Japanese Journal of Medical Technology
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Examination of the world’s three major infectious diseases: Comparison of Senegal’s diagnostic tests with Japan’s
Fumiko HASHIMOTO
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2019 Volume 68 Issue 3 Pages 570-576

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Abstract

世界保健機構(World Health Organization; WHO)によれば世界3大感染症はHIV・結核・マラリアである。特に1980年代以降に急速に広がったHIV感染は結核の発病を促進した。3大感染症が深刻なのは一般的にサハラ以南アフリカ地域においてである。これらの地域では近年イムノクロマトグラフィー法を中心とした感染症の迅速診断検査(rapid diagnostic test; RDT)が急速に広がっている。RDT診断は日本ではpoint of care testing(POCT)として初期治療に役立つ迅速検査の意味を持つが,サハラ以南アフリカにおいては,簡便に診断が行える検査として用いられている。又,世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)がこれら感染症検査と治療の財源を多く賄っている。尚,結核の診断は現在も塗抹鏡検検査法に頼っている為,新しい技術による検査法が待たれている。一方,日本では結核こそ中蔓延国に分類されるが,これら感染症の発症数が少ない為,診断法として,より精度の高いPCR検査が一般的に用いられる。ここから見えることは高蔓延国においてはいかに合理的に患者を拾い上げるか,低蔓延国においてはいかに正確に診断をするか,が検査において問われているということである。

Translated Abstract

HIV, tuberculosis and malaria are the three major infectious diseases in the world. In sub-Saharan Africa, the damage caused by these infectious diseases is greater. In recent years, immunochromatography using the rapid diagnostic test (RDT) has been widely used in this area. RDT is used for the initial diagnosis in Japan. In sub-Saharan Africa, it can be easily diagnosed, and this has been funded by The Global Fund. However, now, the microscopic diagnosis of tuberculosis is being carried out, and new tests for TB diagnosis are being requested. On the other hand, in Japan, patients with these infectious diseases are fewer. Thus, the diagnosis of infectious diseases by PCR leads to higher accuracy. In conclusion, reasonably identifying patients with highly prevalent infectious diseases in a country is important. It is also important to accurately diagnose low-prevalence infectious diseases in a country.

I  序

世界保健機構(World Health Organization; WHO)によれば世界3大感染症はマラリア・結核・HIVである。しかし,日本では通常目にする疾患ではない。そこで今回私はアフリカ諸国の代表としてセネガル共和国を比較対象に選び,高蔓延国と低蔓延国における検査法の違いを明らかにしてみた。セネガルを選んだ理由としてはアフリカ諸国の中では国情が安定していることから,国際社会の援助が入りやすく,国内で行われる様々な感染症対策プログラムは感染症高蔓延国でのモデルケースとなることが多いからである。世界3大感染症検査が高蔓延国でどの様に行われているかを日本と比較していく。尚,セネガルから得られる最新年の情報を元に比較した為,疾患によって比較年が異なっていることを先にお伝えする。

II  セネガル共和国の医療事情

西アフリカに位置するセネガル共和国は日本の1/2の国土(196,712 km2)と1/10の人口(12,855,155人/2011年)を持つ(Figure 1)。セネガルの公的医療機関は3層のピラミッド構造になっており(Figure 2),医師が常駐するのは大体2次医療施設までである。私立病院もあるが,首都に集中しており,主に富裕層や外国人を対象とする。特に地方においては一般市民が利用出来るのは公的医療機関のみであることが多い。全国に病院34,保健センター89,保健ポスト1,240,保健小屋1,722,が存在する。WHOが推奨する医療施設の基準は病院が1/150,000人,センターが1/50,000人,ポストが1/10,000人であるが,現実はそれぞれ1/368,131人,1/140,637人,1/10,094人(2010年時点)であり保健ポスト以外は医療施設が足りていない1)

Figure 1 セネガル共和国(首都はダカールDaker)

ウィキペディアより

Figure 2 セネガル共和国の医療体制

Planstrategique du System d’Information Sanitaire du Sénégalより改編

又WHOは国家予算の9%以上を保健部門へ分配することを求めているが,2013年時点で11.8%であった2)。しかし,3大感染症対策の財源は2002年に設立された世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)に頼るところが大きい。

