Japanese Journal of Medical Technology
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Clinical significance of coagulase-negative staphylococci detected in blood cultures
Tatsuya OHNOYosuke TANAKAMomoko ANZAIYuka TANIGUCHIYasuhito NAKAMURATamami KAWAGUCHI
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2020 Volume 69 Issue 3 Pages 300-306

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Abstract

国内において,血液培養から検出されたcoagulase negative staphylococci(CNS)の臨床的有意性に関する報告は少なく,検査室として有意性の判断に苦慮する場面も多い。今回我々は,血液培養からCNSを検出した277症例500検体を対象に血液培養陽性検出時間,検出菌,メチシリン耐性率,中心静脈カテーテル(central venous catheter; CVC)の有無,複数セット陽性,診療科・所属別有意症例率について検討し,特異度の高い有意性判断基準の設定を試みた。277症例のうち,有意例が67例(25.1%),中間例が8例(2.9%),汚染例が202例(73.0%)であり,平均陽性検出時間は,有意例で19時間54分,汚染例で31時間1分と有意差を認めた。診療科別有意症例率では,救命外来受診時の症例は8.4%と他科に比べて低く,消化器・一般外科,血液内科,代謝・内分泌内科では40%以上の有意症例率であった。血液培養からCNSを検出した場合の有意性判断基準として「18時間未満で陽性かつCVCあり」は有意菌の可能性が高く,「30時間以上で陽性かつCVCなし」は汚染菌の可能性が高い。血液培養陽性報告の第一報に判断基準を付加することで,早期の適切な抗菌薬療法と無益な抗菌薬投与の予防につながると考える。

Translated Abstract

There are few reports from Japan on the clinical significance of coagulase-negative staphylococci (CNS) detected in blood cultures, and in many situations, laboratories have difficulty determining the significance of CNS detection. In this study, we investigated the time required to detect blood culture (time to positivity) for CNS, the strains detected, methicillin resistance rate, the presence of a central venous catheter (CVC), positivity from multiple blood culture sets, and the clinical departments among 277 cases with CNS-positive blood cultures. We aimed to determine the criteria with high specificity for clinical significance of CNS detection. Of the 277 cases, 67 cases, 8 and 202 were determined to be clinically significant (25.1%), intermediate (2.9%), and contaminant (73.0%), respectively. The average time to positivity was 19 h and 54 min in clinically significant cases, while it was 31 h and 1 min in contaminant cases, which was significantly longer. Proportions of clinically significant cases by clinical departments were 8.4% for the emergency room and >40% for the departments of gastroenterological surgery, general surgery, hematological oncology, metabolism, and endocrine internal medicine. When CNS was detected in blood cultures, “time to positivity of less than 18 h from cases with CVC” was highly likely to indicate clinical significance, and “time to positivity of longer than 30 h from cases without CVC” was highly likely to indicate a contaminant. Adding these criteria to the first report of positive blood culture will lead to a prompt appropriate antimicrobial therapy when needed, and prevent unnecessary antimicrobial therapy.

I  序文

Coagulase negative staphylococci(CNS)は血液培養から検出される菌の24.0%~37.6%を占めると報告されている。ヒトの皮膚常在菌であり血液培養から検出されてもコンタミネーションと判断されることが多いが1),2),検出数が多く,真の感染としても頻繁に検出される3)。両者を区別することは,適切な抗菌薬療法の補助になるだけでなく,不必要な抗菌薬投与を防止する点でも重要である4)。しかし国内において血液培養由来CNSの臨床的有意性について検討した報告は少ない。今回我々は,当院で検出した血液培養由来CNSにおける陽性検出時間や中心静脈カテーテル(central venous catheter; CVC)の有無,診療科別有意症例率などについて検討をおこない,特異度の高い判断基準の設定を試みたので報告する。

II  対象および方法

1. 対象

2013年1月から2017年12月に当院細菌検査室に提出された血液培養20,080セットから,CNSを単独で分離した277症例500検体を対象とした。なお,本検討は本学生命倫理委員会の承認を経て実施した(承認番号:第4149号)。

