2019 Volume 68 Issue 4 Pages 712-716
アンバウンドビリルビン(unbound bilirubin; UB-Bil)はビリルビン脳症発症の予測指標であるが,他のビリルビンと同様,光の影響により測定値が変動すると考えられる。今回我々は,環境光曝露下におけるUB-Bilの変動について評価し,それを回避する運用構築を試みたので報告する。800 lx,400 lxの環境光下におけるUB-Bil標準液の変動を確認した結果,経時的な変動を認め,1時間経過時にはともに30%以上低下した。その後は上昇傾向を示し,7時間経過時には初回測定値に比し,800 lxでは+31.2%,400 lxでは−1.6%の変動を認めた。アルミホイル遮光下においては,3時間経過時まで一定の変動傾向を認めず,安定していた。遮光微量採血管を使用した場合,0.5時間経過時までは経時的な変動を認めなかったが,0.5時間経過以降からは経時的に変動し,5時間経過時には初回測定値に比し,18.5%低下した。患者検体でも同様の傾向であったが,UB-Bil標準液に比し,速やかな変動を認めた。UB-Bilは環境光曝露の影響により経時的に低下し,さらに長時間の光曝露により上昇に転じるといった複雑な挙動を呈した。測定前段階における変動回避のため,検体の遮光と迅速な測定を可能とする運用の構築が求められ,遮光微量採血管の使用や許容時間の設定が有用であると考えられた。
Unbound bilirubin (UB-Bil) level is used as a predictive index for the onset of bilirubin encephalopathy, but is prone to fluctuation owing to the effects of light. In this study, we evaluated the fluctuation of UB-Bil level under room-light exposure and attempted to design a procedure that prevents such exposure. The fluctuation of the level in a UB-Bil standard solution under room-light of 800 and 400 lx was confirmed. Moreover, the measured UB-Bil level was found to decrease with time, and a more than 30% reduction in fluctuation was observed after 1 h. Thereafter, the UB-Bil level increased with time, and after 7 h, it fluctuated by +31.2% at 800 lx and −1.6% at 400 lx compared with the baseline level. When using shielded micro blood collection tubes, no fluctuation was observed until 0.5 h, but thereafter, the measured UB-Bil level decreased with time; after 5 h, it decreased by 18.5% compared with the baseline level. The same tendency was observed in the patient samples, but the changes were more rapid than in the standard solution. UB-Bil level showed a tendency to decline with the passage of time owing to room-light exposure and exhibited a complex behavior, in which the measured level began to increase owing to longer room-light exposure. It is necessary to design an experimental procedure that enables the blocking of light from samples and quick measurements. Thus, the use of shielded micro blood collection tubes and controlling the time of collection would be useful.
