Japanese Journal of Medical Technology
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Importance of the cooperative system in the hospital documented through the experience of introduction of Common Reference Intervals
Kimie OKAZAKIKatsunori KOHGUCHIEtsuko WATANABETakayuki TSUJIOKAKaoru TOHYAMA
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2018 Volume 67 Issue 1 Pages 90-98

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Abstract

臨床検査データ判読の指標である基準範囲について,現在,日本臨床検査標準協議会(JCCLS)により「共用基準範囲」の導入が進められている。このような基準範囲の共用化は多施設間のデータ連携においても不可欠である。岡山県では現在複数の基幹病院等で導入が進められており,当院でも院内のコンセンサスを得たのちに導入準備を進め,2016年7月から運用を開始した。また,併せて血算の単位表記を変更したことから,様々な部門システムや関連文書への影響が想定され,多くの確認・変更作業を要した。実際の変更作業では,検体検査システムおよび電子カルテシステムのマスタ変更,関連部門システムの変更,関連文書の変更,分析装置の設定変更,臨床ならびに患者への周知,WEB関連の変更など,その作業範囲は多岐にわたったが,事前の準備と関連部門の協力,また変更内容の周知徹底により,大きな混乱なく運用を開始した。現在,検査データは院内院外を問わず様々なシステムと連携しており,その整合性を確保しつつシステムの運用管理を行うことは検査部の責務であり,課題であると考えられた。今後,全国的に共用基準範囲の導入が進み,どのような場面でも同じ指標で検査データの判読が可能となることを期待する。

I  はじめに

臨床検査は現代医療において欠くことのできない医学的情報である。近年は標準化,精度管理およびクロスチェック等の進歩により,検査データの精密度・正確度ならびに検査情報の互換性は大きく向上している1)。また日本臨床衛生検査技師会の設置する臨床検査データ共有化部会により,臨床化学や免疫血清など主要な検査項目のデータ共有化も推進されている2)。しかしその一方で,データ判読の指標となる基準範囲に関しては,いまだ施設あるいは都道府県独自の設定値,外部委託先である衛生検査所の基準範囲,また,試薬メーカーの推奨値などが用いられる例が多い3)。現在,基準範囲の共用化を進める全国的な動きとして,日本臨床検査標準協議会(JCCLS)が主体となり「共用基準範囲4)」の導入が各都道府県で進んでいる。このような基準範囲の共用化は多施設間で検査データを共有する上でも不可欠である。

岡山県は全国的に見ても共用基準範囲導入が積極的に進められている県といってよい。2014年の県医師会報上には,共用基準範囲導入を提言する内容の寄稿が掲載されている5)。以降2016年末の時点で,当院はじめ複数の基幹病院で導入が実施され,また,2017年4月からは地域に密着した検査センターでの導入も行われた。これを契機に,今後岡山県下の導入施設数は更に増えるものと予想される。また岡山県では医療ネットワーク「晴れやかネット6)」が稼働しており,多くの医療機関で医療情報の共有化が実現している。今後県下の各施設が共用基準範囲を導入し,同じ指標でデータ判読が可能となれば,検査データの共有化は地域連携における医療資源の有効活用にもつながると考えられる。更に,現在数多く進められている多施設共同研究や臨床データベース構築事業など,蓄積されたビッグデータとしての臨床検査情報を正確かつ有効に利用するためにも,基準範囲の統一化が強く望まれるようになってきている3)

当院では,2016年7月から共用基準範囲を導入し運用を行っている。当院における導入作業内容,そして,それを通して見えた検査データ連携の現状について報告する。

II  方法

1. 準備作業

当院では共用基準範囲導入を決定後,院内のコンセンサスをはじめ様々な課題の洗い出しと準備作業に着手した。その主な内容について述べる。

1) 院内のコンセンサス

共用基準範囲導入にあたり,院内のコンセンサスを得ることは必須である。当院では病院運営委員会や医療情報システム管理委員会への上申と承認を経て,診療部長会において導入に関する報告を行った。臨床との調整では,糖尿病内分泌内科から,脂質関連の項目について臨床判断値を併記するか,それが不可能な場合は共用基準範囲ではなく臨床判断値を用いてほしいとの要望があった。導入時点の電子カルテシステム(電子カルテ)および検査情報システム(検査システム)では,複数の基準範囲を同時に設定し併記することは不可能であり,検討の結果,中性脂肪,HDLコレステロール,LDLコレステロールについては臨床判断値を採用することとなった。