当院は病床数518床(52床は休床中),診療科は総合診療内科,血液内科,リウマチ・膠原病内科,腎臓・高血圧内科,呼吸器内科,消化器肝臓内科,循環器内科,代謝・内分泌内科,脳神経内科,消化器・一般外科,小児外科,心臓血管外科,脳神経外科,整形外科,形成外科,神経精神科,小児科,皮膚科,泌尿器科,産婦人科,眼科,耳鼻咽喉科,救命救急科があり,横浜市の地域中核病院で第三次救急医療施設である。2017年の延べ入院患者数は124,796人,平均在院日数は12.3日である。複数セット採取率の推移(小児科を除く)は,2013年:73.6%,2014年:83.6%,2015年:90.1%,2016年:90.1%,2017年:91.5%である。推定汚染率の推移は,2013年:1.9%,2014年:1.8%,2015年:2.2%,2016年:2.1%,2017年:2.6%である。

2. 方法

1) 血液培養

機器:血液培養自動分析装置BDバクテックTM FXシステム(日本ベクトン・ディッキンソン)

好気培養:好気用レズンボトル

嫌気培養:2013年1月から2016年4月まで嫌気用レズンボトル,2016年4月から嫌気用溶血ボトル

血液培養採取方法:消毒方法は,70%エタノール綿で皮膚を清潔にした後に10%ポピドンヨード綿または1%クロルヘキシジングルコン酸塩エタノール綿を用いて消毒された。採取部位はボトルに記載され検査室で登録し,採取量はボトル1本あたり,10 mLとしている。提出は日勤帯,当直帯に関わらず血液培養採取後直ちに自動分析機に装填されており,採取から測定開始までの搬送時間は陽性検出時間から除いた。

2) 臨床的有意性判定

対象症例について病歴調査を実施し,カテーテル関連血流感染症(catheter related bloodstream infection; CRBSI)またはその他感染症を有意例,感染を否定できないものを中間例,上記に該当しない症例を推定汚染例と判断し,日本臨床微生物学会が編纂した「血液培養検査ガイド」5)に準じて推定汚染例を汚染例として分類した。CRBSIの判定基準には,Infectious Diseases Society of America(IDSA)ガイドライン6)と厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業(JANIS)で用いられている判定基準7)を用いた。臨床的有意性判定基準をTable 1に示す。

Table 1  臨床的有意性判定基準
有意 カテーテル関連血流
感染症(CRBSI)
IDSAガイドライン
Clinical practice guidelines for the diagnosis and management of intravascular catheter-related infection
厚生労働省院内感染対策サーベイランス
集中治療室部門感染症の判定基準
・少なくとも1つの経皮的に採取された血液培養とカテーテル先端培養の検出菌が一致する(28)
・経皮的血液採取とカテーテルから採取された血液培養で同一菌が陽性となり,カテーテルから採取した血液培養の方が末梢から採取した血液培養よりも2時間以上早く陽性になる(5)
・血管カテーテルが留置されている
かつ
・以下の症状や徴候が少なくとも1つある:発熱
(> 38度),悪寒,低血圧
かつ
・別々の機会に採取された2回以上の血液培養から検出される(22)
その他
感染症
・中心静脈カテーテルの留置がない
かつ
・臨床的に感染部位が明らかで,他に感染の原因となるような菌が検出されていない
かつ
・別々の機会に採取された2回以上の血液培養から検出される(12)
中間 ・複数セットで同一菌が陽性になっている かつ 中心静脈カテーテルが挿入されている
                      (培養が提出されていないまたは陰性)(2)
・血液腫瘍内科患者 かつ 臨床的に感染が疑わしく検出菌を標的とした治療をしている(3)
・長期留置カテーテル(1ヶ月以上) かつ 複数セット陽性(3)
汚染 上記に該当しない(202)

( )内は症例数を表す

3) 同定感受性検査

微生物同定感受性分析装置Walk Away 40plus(ベックマンコールター)にて2013年1月から2016年6月までPos Combo 1Tパネルを使用し,2016年7月からはPos Combo 1Jパネルを用いて同定感受性検査を実施した。

