Japanese Journal of Medical Technology
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Relationship between serum remnant lipoprotein and arteriosclerosis in women
Masahiro YAMAMORIMadoka NAGAYAMAMikiko ENDOAtsumi KATOMisa HOTTAEtsuko MAEOKAHideki KATONorihiro YUASA
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2017 Volume 66 Issue 6 Pages 615-621

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Abstract

【目的】レムナントリポ蛋白は動脈硬化を進展させるリポ蛋白であるが,2006年に血清レムナント様リポ蛋白コレステロール(RLP-C)の直接測定法が開発され,汎用自動分析機で簡便に測定できるようになった。本研究は動脈硬化の指標である頸動脈超音波検査における内膜中膜複合体厚(IMT)とRLP-C,従来からの動脈硬化性疾患マーカーとの関連を検討し,動脈硬化の診断におけるRLP-C測定の意義を明らかにすることを目的とした。【対象と方法】対象は当院の脳ドックを受診した251名である。総頸動脈遠位壁の最大IMTを測定し,これが早期動脈硬化研究会の提唱する年代別基準値以上を呈した場合,動脈硬化と定義した。動脈硬化と脂質異常(RLP-C 7.6 mg/dL以上,LDL-C 140 mg/dL以上,HDL-C 40 mg/dL未満,TG 150 mg/dL以上,non HDL-C 170 mg/dL以上,LH比2.6以上),動脈硬化危険因子(年齢,喫煙,血圧,体格指数,HbA1c,eGFR)との関連を検討した。【結果】単変量解析ではRLP-C ≥ 7.6 mg/dLとHbA1c ≥ 6.2%は動脈硬化と有意な関連を認めた。多変量解析ではHbA1c ≥ 6.2%は独立して動脈硬化と有意な関連を認めた(p < 0.05)。性別を分けて単変量・多変量解析を行うと,男性ではHbA1c ≥ 6.2%が,女性ではRLP-C ≥ 7.6 mg/dLが動脈硬化と有意な関連を認めた。【結論】RLP-C測定は女性において動脈硬化の診断予測に有用である。

I  背景と目的

レムナントリポ蛋白はカイロミクロンやVLDLがリポ蛋白リパーゼの作用で代謝を受け小型化した中間代謝リポ蛋白で,これが血中でうっ滞すると血管内膜に沈着し動脈硬化を進展させる1),2)。2006年に界面活性剤を用いたレムナント様リポ蛋白コレステロール(remnant like particle-cholesterol; RLP-C)の直接測定法が開発され,血清レムナントリポ蛋白の測定はhigh density lipoprotein cholesterol(HDL-C)やlow density lipoprotein cholesterol(LDL-C)のホモジニアス測定法と同様に,汎用自動分析機で簡便にできるようになった。本研究は血清RLP-C,従来からの動脈硬化性疾患マーカーと動脈硬化との関連を検討し,動脈硬化の診断における血清RLP-C測定の意義を明らかにすることを目的とした。

II  対象と方法

2012年12月から2014年9月に当院脳ドックを受けた320人のうち,高triglyceride(TG)血症(400 mg/dL以上)の人と高脂血症薬を服用している人を除いた251名(男性162名,女性89名,平均年齢59.6 ± 12.7歳)を対象とした。400 mg/dL以上の高TG血症の人を除外した理由は,LDL-CをFriedewald式で算出するためである。頸動脈内膜中膜複合体厚を動脈硬化の指標とし,測定には超音波診断装置Aplio SSA-700A(東芝メディカルシステムズ)を使用した。頸動脈超音波の測定は仰臥位で行い,7.5 MHzのリニア型プローブを用いて左右の総頸動脈遠位壁の内膜中膜複合体の厚さ(intima media thickness; IMT)を計測し,総頸動脈で最大となるIMTをmaxIMTとした(Figure 1)。本研究ではmaxIMTが早期動脈硬化研究会の提唱する年代別基準値以上の場合,動脈硬化と定義し(Table 1),男性23名,女性7名が該当した3)。採血は空腹時に行い,脂質関連項目として血清RLP-C ,LDL-C,HDL-C,TG,non HDL-C,LDL-C/HDL-C比(LH比)と動脈硬化との関連を検討した。動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版に従って,脂質異常をLDL-C 140 mg/dL以上,HDL-C 40 mg/dL未満,TG 150 mg/dL以上,non HDL-C 170 mg/dL以上とした4)。また,血清RLP-Cは7.6 mg/dL以上,LH比は2.6以上を異常とした5),6)。動脈硬化危険因子として,年齢,喫煙,収縮期血圧(BPs)≥ 130 mmHg,拡張期血圧(BPd)≥ 85 mmHg,体格指数(BMI)≥ 25 kg/m2,グリコヘモグロビン(HbA1c)≥ 6.2%(NGSP値),推算糸球体濾過量(eGFR)< 60 mL/min/1.73 m2と動脈硬化との関連を検討した。脂質関連項目及び動脈硬化危険因子は健診当日に測定した値を用いた。

