2017 Volume 66 Issue 6 Pages 676-679
一般社団法人福岡県臨床衛生検査技師会(以下,福臨技)筑豊地区の新たな取り組みとして,青年部という組織を立ち上げた。この組織の立ち上げに至った経緯や背景,青年部の活動内容と結果,そこから見えてきた今後の課題について報告する。技師会の将来に対する懸念や技師会活動を知っている後継者不足のために,今後の筑豊地区の技師会活動が衰退していくのではないかという不安があった。そこで,20~30代の技師を中心とした青年部を立ち上げ,筑豊地区青年部の活動が始まった。青年部立ち上げの目的としては,若い世代を中心に技師会に人を集めることと他施設との交流を深めることであった。そのために勉強会や親睦会を企画し,結果として,立ち上げ当初の目的は達成できた。技師会活動の今後の継続を勘案し青年部という組織作りが行われたが,この青年部の活動が筑豊地区の技師会を動かす要因の1つとなり,これが筑豊地区の技師会活動の活性化に繋がった。現在は,青年部のメンバーが再編され,新たな課題も見えてきた。今後この活動が筑豊地区から全国へ拡大できるよう邁進し,若い世代が臨床検査技師会を活性化させることができる,という思いを持つその一助となることを願う。
一般社団法人福岡県臨床衛生検査技師会(以下,福臨技)筑豊地区では,技師会活動のマンネリ化や若い世代が技師会活動に興味を持っていないことによって,将来の技師会活動に対する懸念が示唆された。また,技師会活動を知っている後継者も育成されていないことから,今後の筑豊地区の技師会活動が衰退していくのではないかという不安もあり,問題として捉えた。
そこで福臨技筑豊地区では,会員の技師会活動や行事への積極的な参加を促し,技師間の交流を深めるため,特に若い世代の技師会に対する意識を変えることを目的とした福臨技筑豊地区青年部を立ち上げて活動を展開した。青年部が発足して約3年が経過することを機にこれまで青年部が行ってきた活動内容と今後の課題について報告する。
福臨技筑豊地区の会員総数は約250名,20~30代に該当する若手の会員数は100名前後である。青年部の発足には,筑豊3地域から年齢20~30代で,経験年数が5~15年の若手から中堅技師のメンバーを中心に筑豊地区役員の推薦の下,構成した。3地域からの選出は,嘉飯山地域から3名,田川地域から1名,直鞍地域から1名の計5名であった。
青年部での会議を重ねていく中で,筑豊地区の若い技師が技師会活動に気軽に参加しやすい雰囲気を作ることが最重要課題として挙がってきた。その方策としては,20~30代の技師に限定した親睦バーベキュー大会を企画し,施設間の繋がりを深めることで,若い技師の視線を技師会に向けてもらうように試みた。
更に,青年部は専門性が高く参加しづらいという各研究部門の勉強会についても,多くの技師が参加しやすい基礎的,基本的な内容の勉強会を企画し開催した。その具体的な内容は,「臨床検査技師が取得できる資格・認定制度について」,「緊急臨床検査士の紹介」,「超音波検査士の紹介」,更に当直に役立つ生化学検査,輸血検査,尿一般検査,心電図検査などの基礎的な内容の「当直のための検査シリーズ」を企画した。現在でも定期的な活動として,年1回の親睦会,年3回の勉強会の計4回は継続されている。他にも,青年部の活動として筑豊地区役員会の参加,新人研修会や筑豊臨床検査発表会等の技師会活動に参画した。参加者の要請にはメールの活用や,青年部メンバーが直接自施設の若い技師に声掛けを行うなどをして,若い技師の参加を促した。
青年部が取り組んで改善してきたことは,新人研修会や筑豊臨床検査発表会の懇親会に若手技師の参加が少なかったことに対して,筑豊地区の役員会に参加して若手技師が参加しやすくするために懇親会の参加費の減額と懇親会の余興内容について提案した。その提案については,了承を得ることができ,現在では技師会行事の懇親会の若手の参加は増加した。また,青年部主催の勉強会後には,参加者に対して,勉強会の感想や参加したい勉強会の内容,青年部に対する要望などについてアンケート調査を実施し,参加者とともに作り上げる勉強会の形を目指した。アンケートの結果からは「認定資格のモチベーションが上がった」や「認定資格の必要性や意義を改めて考えることができた」,「他施設の当直体の運用を聞くことが出来て良かった」などの意見があった。
親睦会と勉強会の参加者については,Table 1, 2に示した。
開催年度 | 参加者数(人) |