2) 血算項目の単位表記の変更

当検査部では今回の導入に併せ,血算に関する単位表記の変更を決定した。これは将来的なSI単位への移行を視野に入れたもので,血小板数の変更例では 35.0 × 104/μLの表記が350 × 103/μLとなる。十分な周知なく変更を実施すれば,データ判読上の過誤を招きかねない状況であり,臨床への周知が大きな課題となった。

3) 関連システムへの影響と協力態勢の確保

病院情報システムでは,電子カルテおよび60を超える部門システムが相互に連携し,運用されている。システム間の検査データ連携や電子カルテ文書へのデータ記載なども日常的に行われており,今回の導入の影響範囲は,検査部にとどまらず様々な部門へも及ぶことが予想された。特に表示桁数が変更となる血算項目に関してその影響度は大きく,各部門システムにおける変更作業発生の可能性が示唆された。そこで,院内の各部門に対し,変更内容の概要を提示したうえで,データ連携の有無や想定される影響に関するアンケートを実施した。その結果,電子カルテ以外に薬剤部,健診センター,腎センター,中央手術部,感染管理の5部門へ影響があることが判明したため,これらの部門ならびに病院情報システム管轄部門である医療資料部へも依頼し,協力態勢の確保を行った。

また自施設以外のシステムでは,先に述べた「晴れやかネット」における影響について確認した。晴れやかネットの結果参照画面上ではデータとともに検査システム側から送信された基準範囲・単位が表示されるが,晴れやかネット側に検査項目マスタは存在せず,システム変更は不要であることが判明した(Figure 1)。

Figure 1 

岡山医療ネットワーク「晴れやかネット」患者検査データ参照画面例

「晴れやかネット」の検査結果参照画面ではデータとともに基準範囲上下限値および単位が表示される。これらは検査データとともに検査システム側から送信されたものであり,晴れやかネット側にはマスタ設定は存在しない。したがって基準範囲・単位変更に伴うシステム変更は発生しなかった。

2. 導入作業

1) 検査システムCLINILAN GL-2(A&T)および電子カルテHOPE/EGMAIN-GX(富士通)

検査システムおよび電子カルテに関してマスタの変更と世代更新を行った。変更作業は反映のタイミングにも留意すべきであり,内容によって即時反映か,あるいは資源配布時に反映されるのかを判断し作業を行う必要があった。また,変更項目の確認では,血小板粘着能の血小板数やCDマーカーのリンパ球数など,主要項目以外の関連項目において変更対象としての見落としがみられ,追加作業が発生した。

2) 関連部門システム

検査データは病院情報システム内で様々な部門システムと密接に関わっており,その形態は電子カルテを通して直接データ連携を行うもの,部門システム内に独自のマスタを持つものなど様々である。今回各部門の協力により確認を行ったシステムとその変更内容を示す(Table 1)。

Table 1  関連部門システムのデータ連携状況とシステム変更内容
関連部門システム
(ベンダー)
データ連携の状況 システム変更等の対応
細菌検査CLINILAN MB-2(A&T) ・検体検査システムとデータ連携あり(CRP, WBC)
・細菌システム画面上にデータのみ表示(基準範囲・単位の表示なし)
・システム変更なし
・スタッフへの周知にて対応
感染管理システムCLINILAN IC-2(A&T) ・患者モニタリング画面内のバイタルグラフにCRP, WBCの表示あり ・グラフスケールの変更を実施
健診支援システム
(麻生情報システム)
・電子カルテ経由で検査データの連携あり
・健診支援システム内に検査項目のマスタあり
・結果値は健診システムの判定区分により判定後,報告書発行
・協会けんぽ等,外部へのデータ出力あり
・健診支援システム内のマスタ変更
・報告書フォーマット変更
・外部への出力プログラム変更(血算桁数)
透析システム FutureNetWeb+(日機装) ・電子カルテ経由で検査データの連携あり
・透析システム内に検査項目のマスタあり
・透析システム内のマスタ変更
・桁数が変更となる血算については新規項目マスタとして登録
調剤システム(トーショー) ・電子カルテ経由で検査データの連携あり
・調剤システム内に検査項目のマスタあり
・注射箋,処方箋への検査データ,単位,基準値を超えた場合の矢印↓↑の印字あり
・調剤システム内のマスタ変更
麻酔記録システム PrimeGaia(日本光電) ・電子カルテ経由で検査データの連携あり
・術前診察記録等の画面上に検査データ表示あり(単位は画面に固定)
・システム稼働前であったため共用基準範囲の内容を反映後,リリース
循環器ファイリングシステム(グッドマン) ・電子カルテ経由で検査データ連携あり
・システム画面上に検査データ表示あり(単位は画面に固定)
・単位変更は不可であったため,システム画面上に単位変更履歴を記載