Figure 1 

総頚動脈超音波検査での内膜中膜複合体の厚さ(矢印)

Table 1  総頸動脈内膜中膜複合体の最大値(maxIMT)の年代別基準値(早期動脈硬化研究会,2010)
年齢 maxIMT(mm)
~9 ≤ 0.5
10~19 ≤ 0.6
20~29 ≤ 0.7
30~39 ≤ 0.8
40~49 ≤ 0.9
50~59 ≤ 1.0
60~69 ≤ 1.1
70~ ≤ 1.2

測定試薬はRLP-C:メタボリードRemL-C(酵素法:協和メデックス),HDL-C:メタボリードHDL-C(選択的抑制法:協和メデックス),TG:デタミナーL TG II(遊離グリセロール消去酵素法:協和メデックス)を使用し,分析装置はBM6070(日本電子)を用いた。LDL-CはFriedewald式(LDL-C = TC − HDL-C − TG/5)によって算出した4)

動脈硬化の有無と脂質関連項目・動脈硬化危険因子との関連はt検定あるいはカイ2乗検定を用いて比較した。maxIMTを指標とした動脈硬化と脂質異常,動脈硬化危険因子との関連をカットオフ値をそれぞれの異常値下限(あるいは上限)として単変量解析(二変量ロジスティック回帰分析)で検討した。そして,単変量解析でp < 0.2の因子を多変量ロジスティック回帰分析に投入して検討した。上記の検討を全症例,男性/女性で解析した。p < 0.05を統計学的に有意差ありとし,統計学的解析はJMP version 10.0(SAS Institute Inc, Cary, NC)を用いた。

尚,本研究は当院臨床研究審査委員会の承認を受けている。

III  結果

対象症例の背景をTable 2に示す。動脈硬化あり‍/なしで有意差を認めたのはRLP-C,TG,HbA1cであった。全症例における動脈硬化と脂質異常,動脈硬化危険因子との関連をTable 3に示す。全症例における検討では,単変量解析で動脈硬化と有意に関連した因子はHbA1c ≥ 6.2%とRLP-C ≥ 7.6 mg/dLであった。多変量解析ではHbA1c ≥ 6.2%は動脈硬化と有意な関連を認めた。つまり,HbA1c ≥ 6.2%の人ではHbA1c < 6.2%の人と比較すると,動脈硬化の相対リスクは3.94倍(95%信頼区間:1.41–11.04,p = 0.009)であった。男性(症例数162名,動脈硬化症例23名)と女性(症例数89名,動脈硬化症例7名)を分けて解析すると(Table 4, Figure 2),単変量解析,多変量解析ともに男性ではHbA1c ≥ 6.2%が,女性ではRLP-C ≥ 7.6 mg/dLが動脈硬化と有意な関連を認めた。つまり,女性においてはRLP-C ≥ 7.6 mg/‍dLの人ではRLP-C < 7.6 mg/dLの人と比較して,動脈硬化の相対リスクは7.66倍(95%信頼区間:1.09–53.81,p = 0.041)であった。