---|---|
26 | 62 |
27 | 50 |
28 | 50 |
青年部主催 | 各分野主催平均参加者数(人) | ||
---|---|---|---|
開催年度 | 開催月 | 参加者数(人) | |
26 | 12 | 41 | 16 |
27 | 3 | 41 | 20 |
9 | 51 | ||
12 | 46 | ||
28 | 3 | 35 | 16 |
10 | 35 | ||
12 | 35 |
親睦会に関しては,以前開催されていたボーリング大会では若い技師の殆どが参加していなかったのに対し,青年部主催の親睦会では若い世代のおよそ半数近くである50~60名の参加があった。
また,各研究部門の勉強会の参加者は20名程度であるが,青年部が主催する勉強会では40名前後の参加者があり,活発な意見交換の場の提供としての効果があった。
また,親睦会や青年部主催勉強会に参加する若手の技師の間に面識が生まれ,青年部の目標としていた地区での若い世代の交流が浸透し,以前と比較しても技師会活動への集客性,特に若い世代の集客性は達成することができた。
平成26年度から青年部を発足させ,勉強会や親睦会の企画,運営に携わってきた実績と,青年部メンバーでの意見交換を積み重ねることで,現在の筑豊地区の青年部の活動の礎を築いた。同時に,われわれにとって良い経験をこの約2年間に得ることができた。青年部のメンバーとして他施設の技師との交流をすることで,新たな発見や気付きが生まれ,それが自施設の所属長などに良い意見となって反映される。また,「技師会を活性化して行かなければならない」,「旧態依然のままでは何も変わらない」という使命を感じながら,若い世代が技師会に積極的に参加できる環境と意見を傾聴する環境が整ったと感じた。
また,平成29年3月に実施された筑豊地区会員を対象としたアンケート調査より,「青年部・青年部Jr.の組織をご存知ですか?」の問いに「知っている」「なんとなく知っている」と答えた会員が89%(143名/160名中)であり,筑豊地区内での青年部組織の認知度はかなり高いものであった。
現在の活動メンバーは平成28年6月から再編成され,6名で活動を行っている。今後の活動の課題として,1つ目は病院の規模が異なる施設の対応としては,小規模施設の技師を技師会活動にどのように参加させるかである。青年部主催の行事を重ねていく中で,参加者の偏りが見られ何度も参加する会員もいれば,ほとんど参加しない会員も認められた。積極的に技師会活動に参加している会員には,今後は技師会や青年部組織への運営側に参加して頂けるよう声掛けを行っていく必要がある。ほとんど参加しない会員に対しては,環境の多様性に合わせた対応策を新メンバーで意見交換していくことが大切である。2つ目は勉強会や親睦会のマンネリ化に注意を払うことである。勉強会などでアンケートを行い参加者の要望を把握し,必要に応じて組織横断的な方法で共働して勉強会の企画を行い,青年部と地区学術部長が協力し開催が継続されるように努力する必要がある。
技師会活動がより強固な組織になることを勘案し,青年部よりも若い入職5年未満の技師を選出した「青年部Jr.」という組織を新たに発足させた。今後は,青年部が青年部Jr.の育成を行う必要があり,さらに青年部が若手の目標となる使命がある。若い世代が技師会組織を担う人材として育成され,青年部Jr.から青年部,そして青年部から役員へという技師会活動の伝承の連鎖を担うこともまた青年部の使命である。若い世代が頑張っていくことで年配役員が刺激され,互いに相乗効果によって筑豊地区の技師会活動が活性化することを期待している。
筑豊地区青年部の活動が筑豊地区の技師会が活性化された要因となった。今後はこの実績を踏まえ,福岡県内の他3地区(福岡,北九州,筑後)にも活動を水平展開し,4地区合同で青年部活動を展開したいと願っている。このことが福臨技の活性化に繋がることを希望している。
この論文を投稿する目的には,全国の若い世代が技師会活動を活性化し,更には日本臨床衛生検査技師会の活性化に繋がれば考え,その一助となれば幸いと思っている。
最後に,福臨技筑豊地区の新たな取り組みである「青年部」の活動が,今後も永続され,若手に受け継がれ全国的な組織展開に結びつくことを願い,稿を閉じる。
本論文の要旨は第26回福岡県医学検査学会にて発表を行った。
本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。