で5.2%,20.8%,4.8%であった。

Table 3  Positive rate of CLEIA-ANA, IF-ANA (1:40) and IF-ANA (1:160) in 161 CTD patients and 250 healthy individuals
n CLEIA-ANA IF-ANA (1:40) IF-ANA (1:160)
SLE 45 84.4% 93.3% 73.3%
MCTD 10 100% 100% 100%
SSc 22 77.3% 86.4% 81.8%
PM/DM 20 50% 40% 25%
SS 16 93.8% 81.3% 62.5% *
RA 48 22.9% 39.6% 18.8%
Healthy individuals 250 5.2% 20.8%** 4.8%

SLE: systemic lupus erythematosus, MCTD: mixed connective tissue disease, SSc: systemic sclerosis, PM/DM: polymyositis/dermatomyositis, SS: Sjögren’s syndrome, RA: rheumatoid arthritis

*p < 0.05 (vs. CLEIA-ANA), **p < 0.0001 (vs. CLEIA-ANA)

② 判定一致率と不一致例の解析

膠原病161例におけるCLEIA-ANAとIF-ANA (1:160)の判定一致率は86.3%となった(Table 4A)。両法で不一致が認められた22例を示した(Table 4B)。IF-ANA (1:160)+/CLEIA-ANA−の不一致となった3例は抗体価が160~320倍,染色型はHo型あるいはSp型であった。IF-ANA (1:160)−/CLEIA-ANA‍+の不一致となった19例のうち抗SS-A抗体は10例,抗Jo-1抗体は4例陽性であった。

Table 4 

Concordance rate of positive and negative results (A) and discrepancies (B) between CLEIA-ANA and IF-ANA (1:160) in 161 CTD patients

A
IF-ANA (1:160)
Positive Negative Total
CLEIA-ANA Positive 82 19 101
Negative 3 57 60
Total 85 76 161
Concordance rate 86.3%
B
Sample No. Disease CLEIA-ANA IF-ANA (1:160) Disease-specific ANAs Disease-nonspecific ANA
Titer Pattern dsDNA RNP Sm SS-A SS-B Scl-70 CENP-B Jo-1 ssDNA
41 SSc 320 Sp +
85 SLE 320 Ho +
105 RA 160 Ho +
1 SLE + + + + +
6 RA + 40 Sp +
8 SLE + 80 Ho + +
16 RA + 40 Ho+Nu
18 SLE + 40 Sp + +
23 PM/DM + + +
27 SS + 80 Sp + + +
49 SLE + 80 Ho+Nu + +
57 RA +
76 PM/DM + +
84 SLE + 80 Sp + +
99 SS + + +
118 SS + +
119 SLE + 80 Ho+Sp + + +
123 PM/DM + +
125 SS + +
128 SS + 40 Sp +
152 PM/DM + +
155 PM/DM + +

SLE: systemic lupus erythematosus, RA: rheumatoid arthritis, PM/DM: polymyositis/dermatomyositis, SS: Sjögren’s syndrome, SSc: systemic sclerosis

③ 疾患特異的抗核抗体の捕捉率

膠原病患者161例のうちCLEIA法で8項目の疾患特異的抗核抗体が1項目以上陽性の99例を対象とした場合,CLEIA-ANAにおける疾患特異的抗核抗体の捕捉率は98%となり,IF -ANA (1:40)およびIF-ANA (1:160)の捕捉率89.9%および80.8%より有意に高かった(p < 0.05およびp < 0.001)。

2) 各種膠原病患者および健常人における抗体価の分布

各種膠原病疾患および健常人における抗体価の分布を示した(Figure 1)。中央値(Index)(Q1:25パーセンタイル~Q3:75パーセンタイル(Index))はSLE 127.8(31.3~234.8),MCTD 187.9(142.5~301.8),SSc 109.9(11.6~174.3),PM/DM 13.9(2.0~75.0),SS 138.3(48.4~251.6),RA 2.3(1.3~7.6)および健常人2.6(1.6~3.7)であった。

Figure 1 

The distribution of index values of CLEIA-ANA in 161 CTD patients and 250 healthy individuals

Lower, middle and upper horizontal lines show 25th percentile, median and 75th percentile, respectively.

SLE: systemic lupus erythematosus, MCTD: mixed connective tissue disease, SSc: systemic sclerosis, PM/DM: polymyositis/dermatomyositis, SS: Sjögren’s syndrome, RA: rheumatoid arthritis