Table 2  対象症例の動脈硬化と脂質関連項目・動脈硬化危険因子
全症例(n = 251) 動脈硬化あり(n = 30) 動脈硬化なし(n = 221) p
Remnant like particle-cholesterol(RLP-C)(mg/dL) 7.23 ± 4.74 9.38 ± 6.19 6.94 ± 4.44 0.0079
Low density lipoprotein cholesterol(LDL-C)(mg/dL) 125.1 ± 27.8 124.5 ± 30.8 125.2 ± 27.5 0.8999
High density lipoprotein cholesterol(HDL-C)(mg/dL) 63.2 ± 16.3 62.0 ± 18.5 63.4 ± 15.9 0.6227
Triglyceride(TG)(mg/dL) 113.0 ± 57.6 137.5 ± 74.9 109.8 ± 54.2 0.0134
Non-high density lipoprotein cholesterol(non HDL-C)(mg/dL) 147.7 ± 30.5 151.9 ± 34.1 147.1 ± 30.0 0.4161
LDL-C/HDL-C 2.09 ± 0.67 2.14 ± 0.70 2.09 ± 0.67 0.7667
HbA1c(%) 5.65 ± 0.47 5.89 ± 0.68 5.62 ± 0.43 0.0032
年齢(歳) 59.6 ± 12.7 63.7 ± 11.0 59.0 ± 12.9 0.0564
 男性(n = 162)(歳) 60.0 ± 13.4
 女性(n = 89)(歳) 59.5 ± 11.5
Body Mass Index(BMI)(kg/m2 22.9 ± 3.3 23.2 ± 3.4 22.8 ± 3.3 0.5308
喫煙(あり:なし) 62:189 5:25 57:164 0.2768
収縮期血圧(BPs)(mmHg) 123.9 ± 15.8 125.9 ± 14.5 123.7 ± 16.0 0.4689
拡張期血圧(BPd)(mmHg) 75.0 ± 11.2 75.9 ± 12.2 75.0 ± 11.2 0.6567
推算糸球体濾過量(eGFR)(mL/min/1.73 m2 72.7 ± 15.4 68.0 ± 14.1 73.4 ± 15.4 0.0775
Table 3  動脈硬化と脂質異常,動脈硬化危険因子との関連(全症例n = 251)
n 単変量解析 多変量解析
相対
リスク
95%信頼
区間
p 相対
リスク
95%信頼
区間
p
Remnant like particle-cholesterol(RLP-C) < 7.6 mg/dL 166 1 0.046 1 0.065
≥ 7.6 mg/dL 85 2.19 1.01–4.73 2.14 0.96–4.80
Low density lipoprotein cholesterol(LDL-C) < 140 mg/dL 181 1 0.795
≥ 140 mg/dL 70 1.12 0.49–2.57
High density lipoprotein cholesterol(HDL-C) < 40 mg/dL 8 1.05 0.13–8.84 0.965
≥ 40 mg/dL 243 1
Triglyceride(TG) < 150 mg/dL 197 1 0.213
≥ 150 mg/dL 54 1.71 0.73–4.00
Non-high density lipoprotein cholesterol(non HDL-C) < 170 mg/dL 190 1 0.758
≥ 170 mg/dL 61 1.15 0.48–2.73
LDL-C/HDL-C < 2.6 196 1 0.778
≥ 2.6 55 0.87 0.34–2.26
HbA1c < 6.2% 224 1 0.005 1 0.009
≥ 6.2% 27 3.85 1.51–9.81 3.94 1.41–11.04
年齢 1.03 1.00–1.06 0.063 1.01 0.98–1.05 0.457
Body Mass Index(BMI) < 25 kg/m2 196 1 0.103 1 0.059
≥ 25 kg/m2 55 0.36 0.11–1.23 0.29 0.08–1.05
喫煙 なし 189 1 0.277
あり 62 0.57 0.21–1.57
BPs ≥ 130 mmHgあるいはBPd ≥ 85 mmHg なし 179 1 0.153 1 0.157
あり 72 1.78 0.81–3.91 1.88 0.78–4.51
推算糸球体濾過量(eGFR) < 60(mL/min/1.73 m2 48 1.33 0.53–3.31 0.541
