Japanese Journal of Medical Technology
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Technical Articles
Evaluation and confirmation of performance of LABOSPECT 008α Hitachi Automatic Analyzer
Tomohiro HAYASHIAtsuko NISHIHARAMiho KATAYAMAEmi TADAYumi MURAKAMI
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2018 Volume 67 Issue 5 Pages 687-693

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Abstract

生化学自動分析装置の導入時には,ユーザーにおいても実施可能な性能確認試験を行うことが重要である。今回,日立自動分析装置LABOSPECT 008αを導入するにあたり,基礎性能確認試験を行った。試料分注量の精密性,正確性,試料プローブ,試薬プローブのキャリーオーバーおよび反応セルのコンタミネーション試験結果は,いずれもメーカー推奨基準を満たしていることが確認できた。大型自動分析装置であるLABOSPECT 008αの導入は,多検体・多項目の迅速で精確な測定値の報告につながり,日常検査に有用であると考えられた。また,ユーザーが性能確認試験を行うことで,装置の測定原理・特性の理解を深めることができ,装置の保守管理,装置に起因した異常データの解析に役立つと考えられた。

I  はじめに

生化学自動分析装置の性能確認試験には,個々の部品の性能を把握する個別性能試験と,総合的な性能としての試験がある1)。生化学自動分析装置の性能は,メーカー側により仕様性能として保証されているが,近年の生化学自動分析装置の発展は著しく,我々ユーザーは,ユーザー側においても実施可能な性能確認試験を機器試験法マニュアルに従って行い2)~4),装置の性能を正確に把握する必要がある。ユーザーが性能確認試験を通して,反応セル,恒温槽,サンプリング機構,試薬分注機構および測光機構などの構成要素の機能を把握しておくことが,装置メンテナンス時や,装置トラブル時の対応に役立つ。今回我々は,日立自動分析装置LABOSPECT 008α(日立ハイテクノロジーズ社)を導入するにあたり,基礎性能確認試験を行ったので報告する。

II  材料および方法

1. 検討装置

日立自動分析装置LABOSPECT 008α(日立ハイテクノロジーズ社)

2. 使用機材

性能確認試験に使用した使用機材

1.島津分光光度計 UV-2400PC(島津製作所)

2.角型標準セル 光路長10 mm

3.精密電子天秤 AEU-210(島津製作所)基準分銅で正確性確認済み

4.サーミスタ温度計 型式YSI4610(日機装サーモ株式会社)

5.試薬類

①エクディアXL‘栄研’LDH II-J(栄研化学):試料プローブのキャリーオーバーのLD測定用

②デタミナーL IP II(協和メディックス):試薬プローブのキャリーオーバー,反応セルのコンタミネーション試験のIP測定用

③0.1 mol/Lリン酸緩衝液(pH 7.5):試薬プローブのキャリーオーバー,反応セルのコンタミネーション試験用

3. 性能確認試験

1) 試料分注量の精密性

精製水100 mLにオレンジG 75 mgを溶解した30 Abs相当のオレンジG色素水溶液を試料として調製し,0.05%トリトン水溶液を試薬とした。第1試薬80 μL,第2試薬40 μL,Kfactor 10,000の条件下,1.2 μL~10 μLまでの試料量で,吸光度の20重測定を実施した。

2) 試料分注量の正確性

オレンジG色素希釈法(容量法)により正確性を確認した2)。試料は,ヒトプール血清10 mLにオレンジG色素0.35 gを添加させて調製した。試料分注量は,最小分注量の1.2 μLと2.0 μLで行った。調製した試料をサンプルカップ5個に分けて(反応セル:5セル分)用意し,同一サンプルカップから各分注量を装置のサンプリング動作で反応セルに吐出させた。1.2 μLは連続2重測定,2.0 μLは1重測定を行った(同一サンプルカップにおいて1.2 μL × 2重測定→2.0 μL × 1重測定の依頼)。試料吐出後,装置を停止させて反応セル内のオレンジG色素溶液を精製水で5 mLのメスフラスコに希釈回収し,分光光度計で波長478 nmにおいて吸光度を測定した。比較対照として,前述と同様に調製したオレンジ色素溶液の比重を比重瓶と電子天秤で求め,次にオレンジG色素溶液を1 mLサンプルカップにマイクロピペットで分注し,電子天秤で重さを量り,サンプルカップの重さを差し引いて1 mLのオレンジ色素溶液の重さを求めた。求めた比重と重さからオレンジG色素溶液の容量を求めた(比重/重さ)。次に,サンプルカップ中のオレンジG色素溶液を,精製水で2,000 mLのメスフラスコに希釈回収して基準希釈液を調製し,基準希釈液の希釈倍数を求めた(2,000/オレンジG色素溶液の容量)。そして基準希釈液の吸光度を分光光度計で波長478 nmにおいて測定した。