IV  考察

今回,我々が検討したCLEIA-ANAは従来のELISA-ANAと使用抗原や測定環境が異なるため捉えることのできる疾患特異的抗核抗体やその反応性に差異がある。今回の検討では,両法の相関は良好であったが,判定一致率は88.2%とやや低い結果を示した。ELISA-ANA+/CLEIA-ANA−の不一致9例には,CLEIA-ANAで使用していない抗原に対する抗Ribosomal P抗体が1例,抗SS-A 52k抗体が2例陽性であり,PM/DMの1例(No. 64)では他の疾患特異的抗核抗体や抗ssDNA抗体の重複もないため使用抗原の違いによる不一致と考えられた。さらに,不一致9例のうち7例は抗ssDNA抗体が陽性であり,そのうちの5例は抗dsDNA抗体が陰性であった。両法ともに使用抗原にssDNAが含まれているが,これは抗ssDNA抗体の検出よりもむしろ抗dsDNA抗体の検出感度を上げる目的が大きい。すなわち,両法の測定環境はdsDNAとのみ反応する抗体とdsDNA,ssDNAの両方に反応する抗体の2種類の抗dsDNA抗体13)を感度良く検出するように設定している。しかし,両法の至適な測定環境はアッセイ上の問題から全く同一ではなく,緩衝液・洗浄液の塩濃度やpHあるいはssDNAの比率等に差異がある。このため,両法において少なからず検出してしまう抗ssDNA抗体の反応性に差が生じ,これが不一致の原因になった可能性がある。また,不一致9例のうち抗dsDNA抗体が陽性を示したSLEの1例(No. 117)は高抗体価(127.5 IU/mL)であり,Crithidia法による確認試験も陽性であった(データには示していない)。洗浄液が同一のCLEIA法では個別に検出できていたため,他の疾患特異的抗核抗体も適切に捉えるように設定された緩衝液の塩濃度やpHが一部の抗dsDNA抗体の反応性に影響を与えた可能性があり11),注意が必要である。一方でELISA-ANA‍−/CLEIA-ANA+の不一致例の多くはいずれかの疾患特異的抗核抗体が陽性であったことから,ELISA法からCLEIA法への変更に伴い測定感度が向上したと考えられた。

2013年に欧州と米国の標準化委員会から提示された抗核抗体検査の推奨事項では抗核抗体スクリーニングの標準法にはIF法が推奨されているが14),健常人での陽性率が高く,特異度が低いことが指摘されている2)。そのため,我々やTanら5),15),16)は40倍(疾患特異的抗核抗体の捕捉)と160倍(膠原病の鑑別)の2つのカットオフ値を使い分けることを推奨している。今回の検討では,CLEIA-ANAは健常人で5.2%とIF-ANA (1:160)の4.8%と同等に低率であり,各種膠原病患者でもIF-ANA (1:160)とほぼ同等の陽性率であった。そのため,CLEIA-ANAはIF-ANA (1:160)と同様に膠原病の鑑別に有用であると考えられたが,その判定一致率は86.3%と低い結果を示した。CLEIA-ANAは使用抗原が限定されているため,8項目の疾患特異的抗核抗体以外の抗核抗体が検出できない。特に,IF法で判定可能な抗核小体抗体や抗PCNA抗体あるいは近年,SScやPM/DMの新たな診断基準に組み込まれた抗RNAポリメラーゼIII抗体や抗ARS抗体(抗Jo-1抗体は検出可能)等の疾患特異的抗核抗体を検出できないことが難点である。今回のIF-ANA (1:160)+/CLEIA-ANA−の不一致は3例のみであったが,SScの1例(No. 41)は高抗体価で染色型がSp型であり抗RNAポリメラーゼIII抗体の存在が示唆された17)。一方,IF-ANA (1:160)−/CLEIA-ANA+の不一致19例には抗SS-A抗体10例,抗Jo-1抗体4例が認められた。この2つの疾患特異的抗核抗体はその対応抗原が細胞質に分布しているため,IF法で陰性となりやすいが11),CLEIA-ANAではこれらを検出できる点で有用である。さらに,少なくとも1項目以上の疾患特異的抗核抗体を捉える捕捉率はCLEIA-ANAで98%とIF法より有意に優れていたことから,上記の結果と併せて疾患特異的抗核抗体を効率的に検出できていることが確認できた。

最後に,CLEIA-ANAの抗体価の分布では従来のELISA-ANAより測定範囲が広くなり9),試薬性能の向上を確認できた。また,SLE,MCTD,SSc,PM/DMおよびSSでは抗体価が高く,RAおよび健常人では低かった。この結果は以前の報告とも一致しており9),CLEIA-ANAは幅広い測定範囲で一群の疾患特異的抗核抗体を定量的に検出可能であった。

V  結語

CLEIA-ANAは全自動で迅速(19分)な疾患特異的抗核抗体のスクリーニング検査として有用である。さらに,健常人での陽性率が低く,特異度が高い点でも優れている。しかしながら,使用抗原や測定環境により捉えることのできない抗核抗体があり,今後の課題である。

最後に疾患特異的抗核抗体のスクリーニングを目的としたCLEIA-ANAは,IF法を用いた抗核抗体スクリーニングとは全く異なるアッセイとして使用されるべきである。すなわち,CLEIA-ANAが陽性の場合は8項目の疾患特異的抗核抗体のいずれかの存在が示唆されるが,陰性の場合はCLEIA-ANAで検出できない抗核抗体の存在も懸念されるため,状況に応じてIF法やELISA法の追加検査を行う必要がある。また,SLEはIF法が診断基準に組み込まれているため,そのスクリーニング検査にはIF法を優先することが望ましい。

COI開示

本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。

文献
 
© 2017 Japanese Association of Medical Technologists
feedback
Top