Japanese Journal of Medical Technology
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Technical Articles
Basic study of plasma metanephrine and normetanephrine measurements using 2-MET Plasma・ELISA kit “SML”: Plasma metanephrine and normetanephrine measurements
Wataru TATEISHIJunko KOMATSUHitomi TERADAMakito SHINODAIsami TSUBOI
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2020 Volume 69 Issue 3 Pages 335-339

Details
Abstract

我々は,酵素免疫測定法を測定原理とした血漿中のメタネフリンとノルメタネフリン測定試薬2-MET Plasma・ELISAキット「SML」の基礎的検討を行った。再現性(同時再現性および日差再現性)は変動係数15%以内,検出限界はメタネフリン20.0 pg/mL,ノルメタネフリン35.0 pg/mL,共存物質の影響もなく,希釈直線性も良好な結果であった。2-MET Plasma・ELISAキット「SML」は,日常の臨床検査に十分適応可能な試薬性能を有していた。

Translated Abstract

We performed basic evaluation studies of the 2-MET Plasma・ELISA kit “SML” for plasma metanephrine (MN) and normetanephrine (NMN) measurements based on enzyme-linked immunosorbent assay. According to the results, this kit showed CVs of within-run and between-day precisions of less than 15.0%, and the detection limits were 20.0 pg/mL for MN and 35.0 pg/mL for NMN. No effects from interfering substances were detected, and the dilution linearity was also good. The 2-MET Plasma・ELISA kit “SML” showed good and sufficient basic performance for routine use.

I  緒言

褐色細胞腫は,副腎髄質または副腎外傍神経節腫瘍のクロム親和性細胞に由来するカテコールアミンを産生する神経内分泌腫瘍であり,高血圧,頭痛,発汗,動悸などの症状を呈する1)。その診断にはカテコールアミン代謝物であるメタネフリン(metanephrine; MN)及びノルメタネフリン(normetanephrine; NMN)が用いられている1)~3)

これまでは24時間蓄尿中MN及びNMNの測定を行ってきたが,欧米における褐色細胞腫の診断ガイドラインでは血中遊離MNの測定が第一選択となっている4),5)。本邦では,2019年1月に酵素免疫測定法を測定原理とした血漿中の遊離MN及び遊離NMNの測定試薬が保険収載され,褐色細胞腫の診断への普及が期待されている4),5)。今回,我々は2-MET Plasma・ELISAキット「SML」(本試薬)の基礎的検討を実施したので報告する。

II  測定試薬,測定機器および測定原理

1. 測定試薬

2-MET Plasma・ELISAキット「SML」(セティ・メディカルラボ株式会社)

2. 測定原理

血漿中(エチレンジアミン四酢酸又はヘパリン血漿)のMN及びNMN量を競合的に酵素免疫測定法(enzyme-linked immuno sorbent assay; ELISA)にて2重測定する(Figure 1)。

Figure 1 Measurering method

The 2-MET Plasma ELISA kit “SML” measures the amount of MN and NMN based on the principle of enzyme-linked immunosorbent assay (ELISA).

Cut-off value: 130 pg/mL or more (MN) or 506 pg/mL or more (NMN).

Measurement range: 13 pg/mL to 3,600 pg/mL(MN), 30 pg/mL to 7,200 pg/mL (NMN).

III  検討項目

1. 同時再現性

キット中の管理検体(L, H)をそれぞれ5回測定し,変動係数(Coefficient of variation; CV%)を算出した。

2. 日差再現性

キット中の管理検体(L, H)をそれぞれ測定し,5日間のCV%を算出した。

3. 検出限界

キット中の管理検体Lを検体希釈液にて2n倍希釈して試料を調製した。調製した試料を4回測定し,測定値の平均値と標準偏差(standard deviation; SD)を算出した。検体希釈液の平均測定値+2SDより試料の平均値−2SDが大きくなる最小濃度を検出限界とした。

4. 希釈直線性

プール血清を検体希釈液で2n倍希釈して調製し,1回測定した。

5. 共存物質の影響

プール血清9容に干渉チェックAプラス(シスメックス社)1容を添加し,ビリルビン遊離型(Bilirubin-F)およびビリルビン抱合型(Bilirubin-C),溶血ヘモグロビン(Hemoglobin),乳ビ(Chyle)の測定値に及ぼす影響を検討した.添加0濃度(8重測定)の測定値の平均値が添加濃度での測定値(8重測定)の平均値 ±40%以内であるとき,測定値に影響がないと判断した。