3) 試料プローブのキャリーオーバー

ウシ心臓由来の乳酸脱水素酵素(SIGMA製L-Lactic Dehydrogenase;以下,LD)標品を添加した高LDヒトプール血清(LD活性値で約500,000 U/L)から,生理食塩水へのキャリーオーバー率を求めた2),4)。測定は,高LD血清1本(同一サンプルカップから連続3重測定)-生理食塩水5本を1セットとして,これを計5セット用意した。高LD血清による試料プローブの汚染は,1カップから3重測定することでより汚染させた。キャリーオーバー率の計算は,高LD血清測定直後の生理食塩水のLD値を高LD血清のLD値で割って求めた。

4) 試薬プローブのキャリーオーバー

試料は全て生理食塩水を用い,汚染用試薬として0.1 mol/L(IP濃度:約254 mg/dL)のリン酸緩衝液を使用した。測定は,生理食塩水をデタミナーL IP II(協和メディックス)で測定し,これを基礎値(ブランク値)とした。次に0.1 mol/Lリン酸緩衝液の分注1回-IP測定3回を1セットとして,これを計5セット繰り返した。これにより,試薬プローブを介したリン酸緩衝液中のIPのキャリーオーバー量を確認した。試薬プローブの洗浄条件は,試薬プローブの内側と外側の水洗浄のみである。キャリーオーバー量は,リン酸緩衝液で測定直後の生理食塩水のIP値から基礎値を差し引いて求めた。IP測定のパラメータは試薬キットのメーカー標準測定操作法に従い,リン酸緩衝液のパラメータは装置性能試験のメーカー操作法に従った(Table 4)。なお,今回の方法は,メーカー(日立ハイテク)に従っており,一般的に実施されるオレンジGを用いた方法1),2)と同等の評価ができることはメーカーにより確認済みである。

5) 反応セルのコンタミネーション試験

0.1 mol/L(IP濃度:約254 mg/dL)のリン酸緩衝液を反応セルに最大反応量分注することにより反応セルを汚染させ,洗浄機構による洗浄後,次にセルに残存するIP値を測定することにより反応セルのコンタミネーションの程度を確認した4),5)。測定は,生理食塩水を試料としてIPをデタミナーL IP II(協和メディックス)で測定し,これを基礎値(ブランク値)とした。次に反応セルを1周させ,0.1 mol/Lリン酸緩衝液を試薬として反応セル内を汚染させた。再び反応セルを1周させ汚染させた同一セルに残存するIPを測定した。キャリーオーバー量は,リン酸緩衝液で測定後の生理食塩水のIP値から基礎値を差し引いて求めた。測定は20セル行った。

6) 反応セル内の温度モニタリング

pH指示薬を用いたセル内温度モニタリング法により,反応セル内温度の変化について測定を行った6)。温度変化によりpHが大きく変化する0.1 mol/Lトリスアミノメタン-塩酸系緩衝液(pH 7.9;25.00℃)と,セル間差補正として,温度変化によりpHが変化しない0.5 mol/L炭酸ナトリウム溶液にpH指示薬であるフェノールレッド(PR)を加え,2液の温度変化に伴うpHの変化を2液の吸光度比として求め,セル内温度変化を確認した。測定条件として,主波長は,PRの極大吸収波長付近である540~558 nm,副波長は650 nm以上が望ましいことより,本装置で設定可能な波長である主波長546 nm,副波長700 nmを選択した。まず,31~38℃(1℃刻み)の間でトリスアミノメタン-塩酸系緩衝液と炭酸ナトリウム溶液の選択波長における吸光度を島津分光光度計UV-2400PCで測定することにより,X軸を温度,Y軸を2液の吸光度比とした温度換算用の検量線を作成した。

