Japanese Journal of Medical Technology
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Evaluation of turnaround time (TAT) in the novel blood collection system prioritizing patients’ clinical schedule
Koso KUSUNOKIToshio YONEDA
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2017 Volume 66 Issue 3 Pages 308-314

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Abstract

診療内容を優先した採血・採尿支援システムを稼働し半年が経過したことから,診療前検査に要する時間を確認するために,採血・採尿の受付から検査結果報告までに要する時間(turnaround time; TAT)の調査を行った。2016年9月の1か月間に中央採血室で採血した7,000名を対象として,迅速検査項目を抽出し分析装置別のTATを集計した。尿検査のTATは30分以内,血液検査では依頼される項目の多くが1時間以内であった。この結果は,院内で共通認識となっている診療前検査に要する時間が1時間以内であることに対し,満足のいく結果であった。

I  はじめに

当院では,2016年4月に病院改修を契機として,外来診療での予約診療や診療前検査をより円滑にすることを目的として診療内容を優先した採血・採尿支援システム(以下,採血支援システム)1)を取り入れた。優先内容としては,診察予約時間,CT・エコー検査の予約時間をA区分(8:30~9:00),B区分(9:00~10:00),C区分(10:00~11:00),D区分(11:00以降)と振り分け,予約時間が早い区分より採血することや,特に緊急を要する固形がん治療予定患者については,当日にレジメンオーダー(処方,注射を対象)が有ること,紹介患者については地域連携システムに登録が有ることを条件としてE区分とし,予約時間に関わらず受け付けた時点で採血ができるよう最優先扱いにした。このシステムの運用により,8時の採血開始時間に70~80名の患者が待っている状態から,40~50名に待ち患者が減少したことで,診察予約時間を優先した採血順であることが患者に理解されたものと考える。また,採血支援システム一式の導入と合わせて中央採血室の配置を検体検査室とワンフロアにし採血後の検体搬送に係る時間の短縮を図った。今回,この新システムを稼働し半年が経過したことからturnaround time(以下TAT)の調査を実施したので報告する。

本研究は当院倫理委員会審査対象外のため,倫理委員会の承認を得ていない。

II  概要

1. システム構成と情報の流れ(Figure 1
Figure 1 

情報の流れ

当院で使用しているシステムは,電子カルテシステムMegaOakHR Ver4.1(日本電気株式会社),検査システムJCS-50L(日本電子株式会社),採血・採尿支援システム(株式会社テクノメディカ)から構成されている。中央採血室には,採血・採尿受付機(AI-350)3台,自動採血管準備システム2台(BC・ROBO-8000RFID,BC・ROBO-787),アシストソリューション(採血情報端末)10台,個別表示ディスプレイ10台,C-1Pタイプ 採血台5式,C-3Pタイプ 採血架台5式,昇降採血台5台が配置されている。受付で採血・採尿受付機に診察券を挿入すると電子カルテに問い合わせを行い,当日の採血オーダーが有る場合は,診察予約や検査予約の中で最も早い予約時間が採血支援システムに送信され,予約時間帯別に振り分けられた区分と受付順を印字した整理券が発行される。採血支援システムにプールされた依頼情報は採血条件の早い順に自動採血管準備システムに送信され,同時に待合室のディスプレイに整理券と同じ番号を表示する。採血室では準備された採血指示ラベルを採血情報端末で読ませ患者を呼び入れる。採血された検体は隣接の検査システムで到着確認を行い,このタイミングで検査依頼項目と同時に採血・採尿受付時間を検査システムに取り込む。

2. 勤務体制(Table 1
Table 1  勤務体制
出勤時間 中央採血室 分析装置立ち上げ
採血受付
臨床検査技師
患者案内
事務
患者対応
(火曜・木曜)
臨床検査技師
患者対応
(火曜・木曜)
臨床検査技師
採血
臨床検査技師
採血
看護師
生化学免疫 生化学免疫
(月曜)
凝固 血液 一般
7:25
7:55 8名 1名

