2020 Volume 69 Issue 2 Pages 240-246
今回我々は,愛知県臨床検査技師会(愛臨技)が主催する愛知県臨床検査精度管理調査(愛臨技サーベイ)臨床化学検査部門について,2016年度から2018年度の解析データを評価することで,現状の課題を抽出し,今後の展望を考えることを目的とした。対象は,日本臨床衛生検査技師会精度管理事業・データ標準化事業システム(JAMTQC)を用いて臨床化学項目の集計と解析を行った29項目とした。対象3年間の愛臨技サーベイ臨床化学検査部門の参加施設数(総参加数)は,113施設(135施設),120施設(136施設),124施設(141施設)であった。愛臨技サーベイでは,D評価1項目またはC評価2項目の施設に対して,任意参加でサポート事業(2次サーベイと結果検討会)を実施している。対象3年間の2次サーベイ参加施設(総対象施設)はそれぞれ,4施設(15施設),11施設(30施設),10施設(27施設)であった。また,結果検討会参加施設(総招聘施設)はそれぞれ3施設(15施設),8施設(30施設)および7施設(27施設)と少なく,サポート事業へ参加しやすい環境を今後整備していくことが必要であると考えられた。また,愛知県内には300超の医療施設(病院)があるが,未だ半分以上の病院が外部精度管理調査に参加できていない状況がある。今後,病院に愛臨技サーベイへの参加を促す啓蒙活動をより一層充実させる必要があると考えられた。
Here, we show the changes in the number of participating facilities and their evaluation in the clinical chemistry field from 2016 to 2018 through the Aichi Clinical Laboratory Quality Control Survey conducted by the Aichi Association of Medical Technologists (AAMT survey). The survey items were 29 in the clinical chemistry field, which were analyzed using the Japanese Association of Medical Technologist’s quality control survey project and data standardization project system (JAMTQC). The total numbers of facilities that participated in the AAMT survey were 135 in 2016, 136 in 2017, and 141 in 2018. Among them, the numbers of facilities in the clinical chemistry field were 113 in 2016, 120 in 2017, and 124 in 2018. We also conducted support projects through secondary surveys and results-review meetings. The numbers of facilities that participated in the secondary surveys were 4 in 2016, 11 in 2017, and 10 in 2018. In addition, the numbers of facilities that participated in the results-review meetings were 3 in 2016, 8 in 2017, and 7 in 2017. It is necessary to reveal the contents of the results-review meeting and create an environment where one can feel free to participate. Through the AAMT survey, we would like to continuously think about the best support for the medical facilities in Aichi.
公益社団法人 愛知県臨床検査技師会(愛臨技)が主催する愛知県臨床検査精度管理調査(愛臨技サーベイ)は,愛知県医師会,愛知県病院協会および愛知県臨床検査標準化協議会との共催で実施しており,愛知県下にある300を超える医療施設(病院)全てを対象とした臨床検査精度向上の推進および支援を目標とする事業を行っている。
愛臨技サーベイは臨床化学検査部門,免疫血清検査部門,血液検査部門,一般検査部門,生理検査部門,輸血検査部門,微生物検査部門,細胞検査部門および病理検査部門の9部門で構成されており,その中で臨床化学検査部門にはここ数年100を超える病院が参加している。臨床化学検査部門は,1998年度から第1回愛臨技サーベイをaspartate aminotransferase(AST)とγ-glutamyl transpeptidase(γ-GT)の2項目を対象とし,87施設から開始した。以来,2001年度の第4回愛臨技サーベイでは27項目,2007年度の第10回愛臨技サーベイでは28項目,2011年度の第14回愛臨技サーベイから29項目と評価項目を増やしながら現在(2019年度:29項目)に至っている。
