Japanese Journal of Medical Technology
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Technical Articles
Basic study of ‘STACIA MEBLuxTM TEST mitochondria M2’, a reagent for anti-mitochondrial antibody measurement
Isami TSUBOIKunimitsu MACHIDAKazuto NAKAMURA
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2020 Volume 69 Issue 4 Pages 602-607

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Abstract

我々は,化学発光酵素免疫測定法を基本原理とした「ステイシアMEBLuxテスト ミトコンドリアM2」(以下,本試薬)を用いて,血清中の抗ミトコンドリアM2抗体検出の基礎的検討を行った。再現性(同時再現性および日差再現性)はCV 6.0%以内と良好な結果であった。ビリルビンF(遊離型),ビリルビンC(抱合型),溶血ヘモグロビン並びに乳びに対して影響は認めなかった。しかし,RFに対して負の影響を認めた。本試薬は,対照試薬「エリア ミトコンドリアM2」に対して良好な相関性を示した(y = 0.815x + 0.691, r = 0.803, n = 184)。しかし,本試薬のIndex 7.0未満の検体に対する相関性は回帰式y = 0.071x + 0.929,r = 0.482(n = 128)であった。これらの検体のうち19検体が対照試薬では陽性であった。判定一致率は81.5%と良好な結果であったが,陰性一致率は98.0%に比べ陽性一致率は73.2%と低かった。本試薬は,日常の臨床検査に問題なく対応できる試薬であるが,陰性データの判読には臨床的な背景に基づく考察が必要と思われた。

Translated Abstract

We performed basic evaluation studies of ‘STACIA MEBLuxTM TEST mitochondria M2’ (STACIA), a reagent for anti-mitochondrial M2 antibody measurement by chemiluminescent enzyme immunoassay. Results showed that the CVs of within-run and between-day precisions were less than 6.0%. No effects from interfering substances (bilirubin F, bilirubin C, hemoglobin and chyle) were detected. However, the rheumatoid factor showed negative effects. In addition, the correlation of STACIA with ‘Elia mitochondria M2’ (ELIa), a comparison product, was good (y = 0.815x + 0.691, r = 0.830, n = 184). The correlation between STACIA (< Index 7.0) and ELIa was shown by the correlation factor r = 0.482 and the regression equation y = 0.071x + 0.929 (n = 128). Nineteen samples were positive for the antibody in the measurement using ELIa and nineteen samples were negative in the measurement using STACIA. Positive and negative concordance rates were good (81.5%). However, the positive concordance rate (73.2%) was lower than the negative concordance rate (98.0%). STACIA showed basic performance good enough for routine use. However, the interpretation of the data seemed to require consideration of the clinical background.

序文

抗ミトコンドリア抗体(anti-mitochondrial antibody; AMA)は,原発性胆汁性肝硬変(primary biliary cirrhosis; PBC)患者血清中に高率に検出される自己抗体である。AMA測定は,平成22年度に「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班,原発性胆汁性肝硬変分科会によって提唱されたPBCの診断基準に含まれている1)。PBCは,中年以降の女性に好発し,肝小葉内胆管の変性,破壊による慢性肝内胆汁うっ滞をきたす自己免疫性肝疾患である。

AMAは,M1からM9の亜型に分類され,その中でPBCと関連する抗原はM2,M4,M8,M9がある。特にM2抗原に対する抗体は高い疾患特異性をもっている2)

現在,当社では蛍光酵素免疫測定法を原理とした抗M2抗体測定試薬を用いて定性検査を実施しているが,多くの施設より定量最終値の報告を要望されている。今回の検討期間中(1か月)に9,583件受託検査して,陽性は1,295件であった。陽性検体のうち測定上限値(400 U/mL以上)を超える検体が322件で再検率は24.9%であった。

現状で検査数の約25%が測定範囲を超え,再検査率が高い問題点を抱えている。

そこで,化学発光酵素免疫測定法(chemi-luminescent enzyme immunoassay; CLEIA)を基本原理とした「ステイシアMEBLuxテスト ミトコンドリアM2」の基礎的検討を実施し,良好な結果を得たので報告する。

I  試薬・機器および測定原理

1. 測定試薬

1)ステイシアMEBLuxテスト ミトコンドリアM2(医学生物研究所)(以下,本試薬)

標準品2濃度(0, 50 Index)

2)エリア ミトコンドリアM2(サーモフィッシャー ダイアグノスティックス社)(以下,対照試薬)

標準品6濃度(0, 6, 20, 50, 250, 1,250 μg/mL)