2011年のデータでは公的病院の病床数は全国で7,050床であり首都Dakerが40%を占める。医師は1,813人で全体の23%が私立病院の医師であり,71%は首都Dakerとその近郊に集中している。助産師は1,103人で首都が30%,看護関係者は4,102人で首都が38%,検査関係者は157人で首都が64%を占めている。尚,看護・コメディカル部門ともに無資格の医療者も含まれている3)

III  マラリア検査

WHOによれば2015年の世界のマラリア発症件数は2億1,200万件,マラリアによる死亡者数は42万9,000人でそれぞれ90%と92%をアフリカ地域で占めている4)。日本においては2015年の発症件数は40件で< 0.01以下/1,000人の発生数であり,死亡者数は0人。全て持ち込み感染である。65%が熱帯熱マラリアであった5)。一方セネガルにおいては発症件数492,253件で34.48/1,000人の発生数。死亡者数は17,320人で5歳以下の子供が17.9%を占めている。90%以上が熱帯熱マラリアであった6)

1. 検査方法

セネガルにおいては厚層標本作製による顕微鏡下でのマラリア診断が一般的であったが,2007年よりイムノクロマトグラフィー法を用いた迅速診断検査(rapid diagnostic test; RDT)による診断が導入され,爆発的に普及が進んだ。2007年まではマラリアの罹患率が高かったのが2008年以降は1桁台まで下がっている(Figure 36)。これは厚層標本による診断が2次医療施設以上でしか行えなかった為,RDTが導入されるまでは発熱がある患者をマラリアと診断していたことが示唆される。RDTの登場により,設備の整わない1次医療施設においても正確度の高い検査が行えるようになり,マラリア診断の精度が上がったと考えられる。2015年においてマラリアと診断された患者のRDT検査実施率は99.31%にまで達している6)。検査キットとして,Premier Medical CorporationのMalaria Ag P. falciparum(HRP2)Card Testを使用しており,熱帯熱マラリア原虫に特異的な抗原であるHRP-2を検出する。公的機関なら検査は無料で受けられる。RDTが陰性で尚かつマラリアが疑われるときに厚層標本作製による診断が行われるが,それが出来るのは主に州立病院以上の2次医療施設においてであり,有料となる。

Figure 3 セネガルのマラリア罹患率と死亡率の推移

Bulletin epidemiologique annuel 2015 du paludisme au Senegalより改編

日本においてはRDTによる検査はあくまでも補助診断としての位置付けである。確定診断検査として血液検体による1.顕微鏡下でのマラリア原虫の証明,かつ,原虫類の確認による病原体の検出,2.ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction; PCR)法による病原体遺伝子の検出,となっている7)。ほとんどマラリアを見ることのない日本においての確定診断は鏡検よりもPCR法に頼っている。又,RDTによる検査は2018年の時点で承認されていない。

2. 治療と予防について

セネガルでは2003年に妊婦へファンシダールの予防投与を開始し,2006年にはクロロキン薬剤耐性マラリア治療薬(artemisinine; ACT)治療薬を導入している。又2010年より予防の為,化学蚊帳の配布を始めている6)。財政面ではマラリア対策国家プログラム(Programme National de Lutte Contre le Paludisme; PNLP)の国家予算は1.0%のみで,世界基金が40%を受け持っており,RDT実施や化学蚊帳の配布に世界基金の予算の90%をつぎ込んでいる(2012年)8)

日本で承認されている治療薬は2012年まではキニーネとメフロキンのみであったが,その後,アトバコン・プログアニル合剤,プリマキン,そしてACTが承認された。日本では妊婦へのファンシダール投与は禁忌である9)