また,愛臨技精度管理事業部では,結果の思わしくなかった施設を対象に2次サーベイと対象施設に対して評価の解説や,その後の是正対応についての情報交換を行う「結果検討会」によるサポート事業を行っている。
2018年12月に施行された医療法の一部改正に伴い,各検査室が外部精度管理調査に参加し,臨床検査精度の外部評価を行うことが努力目標とされ,愛臨技サーベイの位置付けがより一層重要と考えられる。
今回我々は,今後益々重要性が増す外部精度管理事業の更なる発展を目指すため,直近3年間である2016年度から2018年度までの臨床化学検査部門における参加施設数の変遷や評価割合1)~3),そして2次サーベイと結果検討会のサポート事業による活動成果を振り返り,これまでの課題の抽出と今後の展望について報告する。
日本臨床衛生検査技師会精度管理事業・データ標準化事業システム(JAMTQC)を用いて,集計および解析を行った。2016年度から2018年度の実施項目はグルコース(glucose; Glu),総ビリルビン(total bilirubin; T-Bil),直接ビリルビン(direct bilirubin; D-Bil),ナトリウム(Na),カリウム(K),クロール(Cl),カルシウム(calcium; Ca),無機リン(inorganic phosphorus; IP),血清鉄(Fe),マグネシウム(magnesium; Mg),総蛋白(total protein; TP),アルブミン(albumin; Ab),尿素窒素(urea nitrogen; UN),クレアチニン(creatinine; Cre),尿酸(uric acid; UA),総コレステロール(total cholesterol; T-Cho),中性脂肪(triglyceride; TG),high density lipoprotein-コレステロール(HDL-C),low density lipoprotein-コレステロール(LDL-C),AST,alanine aminotransferase(ALT),alkaline phosphatase(ALP),creatine kinase(CK),lactate dehydrogenase(LD),γ-GT,amylase(AMY),cholinesterase(ChE),C反応性蛋白(C-reactive protein; CRP)およびヘモグロビンA1c(Hemoglobin A1c; HbA1c)の29項目を対象とした。
外部精度管理調査試料は,全項目測定用として日臨技精度管理試料(JAMT-QC1,JAMT-QC2)2濃度,HbA1c測定用としてヒト全血由来リクイチェック糖尿病検査コントロール1,2(ヘモグロビンA1c 1,ヘモグロビンA1c 2:バイオ・ラッド・ラボラトリーズ株式会社)の2濃度を用いた。
標準偏差指数(standard deviation index; SDI)評価は他施設との相対評価を示す指標であり,測定方法分類別に実施した。SDIは,各施設測定値の外れ値を除去後,±3SD切断法を2回実施し,平均値,標準偏差(standard deviation; SD),変動係数(coefficient of variation; CV)%等の基本統計量より算出した。
2. 目標値の設定方法目標値は,7つの基幹施設の ±2SDを超えたものを除外した平均値とした。
方法,試薬および機種などにより異なる反応を示す項目に関しては,全参加施設の測定値から外れ値を除去した平均値を目標値とした。
目標値となる平均値は,測定報告桁数より1桁多く求めた値で算出し,許容幅の下限値は切り下げ,上限値は切り上げにより報告桁数と一致させた。また,Cre,UNおよびCRPは日常多用されている桁数に合わせて処理を行った。
ドライケミストリー(ドライ法)の目標値は液状試薬(ウエット法)と同じ値を用いた4),5)。
3. A・B・C・D評価A・B・C・D評価は目標値 ± 評価幅で評価を行い,A評価の評価幅は,日本臨床化学会で定められた正確さの施設間許容誤差限界(BA)とした。B・C・D評価の評価幅は,臨床検査精度管理調査の定量検査評価法と試料に関する日臨技指針を参考に,調査試料における各項目の濃度および技術水準を考慮したうえで設定した4),5)。
4. 評価区分評価区分の設定は,精度管理試料の反応性を確認するため,各施設からの報告値を用いて方法別,試薬別および機種別等に分類したヒストグラムを作成し,分散程度を確認した後に設定した。評価区分のn数が5施設未満の場合は評価対象外とした4),5)。
5. 評価幅ウエット法において,A評価の評価幅は,生理的変動をもとに算出した施設間の許容誤差限界の指標である正確さの許容誤差限界(BA)とし,±5%を上限とした(低濃度の場合は5%ではなく,BAの値とすることもある)。B評価の評価幅は,日臨技指針における精度管理調査の許容誤差に関する現状の幅および体外診断用医薬品の性能確認幅に準じて設定をした。C評価に関しては,B評価幅を超え,この幅の最大1.5倍までとした。C評価幅を超えた場合はD評価とした4),5)。Table 1に2016年度から2018年度に使用したウェット法の評価幅を示す。ドライ法については,参加施設数が少ないうえ試料に対するマトリックス効果が大きく4),技術水準を算出することが困難であることからウエット法とは別の評価幅を用いた5),6)。Table 2に2016年度から2018年度に使用したドライ法の評価幅を示す。
