Japanese Journal of Medical Technology
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Materials
Attempt of online seminar using Web system
Shiori HOSHIHisashi HORIUCHIKenyu HASHIMOTOTatsushi MATSUOMitsuyasu IKEDAShinji OGIHARA
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2021 Volume 70 Issue 1 Pages 123-127

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Abstract

2020年2月下旬から新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に伴い,臨床検査分野の各種研修会,学会等は中止または延期となり,臨床検査に関する知識等の修得が難しい状況となった。そこで,この状況を改善する一方法として,Web会議システムとソーシャル・ネットワーキング・サービスを活用したオンライン研修会を2020年3月~5月に計3回開催し,参加者に対してアンケート調査する方法で効果を検証した。オンライン研修会のメリットとしては,自宅や職場から聴講できるため参加者の負担が減ること,遠方からでも参加できること,スライドが従来の研修会よりも見やすいこと等であった。また病院検査室からのリアルタイム配信も可能であり,デモンストレーション形式の研修会も容易に実施できる。デメリットとしては講師が参加者の反応を観察できないこと,Web会議システムで設定できる端末数の制限があること,参加者同士の交流ができないこと等が挙げられた。今後,COVID-19が終息し,通常の研修会が開催可能となった場合においても,オンライン研修会の有用性は高いと考えられる。また,今後の研修会は,従来の研修会とオンライン研修会を併用した新たな研修会方法を模索すべきである。

Translated Abstract

The COVID-19 pandemic broke out in Japan in late February 2020. We had to cease or postpone meetings, workshops, and seminars. Given this situation, we held an online seminar using the Web Meeting System and Social Networking Service in our communication group. We held three online seminars from March to May 2020 and then conducted a survey of the participants. The advantages of the online seminar were that the burden on participants was reduced because they could attend from home or work, they could participate from a distance, and slides were easy to see compared with in conventional seminars. In addition, since real-time distribution from the laboratory room was possible, demonstration-style seminars could be held easily. The disadvantages of the online seminar were that a speaker could not see the reaction of the participants, the number of terminal units was limited, and participants and speakers could not interact. The online seminar was highly useful. In the post-COVID-19 era, we should seek new seminar methods that combine conventional and online seminars.

I  はじめに

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に伴い,人的接触距離を表す「ソーシャルディスタンス(フィジカルディスタンス)」の確保や集団感染が起こりやすい環境下である「3密(密閉・密集・密接)」を控える行動が求められている。ソーシャルディスタンスの確保が困難であり,3密状態となることが予想される各種研修会や学会では2020年2月下旬より幾つかの開催予定が延期もしくは中止となった(2020年6月現在,第69回日本医学検査学会延期,第94回日本感染症学会総会・学術講演会延期)。研修会や学会は,最新情報の取得や情報交換の場であり,検査業務の発展に必要不可欠であることから,研修会や学会の延期・中止は,学ぶ機会を失うことであり,モチベーションの低下が懸念されている。

3密を避けるため,企業ではWeb会議システムを用いた会議を実施するようになっているが,Web会議システムはインターネット環境を利用して,離れた場所からリアルタイムに参加者へのプレゼンテーションや意見交換ができるシステムである。一方で,本システムは音声の遅延や発話時の衝突などオンラインシステム特有のデメリットも指摘されている1)

SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)は,幅広い世代で普及しており,SNSの広がりは親族・友人のみならず,研修会等で知りあった臨床検査技師同士での情報交換の場として活用されていることから,筆者らもSNSを用いて,情報交換のできるグループを作成していた。

そのような背景から,Web会議システムとSNSを活用することで,オンライン研修会開催の可能性を考え,Web会議システムとSNSを活用したオンライン研修会を開催した。

II  方法

今回使用したWebツールシステムはZoom(Zoomコミュニケーションズ社),LINE(LINE社),Googleフォーム(Google社)の三社である。各システムの特徴をTable 1に示す。Zoom有料ライセンス版(Pro)の基本プランでは100端末まで同時接続可能,使用時間は無制限である。