IV  HIV/エイズ検査

WHOによれば2016年の世界の新規HIV感染者は1,800万人であり,女性が48.5%,15歳以下の子供が5.7%を占める。新規感染者の64%はサハラ以南アフリカが占めている。HIV感染者の累計は3億6,700万人となり,AIDSによる死者は100万人であった10)。日本において,2016年の新規患者数(HIV/AIDS含む)は1,448人であり,近年1,500人前後で推移している。HIV感染者の累計は27,443人となり,AIDSによる死者は14人ですべて40歳以上であった。感染者の特徴として95.3%が男性患者である(内88.3%が日本国籍者であることから日本の特徴としてよいと考える)。感染経路は同性間の性的接触が全体の67.4%を占めており,男性同性愛者間の感染が多い11)。一方セネガルにおいて,2016年実施の検診による新規患者数は9,005人であり,HIV感染者の累計は41,000人となった。全国的な感染率は0.9%と予想されており,サハラ以南アフリカ諸国の中では低い。感染者の特徴としては女性の感染者が男性の1.6倍に上ることである。感性経路としては異性間の性的接触が多く,69.4%(2013年)を占める。又,HIV高リスクグループの感染率は一般より高くセックスワーカー6.6%(2015年),男性同性愛者17.8%(2014年),薬物中毒者5.2%(2011年)となっている12)

1. 検査方法

2015年9月に発表されたWHOのガイドラインで,CD4値に係わらずすべてのHIV陽性者に抗HIV薬治療を開始すべきとの指針が示された13)。セネガルにおいては2003年よりRDT検査と抗レトロウイルス薬(antiretrovirux; ARV)治療を開始した。現在HIVのRDT検査としてアボットのデターミンSDバイオラインHIV-1/2.3,0が使用されている。抗HIV-1/2抗体とHIV-1 p24抗原を同時に検出し,感染急性期をも検出可能な第4世代検出試薬である。RDT陽性時,リボ核酸(ribonucleic acid; RNA)定量やCD4測定を行うことになっているが,これらを行う前にARV治療は開始される。なぜなら,CD4測定は州立病院以上,RNA測定は首都の中央施設でしか行えないからである。検査と治療は無料で行えるが,HIV陽性者の治療率は低く52%であり,特に15歳以下の子供においては26%に留まっている12)。日本においての診断検査はまず,HIVの抗体スクリーニング検査法(ELISA,PA,IC等のRDT)の結果が陽性であり,且つ次のいずれかの検査が陽性の場合にHIV感染症と診断する。1.抗体確認検査(ウェスタンブロット法 蛍光抗体法),2.HIV抗原検査,ウイルス分離及び核酸診断法(PCR等)の病原体に関する検査(HIV病原検査)である14)

2. 治療と予防

セネガル政府はARV治療を行える公的医療施設を増やし2次医療施設で80~90%を超える施設で治療も行えるようにしたが,治療を受けている患者の1/3が首都Dakerに集中しており,地方での治療継続が難しいことが分かる。

そのため,死亡率が3%に対し治療放棄率は9.9%にも及ぶ。2016年の12か月の治療継続率は87.1%であるが,24か月で65.4%,36か月で58.8%,60か月で55.4%であり,5年で約半分に減る(死亡等含む)15)

従って治療と並行して予防に力を入れている。もともと1986年にセネガルにおいて初めてエイズ患者が確認されたが,RDT検査とARV治療が開始されるまでは,啓蒙と予防が中心であった。現在もWHOは予防に力を入れている。セネガルにおいてもコンドームの無料配布はHIV検査が行われる前からHIV啓蒙活動の中心であった。2016年は14,059,620個の配布が行われ,その99%が男性に配布されている。使用率はセックスワーカーとの性行為では90%を超える。又,検診にも積極的であり,検診者の半数以上は妊婦健診者である。2016年は妊婦のHIV検診率が86.4%であったが前年を下回った。理由は試薬の欠品である15)。AIDS対策国家評議会(Conseil National de Lutte Contre le SIDA du Senegal; CNLS)の資金は国が22%,世界基金が76%を賄う。内,試薬や治療薬の購入資金も50%が世界基金から賄われている16)

V  結核検査

WHOによれば2014年の世界の結核患者数は960万人であり150万人が死亡した。15歳以下の子供が約10%を占め,14万人が死亡した。多剤耐性結核は480万人と推定される。結核はHIV陽性者の主な死因でHIV関連死因の1/3を占める。1980年代以降に急速に広がったHIV感染は結核の発病を促進したと言われる17)。日本の2014年の新規結核患者数は19,615人であり,死亡率は1.7%である。罹患率は15.4人(人口10万)であり,中蔓延国に分類される。塗抹鏡検検査(塗抹検査)陽性率は39.0%であり低い。60歳以上の高齢者が71.4%を占め,15歳以下の子供は0.3%である。多剤耐性結核患者は0.5%であり,結核患者のHIV検査実施率は8.5%(不明な者が66.1%もいる)で陽性者は0.2%であった18)

