Japanese Journal of Medical Technology
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Case Reports
Comparative analysis between ultrasonography imaging and histopathological findings in diagnosis of cholangiolocellular carcinoma
Kumiko OKINOMituhisa SUYATakako KAWAEShunichi KIMOTORyousuke IKEDAKazuhito TERUSAWAMasaya TERUIYui TOGASHI
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2020 Volume 69 Issue 2 Pages 253-260

Details
Abstract

細胆管細胞癌(cholangiolocellular carcinoma; CoCC)は比較的稀な腫瘍である。症例は70代女性。腹部CT検査で凹凸不整,動脈相でまだら状に濃染し,門脈相に造影効果が遷延する腫瘍がみられた。経動脈性門脈造影下CT(CT during arterial portography; CTAP)で造影欠損像。肝動脈造影下CT(CT during hepatic arteriography; CTHA)では動脈早期相で濃染を示した。腹部超音波検査で境界不明瞭不整な高エコー病変を認めた。ソナゾイド造影超音波検査動脈相で腫瘍の辺縁と中心部に染影がみられた。門脈相でwash outし後血管相で欠損像となった。MRIでは腫瘤全体がT1WIで低信号,T2WIで辺縁は高信号を示し中心部で低信号の混在がみられた。切除検体肉眼像は,被膜や隔壁を伴わない白色の結節病変であった。組織学的に,不規則な吻合管腔状構造で一部拡張を示す腫瘍腺管が認められた。粘液産生像(−)。免疫染色にてCK7(+),CK19(+),Hep-par1(−),上皮内膜抗原(EMA)管腔面(+)となりCoCCと診断された。高エコーに描出された領域には,異常に拡張した腫瘍腺管が多く見られ,先天性胆管形成異常でみられるductal plate malformationに類似した像を示し,やや特殊な組織像を呈すCoCCを経験した。

Translated Abstract

Cholangiolocellular carcinoma (CoCC) is a unique subtype of liver cancer with combined features of hepatocellular and cholangiocarcinoma. A tumor of 33 mm diameter was found in segment 6 of the liver of a woman in her seventies with a history of intravascular large B-cell lymphoma. On her ultrasound (US) images, the tumor was an ill-defined, irregularly shaped hyperechoic nodule. On her contrast-enhanced ultrasound (CEUS) images, the tumor demonstrated heterogenous enhancement on the arterial phase, a wash-out pattern on the portal phase, and a defect pattern on the postvascular phase. The tumor was hypervascular and showed enhancement on computed tomography (CT) during hepatic arteriography (CTHA) and a defect on CT during arterial portography (CTAP). Macroscopy analysis of a resected specimen showed a lobulated whitish firm mass without a capsule. Histopathological analysis revealed that the tumor had irregularly branched, anastomosing glands, with focal dilated glands that were architecturally similar to ductal plate malformation (DPM): irregular distorted glandlike structures with bridge/island formation and cystic dilatation. The tumor showed no mucin production. Immunohistochemistry results were as follows: cytokeratin (CK) 7 (+), CK19 (+), glypocan 3 (focal, +), Hep-par 1 (−), CEA (−), and EMA (+, apical staining pattern). The tumor was diagnosed as CoCC with the DPM pattern. By comparative research analysis between the US imaging and histopathological findings, we estimated that the hyperechoic pattern on B-mode images may be the result of the DPM-like pattern.