Table 1  今回使用したWebシステム一覧
名称 カテゴリ 使用用途 使用料
LINE SNS
コミュニケーションツールアプリ
研修会案内配信
資料配信
アンケート配信
無料
Zoom Web会議システム オンライン会議
オンライン研修会
無料(有料版にアップグレード可能)
※本会は有料ライセンス版(Pro)を使用
Googleフォーム フォーム作成ツール アンケート作成・集計 無料

1. オンライン研修会の企画工程

1) 研修会内容の企画

数名のコアメンバーで企画した。

2) LINEを用いた研修会案内

臨床微生物検査従事者有志のLINEグループ『キティ会』のメンバー(2020年6月現在52名)と,そのメンバーからの紹介者に対し案内した。

当初,参加者全員がZoomの使用経験がなかったため,第1回開催前に通信テスト会を事前に行い,仕様及び操作方法を確認した。

3) オンライン研修会の開催

第1,2回は講義のみ,第3回は講義+デモンストレーション形式で実施した。資料は開催前もしくは開催後にLINEを用いて配信した。第3回開催時は以下のルールを設けた。

①会議室には時間に余裕をもって入室すること。

②講演中,演者以外はマイクオフにすること。

③質疑はチャット機能を利用する。質問内容を簡潔に,発言したい場合はその旨を入力すること。

過去3回の実施内容詳細はTable 2に示す。

Table 2  研修会内容詳細
開催日時 内容 参加人数
第1回 2020/3/13(金)
21:00
Small-colony variants(SCVs)のお話
講師:星紫織(福岡市医師会臨床検査センター検査2課)
20
第2回 2020/3/26(木)
21:00
院内新型コロナPCR検査始めました
講師:池田光泰(厚生連廣島総合病院臨床研究検査科)
24
第3回 2020/5/22(金)
21:00
実践!新型コロナPCR検査感染研法デモンストレーション!
講師:荻原真二(山梨大学医学部附属病院検査部)
※リアルタイムで実演
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4) アンケート調査

第3回研修会終了後,いずれかの研修会に参加した57名を対象にGoogleフォームでアンケートを実施した。

過去3回の実施内容詳細はTable 2に示す。

アンケートの項目は①年齢②居住地域③参加した研修会④参加動機⑤視聴場所⑥開催時間⑦従来の研修会とオンライン研修会との比較⑧オンライン研修会でのメリットとデメリットとした。

III  アンケート結果

回答者は43名/57名(回答率75.4%)であった。結果の詳細はFigure 1に示す。参加メンバーの年齢は20–60代であったが,20–30代が約6割を占めていた。居住地域は福岡県を中心に北海道から沖縄県までの参加があった。参加人数は第1回16名,第2回24名,第3回37名と,回を重ねる毎に増加した。参加動機としては「研修会内容に興味があったから」や「参加しやすかったから」等の意見が多かった。開催時間21時開始については81%が適度であったとの回答であった。従来の研修会とオンライン研修会を比較したところ,「参加しやすさ」や「スライドの見やすさ」ではオンライン研修会の方が良いという意見が多い一方,「講師や参加者との交流」については,従来の研修会の方が良いという意見が多かった。オンライン研修会でのメリットとデメリットについてはTable 3に示す。メリットとしては利便性が高いことが多く挙げられていた。デメリットとしては音声の問題が挙げられた一方,特になしとの回答も多かった。