項目 | A評価 | B評価 | C評価 | |
---|---|---|---|---|
Glu | 2.3% | 5.0% | 7.5% | |
T-Bil | JAMT-QC1 | 0.2 mg/dL | 0.3 mg/dL | |
JAMT-QC2 | 5.0% | 7.5% | ||
Na | 2.0 mmol/L | 3.0 mmol/L | 4.0 mmol/L | |
K | 1.9% | 0.2 mmol/L | 0.3 mmol/L | |
Cl | 2.0 mmol/L | 3.0 mmol/L | 4.0 mmol/L | |
Ca | 0.2 mg/dL | 0.4 mg/dL | 0.6 mg/dL | |
IP | 3.5% | 5.0% | 7.5% | |
Fe | 5.0% | 7.5% | ||
Mg | 0.2 mg/dL | 0.3 mg/dL | ||
TP | 1.2% | 5.0% | 7.5% | |
ALB | 1.3% | 5.0% | 7.5% | |
UN | JAMT-QC1 | 5.0% | 1.5 mg/dL | |
JAMT-QC2 | 5.0% | 7.5% | ||
Cre | JAMT-QC1 | 4.8% | 0.1 mg/dL | 0.2 mg/dL |
JAMT-QC2 | 4.8% | 6.2% | 7.5% | |
UA | 5.0% | 7.5% | ||
T-Cho | 4.5% | 5.0% | 7.5% | |
TG | 5.0% | 7.0% | 9.0% | |
HDL-C | 5.0% | 7.5% | ||
LDL-C | 5.0% | 7.5% | ||
AST | JAMT-QC1 | 5.0% | 10.0% | 15.0% |
JAMT-QC2 | 5.0% | 6.3% | 7.5% | |
ALT | JAMT-QC1 | 5.0% | 10.0% | 15.0% |
JAMT-QC2 | 5.0% | 6.3% | 7.5% | |
ALP | 5.0% | 6.3% | 7.5% | |
CK | 5.0% | 6.3% | 7.5% | |
LD | 3.9% | 5.7% | 7.5% | |
γ-GT | JAMT-QC1 | 5.0% | 10.0% | 15.0% |
JAMT-QC2 | 5.0% | 6.3% | 7.5% | |
AMY | 5.0% | 6.3% | 7.5% | |
ChE | 4.7% | 6.1% | 7.5% | |
CRP | JAMT-QC1 | 0.1 mg/dL | 0.2 mg/dL | 0.3 mg/dL |
JAMT-QC2 | 5.0% | 7.5% | 10.0% | |
HbA1c | 5.0% | 7.5% |
項目 | A評価 | B評価 | C評価 | |
---|---|---|---|---|
Glu | 10.0% | 15.0% | ||
T-Bil | 0.4 mg/dL | 0.5 mg/dL | ||
Na | 3.0 mmol/L | 4.0 mmol/L | ||
K | 0.2 mmol/L | 0.3 mmol/L | ||
Cl | 3.0 mmol/L | 4.0 mmol/L | ||
Ca | 0.8 mg/dL | 1.2 mg/dL | ||
IP | 10.0% | 15.0% | ||
Fe | 10.0% | 15.0% | ||
Mg | 0.4 mg/dL | 0.6 mg/dL | ||
TP | 10.0% | 15.0% | ||
ALB | 10.0% | 15.0% | ||
UN | 10.0% | 15.0% | ||
Cre | JAMT-QC1 | 0.2 mg/dL | 0.3 mg/dL | |
JAMT-QC2 | 14.0% | 21.0% | ||
UA | 10.0% | 15.0% | ||
T-Cho | 10.0% | 15.0% | ||
TG | 18.0% | 27.0% | ||
HDL-C | 10.0% | 15.0% | ||
AST | 20.0% | 30.0% | ||
ALT | 20.0% | 30.0% | ||
ALP | 20.0% | 30.0% | ||
CK | 20.0% | 30.0% | ||
LD | 20.0% | 30.0% | ||
γ-GT | 20.0% | 30.0% | ||
AMY | 20.0% | 30.0% | ||
ChE | 20.0% | 30.0% | ||
CRP | JAMT-QC1 | 0.2 mg/dL | 0.4 mg/dL | |
JAMT-QC2 | 20.0% | 30.0% |