次にLABOSPECT 008αによる測定は,2液を試薬としてセットし,各々の試薬を試料として試料量10 μLで,主波長546 nm,副波長700 nmの条件で各測光ポイントにおける吸光度を測定した。第1試薬(R1)と第2試薬(R2)の分注量は,180 μL:60 μL(3:1)と120 μL:120 μL(1:1)の試薬比の条件で行い,2試薬分析のセル内温度変化について調べた7)

7) 同時再現性

TP,ALB,Ca(カイノス),CHO,LDL,HDL,TG,GLU(積水メディカル),T-BIL,D-BIL,ALP,ALT,AST,AMY(和光純薬),UA,IP(協和メディックス),CK,GGT(関東化学),Fe,UIBC(シノテスト),CRE(LSIメディエンス),LD,CHE(栄研化学),Mg(デンカ生研)およびUN(ニットーボー)の25項目において,2濃度の精度管理用試料QAPトロールIX,IIX(シスメックス)を用いて,各10重測定を行った。用いた試薬の測定条件は,メーカー指定の添付文書に従い測定した。

III  結果

1. 試料分注量の精密性

試料分注量1.2 μL~10 μLについて,CV%は0.14~0.32%であり,各試料分注量のメーカー推奨の精密性基準を満たしていた(Table 1)。

Table 1  Precision of sample probe
Assigned volume 1.2 μL 2.0 μL 5.0 μL 10.0 μL
n 10 10 10 10
Mean (Abs) 0.2832 0.484 1.1873 2.2841
SD (Abs) 0.0009 0.0014 0.0026 0.0032
CV (%) 0.32 0.29 0.22 0.14
Manufacturer’s recommend CV (%) ≤ 1.5 ≤ 1.5 ≤ 1.0 ≤ 0.8

2. 試料分注量の正確性

各呼び容量に対する実測容量の相対値は,1.2 μLで99.6%,2.0 μLで100.9%であり,いずれもメーカー推奨の正確性基準(100 ± 3%以内)を満たしていた(Table 2)。

Table 2  Accuracy of sample probe
Assigned volume 1.2 μL-① 1.2 μL-② 2.0 μL
n 5 5 5
Measured volume (μL) 1.182 1.195 2.018
Accuracy (%) 98.5 99.6 100.9
SD (μL) 0.008 0.008 0.005
CV (%) 0.68 0.68 0.25

Measured volume (μL): Mean value of three times

Accuracy (%): Measured volume/Assigned volume × 100

3. 試料プローブのキャリーオーバー

ウシ心臓由来のLD標品によるキャリーオーバー率は,0.0004%であり,メーカー推奨基準の0.05%以下を満たしていた(Table 3)。

Table 3  Carry-over for sample probe
Parameter of LD measurement Sample volume 2.5 μL
Reagent 1 and 2 volume 100 μL and 25 μL
LD value of human pool serum added bovine heart LD (U/L) 516,000
Measured contamination value (U/L) 98.5
Contamination rate (%) 0.0004

Measured contamination value (U/L): LD mean value of the first saline after human pool serum added bovine heart LD (n = 5)

Contamination rate (%): Measured contamination value/LD value of human pool serum added bovine heart LD × 100

4. 試薬プローブのキャリーオーバー

試薬プローブを介したリン酸緩衝液中のIPのキャリーオーバー量は,0.014 mg/dLであり,当院で検討したデタミナーL IP II試薬の最低検出感度0.06 mg/dL以下であった(Table 4)。

Table 4  Carry-over for reagent probe
Parameter of IP measurement Sample volume 3.2 μL
Reagent 1 and 2 volume 112 μL and 112 μL
Parameter of Phosphate buffer measurement Sample volume 2.0 μL
Reagent 1 and 2 volume 180 μL and 68 μL
Carry-over value (mg/dL) 0.014

Carry-over value (mg/dL): IP value of the first saline after phosphate buffer − IP blank value (n = 5)