≥ 60(mL/min/1.73 m2 203 1
Table 4  動脈硬化と脂質異常,動脈硬化危険因子との関連
(a)男性(n = 162) n 単変量解析 多変量解析
相対
リスク
95%信頼
区間
p 相対
リスク
95%信頼
区間
p
Remnant like particle-cholesterol(RLP-C) < 7.6 mg/dL 104 1 0.409
≥ 7.6 mg/dL 58 1.46 0.60–3.57
Low density lipoprotein cholesterol(LDL-C) < 140 mg/dL 119 1 0.649
≥ 140 mg/dL 43 1.25 0.48–3.29
High density lipoprotein cholesterol(HDL-C) < 40 mg/dL 8 0.88 0.10–7.31 0.888
≥ 40 mg/dL 154 1
Triglyceride(TG) < 150 mg/dL 118 1 0.703
≥ 150 mg/dL 44 1.21 0.46–3.12
Non-high density lipoprotein cholesterol(non HDL-C) < 170 mg/dL 123 1 0.778
≥ 170 mg/dL 39 0.86 0.30–2.49
LDL-C/HDL-C < 2.6 115 1 0.410
≥ 2.6 47 0.64 0.22–1.84
HbA1c < 6.2% 140 1 0.015 1 0.017
≥ 6.2% 22 3.62 1.28–10.20 3.88 1.28–11.75
年齢 1.03 0.99–1.06 0.132 1.01 0.98–1.05 0.515
Body Mass Index(BMI) < 25 kg/m2 117 1 0.101 1 0.097
≥ 25 kg/m2 45 0.35 0.10–1.23 0.33 0.09–1.22
喫煙 なし 106 1 0.170 1 0.187
あり 56 0.48 0.17–1.37 0.47 0.16–1.44
BPs ≥ 130 mmHgあるいはBPd ≥ 85 mmHg なし 107 1 0.572
あり 55 1.30 0.52–3.23
推算糸球体濾過量(eGFR) < 60(mL/min/1.73 m2 38 1.18 0.43–3.24 0.748
≥ 60(mL/min/1.73 m2 124 1
(b)女性(n = 89) n 単変量解析 多変量解析
相対
リスク
95%信頼
区間
p 相対
リスク
95%信頼
区間
p
Remnant like particle-cholesterol(RLP-C) < 7.6 mg/dL 62 1 0.028 1 0.041
≥ 7.6 mg/dL 27 6.82 1.23–37.74 7.66 1.09–53.81
Low density lipoprotein cholesterol(LDL-C) < 140 mg/dL 62 1 0.916
≥ 140 mg/dL 27 0.91 0.17–5.02
High density lipoprotein cholesterol(HDL-C) < 40 mg/dL 0 not caliculated
≥ 40 mg/dL 89
Triglyceride(TG) < 150 mg/dL 79 1 0.153 1 0.787
≥ 150 mg/dL 10 3.70 0.62–22.27 0.74 0.09–6.49
Non-high density lipoprotein cholesterol(non HDL-C) < 170 mg/dL 67 1 0.259
≥ 170 mg/dL 22 2.49 0.51–12.10
LDL-C/HDL-C < 2.6 81 1 0.614
≥ 2.6 8 1.79 0.19–17.02
HbA1c < 6.2% 84 1 0.324
≥ 6.2% 5 3.25 0.31–33.86
年齢 1.04 0.97–1.12 0.249
Body Mass Index(BMI) < 25kg/m2 79 1 0.975
≥ 25kg/m2 10 < 0.01 0.00–0.00
喫煙 なし 83 1 0.981
あり 6 < 0.01 0.00–0.00
BPs ≥ 130 mmHgあるいはBPd ≥ 85 mmHg なし 72 1 0.114 1 0.137
あり 17 3.64 0.73–18.11 3.87 0.65–23.06
推算糸球体濾過量(eGFR) < 60(mL/min/1.73 m2 10 1.35 0.15–12.54 0.791
≥ 60(mL/min/1.73 m2 79 1
Figure 2 