4) 臨床的有意性別の各項目に関する検討

有意例,中間例,汚染例に分類し,陽性検出時間,検出菌,メチシリン耐性,CVCの有無,複数セット陽性率,CVC逆血採取とその他採取部位との時間差,診療科・所属別有意症例率について検討をおこなった。なお,救命救急科の依頼において,救命外来受診時の検体は「救命外来」とし,入院中の検体は患者ごとの診療科に含めた。メチシリン耐性の判定は,2013年1月から2016年6月までClinical and Laboratory Standards Institute(CLSI)M100-S22に準拠し,2016年7月からはCLSI M100-S26に準拠し実施した8),9)

5) カテーテル先端の培養方法

患者から抜去したカテーテル先端は3~5 cmに切断後,滅菌スピッツに入れて提出される。検査室にて滅菌した外科剪刀を用いて長さ1 cm以下に細断し,Heart Infusion Broth(日本ベクトン・ディッキンソン)を2 mL添加後によく撹拌し内腔を洗浄する。次いで,10 μLの白金耳を用いて羊血液寒天培地(日水製薬)に定量培養をした後,増菌培養を実施した。定量培養にて羊血液寒天培地に1コロニー発育した場合を102 CFU/mLとし,102 CFU/mL以上の発育を認めたものをカテーテル培養陽性とした。

6) 有意差検定

陽性検出時間の有意差検定にはWilcoxon rank sum testを用い,その他判断項目にはFisher’s exact probability testを用いた。有意水準はp < 0.01に設定した。

III  結果

1. 臨床的有意性判定

臨床的有意性判定基準別の症例数をTable 1に示す。有意例が67例(24.1%),中間例が8例(2.9%),汚染例が202例(73.0%)であった。有意例67例のうちCRBSIが55例(82.0%)であった。CVC以外のカテーテルによるCRBSIは4例(7.3%)あった。

2. 有意性判定項目

臨床的有意性別の平均陽性検出時間と各項目陽性率をTable 2に示す。平均陽性検出時間は,有意例で19時間54分,中間例で24時間13分,汚染例で31時間1分であり,有意例では汚染例に比べ有意な短縮を認めた(p < 0.01)。有意性別の陽性検出時間をFigure 1に示す。検出菌は,Staphylococcus epidermidisが有意例で42例(62.7%),中間例で5例(62.5%),汚染例で120例(59.4%)と有意差は認めなかった。メチシリン耐性率は有意例で46例(68.7%),中間例で7例(87.5%),汚染例で119例(58.9%)と有意差を認めなかった。CVCの有無は,有意例で51例(76.1%),中間例で6例(75.0%),汚染例で44例(21.8%)であり,有意例と汚染例で有意差を認めた。複数セット陽性率は,有意例で57例(85.1%),中間例で6例(75.0%),汚染例で11例(5.4%)であり,有意例と汚染例で有意差を認めた。CVC逆血採取とその他採取部位との時間差については,CRBSIの55例のうち9例でCVC逆血採取と末梢採取の組み合わせがあり,7例(77.8%)で2時間以上の時間差を認めた。

Table 2  臨床的有意性別の平均陽性検出時間と各項目陽性率
臨床的有意性 症例数(%) 陽性症例数(%)
平均陽性検出時間 S. epidermidis メチシリン耐性率 中心静脈カテーテル留置あり 複数セット陽性 2時間以上の時間差
有意 67(24.1) 19時間54分 42(62.7) 46(68.7) 51(76.1) 57(85.1) 7/9(77.8)
中間 8(2.9) 24時間13分 5(62.5) 7(87.5) 6(75.0) 6(75.0)
汚染 202(73.0) 31時間1分 120(59.4) 119(58.9) 44(21.8) 11(5.4)
有意と汚染間の有意差【p値】 あり【< 0.01】 なし【0.6679】 なし【0.1926】 あり【< 0.01】 あり【< 0.01】
Figure 1 臨床的有意性別陽性検出時間

陽性検出時間が「18時間未満で陽性かつCVCあり」は有意菌の可能性が高く,「30時間以上で陽性かつCVCなし」は汚染菌の可能性が高い。

診療科・所属別有意症例率では,救命外来受診時の症例では8.4%と低く,消化器・一般外科,血液内科,代謝・内分泌内科で40%以上の有意率を認めた(Table 3)。