当院の診療開始の流れは,再来機,採血・採尿受付機の稼働が7時30分,採血開始が8時,外来診察開始が8時25分となっている。このことから8時には全ての分析装置はコントロール測定を終了し測定可能な状態にしておく必要がある。そのための早出勤務時間を7時25分と7時55分とした。検査技師の早出勤務は,7時25分が採血受付1名,分析装置立ち上げ3名(月曜日4名),7時55分からは分析装置立ち上げ1名,採血者8名となっている。検査技師以外では,7時25分に患者案内の事務員1名,採血担当看護師1名が7時55分の出勤となっている。採血患者が多い火曜と木曜は7時25分と7時55分にそれぞれ1名の検査技師が患者対応の応援を行っている。この勤務体制により,朝に集中する検体を短時間で処理することができ,外来患者の検体を溜めることなく測定し,診察開始までに結果報告が間に合うようにしている。

III  対象及び方法

今回は,外来患者を対象とし調査対象期間は,2016年9月1日から30日の月曜~金曜日の祝日を除いた20日間とした。採血受付をした患者は7,000名で1日平均は350名であった。そして,受付から60分を超える場合については抽出対象から外す設定とした。その理由として,採血受付だけを済ませ採血室から離れる患者がいること,また,処置や治療のために採血室でなく中央処置や腫瘍センターで採血されている検体は提出までの時間が長くなるためである。TAT調査の対象とした項目は,当院で測定している外来迅速検体検査加算37項目を含む全42項目について分析装置別に集計を行った(Table 2)。ワンフロア化した採血室と検体検査室に配置された分析装置のレイアウトをFigure 2に示す。

Table 2  TAT対象の分析装置と項目一覧
分析装置 項目
US-3100R Plus(栄研化学) 尿中一般物質定性
UF-1000i(シスメックス) 尿沈渣
XN-9000(シスメックス) 末梢血液一般
末梢血液像
STACIA(LSIメディエンス)2台 PT・フィブリノゲン・APTT・ヘパプラスチンテスト・FDP・Dダイマー・アンチトロンビン
ADAMS(GA1171 HA-8181)(アークレイ)2台 GLU・HbA1c
BM6070(日本電子)2台
BM9130(日本電子)
総ビリルビン・総蛋白・アルブミン・尿素窒素・クレアチニン・尿酸・ALP・ChE・γ-GT・中性脂肪・ナトリウム・クロール・カリウム・カルシウム・LD・CK・HDL-コレステロール・総コレステロール・AST・ALT・LDL-コレステロール・グリコアルブミン・CRP
ARCHITECT i2000SR(アボットジャパン)
UnicelDxi800(ベックマン・コールター)
TSH・FT4・FT3・CEA・AFP・PSA・CA19-9

外来迅速検体検査加算項目対象外を示す

Figure 2 

TAT調査の対象となった分析装置の配置レイアウト

1. 方法

1) TATの計測ポイント(Figure 3
Figure 3 

TAT計測ポイント

TATの計測ポイントは,採血支援システムと検査システムに設定し,採血に要する時間,検体の搬送時間,検査測定から結果送信までの時間を把握できるようにした。採血支援システムでは,①採血・採尿受付機で受け付けた時間,②採血情報端末で指示ラベルを読ませた時間,③患者確認を行い照合した時間,④採血を終了した時間とした(止血を終えた時点)。検査システムでは,⑤検体の到着確認をした時間,⑥結果を送信した時間とした。TAT時間の詳細は,採血待ち時間を①から②(以下a),患者確認を②から③(以下b),採血時間を③から④(以下c),採血終了から検体を到着確認するまでの搬送時間を④から⑤(以下d),検体の測定から結果送信までの時間を⑤から⑥(以下e),採血・採尿の受け付けから検体の到着確認をするまでの時間を①から⑤(以下x)とした。検体搬送にかかる時間(d)は時間を直接抽出することができないことから,(x)から(a)(b)(c)の合計時間を差し引いて求めた。

IV  集計結果

1. 採血患者数及び採血所要時間

採血受付1日平均患者数は,7時30分~8時までが49名(全体の14%),8時~9時が76名(22%),9時~10時が84名(24%),10時~11時が60名(17%),ここまでで全体の77%を占め,特定の時間帯にピークは認められず患者が分散して来院していることが分かる。11時~12時は32名(9%)であった。各曜日別の平均患者数は,月曜日344名,火曜日414名,水曜日379名,木曜日352名,金曜日278名と火曜日が多い傾向となっている。