2016年度,2017年度および2018年度の愛臨技サーベイの総参加施設数と臨床化学検査部門の参加施設数はそれぞれ,135施設中113施設(83.7%),136施設中120施設(88.2%),141施設中124施設(87.9%)であり,総参加施設に占める臨床化学検査部門への参加率の高さが確認できた。総参加施設も年々増加しており,外部精度管理調査への意識が高まっている。臨床化学検査部門への参加施設の中で,ドライ法を採用している施設は,各年度それぞれ13施設(11.5%),18施設(15.0%)および18施設(14.5%)であり,近年の技術革新に伴うドライ法の正確性向上による採用施設増加の可能性が示唆された。同一の評価幅を用いた各年度の評価割合は,2017年におけるNaを除き,全ての項目においてA + B評価は90%を超えていた(Table 3)。
JAMT-QC 1 ヘモグロビンA1c 1 |
JAMT-QC 2 ヘモグロビンA1c 2 |
|||||
---|---|---|---|---|---|---|
2016 A + B |
2017 A + B |
2018 A + B |
2016 A + B |
2017 A + B |
2018 A + B |
|
Glu | 100% | 100% | 98% | 100% | 100% | 98% |
T-Bil | 98% | 98% | 98% | 96% | 93% | 94% |
Na | 100% | 85% | 93% | 98% | 87% | 95% |
K | 100% | 97% | 99% | 100% | 99% | 97% |
Cl | 100% | 90% | 94% | 100% | 95% | 96% |
Ca | 97% | 98% | 99% | 96% | 97% | 99% |
IP | 98% | 100% | 100% | 100% | 100% | 99% |
Fe | 100% | 99% | 98% | 98% | 100% | 99% |
Mg | 98% | 98% | 98% | 96% | 96% | 91% |
TP | 98% | 100% | 100% | 100% | 100% | 99% |
ALB | 99% | 99% | 99% | 100% | 98% | 97% |
UN | 97% | 98% | 93% | 99% | 94% | 94% |
Cre | 100% | 95% | 98% | 100% | 99% | 99% |
UA | 100% | 97% | 100% | 99% | 99% | 98% |
T-Cho | 100% | 100% | 100% | 100% | 100% | 97% |
TG | 97% | 100% | 100% | 99% | 99% | 95% |
HDL-C | 93% | 94% | 95% | 93% | 94% | 94% |
LDL-C | 90% | 94% | 93% | 90% | 93% | 92% |
AST | 99% | 100% | 97% | 98% | 97% | 98% |
ALT | 100% | 98% | 100% | 99% | 94% | 98% |
ALP | 97% | 99% | 98% | 98% | 100% | 96% |
CK | 99% | 98% | 95% | 99% | 100% | 95% |
LD | 100% | 100% | 98% | 100% | 100% | 98% |
γ-GT | 100% | 100% | 100% | 99% | 100% | 99% |
AMY | 97% | 95% | 92% | 97% | 96% | 93% |
ChE | 100% | 100% | 99% | 100% | 100% | 99% |
CRP | 100% | 97% | 100% | 98% | 96% | 96% |
HbA1c | 99% | 95% | 99% | 99% | 98% | 99% |
愛臨技サーベイでは,D評価1項目またはC評価2項目以上の施設に対して,任意参加ではあるが,該当施設を招聘し結果検討会というサポート事業の実施や,試料をもう一度送付して評価を行う2次サーベイを実施している。
2016年度,2017年度および2018年度の招聘施設はそれぞれ,15施設,30施設および27施設であり,その中で2次サーベイ参加施設はそれぞれ,4施設,11施設,10施設であった。また,結果検討会参加施設はそれぞれ3施設,8施設および7施設であった(Figure 1)。結果検討会では,精度管理事業部員や基幹施設の技師が,日々の内部精度管理や,キャリブレーション頻度,使用機器や試薬について質問に答え,少しでも改善ができるようアドバイスを行っている。さらに,臨床化学検査部門では結果検討会後に実践したことを確認したい施設に,もう一度試料を送付しデータを確認してもらう2次サーベイのサポートを実施している。結果検討会に寄せられた意見(Table 4)を参考に,2018年度は試験的に休日に結果検討会を開催したが,前年と比べて参加施設はほとんど変わらなかった。
2016年度から2018年度までの総参加施設数,臨床化学検査部門参加施設数,招聘対象施設数,2次サーベイ参加施設数及び結果検討会参加施数の推移
結果検討会で寄せられた意見 |
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・自施設で評価が悪かった項目の原因がはっきりしている。 |