2. 測定機器

1)全自動臨床検査システムSTACIA(医学生物研究所)

2)ファディア250(サーモフィッシャー ダイアグノスティックス社)

3. 測定原理

1) 本試薬

検体にM2抗原と結合した磁性粒子を反応させると抗原抗体反応が生じる。この磁性粒子を集磁して洗浄後,アルカリホスファターゼ標識抗ヒトイムノグロブリンポリクローナル抗体(ヤギ)(以下,酵素標識抗体)を反応させる。M2抗原結合磁性粒子-抗M2抗体-酵素標識抗体の免疫複合体が形成される。この複合体を集磁し,洗浄後,2-クロロ-5-(4-メトキシスピロ{1,2-ジオキセタン-3,2'-(5'-クロロ)-トリシクロ[3,3,1,13,7]デカン}-4-イル)-1-フェニルホスフェート・二ナトリウム(CDP-Star)を加えると,CDP-Starは複合体のアルカリホスファターゼにより加水分解され発光する。この発光量を測定し,抗ミトコンドリアM2抗体量(以下,M2抗体)を検出する。

2) 対照試薬3)

検体をミトコンドリアM2結合ウェルに反応させ,免疫複合体を形成させる。次に酵素標識抗IgG/IgMを添加するとミトコンドリアM2-抗ミトコンドリア抗体-酵素標識抗IgG/IgM複合体が形成され,基質液(4-メチルウンベリフェリル-β-D-ガラクトピラノシド)を加えると複合体中の酵素量に比例した蛍光物質が形成される。この蛍光量から検体中のM2抗体を測定する。

II  検討内容

1. 同時再現性

当社で受託した検体のうち連結不可能な血清検体をプール化して作製した3レベルの管理検体(低濃度L,中濃度M,高濃度H)をそれぞれ10回測定し,変動係数(CV%)を算出した。

2. 日差再現性

同時再現性で用いた3レベルの管理検体を,連続5日間それぞれ1回測定し,CV%を算出した。なお,キャリブレーションは初回のみ実施した。

3. 共存物質の影響

連結不可能な血清検体をプール化して作製した2レベルの血清検体9容に干渉チェックAプラスおよび干渉チェック・RFプラス(シスメックス社)1容を添加し,ビリルビンF(遊離型),ビリルビンC(抱合型),溶血ヘモグロビン,乳びおよびRFの測定値に及ぼす影響を検討した。

添加0濃度(5重測定)の測定値の平均値と標準偏差(SD)を算出し,各添加濃度での測定値が添加0濃度の平均値 ± 2SD以内であるとき,測定値に影響がないと判断した。

4. 検出限界

M2濃度7.1 U/mLの連結不可能な血清検体を専用希釈液にて希釈し,試料を調製した。調製した試料を各5回測定し,測定値の平均値と標準偏差(SD)を算出した。専用希釈液の測定値の平均値 + 2.6SDより試料の測定値の平均値-2.6SDが大きくなる最小濃度を検出限界とした。

5. 相関性試験

当社へ依頼された測定済み検体で連結不可能な血清検体184例に関して,本試薬と対照試薬との相関性を検討した。また,Index 7.0未満の血清検体128例に関しても相関性を検討した。

本試薬はIndex 7.0以上で陽性,Index 7.0未満で陰性とした。

対照試薬は10 U/mLを超える場合で陽性,10 U/mL以下7 U/mL以上で偽陽性,7 U/mL未満で陰性とした。

III  検討結果

1. 同時再現性

3レベルの管理検体はCV 3.1~4.8%と良好な結果が得られた(Table 1)。

Table 1  Parallel run precision
M2 L M H
Mean (Index) 8.7 43.7 108.9
SD (Index) 0.3 1.3 5.2
CV (%) 3.9 3.1 4.8

2. 日差再現性

3レベルの管理検体はCV 4.1~5.7%と良好な結果が得られた(Table 2)。

Table 2  Reproducibility
M2 L M H
Mean (Index) 8.4 44.9 106.9
SD (Index) 0.5 2.0 4.4
CV (%) 5.7 4.4 4.1

3. 共存物質の影響

2レベルの管理検体ともにビリルビンF(遊離型)は18.8 mg/dL,ビリルビンC(抱合型)は20.7 mg/dL,溶血ヘモグロビンは480.0 mg/dL,乳ビは1,620 FTUまで影響は認めなかった(Figure 1)。RFに関して,低値管理検体は400 IU/mLまで,高値管理検体は200 IU/mLまで影響は認めなかった(Figure 1)。

Figure 1 Effects of interfering substances on measurement of M2

Dotted line: untreated mean value ± 2SD.