I  はじめに

細胆管細胞癌(cholangiolocellular carcinoma; CoCC)はHering管または細胆管から発生する癌とされている。1959年にSteinerら1)がCoCCの疾患概念を提唱したが,広くは認識されずに肝内胆管癌(intra-hepatic cholangiocarcinoma; ICC)の特殊型と考えられてきた。原発性肝癌取扱い規約第5版2)において初めて独立した疾患として記載された。今回我々は,やや特殊な画像・組織像を呈したCoCCを経験したので文献的考察を加え報告する。

II  症例報告

患者:70代女性。

現病歴:血管内大細胞型B細胞性悪性リンパ腫(以下IVLBL)で当院治療中,同時に発見された肝腫瘤性病変に対し精査を行った。

既往歴:高血圧,糖尿病。

血液検査所見:血液生化学検査にて,軽度の小球性貧血と耐糖能異常を認めた。肝機能はγ-GTPと総コレステロールの軽度上昇を示した。肝炎ウイルス検査ではHBS抗原(−),HBC抗体(+),HBV-DNA定量:0.1 LogIU/mL未満,HCV抗体(−)であり,B型肝炎ウイルス既感染であった(Table 1)。

Table 1  血液検査所見
AST 16 IU/L WBC 4,430/μL HBs抗原 (−)
ALT 14 IU/L RBC 293 × 104/μL HBs抗体 172.99 mlU/mL
LDH 155 IU/L Hb 9.3 g/dL HBe抗体 (+)
γ-GTP 122 IU/L HT 26.3% HBc抗体 (+)
T-Bil 0.63 mg/dL MCV 89.8 fL HBV-DNA定量 0.1 LogIU/mL未満
TP 5.9 g/dL MCH 31.7 pg HCV抗体 (−)
T-cho 238 mg/dL MCHC 35.4%
Glu 265 mg/dL PLT 11.7 × 104/μL
HbA1c 6.6% CRP 0.04 mg/dL

腹部超音波検査:肝S6に33 × 26 mmの高エコー腫瘍を認めた(Figure 1)。境界明瞭,形状不整形。腫瘤内部に低エコー領域を伴っていた。Notch像も認めた(Figure 2)。辺縁低エコー帯は見られなかった。また,右肝静脈が腫瘍内部を貫通している所見が得られた(Figure 3)。腫瘍の末梢側に胆管拡張を伴う所見は指摘できなかった。

Figure 1 肝S6に見られた高エコー腫瘍

肝S6に33 × 26 mmの高エコー腫瘍を認めた(矢印)。

Figure 2 Notch像

Notch形成が見られた(矢印)。

Figure 3 肝静脈の腫瘍内貫通像

右肝静脈が腫瘍浸潤を受けず腫瘍内を貫通していた(矢印)。

ソナゾイド造影超音波検査(CEUS):動脈優位相では腫瘍の辺縁に弱い染影がみられると共に内部にも染影がみられ(Figure 4),徐々に腫瘍内部に造影効果が広がり樹枝状の細い血管を伴う血管構築が描出された(Figure 5)。腫瘍内部の低エコー部分は高エコー部分に比べて弱い造影効果を示した(Figure 6)。門脈優位相では遷延性の濃染は明らかではなく,washoutが確認された(Figure 7)。後血管相では腫瘍の中心部にdefect像を示した(Figure 8)。

Figure 4 ソナゾイド造影超音波検査(CEUS)Arterial Phase 21秒

辺縁にリング状染影と中心部に点状染影を認めた(矢頭)。

Figure 5 ソナゾイド造影超音波検査(CEUS)Arterial Phase 28秒

樹枝状の細い血管を伴う血管構築が描出された(矢印)。

Figure 6 ソナゾイド造影超音波検査(CEUS)Arterial Phase 34秒

腫瘍内部の低エコー部分(★)は高エコー部分に比べ弱い造影効果を示した。

Figure 7 ソナゾイド造影超音波検査(CEUS)Portal phase

遷延性の濃染は明らかではなくwashoutが確認された(矢頭)。

Figure 8 ソナゾイド造影超音波検査(CEUS)Post phase

腫瘍の中心部にDefect像を呈した(矢印)。

腹部CT検査:造影CTでは肝S6に凹凸不整な,造影早期相からまだら状に濃染する病変を認め(Figure 9),平衡相では腫瘍の中心部に造影効果が遷延する部分がみられた(Figure 10)。