5. 反応セルのコンタミネーション試験

反応セルを介したリン酸緩衝液中のIPのキャリーオーバー量は,0.008 mg/dLであり,当院で検討したデタミナーL IP II試薬の最低検出感度0.06 mg/dL以下であった(Table 5)。

Table 5  Contamination of reaction vessel
Parameter of IP measurement Sample volume 3.2 μL
Reagent 1 and 2 volume 112 μL and 112 μL
Parameter of Phosphate buffer measurement Sample volume 2.0 μL
Reagent 1 and 2 volume 180 μL and 68 μL
Contamination value (mg/dL) 0.008

Contamination value (mg/dL): IP mean value of the saline after phosphate buffer − IP blank value (n = 20)

6. 反応セル内の温度モニタリング

島津分光光度計UV-2400PCで測定した,主波長546 nm,副波長700 nmにおける温度とトリスアミノメタン-塩酸系緩衝液と炭酸ナトリウム溶液の吸光度比の検量線は,Figure 1に示す結果となった。温度変化とそれに伴う吸光度比変化は反比例の関係になり,回帰式はy = −0.0136x + 2.0542となった。本装置の反応温度の仕様は37 ± 0.1℃であり,検量線より求めた換算温度での反応セル内のモニタリング結果は,両試薬比の条件下ともに,試料とR1をセルに分注してから約1分後(測光ポイントで5ポイント)に37℃に達した。R2添加後(19ポイントと20ポイントの間)では,R1:R2 = 3:1の条件では,約16秒(測光ポイントで1ポイント),R1:R2 = 1:1の条件では,約47秒(測光ポイントで3ポイント)で37℃に達した(Figure 1)。

Figure 1 

Monitoring of temperature stability in the reaction vessel

7. 同時再現性

検討した25項目の同時再現性の結果(n = 10)は,QAPトロールIX:CV% = 0.24~1.18%,QAPトロールIIX:CV% = 0.24~0.60%であった(Table 6)。

Table 6  Within-run precision
Ca CHO LDL HDL TG GLU
QAP trol IX Mean (mg/dL) 8.41 112.0 57.6 31.2 100.0 93.1
SD 0.033 0.450 0.25 0.16 0.24 0.32
CV (%) 0.39 0.40 0.44 0.51 0.24 0.34
QAP trol IIX Mean (mg/dL) 11.20 257.4 127.6 75.0 246.0 239.2
SD 0.034 0.84 0.40 0.25 0.97 1.14
CV (%) 0.30 0.32 0.31 0.33 0.39 0.47
UN CRE Mg UA IP T-BIL D-BIL
QAP trol IX Mean (mg/dL) 16.5 0.988 2.25 5.21 3.56 0.86 0.45
SD 0.19 0.004 0.006 0.025 0.011 0.007 0.005
CV (%) 1.18 0.43 0.25 0.48 0.32 0.78 1.07
QAP trol IIX Mean (mg/dL) 43.9 4.462 5.07 8.52 8.14 3.90 1.98
SD 0.15 0.013 0.015 0.022 0.022 0.009 0.007
CV (%) 0.35 0.30 0.30 0.25 0.27 0.24 0.36
AST ALT ALP AMY CK GGT LD CHE
QAP trol IX Mean (U/L) 40.6 28.5 208.2 99.1 144.0 24.0 148.8 215.1
SD 0.21 0.24 0.84 0.36 0.67 0.25 0.64 0.76
CV (%) 0.53 0.83 0.41 0.36 0.46 1.03 0.43 0.36
QAP trol IIX Mean (U/L) 108.6 95.9 424.0 251.8 329.2 86.7 367.4 335.1
SD 0.41 0.46 1.33 0.69 0.91 0.35 1.08 1.03
CV (%) 0.38 0.47 0.31 0.27 0.28 0.40 0.29 0.31
TP ALB Fe UIBC
QAP trol IX Mean1) 5.01 3.15 97.5 135.4
SD 0.014 0.016 0.43 1.00
CV (%) 0.27 0.50 0.44 0.74
QAP trol IIX Mean1) 7.18 4.49 201.0 162.4
SD 0.020 0.027 0.56 0.69
CV (%) 0.28 0.60 0.28 0.42

1) The unit of Mean of TP and ALB is g/dL and the unit of Mean of Fe and UIBC is μg/dL.