女性における動脈硬化と脂質異常,動脈硬化危険因子との関連

IV  考察

レムナントリポ蛋白はTG-richなリポ蛋白であるカイロミクロン及びvery low density lipoprotein cholesterol(VLDL-C)が代謝された中間代謝産物の総称である7),8)。レムナントリポ蛋白は代謝が非常に早いことが特徴で,健常者では血中にはほとんど存在しないが,高TG血症を伴う脂質異常症,糖尿病,メタボリックシンドロームなどで上昇する8),9)。レムナントリポ蛋白は変性LDLと同様,血管内皮に侵入し,容易にマクロファージに取り込まれ,マクロファージは泡沫細胞へと変化し動脈硬化巣を形成する1),7)。一方,レムナントリポ蛋白の増加は血小板凝集能を亢進させ,血管内の血栓形成を促進する7),10)

動脈硬化性疾患は多くの疫学研究により様々な危険因子が明らかにされ,動脈硬化に至るメカニズムが細胞レベルで解明されてきた4),7)。レムナントリポ蛋白は動脈硬化惹起性リポ蛋白の1つとして注目され,食後高脂血症やメタボリックシンドローム,冠動脈疾患,脳血管疾患,糖尿病との関連が報告されてきた7)~15)。また,動脈硬化のリスク判定だけでなく高脂血症治療薬の効果判定への応用も期待されている8)

我々の検討では,全対象では動脈硬化と有意に関連を認めた因子はHbA1c ≥ 6.2%であった。しかし,男性と女性を分けて検討すると,男性ではHbA1c ≥ 6.2%,女性ではRLP-C ≥ 7.6 mg/dLが動脈硬化と有意に関連した。従って,従来からの脂質関連項目と比較してRLP-Cは女性において動脈硬化と関連が強いことが示唆された。我々の調査しえた限りでは,RLP-CとIMTとの関連を検討して,女性においてRLP-Cが従来の動脈硬化リスク因子よりも動脈硬化と関連の強い因子であることを示したのは本報告が初めてである。

McNamaraら16)は米国のFramingham Heart Studyによる検討から,RLP-Cは特に女性においてLDL-CやHDL-Cよりも冠動脈疾患の独立した強い危険因子であることを報告した。また,Taguchiら17)はRLP-CがIMT,心臓足首血管指数と正の相関を示し,RLP-Cが高レベルにある健常者女性では,頸動脈及び大動脈の動脈硬化症を予測できると報告した。これらの結果は我々の結果を支持するものである。

本研究において女性でRLP-Cと動脈硬化との関連が顕著であったのは,女性ホルモンの関与が推定される。女性は女性ホルモン(特にエストロゲン)の強い抗動脈硬化作用により,動脈硬化危険因子から守られている18)。エストロゲンの抗動脈硬化作用の1つとして抗酸化作用があり,この抗酸化作用により動脈硬化の一因であるLDLの酸化変性を抑制している18)。一方,RLP-Cは酸化変性を受けずとも動脈硬化の原因となる。エストロゲンの抗動脈硬化作用がRLP-Cには及ばないため,他の動脈硬化危険因子と比べて女性で動脈硬化に及ぼす影響が大きいことが推測される。

本研究にはいくつかの限界がある。1つ目は脳ドック受診者を対象としたことで,本研究を一般化するには注意が必要である。2つ目に,動脈硬化危険因子として既往歴や家族歴あるいは喫煙量,過去の喫煙歴などを調査できなかったことである。3つ目に,本研究は横断研究であるため,検討項目,とくにRLP-Cの経時的変化と動脈硬化の進展を検討していないことである。今後は多施設,多数の症例で縦断研究が行われ,RLP-Cと動脈硬化との関連が更に明らかにされる必要がある。

血清RLP-Cが汎用自動分析機で測定できるようになったことで,簡便さは従来のマーカーであるLDL-CやHDL-Cと同様となった。本研究により,RLP-C測定が女性において動脈硬化の診断予測に有用であることが明らかになった。今後の研究で,レムナントリポ蛋白が動脈硬化のリスク評価や治療の効果判定などにおいて,従来からの動脈硬化マーカーと比較してどのような特徴があるのか明らかにされることを期待する。

V  結語

IMTを動脈硬化の指標とすると,女性においてRLP-Cが従来の動脈硬化リスク因子よりも強く動脈硬化と関連することを本研究は明らかにした。

COI開示

本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。

文献
 
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