採血時間帯別の1か月平均採血待ち時間(TAT計測ポイント(a))では,7時30分~8時が26分52秒,8時~9時が8分48秒,9時~10時が7分50秒,10時~11時が5分19秒,11時~12時が3分9秒と,8時以降に受け付けた場合には10分以内の採血待ち時間となっている。7時30分~8時については採血開始前の待ち時間が含まれているために長くなっているが,全時間帯の平均採血待ち時間は9分2秒であった。患者確認をするまでの全時間帯の平均時間(TAT計測ポイント(b))は27秒,採血に要する時間(TAT計測ポイント(c))は3分12秒,患者確認と採血時間については共に時間帯による大きな差は認められなかった。採血の受付から採血終了までにかかる所要時間は,12分37秒となっている(Table 3)。

Table 3  2016年9月の時間帯別採血所要時間集計
抽出前 抽出後 平均所要時間
時間帯 N N 採血待ち 患者確認 採血時間 採血所要時間
7:30–7:59 975 964 26分52秒 24秒 2分57秒 30分07秒
8:00–8:59 1,515 1,498 8分48秒 26秒 3分09秒 12分13秒
9:00–9:59 1,689 1,671 7分50秒 29秒 3分16秒 11分31秒
10:00–10:59 1,159 1,153 5分19秒 27秒 3分16秒 9分06秒
11:00–11:59 640 637 3分09秒 31秒 3分25秒 7分08秒
12:00–12:59 465 464 2分55秒 30秒 3分20秒 6分42秒
13:00–13:59 322 321 1分51秒 25秒 2分56秒 5分12秒
14:00–14:59 162 159 1分40秒 28秒 3分01秒 5分16秒
15:00–15:59 51 51 1分43秒 18秒 3分25秒 5分21秒
16:00–17:00 22 22 1分59秒 35秒 4分31秒 6分28秒
全時間帯 7,000 6,940 9分02秒 27秒 3分12秒 12分37秒

2. 各検査項目のTAT

各検査項目のTATは,1回の測定で承認されたものを抽出している。但し,末梢血液一般と末梢血液像は再検を含んだTATとなっている。その他の検査項目の再検率は,尿中一般定性:1.86%,尿沈渣:27.20%,凝固検査:1.34%,血糖:1.06%,ヘモグロビンA1c:8.64%,生化学I:14.19%,生化学II:1.82%であった。また,測定を行った検体は中央採血室以外の外来から提出された検体も含んだ結果となっている。各検査項目の1日平均件数と平均TATについて,尿中一般定性:159件で15分59秒,尿沈渣(目視率40.5%):75件で25分36秒,末梢血液一般:357件で27分52秒,末梢血液像(目視率52.8%):306件で53分21秒,凝固検査項目:67件で42分49秒,血糖:217件で30分24秒,ヘモグロビンA1c :82件で34分29秒,生化学Iの項目:386件で48分35秒,生化学IIの項目:110件で1時間12分00秒であった(Figure 4)。再検率が10%を超えている尿沈渣と生化学Iの再検を含めたTATは,尿沈渣で39分19秒,生化学Iで61分45秒となり,生化学Iで僅かに1時間を超えていた。生化学Iについては,各時間帯別のTATを調べたが時間帯によるTATの変動は認められなかった(Table 4)。

Figure 4 

2016年9月 各検査項目のTAT(1日平均検体数/平均TAT)

Table 4  2016年9月の時間帯別生化学I TAT
時間帯 N 採血所要時間 搬送時間 測定・報告 TAT
7:30–7:59 942 30分07秒 2分11秒 33分01秒 65分19秒
8:00–8:59 1,795 12分13秒 5分00秒 33分43秒 50分56秒
9:00–9:59 2,265 11分31秒 7分56秒 33分13秒 52分40秒
10:00–10:59 1,556 9分06秒 7分43秒 32分30秒 49分19秒
11:00–11:59 852 7分08秒 9分43秒 31分55秒 48分46秒
12:00–12:59 542 6分42秒 7分04秒 31分26秒 45分12秒
13:00–13:59 385 5分12秒 7分03秒 30分23秒 42分38秒
14:00–14:59 202 5分16秒 5分27秒 31分54秒 42分37秒
15:00–15:59 88 5分21秒 10分05秒 29分23秒 44分49秒
16:00–17:00 41 6分28秒 8分22秒 33分44秒 48分34秒