セネガルの2014年の新規結核患者数は13,647人であり治癒率は88%である。罹患率は95人(人口10万)で高蔓延国に分類される。塗抹検査陽性率は70%であり高い。又男性患者が70%以上を占める。15から34歳までの若年層が全体の60%を占め,増加傾向にある。15歳以下の子供の感染率は5%である。多剤耐性結核患者は160人おり,結核患者のHIV検査実施率は80%で陽性者はその内6%であった。結核対策国家計画(Programme National de Lutte Contre la Tuberculse; PNT)の予算は国が48%,世界基金が51%を賄っている19)

1. 検査方法

結核戦略については1990年代から現在まで,基本的な診断方法に変化はない。WHOでは診断に偽陽性率が高くなるレントゲン検査よりも喀痰の塗抹検査法が推進されている。

セネガルにおいても塗抹検査が結核診断の主体である。ただし,塗抹検査はRDTと違い検査人員の能力差がでる検査であるため,結核対策国家計画によって毎年外部精度管理が行われている。塗抹検査が出来る施設は州立病院・保健センター・一部の保健ポストを含め全国で119施設あり,2014年は4半期ごとに実施された。結果は4,383枚の陰性の内,偽陰性だったのは27枚で偽陰性率は0.6%であり,930枚の陽性の内,偽陽性率が1.5%であった。しかし,予算が無い為に2015年以降は半年に一度の実施となる見込みである20)Table 1)。

Table 1  チールネルゼン染色の外部精度管理評価の結果23)
参加施設数119 正答施設数 誤答施設数
陽性標本 111 8
極少数陽性標本 104 15(注1)
陰性標本 109 8 陽性と判定
2(注2) 極少数陽性と判定

注1:偽陰性判定だが精度管理上許容範囲とみなす

注2:偽陽性判定だが精度管理上許容範囲とみなす

参加施設数119

WHO基準を満たした施設103/119 全体の87%

WHO基準:偽陽性・偽陰性判定が無いこと(精度管理上許容範囲とみなされる偽陽性・偽陰性は除く)

又,同じ塗抹検査でも,技術的に易しいとされる蛍光染色の導入も始まっており,2015年には首都Dakerの4つのラボで検査開始された。WHOが2010年にリファンピシン耐性も測定出来るセフィエドのGeneXpert MTB/RIFのPCR検査を推奨したこともあり2015年の時点で首都の国立結核検査室以外の主要6州で導入されており,多剤耐性結核疑い患者以外にもHIV患者,子供,肺外性結核,塗抹陰性活動結核疑い等の患者の検査に使用されている。2014年は5,055件の検査が行われ,リファンピシン耐性は70件であった。培養検査は多剤耐性結核患者の治療のために国立結核検査室で薬剤感受性検査と合わせて行っており,2014年は1,211件の培養検査を行った。方法としては鶏卵固形培地を用いたLowenstein-Jensen法であり,日本ではなじみが薄い,欧米で主流の方法である。

塗抹陽性での結核診断は66%,塗抹陰性又は肺外結核での結核診断(レントゲンやPCR)は34%であり塗抹検査が診断の主流であることや排菌患者の多いことが分かる21)

3大感染症の中でRDTが開発されていないのは結核だけであり,今後検診率を上げるためにも新しい技術が必要となっている。

日本においては排菌の有無を調べるためにも塗抹検査は行われるが,診断には病原体及び病原体遺伝子の検出検査方法が重視される。検査方法は多岐にわたり,1.塗抹検査,2.分離・同定検査,3.核酸増幅法検査,4.病理検査における特異的所見,5.ツベルクリン反応検査,6.リンパ球の菌特異蛋白刺激による放出インターフェロンγ検査,7.エックス線・CT等画像検査における所見,とあり,塗抹陽性患者が少ないことからも潜在性結核を見逃さない体勢となっている22)