Table 3  診療科・所属別有意症例率
診療科 有意 中間 汚染 合計 有意率(%)
(CRBSI) (その他)
小児外科 1 0 0 0 1 100
血液内科 11 0 1 12 24 45.8
消化器・一般外科 14 0 2 16 32 43.7
代謝・内分泌内科 7 0 0 9 16 43.7
心臓血管外科 4 1 0 8 13 38.4
循環器内科 3 3 3 14 23 26.0
小児科 3 0 0 9 12 25.0
リウマチ・膠原病内科 2 0 0 6 8 25.0
整形外科 1 1 0 8 10 20.0
腎臓・高血圧内科 3 1 1 18 23 17.3
脳神経内科 1 1 0 10 12 16.6
消化器肝臓内科 1 1 0 11 13 15.3
総合診療内科 0 1 0 6 7 14.2
呼吸器内科 1 0 1 5 7 14.2
脳神経外科 1 0 0 7 8 12.5
救命外来 2 3 0 54 59 8.4
泌尿器科 0 0 0 6 6 0.0
皮膚科 0 0 0 2 2 0.0
産婦人科 0 0 0 1 1 0.0
所属別  
一般病棟 45 6 7 92 150 34.0
救命病棟 8 1 1 40 50 18.0
一般外来 1 2 0 15 18 16.6
救命外来 2 3 0 54 59 8.4

3. カテーテル先端の培養

CVCが留置されていた症例は101例あり,有意例が51例,中間例が6例,汚染例が44例であった。有意例のうちカテーテル先端培養が提出された症例が34例あり,105 CFU/mL以上が4例,105 CFU/mLが3例,104 CFU/mLが9例,103 CFU/mLが8例,102 CFU/mLが1例,増菌培養のみで検出したのが4例,培養陰性が5例であった。102 CFU/mL以上をカテーテル先端培養陽性とした場合,感度は73.5%となった。増菌培養のみで検出または培養陰性であった9例のうち8例は抗菌薬投与後に抜去し提出されていた。

有意症例判断項目をTable 4に示す。複数セット陽性の場合は,最も短い陽性検出時間の検体を判断項目基準とした。

Table 4  有意症例判断項目
有意症例判断項目 感度 特異度 陽性的中率 陰性的中率 偽陽性率 偽陰性率 陽性尤度比
18時間未満で陽性 52.4% 91.3% 81.6% 72.3% 8.7% 47.6% 6.0
複数セットが陽性 89.6% 89.2% 86.0% 92.1% 10.8% 10.4% 8.3
CVCあり 76.9% 76.7% 70.9% 81.9% 23.3% 23.1% 3.3
18時間未満に陽性かつCVCあり 46.2% 96.2% 89.9% 70.8% 3.8% 53.8% 12.1
18時間未満に陽性かつ複数セット陽性 48.6% 98.3% 95.4% 72.2% 1.7% 51.4% 28.0
24時間未満に陽性 78.3% 64.2% 61.7% 80.1% 35.8% 21.7% 2.2
24時間未満に陽性かつCVCあり 61.3% 87.5% 78.3% 75.4% 12.5% 38.7% 4.9
24時間未満に陽性かつ複数セット陽性 71.7% 94.8% 91.0% 82.0% 5.2% 28.3% 13.8
30時間未満に陽性 88.2% 44.4% 53.9% 83.7% 55.6% 11.8% 1.6
30時間未満に陽性かつCVCあり 69.3% 84.4% 76.6% 78.9% 15.6% 30.7% 4.4

IV  考察

血液培養は2セット採取率の向上によりコンタミネーションの判断が容易となってきた。しかし国内における血液培養由来CNSの臨床的有意性に関する報告は少なく,検査室として判断に苦慮する場面も多い。当院の検討では血液培養からCNSを検出した際の24.1%が有意例であった。有意率はPienらの報告1)の10%に比べ高かったが押谷らの報告10)の約30%と同等であった。平均在院日数が欧米と比較し長く11),CVC留置日数が長いなどの医療背景が異なることが一因と考えられる。よって本邦においてはよりCNSによる真の感染症を考慮する必要がある。