・結果検討会の内容が不明で,参加しにくい。 |
・業務の都合上,参加ができない。 |
外部精度管理調査には,数施設で行うクロスチェックから1,000施設を超える大規模調査まで多くの調査がある。愛臨技サーベイの参加施設は2019年度現在148施設であり,年々増加傾向にある。外部精度管理調査の目的は,検査値の施設間互換性の確保と測定系の標準化である。すなわち,多くの疾患で設定されているガイドラインでは,客観的指標として臨床検査値が用いられているが,このガイドラインを患者に適応するためには検査値が正確・精密かつ標準化された互換性が必要となる。
愛臨技サーベイにおける臨床化学検査部門での各年度の評価割合は,2017年におけるNaの評価を除き,全ての年度でA + B評価の割合が90%を超えていた。2017年におけるNaの評価に関しては,この年に初めて愛臨技サーベイに参加した十数施設がD評価であったため,A + B評価の割合が90%を割ったものと思われる。愛臨技サーベイではA + B評価の割合について90%以上を目標としており,目標値や評価幅の設定は妥当であったと考える。しかし,ウエット法とドライ法の評価幅の乖離が大きく,今後はドライ法の評価幅の見直しが必要であると考える。また,従来から指摘されている管理試料側の血清成分と試料のマトリックスの変化についても愛臨技をはじめ,県単位の臨床検査技師会主導の精度管理調査では再考が必要な時期が来ているのかもしれない。具体的には,マトリックス効果を回避するための調査試料として透析処理や凍結乾燥処理を加えないヒトプール血清を使用したドライ法専用の管理試料について検討が必要かもしれない4)。
結果検討会で寄せられた意見に関しては,多くの施設が結果検討会に参加できるよう開催日時の検討や結果検討会の内容をオープンにし,気軽に参加できる環境を作っていくことが必要であると考える。
今後の課題として,小規模の病院では,日々の内部精度管理が実施できていない施設も多く,結果検討会での繋がりをきっかけに定期的に連絡を取り内部精度管理状況の把握をし,サポートを行っていく必要性があると考える。結果検討会を休日に実施したことについて,肯定的な意見も寄せられたため,今後も継続していきたい。
2次サーベイについては,本来であれば,別の試料や目標値を使用すべきだが,現在同じ試料や目標値を使用しており,評価についてほとんどの施設で改善が見られている。しかし,2次サーベイのあり方については,別試料での実施を含め今後も検討が必要と考える。
一方で,愛臨技サーベイは他の外部精度管理調査同様に原則としてオープン調査である。そのため,調査試料発送日時と報告日が事前に参加者に知らされ,調査試料が各施設に届く。このため,参加施設が日常検査と異なる特別な方法(複数回測定の平均値等)で試料を測定し報告している可能性がある。あるいは,近隣施設の測定結果を共有することで自施設の測定結果を見直し,共有後の結果を報告していることも否定できない状況である。今後,真に求められる外部精度管理調査を行うためには,医療機関と連携し,ブラインド調査(調査対象施設が特別な配慮のない状況下で患者検体同様に測定する方法で,精度管理調査試料であることを伏せ,委託先からの検査依頼の形で調査する方式)を行うことも視野に入れる時期にあるように考える。さらに,現在の外部精度管理調査では,施設間のCVが概ね5%以内の収束された調査項目が多い。一見すると極めて互換性に優れた検査結果を医師・患者に提供していることが確認できる。しかし,項目によっては自施設の内部精度管理のCV より分散が認められる調査項目もあり,実際どの程度の互換性があるかについては議論の余地があると考えられる。
その一方で,外部精度管理調査への未参加施設について焦点を当てる必要があると考える。厚生労働省の医療施設動態調査から,2018年2月末時点での愛知県下の病院数は324施設7)であり,2018年度愛臨技サーベイ総参加施設数は141施設(43.5%)であった。今後324施設が外部委託検査を主体としているのか,もしくは,どの程度自施設で臨床検査を実施しているかの調査が重要となってくるように思われる。それらの調査結果を踏まえて,2018年に公布された医療法の一部改正に伴う外部精度管理調査についての理解と普及に努めていく必要があると考えられる。
愛臨技では,データ共有化事業として各地区に基幹施設を設置し,地区内施設のデータ共有化をサポートする体制を構築してきた。県内の基幹施設は,日臨技が展開する標準化事業により他県の基幹施設と測定値の整合性が確認されているため,基幹施設と自施設が測定値を一致させることで国内データの標準化が達成されるものと思われる。すなわち,外部精度管理調査に積極的に参加して自施設のデータを他施設と比較を行い,国内の標準化されたデータ群との整合性を確認することはとても有用と思われる。
2019年度から日臨技主導での基幹施設の役割はその任を終えた。しかしながら,2019年からは,医療法の一部改正に伴い,各施設の外部精度管理調査への関心が益々高まり,外部精度管理の意義が今後大きく求められると考えられる。今後も愛臨技精度管理事業部臨床化学検査部門では,標準化に向けて積極的なサポートを実施していきたいと考えている。
本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。