Figure 9 腹部造影CT Arterial phase

肝S6に凹凸不整な,造影早期相からまだら状に濃染する腫瘍を認めた(矢印)。

Figure 10 腹部造影CT Equilibrium phase

腫瘍の中心部では造影効果が遷延する部分がみられた(矢印)。

経動脈性門脈造影下CT(CT during arterial portography; CTAP)では病変は不整形な造影欠損像を示したが,病変中心部では軽度の造影効果が認められた(Figure 11)。病変内部には残存する門脈と思われる血管像がみられた(Figure 12)。肝動脈造影下CT(CT during hepatic arteriography; CTHA)では動脈早期相で病変に一致して濃染像が見られたほか,病変内に異常動脈が目立った(Figure 13)。後期相では腫瘍の中心部で造影効果が遷延しており,腫瘍の辺縁部でwashoutがみられた(Figure 14)。

Figure 11 CTAP

腫瘍全体は不整形な造影欠損像を示したが,病変中心部(★)では軽度の造影効果を認めた。

Figure 12 CTAP

腫瘍内部に残存する門脈と思われる血管像を認めた(矢印)。

Figure 13 腹部造影CTHA early

動脈早期相に病変に一致して濃染像が見られたほか,病変内に異常動脈が目立った(矢印)。

Figure 14 腹部造影CTHA delay

腫瘍の中心部で造影効果が遷延し(★),腫瘤の辺縁部でwashoutがみられた(矢印)。

MRI:腫瘤全体がT1強調像で低信号を示した(Figure 15)。T2強調像で辺縁は高信号を示し中心部で低信号を呈した(Figure 16)。拡散強調像では拡散低下像を示した(Figure 17)。造影MRI検査では動脈相早期から不均一に造影効果があり,平衡相でも造影効果が遷延していた。

Figure 15 MRI T1強調像

腫瘤全体がT1強調像で低信号を呈した(矢印)。

Figure 16 MRI T2強調像

辺縁は高信号を示し(矢印)中心部で低信号を呈した(★)。

Figure 17 MRI拡散強調像

拡散低下像を示した(矢印)。

病理組織:肉眼的に,肝外表は凹凸不整で,慢性肝障害が示唆された。肝被膜に接する直径約25 mm大程度の被膜や隔壁を伴わない白色調の結節性病変を認めた(Figure 18)。組織学的に,病変全体に腫瘍腺管の増殖を認め,細胞異型が比較的とぼしい腫瘍細胞が不規則な吻合腺管を形成する像を呈していた(Figure 19)。病変辺縁部では拡張した腫瘍腺管が目立ち,中心部では比較的小型で密に配列する腫瘍腺管が目立つ傾向にあった(Figure 20)。ペリオディック・アシッド・シッフ-アルシアンブルー(Periodic Acid-Schiff-Alcian-Blue; PAS-AB)染色では粘液産生像は認められなかった(Figure 21)。

Figure 18 摘出検体

肝被膜に接する直径約25 mm大程度の被膜や隔壁を伴わない白色調の結節性病変。

Figure 19 HE染色,×400(対物レンズ40×)

病変全体に腫瘍腺管の増殖を認め,細胞異型が比較的とぼしい腫瘍細胞が不規則な吻合腺管を形成していた。

Figure 20 胆管拡張像,×20(対物レンズ2×)

病変辺縁部では拡張した腫瘍腺管が目立ち,中心部では比較的小型で密に配列する腫瘍腺管が目立つ傾向にあった。

Figure 21 PAS-AB染色,×200(対物レンズ20×)

粘液産生像は認められなかった。

Azan染色では線維化が網目状に存在していた。肝内胆管癌でみられるほどの強い線維化ではないが,比較的豊富な線維性間質を伴っていると思われた。エラスチカワンギーソン(Elastica-van-Gieson; EVG)染色では,既存の門脈域が病変内に残存していた(Figure 22)。