Figure 1 アンケート結果

①年齢②居住地域(都道府県)③参加した研修会④参加動機⑤視聴場所⑥開催時間21時について⑦従来の研修会とオンライン研修会との比較。各項目のアンケート結果を示す。

Table 3  アンケート結果⑧オンライン研修会でのメリットとデメリット
メリット デメリット
会場に行かなくてよい(8) 音声の問題(4)
デモンストレーションが見やすい(6) 受講者の反応がわからない(3)
自宅で視聴できる(5) 誰が参加しているのかわからない(2)
参加しやすい(4) 金銭面の受け渡し(2)
遠方の勉強会に参加できる(3) 時間の縛りがルーズ(2)
他施設の状況がわかった(1) 開催時間(1)
特になし(8)

IV  考察

これまでオンライン研修会を3回実施したが,特に第3回の研修会はオンラインである特性を活かして,デモンストレーション形式で実施し,病院検査室からリアルタイム配信した。デモンストレーション形式は従来の研修会であると後列の人は見づらくなる傾向にあるが,オンラインで実施することによって参加者全員が手技を間近で見ることができた。さらにリアルタイム配信したことで,より実践的な内容となった。従来の研修会と違いオンライン研修会は簡便に実施することができ,充実した研修会の開催ができると期待される。

オンライン研修会での質疑応答は,第1,2回は口頭のみで行ったが,第3回はチャット機能を利用した結果,過去2回と比較してスムーズな質疑応答ができた。また,チャット機能を利用することで声を出さずに質問することが可能となり,質問しやすかったとの意見もあった。

アンケート結果からオンライン研修会のメリットとして,従来の研修会と比較して会場に移動するための時間や費用が節約できるため参加しやすいとの意見が多かった。加えて,遠方の方は参加することが難しかった研修会に参加できるのもメリットの一つである。また,自宅から参加できることも利点であると考えられる。

開催時間に関しては,自宅から参加することを想定して21時に設定したが,それにより自宅から視聴できることで,子育て世代の方の参加も容易となるメリットも想定される。

オンライン研修会のデメリットとしては,音声の問題が挙げられた。通信状況が悪いと音声が乱れるため,双方で十分な通信状況の確認をしなければならない。さらに,各参加者にマイクが付いており雑音も拾い易く,講義中に雑音が入り聞き取り難いことがあった。また,オンライン研修会は通信環境が整っていないと参加できないことも留意しなければならない。

講師は参加者を直接見られないため,参加者の反応がわかりづらく,終了後の交流もないため,講師のモチベーション低下が懸念される。そのため,講師と参加者,さらに参加者同士の交流は従来の研修会形式も有用であるが,研修会終了後にオンライン上で情報交換会等を開催することでも交流できると考えられる。また,終了時間を決めていなかった研修会もあり,退室するタイミングが分かりづらかったとの意見もあった。研修会のプログラムを周知させることで,参加者のストレスも軽減されると考えられる。

Web会議システムを使用する上での他の注意点として,使用するWeb会議ツールにより使用料や端末制限が異なるため,それぞれの研修会グループに適したものを選択する必要がある。Web会議システムやSNS等を利用する場合,セキュリティの問題が懸念されるが,現在のところトラブルは起こっていない。Zoomの場合,パスコードや待機室の設定で参加者を制限することは可能であるが,今後セキュリティ対策についての情報収集は必要であると思われる。

今後,COVID-19が終息し,通常通りに研修会等が開催できるようになった場合においても,オンライン研修会の有用性は高いと考えられ,従来の研修会とオンライン研修会を併用した新たな研修会方法を模索すべき時代と思われる。

V  結語

COVID-19流行に伴い,従来の研修会の開催が困難となった。そこで,2020年3月から5月に計3回のオンライン研修会を実施した結果,いずれも大きな問題なく開催することができた。オンライン研修会は参加者からも概ね好評であり,有用性が高かった。デメリットの解決策を模索する一方,オンライン研修会の特性を生かし,従来の研修会では実施できなかった新たな内容の研修会も開催できると期待できる。

COI開示

本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。

文献
  • 1)   玉木  秀和,他:「遠隔会議における発話衝突低減手法」,情報処理学会論文誌,2012; 53: 1797–1806.
 
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