Japanese Journal of Medical Technology
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Evaluation of performance of urine sediment analyzer ARKREY AUTION EYE AI-4510
Kotaro HISHIKIYu AKIYAMAKiyomi KARUBETakashi HONMAMikiko HONOBETomoko MIYAUSHIROYuichi IKEDAKen KAITO
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2021 Volume 70 Issue 3 Pages 456-464

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Abstract

今回我々は2019年にアークレイ社で開発された未染色画像解析法を原理とする尿沈渣分析装置AUTION EYE AI-4510について性能評価を行ったので報告する。1,369検体を対象として検討した結果,併行精度,室内再現精度をはじめとする基礎性能は良好であった。鏡検法との相関では,基本的な5項目の感度,特異度はそれぞれ赤血球69.0%,95.1%,白血球60.9%,99.4%,扁平上皮細胞34.1%,99.6%,硝子円柱52.6%,77.4%,細菌48.5%,93.8%であった。鏡検法との乖離理由として,類似した形状における判別が困難であることや特殊な形状の認識が不足していることが考えられ,院内導入までに2回の改良を重ねた結果,基本的な5項目の解析能は向上し鏡検法との相関も改善された。尿沈渣分析装置には業務効率の向上,検査時間の短縮,正確な尿沈渣成分の解析などが求められているが,本機器は鏡検法と比較しても遜色のない基本的性能を有しており,日常検査への導入が可能な機器であると考えられた。

Translated Abstract

We evaluated the performance of AUTION EYE AI-4510 (ARKRAY, 2019), an automatic urine sediment analyzer that is based on the unstained image analysis method. Our results showed that its basic performance, such as parallel accuracy and indoor reproducibility, was satisfactory. In comparison with microscopic examination, the sensitivity and specificity for red blood cells, white blood cells, squamous epithelial cells, hyaline casts, and bacteria were 69.0% and 95.1%, 60.9% and 99.4%, 34.1% and 99.6%, 52.6% and 77.4%, and 48.5% and 93.8%, respectively. The reason for such differences was considered to be the difficulty in distinguishing similar components owing to insufficient shape recognition. However, sequential version-up improved the specificity. Improvement of working efficiency, shortening of examination time, and accurate detection of urine sediments are required for this automatic urine sediment analyzer. This device has basic performance comparable to that of microscopic examination; thus, it is considered that this device could be introduced into routine laboratory use.

I  緒言

今日の日常検査で用いられている尿沈渣分析装置は,測定原理の観点からはフローサイトメトリー法1),2)と画像解析法3),4)の2つに,また解析の前処理の観点からは染色法と未染色法に分けられる。専用の染色を施す機器が多いが,2019年に開発されたアークレイ社のAUTION EYE AI-4510(以下AI-4510)は,無染色かつ流体中での画像解析法を取り入れた尿沈渣分析装置である。当院ではこれまで尿沈渣分析装置の導入実績がなく,全て鏡検法にて検査を実施してきたため,今回業務効率の向上を目的としたAI-4510の院内導入に向けて,その性能評価を行ったので報告する。

II  対象検体および使用機器

1. 対象検体

当院検査部に尿沈渣の依頼のあった2019年9月の917件を初期設定での,2020年2月の880件を1回目のバージョンアップ後の設定での,2020年7月の1,369件を2回目のバージョンアップ後の設定での対象とした。

2. 使用機器

尿沈渣分析装置はAUTION EYE AI-4510を用い,対照法として鏡検法による判定を行った。

3. 解析結果画面の紹介

AI-4510の基本画面をFigure 1に示した。各尿沈渣成分が中央画面に表示され(①),画面左側の項目により表示成分の切り替えが可能である(②)。画面右側には個々の沈渣成分の測定数が表示され,「変形赤血球の可能性あり」などの検体付加情報がコメントとして表示される(③)。また,画面上部の「画像アトラス」により典型的な画像を閲覧することが可能である(④)。さらに,測定した各尿沈渣成分画像を合成することにより顕微鏡で観察されるような画像の閲覧が可能であり,鏡検法のイメージ図として活用することができるようになっている。