新生児黄疸の多くは良性の生理的黄疸であり,生後4~5日頃をピークとして自然に消失する。しかし,まれにビリルビン毒性による神経障害やビリルビン脳症をきたすといわれており,継続的な黄疸管理が重要である1),2)。
アンバウンドビリルビン(unbound bilirubin; UB-Bil)はアルブミン非結合型の遊離ビリルビンであり,アルブミン結合型ビリルビンに比し,血液脳関門を容易に通過し脳に移行することから,神経毒性を引き起しやすいといわれている1)。また,超早産児および超低出生体重児では総ビリルビン(total bilirubin; T-Bil)が低値であるにもかかわらず慢性ビリルビン脳症をきたす例があり,そういった症例においてUB-Bilが高値であることも報告されている3),4)。このことから,UB-Bilはビリルビン脳症発症の予測指標としてT-Bilよりも有用とされ,診療に用いられている。
ビリルビンの測定においては,光の影響により異性体が出現し,測定値が変動することが知られている5)。UB-Bilにおいても同様に光の影響を受けると考えられるが,その影響に関する報告は少なく6),7),特に測定前段階における環境光曝露がUB-Bilに及ぼす影響については評価されていない。
今回我々は,4種の光曝露条件下におけるUB-Bilの変動について評価し,環境光の影響を回避する運用の構築を試みたので報告する。
検討には,UB-Bil標準液(株式会社アローズ)を使用した。患者検体については,当院検査部に提出された検体のうち,UB-Bil検査が依頼された10例の残余血清を匿名化し用いた。なお,本検討は徳島大学臨床研究倫理審査委員会の承認を得て(承認番号1919),実施した。
2. 試薬および測定機器測定機器はビリルビン分析装置UBアナライザUA-2(株式会社アローズ),試薬は専用試薬であるアンバウンドビリルビン測定試薬キット「UBテスト」(株式会社アローズ)を用いて検討を行った。
3. 測定原理グルコースを含むリン酸緩衝液に試料を加え,これにペルオキシダーゼとグルコースオキシダーゼの混液を加えると,UB-Bilはグルコースとグルコースオキシダーゼにより生じた過酸化水素によってペルオキシダーゼの存在下で酸化分解され,無色のビリルビン分解物に変化する。このビリルビンの酸化分解を比色法により波長460 nmでの吸光度が減少する速さとして測定し,UB-Bilの値を求める8)。
UB-Bil標準液を連続10回測定し,併行精度を確認した。
2. 光曝露条件による影響UB-Bil標準液を照度800 lxの蛍光灯直下,および,照度400 lxの机上における環境光曝露条件下にて7時間まで経時的に測定し(n = 2),光曝露条件による影響を確認した。対照として,UB-Bil標準液をアルミホイルで遮光したサンプルカップに分注し,照度800 lxの環境光曝露条件下にて,3時間まで経時的に測定した。
3. 患者検体を用いた光曝露の影響患者検体10例を照度800 lxの環境光曝露条件下にて3時間まで経時的に測定し(n = 2),光曝露条件による影響を確認した。
4. 遮光微量採血管を用いた環境光曝露の影響BD マイクロティナ微量採血管・凝固促進剤/血清分離剤-遮光チューブ-(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社:遮光微量採血管)にUB-Bil標準液を分注し,照度800 lxの環境光曝露条件下にて,5時間まで経時的に測定し(n = 2),光曝露条件による影響を確認した。
UB-Bil標準液を連続10回測定した平均値および変動係数は,Mean:0.67 μg/dL,CV(%):1.6%であった(Table 1)。
| Within-run (n = 10) | |
|---|---|
| UB-Bil standard | |
| Mean (μg/dL) | 0.67 |
| SD (μg/dL) | 0.01 |
| CV (%) | 1.6 |
環境光曝露条件下におけるUB-Bil標準液(0.67 μg/dL)の変動を確認した結果,800 lx,400 lxの両条件下において経時的な変動を示し,800 lxの環境光下では1時間経過時には32.6%の低下を認めた。さらに1時間経過以降からは測定値が上昇し,7時間経過時には初回測定値に比し,+31.2%の変動を認めた。400 lxの環境光下においても同様の傾向を示し,1時間経過時には35.7%の測定値の低下,それ以降は上昇に転じ,7時間経過時には初回測定値に比し,−1.6%の変動を認めた(Figure 1A)。アルミホイル遮光下においては,3時間経過時まで環境光曝露条件下で認められた経時的な変動はなかった(Figure 1B)。

UB-Bil standard solution: 0.67 μg/dL