有意性別の陽性検出時間は有意例で19時間54分,汚染例で31時間1分と有意差を認めた。Kassisら12)は,血液培養の陽性検出時間と定量的血液培養の結果が相関すると報告している。有意例で陽性検出時間が短縮していたことは血液中細菌密度が高かったためと考えられる。有意菌判断基準として,「18時間未満で陽性かつCVCあり」と設定した場合,感度46.2%,特異度96.2%,陽性的中率89.9%,陽性尤度比12.1となる。また,汚染菌判断基準として,「30時間以上で陽性かつCVCなし」と設定した場合,感度49.7%,特異度95.3%,陽性的中率93.5%,陽性尤度比10.5となる。検出菌がStaphylococcus aureusであった場合は有意率が極めて高くなるが1),グラム(Gram)染色でS. aureusとCNSを鑑別することは一般的に困難である。本検討対象期間中にS. aureusが検出された検体は559検体あり,514検体(91.9%)は陽性検出時間が30時間以内であった。「30時間以上で陽性かつCVCなし」はCNSの可能性が高く,汚染菌の可能性が高いと考える。血液培養陽性報告の第一報にこれらの判断基準を付加することで,早期の適切な抗菌薬療法につながると考える。過去にも陽性検出時間を用いた有意性判断に関する報告はあるが,報告により基準が異なる13)~15)。患者背景や血液培養の運用方法が有意性判断基準に影響を与えると考えられ,各施設における基準の設定が必要と考える。

CRBSIを発症する患者は抗菌薬投与中または投与経験のある患者が多い。ゆえにメチシリン耐性率に差が生じると考えたが,有意例で68.7%,汚染例で58.9%と有意例で高い傾向にあったが有意差は認めなかった。検出菌においても有意例,汚染例ともにS. epidermidisが約60%であり,検出菌やメチシリン耐性から有意性を判断することは困難と考える。

CVC逆血採取と末梢採取の組み合わせが9例あり,7例(77.8%)で2時間以上の陽性検出時間差を認めた。CRBSIと診断された51例のうち18例(35.2%)はCVCの培養提出がなかった。提出がなかった18例のうち4例(22.2%)がCVC逆血採取と末梢採取の組み合わせで提出されており,3例で2時間以上の時間差を認めた。CRBSIを疑った際はCVCを抜去することが前提であるが,患者の状況により抜去が困難なことも多い。そのような場合にCVC逆血採取と末梢採取による実験室診断は有用である16)

CVC逆血採取した9症例18検体の平均陽性検出時間は13時間28分であり,カテーテル先端培養が提出された5例はすべて103 CFU/mL以上の発育を認めた。カテーテル先端の定量培養結果と陽性検出時間は相関すると考えられる。しかし,CRBSIを診断する目的のカテーテル先端培養やCVC逆血採取は,陽性的中率が低く培養件数が減少傾向にあると報告されている17),18)。CRBSIを疑った際は,少なくとも1つの末梢採取が必要であり,適切な採取方法と実験室診断の基準を周知することは,Antimicrobial Stewardship Teamの活動として重要と考える。

診療科・所属別有意症例率では救命外来受診時に採取された血液培養の有意率が8.4%と他科に比べて低く,消化器・一般外科や血液腫瘍内科,代謝・内分泌内科では有意率が約40%と高かった。救命外来受診時の血液培養が18時間未満に陽転した場合,有意例が3例,汚染例が4例である。この場合に陽性的中率は42.8%となる。対して,消化器・一般外科,血液内科,代謝・内分泌内科の血液培養が18時間未満に陽転した症例を合わせると有意例が22例,汚染例が3例であった。この場合は陽性的中率が78.5%となる。救命外来受診時など有意率が低い診療科では,特異度の高い判断基準を用いても陽性的中率が低くなることに留意しなければならない。

陽性検出時間を検討するうえで,検体採取から自動分析機に装填するまでの搬送時間は重要である。当院では当直帯においても医師,看護師,看護助手により採取後は直ちに自動分析機に装填されている。この協力があるために正確な陽性検出時間のデータ収集ができた。本検討結果を各スタッフへフィードバックすることが,搬送時間に対する意識向上と維持につながると考える。

V  結語

血液培養からCNSを検出した場合の有意性判断として「18時間未満で陽性かつCVCあり」は有意菌の可能性が高く,「30時間以上で陽性かつCVCなし」は汚染菌の可能性が高い。血液培養陽性報告の第一報に付加することで,早期の適切な抗菌薬療法につながると考える。

COI開示

本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。

文献
 
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