① 細菌検査システムCLINILAN MB-2および感染管理システムCLINILAN IC-2(いずれもA&T)

細菌検査システムではCRP(C反応性蛋白)や白血球数の数値データが画面上に表示されるが,基準範囲・単位の表示はなくシステム変更は発生しなかった。一方,感染管理システムではデータ連携と同時にグラフ表示を行っており,こちらはグラフスケールの変更が必要となった。

② 健診支援システム(麻生情報システム)

健診支援システムは電子カルテ経由で検査データの連携を行い,結果の判定や報告書作成を行っている。当院では人間ドック学会の基準範囲が存在する項目はその基準範囲を,それ以外の項目は検査システムの基準範囲を用いている。今回は後者の項目を対象とし,健診支援システム内の検査項目マスタおよび報告書フォーマットの変更を実施した。また,健診支援システムでは協会けんぽ等外部への検査結果出力を行っている。血算項目に関しては,外部へのデータ出力時に従来のデータ桁数への変換が必要となり,出力プログラムの変更が実施された。

③ 腎センター透析システムFutureNetWeb+(日機装)

透析システムでは電子カルテ経由で検査データの連携を行っている。システム内には独自の検査項目マスタを持つが,世代管理機能は有さない。そこで,桁数が変更となる血算項目については新規マスタとして登録することで対応した。

④ 薬剤部調剤システム(トーショー)

薬剤部では調剤システムにおいて生化学項目やeGFR(推算糸球体濾過量)などの検査データ連携を行っており,注射箋・処方箋上に検査データを印字している。システム内には検査項目の基準範囲・単位の設定を有しており,設定内容の変更を実施した。

⑤ 麻酔記録システムPrimeGaia(日本光電)

麻酔記録システムは検査データの連携・表示機能を有するが,共用基準範囲導入の時点ではシステム稼働前の準備段階であった。そこで,稼働時には変更を反映した内容でリリースするよう医療資料部とシステムベンダーで調整を行った。

⑥ 循環器ファイリングシステム(グッドマン)

循環器ファイリングシステムでは画面上に検査データが表示されるが,単位は固定表示のため変更は不可能であった。そこで,単位について「6/30までは○○,7/1より△△」のように画面上に表示することで対応した。

3) 関連文書

医療資料部ならびに文書管理部門である病歴室の協力のもと,電子カルテ上の文書について内容の確認と変更を実施した。また,一部の文書で検査項目名や単位の不整合が認められたため,併せて修正作業を実施した。

① 電子カルテ 診療業務支援ドキュメントシステム Yahgee(富士フイルム)およびeXChart(富士通)

複数の文書内に検査データの入力欄があり,フォーマットの変更が必要となった。それぞれの文書の関連診療科に確認を行ったうえで変更を実施した(Figure 2)。

Figure 2 

電子カルテ Yahgee文書およびeXChart内の検査項目記載欄例(変更前・後)

電子カルテ文書には検査データの記載欄が設けられたものが多数存在する。個々の文書について関連診療科に確認後,書式の単位変更を実施した。

② 化学療法レジメン

レジメンの多くに化学療法を中止する際の基準となる検査データが記載されている(Figure 3)。しかし,全てのレジメンのフォーマット変更は容易ではなく,作業量の多さから導入日に合わせた変更は不可能と判断した。今後の変更については,臨床腫瘍科担当医師と調整中である。