A: under room-light (n = 2)
B: shielding with aluminum foil (n = 2)
患者検体の環境光曝露前におけるUB-Bil測定値は0.09~1.15 μg/dL,Mean:0.49 μg/dLであった。患者検体を800 lxの環境光曝露条件下にて,3時間経過時まで測定した際の変動は,0.5時間経過時には−24.7~+3.6%,Mean:−9.8%(−0.19~+0.02 μg/dL, Mean: −0.06 μg/dL),1時間経過時には−22.1~+31.3%,Mean:+7.6%(−0.17~+0.15 μg/dL, Mean: +0.01 μg/dL),3時間経過時には+2.6~+166.7%,Mean:+71.8%(+0.02~+0.64 μg/dL, Mean; +0.26 μg/dL)であった(Figure 2)。

Error range: Mean ± SD
UB-Bil標準液(0.67 μg/dL)を遮光微量採血管に分注し,800 lxの環境光曝露条件下において5時間経過時まで測定した結果 ,0.5時間経過時までは経時的な変動を認めなかった。0.5時間経過以降,測定値は経時的に低下し,5時間経過時には初回測定値に比し,−18.5%の変動を認めた(Figure 3)。

UB-Bil standard solution: 0.67 μg/dL
UB-Bilは環境光曝露の影響により経時的に測定値が低下し,その後上昇に転じるといった複雑な挙動を呈した。
800 lx,400 lxの両曝露条件下において,1時間経過時の測定値は初回測定値に比し30%以上の低下を認めたが,アルミホイルによる遮光条件下においては3時間経過時まで大きな変動は認められなかった。光曝露条件下においては,10分経過時には測定値が低下していることから,短時間曝露であっても影響を受けることが示唆された。
患者検体を用いて光曝露の影響を同様に検討した結果,UB-Bil標準液に比し速やかな変動傾向を示し,30分経過時には上昇に転じている検体が認められ,1時間経過時にはほぼ全ての検体において上昇傾向が認められた。UB-Bil標準液とヒト血清とで異なる反応性を示した明確な原因は不明であるが,UB-Bil標準液は動物由来のビリルビンを原料としているため,光曝露に対する感受性が異なる可能性がある。さらに,UB-Bil標準液はヒトアルブミン溶液を溶媒とし人工的に調整されたものであり,添加剤等を含めヒト血清とのマトリックス差異が存在する。このような組成の違いが反応性に差を生じた原因のひとつと考えられた。
酵素法または化学酸化法による直接ビリルビン(direct bilirubin; D-Bil)測定においては,光曝露により生成される(EZ)-サイクロビリルビンを測り込むことにより測定値が経時的に増加することが報告されている5)。本研究で認められた変動についても,光曝露により異性化されたUB-Bilが時間経過により再度生成されたとは考え難く,異性体を測り込むことによる偽高値の可能性が示唆された。なお,ジアゾ法による測定においては,D-Bilは経時的に減少することが報告されているが9),測定原理の違いにより異性体の反応性が異なるものと考えられた。また,光曝露条件の差異によりその程度が異なることから,異性体の生成速度は光源の強度に依存すると考えられた。血球に遮蔽されることにより軽減される可能性はあるものの,光曝露による変動は血清分離前から起こりうると考えられるため,光曝露時間を可能な限り短縮することが望ましく,採血直後からの対策が必要である。
光曝露による影響を回避する簡便な手段として遮光微量採血管を用いた運用を評価したところ,30分経過時までは測定値の低下傾向が認められず,安定していた。しかし,その後経時的に低下したことから遮光微量採血管を使用することにより,採血後30分以内であれば,アルミホイルと同程度に環境光の影響を回避することが可能であると考えられた。
測定値の保証には採血直後からの遮光が必須であるが,提出の都度,採血管をアルミホイルで遮光し,搬送する運用は煩雑であり,紛失等の危険性も増す。遮光微量採血管を用いることで,特別な対応が不要となり,日常検査に有用である。さらに当院では,採血後30分以内の提出を臨床へ義務付け,迅速な測定を可能とする運用を構築している。
UB-Bilは光曝露による影響を強く受け,短時間の曝露であっても測定値が大きく変動する。正確な値を臨床医に提供するためには,採血直後からの遮光と迅速な提出,測定の実施が必要となる。遮光採血管を用いることにより光曝露による影響を軽減でき,さらに臨床側と協議の上,採血から提出までの許容時間を設定することで,信頼性の高い結果報告が可能となると考えられた。
本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。