2. 治療について

セネガルではWHOが提唱した直接監視下短期化学療法(directly observed treatment, short-course; DOTS)戦略を1995年より実施しており,結核にかかる検査費用・治療費等はすべて無料で受けられる。HIV感染者はイソニアジド治療が中心であるが,1次,2次治療薬について,種類は少なくなるが基本的に日本と変わりはない。ただし治療薬の欠品は起こっている。

VI  まとめ

セネガルの医療体制で問題なのは,医療従事者の首都近郊への集中と絶対数の少なさである。又,3大感染症対策の財源は世界基金を中心に海外援助に頼っている現状がある(Table 2)。しかし,これがある程度の安定的な検査実施や治療の提供,ひいては新規患者の発見につながっている。従って検査の精度が上がることによる診断率の向上は非常に重要であり,人員の技術力に左右されず,価格も安いRDTがWHOの推奨もあり爆発的に普及した。ただし,結核については今もって塗抹検査法が主流であるため,治療に至るまでは3日間連続の塗抹検査と2回以上の塗抹陽性を経て治療開始というハードルが設けられている。それでも,PCRや培養検査による陽性確認をしなくても治療開始しており,又マラリアやHIVもRDTによる診断だけで治療を開始していることからも,RDTはスクリーニング検査というより,ほぼ確定診断検査として用いられている。3大感染症感染者は日本では感染者に特定の偏りが見られるが,高蔓延国では,15~49才までの壮年期に多く,又子供の感染率も高い。そしてまだまだ治療から取り残されている人が多くあろうことは想像がつく(予想感染者率と実数には開きがある)。セネガルにおけるRDTの運用は,患者の絶対数の多さとこれ以上の精度の検査を望めない現状を考えた上での対応だと分かる。対して日本は何処に住んでいても同様の検査を受けられる体制は整っており,診断の精度を100%まで高める努力をしている。セネガルでほぼ確定診断として用いられるRDT検査は日本では感染症領域でのpoint of care testing(POCT)として,診療時間内に結果が分かる初期治療を行うための検査,又は1次スクリーニング検査の意味合いが強い。患者の絶対数も少ないため,確定診断には主にPCR法による病原遺伝子の直接の検出で診断精度を高めている。このことからも,どのような検査をどのように運用するかは,その国の様々な特性から組み立てられていることがわかる。もう一つ例を挙げるならば,実際の検査にはさまざまな費用がかかっている。日本がこれだけ検査の精度を高められるのも一つには国民皆保険制度が整っていることもあろう。対するセネガルは全国民の内,医療保険でカバー出来ているのは2013年の時点で2割程度である2)

Table 2  3大感染症対策プログラムの財政状況
財源 PNLP(2012)8) CNLS(2016)16) PNT(2014)24)
国家 209,128,931 1,050,000,000 747,241,436
世界基金 7,997,604,852 3,591,531,844 860,560,998
その他援助機関 11,841,523,368 78,817,854 116,529,115
合計金額 2,0048,257,151 4,720,349,698 1,724,331,549

単位:CFA 1円≒5 CFA

最後に,セネガルの現状は他の3大感染症高蔓延国にも言えることであるが,簡易なRDT検査が広がったのは医療従事者の絶対数の少なさが根底にある。日本でも人手不足が予想される医療分野で外国人医療者の確保が言われているが,優秀な頭脳の国外流出は3大感染症の高蔓延国において日本よりもっと深刻な問題を引き起こすことも考えるべきであろう。

COI開示

本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。

謝辞

執筆にあたり,セネガル医療の現状について質問に答えて下さったDr. Mamadou Cire DIA及び取り次いでいただいたDION Bernard MASSA,千佳子夫妻に厚くお礼申し上げます。

文献
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  • 23)  PNT: “Résumé de résultats des Frottis colorés par la technique de Ziehl-Neelsen en 2014,” RAPPORT ANNUEL 2014, 41 77–79, PNT, Sénégal, 2017.
  • 24)  PNT: “2.2. La financement de la lutte contre la tuberculose en 2014,” RAPPORT ANNUEL 2014, 12–17, PNT, Sénégal, 2017.
 
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