V  考察

当院では,診療内容に沿った採血順で採血を行っていることから,診察予約票を患者に渡す際に診察予約時間または採血以外の検査予約時間の1時間前に来院すれば診察に間に合うと説明することが院内の共通認識となっている。このことから,採血・採尿の受付時から検査結果送信までに要する時間が1時間以内に収まっていることを項目毎に確認するため調査を行った。

今回の調査結果から,尿検査のTATは尿中一般定性15分59秒,尿沈渣25分36秒であった。尿沈渣については,従来,全自動尿分析装置と全自動尿中有形成分分析装置を連結し運用していたが,検査システムの更新時に単体運用に変更しTAT短縮を図っている2)。再検を必要としない血液検査項目のTATは,末梢血液一般,末梢血液像,凝固検査,血糖,ヘモグロビンA1c,生化学Iそれぞれ1時間以内に収まっている。生化学IIの項目については1時間12分00秒と1時間を超えていた。生化学IとIIの差については,同じ搬送ラインで親検体を分注し,それぞれのラインに分かれ測定していることからTATに及ぼす搬送ラインの影響は少なく,生化学Iの反応時間が12分であるのに対し,生化学IIが20~30分と長いことが要因として考えられる。現状のままでは生化学IIの項目を1時間以内に報告することは厳しいため,今後の対応策として,高速凝固採血管の使用や血漿を用いるなどの取り組みを行う必要があると考える。

今回の調査では,採血支援システムにおいて7,000名の対象者のうち60名(0.86%)を対象外とし集計を行った。この中には受付だけ済ませ採血室から離れる患者が含まれているが,それ以外に診察予約時間が遅いC区分やD区分の患者が早く来院し受付するケースも存在している。抽出時に除外となった60名のうち40名は診察予約時間がD区分の患者であった(Table 5)。本システムでは,電子カルテ内の情報により区分を自動で決めることから,人為的な操作で区分を変更することは出来なくなっている。患者が予約時間より早く来るケースとしては,診察予約票を受け取るときに職員からの説明が不足していることや,患者本人が理解できていない場合,医師が採血システムの取り決めを知らない場合に発生している。これらの課題も含め,TAT短縮を実現するためには検査部内の対応に留まらず,検査部から病院内の委員会等に積極的に課題を提案し病院全体の問題として取り組むことが重要であり,日常的にも他部署とのコミュニケーションを密にして迅速な対応がとれる環境を整えておくことが円滑な外来診療に結びつくと考える。

Table 5  2016年9月の区分別採血所要時間集計
区分 抽出前 抽出後 平均所要時間
N N 採血待ち 患者確認 採血時間 採血所要時間
E 500 498 3分54秒 32秒 3分36秒 8分03秒
A 766 760 11分39秒 27秒 3分09秒 15分14秒
B 2,019 2,016 12分18秒 26秒 3分06秒 15分48秒
C 1,441 1,432 9分59秒 28秒 3分17秒 13分38秒
D 2,274 2,234 5分43秒 28秒 3分09秒 9分16秒
全区分 7,000 6,940 9分02秒 27秒 3分12秒 12分37秒

一方,ハード面においては,中央採血室と検体検査室のワンフロア化を図ったことにより,中央採血室から検体受付場所までの距離が縮まり,採血終了から検体到着確認までに要する時間は平均3分33秒であった。中央採血室と検体検査室のワンフロア化を図ることはTAT短縮を考える上で重要なポイントであり,有効な手段の一つと考える。

VI  まとめ

診療内容を優先した採血支援システムを取り入れ,半年が経過した時点でのTATを調査した。その結果,診療前検査として依頼される生化学II以外の検査項目では,採血・採尿受付から結果報告まで1時間以内で報告されていた。本採血支援システムの稼働により,診療前検査を有効に機能させることができ,外来における診療効率の向上に貢献できるものと考える。

COI開示

本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。

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