Figure 3 

化学療法レジメン内の中止基準検査データ例

レジメン内には化学療法を中止する際の基準となる検査データの記載がある。そもそも単位自体の記載がなく,内容の修正が必要と思われたが,450を超えるレジメン文書が存在し,今回の導入作業に併せた変更は見送られた。

③ 指定難病 臨床調査個人票

臨床調査個人票は「難病の患者に対する医療等に関する法律」で規定された診断書である。多くの文書で検査データの記入欄があるが,公的文書のためフォーマット変更は不可能であり,実際の変更作業は発生しなかった。文書作成時には数値データと単位の整合性に注意するよう,医師向けの案内文書で周知することで対応した。

4) 多項目自動血球分析装置XN-3000(シスメックス)

データの表示桁数が変更となる血算項目では,分析装置の設定変更が必要であり,また,血算が24時間対応項目であることから,日付をまたぐ午前0時の作業となった。あらかじめ変更スケジュールについて検査部スタッフ,検査システムベンダーおよび分析装置メーカーで申し合わせのうえ作業を実施し,当直業務への支障なく変更を完了した。

5) 先日付検査オーダの再登録

電子カルテ上で入力された先日付検査オーダには,検査システムへ依頼電文が到着した時点の基準範囲がすでに紐づけられている。このため,マスタを変更後,約17,500件の先日付オーダについて検査システム側で再登録作業を実施した。

6) 臨床ならびに患者への周知

血算の単位表記変更により見かけ上のデータが大きく変動することから,臨床ならびに患者への周知が非常に重要な課題であった。実際の周知内容について以下に示す。

① 医師への周知

医師に対しては,導入の経緯や基準範囲と臨床判断値の違いについて説明した詳細な案内文書を作成した(Figure 4)。通常,検査内容変更に関しては,電子カルテ掲示板上に案内文書のPDFを掲示するが,今回は周知徹底のためPDF掲示に加え全医師を対象として紙文書での配布を行った。

Figure 4 

医師を対象として作成した案内文書

基準範囲導入の経緯,変更に伴う注意事項,基準範囲と臨床判断値の違いなど,詳細な説明を掲載している。

② 患者への周知

変更内容に関する患者の理解を目的とし,平易な表現で内容を説明した患者向け案内文書を作成した。文書の配布は検査受付カウンターに印刷したものを配置し,自由に持ち帰ってもらう形式とした。

③ 電子カルテへのアナウンス掲載

共用基準範囲に関するアナウンスを,導入前日からその後約2か月にわたり電子カルテTOPページに掲載し,医療スタッフに対する周知徹底の一助とした。

7) WEB関連の変更

検査項目に関する情報は病院ホームページ(HP)などのWEBコンテンツ上でも掲載している。病院HPで公開している「検査項目の基礎知識(Figure 5)」,中央検査部HPの検査項目に関する検索ツール,検査情報提供ソフトウエアRefDB(A&T)について,それぞれの基準範囲・単位の変更を実施した。

Figure 5 

病院ホームページ内 検査項目の基礎知識のページ

III  結果

臨床の反応として,導入後1か月間に検査部に寄せられた共用基準範囲に関する問い合わせは10件であった。その多くは血算の単位表記に関する確認の電話であったが,案内文書で通知済みであることを伝え,いずれも納得された。また,検査部には患者からも基準範囲変更に関する問合せが寄せられた。その内容は,ALTについて新たに男女別の基準範囲が設定されたことに関するものであった。

検査部ならびに各部門での変更作業については,いずれのシステムも導入日に併せて問題なく変更が完了した。全体を通して導入に関する大きな混乱やクレームの発生などは見られず,現在まで業務上のトラブルも発生していない。

IV  考察

今回の経験から,共用基準範囲の導入には事前のコンセンサスの取得や入念な準備,そして確実な変更作業が不可欠であると考えられた。また,案内文書や電子カルテTOPページのアナウンスはどの医師も認識しており,周知徹底の効果は十分得られた印象であった。患者からも基準範囲変更に関する問合せが寄せられたことは,近年インターネットなどを介して医療に関する情報を容易に入手できることから,患者自身の検査結果に対する関心が高まっていることによるものと推察された。