IV  結果

1. 同時再現性

キット中の管理検体(L, H)をそれぞれ測定した結果,MNはCV 11%未満,NMNはCV 10%未満と良好な結果が得られた(Table 1)。

Table 1  Within-run precision
No. MN NMN
L H L H
1 52.0 494.5 126.6 1,296.0
2 45.0 543.2 110.4 1,298.0
3 50.5 496.8 131.8 1,237.5
4 47.1 549.8 133.8 1,211.5
5 58.4 503.9 141.6 1,239.0
Average (pg/mL) 50.6 517.6 128.8 1,256.4
SD (pg/mL) 5.2 26.7 11.6 38.6
CV (%) 10.2 5.2 9.0 3.1

2. 日差再現性

キット中の管理検体(L, H)をそれぞれ測定した結果,MNはCV 15%未満,NMNはCV 13%未満と良好な結果が得られた(Table 2)。

Table 2  Between-day precision
No. MN NMN
L H L H
1 60.3 465.0 136.2 1,015.4
2 76.8 511.9 105.4 1,308.0
3 68.6 652.6 114.1 1,025.0
4 70.4 526.5 135.7 1,275.5
5 52.0 494.5 126.6 1,296.0
Average (pg/mL) 65.6 530.1 123.6 1,184.0
SD (pg/mL) 9.6 72.2 13.6 150.0
CV (%) 14.7 13.6 11.0 12.7

3. 検出限界

検出限界はMN濃度20.0 pg/mL,NMN濃度35.0 pg/mLであった(Figure 2)。

Figure 2 Detection limit analysis

Dotted line: mean value of sample diluent +2SD.

Low control sample in the kit was diluted 2n times with sample diluent to prepare samples and confirmed. As a result, the detection limit was MN concentration 20.0 pg/mL and NMN concentration 35.0 pg/mL.

4. 希釈直線性

MNは重相関係数(multiple correlation coefficient: R)0.996,約265 pg/mLまで,NMNはR = 0.993,約235 pg/mLまで良好な希釈直線性が得られた(Figure 3)。

Figure 3 Dilution linearity test

Pool serum was diluted 2n times with sample diluent to prepare samples and confirmed. As a result, good linearity was confirmed.

5. 共存物質の影響

プール血清に対して,Bilirubin-Fは18.0 mg/dL,Bilirubin-Cは18.8 mg/dL,Hemoglobinは470 mg/dL,Chyleは1,590 FTUまで影響は認められなかった(Table 3)。

Table 3  Effects of interference substances on measurement
Interference substance MN NMN
(+) (−) Interference rate (+) (−) Interference rate
Bilirubin-F (18.0 mg/dL) 38.7 35.0 110% 420.6 415.3 101%
Bilirubin-C (18.8 mg/dL) 44.0 36.3 121% 453.1 449.5 101%
Hemoglobin (470 mg/dL) 41.0 38.2 107% 418.0 434.0 96%
Chyle (1,590 FTU) 38.4 39.4 98% 428.0 459.5 93%

V  考察

褐色細胞腫から産生されたアドレナリン及びノルアドレナリンはカテコール-O-メチル転換酵素(catechol-o-methyl transferase; COMT)によってMNやNMNに代謝される4)~7)。褐色細胞腫ではカテコールアミンの産生に加えてCOMTが高濃度で発現しているため,褐色細胞腫患者の体内ではMN及びNMNが持続的に分泌され血中濃度が上昇する1),4),5)

これまで24時間蓄尿中MN及びNMNを測定しスクリーニングしていたが,この方法は入院して蓄尿しなければならないため患者や医療機関に負担が大きかった4),5)。一方,血中遊離MNおよびNMNは外来随時採血での測定が可能である。また,24時間蓄尿中MN及びNMNは総MNおよびNMNを測定しているのに対し,血中遊離MNおよびNMNは褐色細胞腫から産生されたMNおよびNMNを測定しているため,腫瘍の状態を正確に把握することが可能である1),4)~6)

そこで,本試薬の基礎的検討を行ったところ,同時再現性はMN:CV 11%未満,NMN:CV 10%未満,日差再現性はMN:CV 15%未満,NMN:CV 13%未満であった。検出限界はMN:20.0 pg/mL,NMN:35.0 pg/mLであった。希釈直線性はMN,NMN共にR > 0.995と良好であり,共存物質の影響はなかった。よって,本試薬は日常の臨床検査に十分適応可能な試薬性能を有していると考える。しかしながら,本試薬の添付文書にはHemoglobinとChyleで影響があると記載されている。今回,干渉チェックAプラスを用いて検討したところ,影響は認められなかったが,干渉チェックAプラスは擬似物質であるためHemoglobinやChyle検体の取扱いには注意が必要である8),9)

一方,カテコールアミンの採血の際は不安やストレスにより上昇するため安静臥床20分後に測定することが望ましいことが報告されている5)~7),10)。今後は採血方法による測定値への影響や臨床検体を用いた評価を検討していく予定である。

COI開示

本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。

文献
 
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