IV  考察

本装置の試料分注量の精密性と同時再現性の結果と(Table 6),当院で実施したLABOSPECT 006(日立ハイテクノロジーズ社)導入時の試験結果において,LABOSPECT 006の最小試料分注量である1.0 μLでのCV%は0.38%,2.0 μLでのCV%は0.26%,同項目(T-BIL,D-BIL除く)における同時再現性の結果が,QAPトロールIX:CV% = 0.20~3.50%,QAPトロールIIX:CV% = 0.30~1.30%であったことより,本装置は中型自動分析装置と遜色ない精密性を有していることが示された。

試料分注量の正確性では,今回,同一サンプルカップにおいて1.2 μL × 2重測定→2.0 μL × 1重測定の依頼をたてて,反応セルに試料吐出を行った。その結果,2重測定1回目である1.2 μLの正確性結果(Table 1の1.2 μL-①)が1.182 μL(正確率:98.5%),2重測定2回目の1.2 μLの正確性結果(Table 1の1.2 μL-②)が1.195 μL(正確性:99.6%)と2重測定1回目の値が低値であった。このことは,洗浄水による試料の希釈の影響が考えられた。同一検体から多重測定依頼をたてると,1回目の試料吸引は試料プローブを洗浄水で吐出した後,分節空気と必要試料量に加えて余分に試料(試料ダミー)を吸引し,反応セルに必要量を吐出する。2回目以降の試料のサンプリングは,必要試料量のみの吸引・吐出を繰り返す。したがって,1回目の吸引により,試料は試料プローブの内壁に残っている洗浄水により薄まり,2回目以降は,そのまま連続して試料を吸引するので洗浄水による希釈の影響は小さくなると考えられた。さらに,容量法による正確性試験は,用手法が関わり,その過程も繁雑であるため,装置のみの性能以外の影響も受けることが明らかとなった。

試料プローブのキャリーオーバーではメーカー仕様基準を満たし,試薬プローブのキャリーオーバー,反応セルのコンタミネーション試験はいずれもIP試薬の最低検出感度以下であり,本装置の洗浄機構による汚染除去に問題はないと考えられた。試料プローブのキャリーオーバーにおいて,今回用いたLD標品はウシ心臓由来であるが,用いる由来の動物種LDにより粘性が異なりキャリーオーバーの評価基準が異なるので注意が必要である。また,近年,生化学項目と免疫項目を一連の流れで分析可能な汎用自動分析装置の組み立てが行われ,さらに高感度検出系の試験法で性能試験が必要であるとされている。この場合には,オレンジGを用いる方法や今回のLDを用いた方法ではなく,免疫測定法を用いた方法が推奨される8)

反応セル内の温度モニタリングは,両試薬比の条件下ともに,試料とR1をセルに分注してから約1分後に37℃に達したが,R2添加後では,R1:R2 = 1:1の条件のように,試料と第1試薬量に対する第2試薬量が多いと反応セル内の温度がより下がり,R1:R2 = 3:1と比して温度復帰に時間を要したと考えられた。

V  結語

LABOSPECT 008αの基礎性能結果は良好であり,いずれの試験でもメーカー推奨の基準を満たしていた。したがって,大型自動分析装置LABOSPECT 008αの導入は,多検体・多項目の迅速で精確な測定値の報告と,従来の大型自動分析装置と比較して試薬使用量の減少によるコストの削減にもつながっていると考えられ,日常検査に有用である。

また,自動分析装置の技術の革新は,迅速に精確な検査値を報告することに貢献しているが,それを扱う技師が十分に理解しないままに使用していることがあり,いわゆるブラックボックス化といわれている。自動分析装置の導入時には,性能確認試験を行うことで装置の測定原理・特性の理解を深めることができ,装置の保守管理,装置に起因した異常データの解析に役立っている。

 

本研究は個人情報に触れていないため倫理委員会の承認を得ていない。

COI開示

本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。

文献
 
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