4. 検出限界

ブランクの平均値 + 2.6SDが0.5 Indexに対して,2/10の希釈値の平均値-2.6SDが1.2 Indexであったことより,検出限界は試料濃度1.4 Indexであった(Figure 2)。

Figure 2 Dilution linearity test

Three levels of serum were diluted 5 times with dilution buffer to prepare samples.

5. 相関性試験

本試薬は,対照試薬に対して回帰式y = 0.815x + 0.693相関係数r = 0.803(n = 184)良好な相関性を示した(Figure 3a)。この184検体の中Indexが7未満の128検体に関して,本試薬の対照試薬に対する回帰式y = 0.071x + 0.929 相関係数r = 0.482(n = 128)で弱い相関性を示した(Figure 3b)。また,128検体中33検体が検出限界以下であった。

Figure 3 Correlation

a) Total

Fine correlation between STACIA and ELIa as correlation factor r = 0.803 and regression equation y = 0.815x + 0.691 (n = 184).

b) < Index 7.0

Correlation between STACIA and ELIa as correlation factor r = 0.482 and regression equation y = 0.071x + 0.929 (n = 128).

本試薬の陰性検体128検体中,対照試薬で19検体が陽性であった。

陽性一致率は73.2%(52/71),陰性一致率は98.0%(98/100),判定一致率は81.5%(150/184)であった(Table 3)。

Table 3  Correlation
Diagnostic criterion ELIa Total
+ ±
STACIA + 52 2 2 56
19 11 98 128
Total 71 13 100 184

IV  考察

本試薬の基礎的検討を行ったところ,同時再現性と日差再現性はCV 6.0%以内で,検出限界は1.2 Indexであった。また,ビリルビンF(遊離型),ビリルビンC(抱合型),溶血ヘモグロビン並びに乳びに対して,影響は認めなかった。しかし,RFに関しては,低値管理検体は500 IU/mLから,高値管理検体は300 IU/mLから負の影響が認められ,丹野ら3)の報告と同様な結果であった。本試薬の測定値が低値でありかつ,RF値が高値の場合RFによる影響について検討が必要である。

本試薬は3種類のRecombinantM2抗原が結合した磁性粒子と酵素標識したヒトイムノグロブリンポリクローナル抗体を構成試薬として用いている。対照試薬はNativeM2抗原とRecombinantM2のカクテル抗原が固相化されたウェルと酵素標識ヒトIgG/IgMマウスモノクローナル抗体を構成試薬として用いている。本試薬はIgG,IgMとIgAに,対照試薬はIgGとIgMに反応する。抗原に関しては対照試薬がNativeM2抗原を含む優位性がある。このような特性を持つ本試薬と対照試薬に関して,平田ら4)は臨床的感度と特異度を評価した結果,同等の性能であることを報告している。平田らの報告と同様に本試薬と対照試薬との相関係数と回帰式は良好であった(Figure 3a)。しかし,本試薬でIndex 7.0未満の128検体に対する対照試薬との相関係数はr = 0.482で,全検体の相関係数に比べ低くなった(Figure 3b)。本試薬の標準品は2点直線で,対照試薬の標準品は6点で低値の標準品を加えた標準曲線を採用している。本試薬に比べ対照試薬は,低値領域が高くなるように設定されている。この点が低値領域の乖離の原因の一つと思われた。

また,陰性一致は98.0%に対して陽性一致率は73.2%と低かった(Table 3)。最終的に対照試薬が陽性で本試薬が陰性の19検体に対して,臨床的背景を確認しなければ試薬の臨床的感度と特異性の評価は困難であると思われた。

対照試薬は測定範囲を超える比率が約25%で再検率が高い問題点があったが,検討期間中に本試薬の上限値800 Indexを超える検体はなく再検率は0%であった。

一方で,対照試薬の測定時間は1.5時間に対して本試薬は19分で,短時間で判定することが可能である。

本試薬は日常のルーチン検査に用いる性能を有する試薬であったが低値域の対照試薬との乖離検体の検証が必要と思われた。

V  結語

本試薬「ステイシアMEBLuxTMテスト ミトコンドリアM2」は今回の基礎的検討において良好な成績が得られたことから,日常検査に問題なく対応できる試薬であるが,陰性データの判読には臨床的な背景に基づく考察が必要と思われた。

COI開示

本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。

文献
 
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