全国的にみた共用基準範囲の状況として,導入施設は1割強(日本医師会2016年度臨床検査精度管理調査結果より)といまだ少数派であり,普及には時間を要すものと考えられる。岡山県の状況としては,県下のクロスチェックサーベイ参加施設98施設(一部広島県含む)のうち30施設で共用基準範囲が導入されており,全国的な割合と比較しても高い導入率といえる(一部項目での導入を含む。2017/5/22現在)。また一方では,日本検査血液学会から血液検査項目に関して,共用基準範囲案の上限値を切り上げ,下限値を切り捨てて表記する案も提示されている7)。導入に当たっては共用基準範囲に関する今後の動向にも注目すべきである。

現在,臨床検査データは院内の様々な部門システムと連携し,また,自施設以外でも多施設間データ連携や臨床データベースなど,その活用状況は検査部で把握できない局面にまで及んでいる。実際に今回の確認作業において,一部の部門システムや文書で項目名や単位設定の不整合が認められ,修正が必要となるケースがみられた。情報ネットワークにおけるデータ活用までを視野に入れ,整合性を確保しつつシステムの運用管理を行うことは,検査部の責務であり今後避けて通れない大きな課題であると考えられた。

現在用いられている検査データ判読の指標には,基準範囲以外にも臨床判断値である診断閾値,治療閾値,予防医学的閾値など様々なものがある。基準範囲と臨床判断値はその臨床上の意味が異なるものであり,病態に応じて使い分けることが患者の健康上の利益を最大化するとされる3)。運用上の混乱を避けるためには,それぞれの意義の違いを理解し,臨床サイドと共通した認識を持つことが必要である。当院では共用基準範囲導入後も一部項目については臨床判断値を用いている。基準範囲と臨床判断値の考え方の違いについては,今後も臨床サイドの理解を得る努力が必要であると考えられた。

V  結語

当院における共用基準範囲導入では,血算の単位表記変更を同時に実施する計画としたため,院内の各部門へ予想以上の影響が生じることが判明した。そこで,多くの部門の協力のもと,事前の調整や変更内容の周知徹底などの準備を重ね,混乱なく導入を終えることができた。

また今回の導入経験を通じ,検査データが電子カルテにとどまらず,いかに各部門と密に関わっているかを改めて認識した。本来,検査データは数値のみではなく基準範囲・単位と併せて判読すべきであるが,院内院外を問わず様々なシステムとの連携が進む現在,一度検査システムを離れた検査データは数値のみが独り歩きをしがちである。今回その連携の現状を把握できたことは,今後のシステム管理の上でも大きな収穫であった。

臨床検査データ判読の指標となる基準範囲に関して,これまで全国的に統一されたものはなかった。今後共用基準範囲の導入が進み,主要項目についてどの施設の検査データも同じ指標で判読し,相互の比較が可能となることを期待したい。

 

なお,本論文の要旨は第66回日本医学検査学会(2017年,千葉)にて発表した。

COI開示

本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。

文献
  • 1)   河口  勝憲,他:「岡山県における地域連携クロスチェックサーベイによる継続的な施設間差是正活動の展開とその成果」,医学検査,2006; 55: 103–112.
  • 2)  一般社団法人日本臨床衛生検査技師会臨床検査データ共有化部会:「臨床検査データ共有化ガイドライン」,医学検査,2006; 55: 1246–1251.
  • 3)   康  東天:「共用基準範囲の設定とその意義」,臨牀と研究,2016; 93: 1027–1031.
  • 4)  日本臨床検査標準化協議会 基準範囲共用化委員会(編):日本における主要な臨床検査項目の共用基準範囲案―解説と利用の手引き―,2014.http://www.jccls.org/techreport/public_comment_201405_p.pdf(参照2017-3-25).
  • 5)   通山  薫:「岡山県医師会制定の臨床検査値の基準範囲の改定について」,岡山県医師会報,2014; 1396: 1548.
  • 6)  医療ネットワーク岡山:晴れやかネット.http://hareyakanet.jp
  • 7)  日本検査血液学会:JCCLS共用基準範囲における血球計数項目のJSLH基準範囲案,2015.http://www.jslh.com/doc/JSLH_top_doc02-1.pdf(参照2017-3-25).
 
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