Figure 22 EVG染色ルーペ像

既存の門脈域が病変内に残存していた(矢印)。

免疫染色にてCK7(+),CK19(+),Glypican3(weakly +),Hep-par1(−),CEA(−),EMA(管腔内腔面に沿って線状に+)(Figure 23),CoCCと診断された。

Figure 23 EMA染色,×400(対物レンズ40×)

管腔内腔面に沿って線状に染色された。

III  考察

CoCCは2010年のWHO分類では混合型肝癌の一亜型として分類されている。Shiotaら3)によると原発性肝癌のうちCoCCの占める割合は0.56%であり,比較的まれな疾患である。CoCCは肉眼的にはICCに類似し多彩な画像所見を呈する4)とされる。寺岡ら5)は,CoCCの超音波所見として,①辺縁不整(91.7%)な低エコー腫瘤(100%),②notchを認めることがあり(63.6%),③造影USでは動脈優位相で早期濃染(100%)や樹枝状濃染を認め,④門脈優位相で遷延性濃染(81.8%),⑤後血管相での欠損像(100%),⑥腫瘍内部への脈管貫通所見(63.6%)を認めると報告している。このうち⑥は,病変内に既存の血管や門脈域が残る病理所見を反映しており,CoCCの浸潤能が弱いために生じる所見であると考えられている。ICCは癌が増殖・浸潤するにしたがい既存の門脈域が破壊されるため,病変内に脈管貫通所見が見られることは少ない。

本症例の超音波所見は従来報告されているCoCCの超音波所見と概ね一致していたが,病変内に高エコー像が目立っている点が一致しなかった。高エコー像として観察されたCoCCの報告は少ない。北見ら6)によれば,2008年以降に日本から英文誌に報告されたCoCC31例のうち,2例のみが高エコーを示すとされる。内訳は高エコー1例,高低エコー混在1例,低エコー19例,不均一3例,報告なし7例であった。一般的に,肝臓の腫瘤内に高エコー成分を含む場合,肝細胞癌で見られる脂肪沈着や肝内胆管癌でみられる腺管内壊死などが考えられるが,本病変には病理組織学的に脂肪沈着像や壊死像は認めなかった。EVG染色ルーペ像と超音波像を対比してみると(Figure 24),本例では腺管拡張が目立つ部分が高エコーの部分にほぼ一致していると考えられた。拡張した腺管が多数の境界面を形成することで,高エコーをきたしている可能性が示唆された。

Figure 24 病理組織像(EVG染色ルーペ像)と超音波画像の比較

腺管拡張が目立つ部分が高エコーの部分にほぼ一致している。

本症例にみられた拡張腺管は,病理組織学的に先天性の胆管形成異常でみられるductal plate malformation(DPM)に類似していた。Nakanumaら7)は,DPMに類似した腫瘍腺管がみられる肝内胆管癌を報告しており,Terada8)は,DPMに類似した腫瘍腺管がみられる混合型肝癌combined HCC and CC with stem cell featuresを報告している。本例の病理組織診断はCoCCであるがDPMに類似した腫瘍腺管が出現しており,Teradaらの報告した腫瘍の類縁疾患である可能性がある。北見ら6)はDPMに類似した腫瘍腺管が出現したCoCCを報告しており,病変は高エコーを示していた。DPMに類似した本例のエコー像と病理像の対比により,肝原発の悪性腫瘍にまれながら出現するDPM類似腺管は高エコー病変として観察される場合があると考えられ,肝悪性病変が高エコー化する原因として,脂肪沈着,壊死以外に留意しておく価値があるものと考えられた。

IV  結語

高エコー像を示すCoCCの超音波画像と病理組織像の対比検討を行った。今後の症例集積に役立つと思われた。

COI開示

本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。

謝辞

本稿に際し貴重な御助言を賜りました札幌東徳洲会病院放射線診断科(画像・IVRセンター)齋藤博哉先生に深謝いたします。

文献
 
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