Figure 1 Screen of the results

①尿沈渣成分画像が映し出される

②各尿沈渣成分の切り替えができる

③1検体の測定結果やフラグコメントが表示される

④アトラス画像が閲覧可能である

III  検討項目・方法

1. 併行精度

精製水,低濃度検体,高濃度検体の3濃度の試料を用いて,赤血球,白血球,白血球集塊,扁平上皮細胞,非扁平上皮細胞,硝子円柱,その他の円柱,細菌,結晶,酵母,粘液糸,精子の12項目について10回測定を行い,変動係数(CV%)を算出した。

2. 室内再現精度

専用コントロールであるAUTION EYE Control Solution(L, H)を用いて10日間測定を行い,変動係数(CV%)を算出した。

3. 希釈直線性

赤血球と白血球における高濃度検体,低濃度検体を生理食塩水で10段階希釈し,各濃度を2重測定,平均値を用い直線性を確認した。

4. 検出感度

赤血球と白血球における低濃度検体を生理食塩水で10段階希釈し,各濃度を10回測定,平均値と標準偏差を算出し,±2SDより検出感度を確認した。なお,Figure 3の赤線は希釈系列0/10のときの2SD値を示す。

5. キャリーオーバー試験

赤血球と白血球における高濃度検体を準備し,精製水と高濃度検体を交互に測定し,キャリーオーバーを確認した。

6. バージョンアップ前後による一致率の推移

2回のバージョンアップ後の鏡検法との相関を基本的な5項目である赤血球,白血球,扁平上皮細胞,硝子円柱,細菌について比較した。統計解析にはStat Flex Ver. 7を使用し,χ2検定でp値0.05未満を有意差ありと判定した。

7. 鏡検法と尿沈渣分析装置AI-4510との相関

対象検体を2回のバージョンアップを実施したAI-4510で測定したのち,500 g,5分間遠心し,沈渣を鏡検法で確認し,両法における完全一致率,±1ランク一致率,感度(鏡検法が陽性のとき機械法が陽性である割合),特異度(鏡検法が陰性のとき機械法が陰性である割合),陰性陽性一致率(AI-4510と鏡検法が共に±以上の陽性,または共に陰性であった検体の割合)を求めた。鏡検法は「尿沈渣検査法2010(JCCLS GP1-P4)」に準拠した「日本臨床検査標準協議会 尿沈渣検査法指針提案の目指すもの」5)に従い検査を実施した。染色にはシスメックス社製の尿沈渣用Sternheimer染色液「ニューユリステイン®」を使用し,検討項目は赤血球,白血球,扁平上皮細胞,硝子円柱,細菌の5項目とした。

IV  結果

1. 併行精度

定量値(/μL)で評価したところ,精製水と高濃度検体については概ねCV 10%以内であり,良好な結果であった(Table 1-1)。低濃度検体についてはばらつきが大きく,CV%は全ての項目で10%を超えていた。しかし,CV値が10%を超える検体でも半定量値に変換すると判定は概ね同一であり,大きな差異は認められず,良好な成績であった(Table 1-2)。結晶成分は様々な大きさの集塊や散在することもあり,測定値が一定ではなかった。

Table 1-1  Repeatability
RBC WBC WBCC* 扁平 非扁平 硝子 他円柱 細菌 結晶 酵母 粘液糸 精子
蒸留水 mean(/μL) 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 30.0 0.0 0.0 0.0 0.0
SD(/μL) 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 9.91 0.0 0.0 0.0 0.0
CV(%) 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 33.0 0.0 0.0 0.0 0.0
低濃度 mean(/μL) 10.8 17.2 7.2 16.9 10.5 1.0 1.0 70.5 3.5 9.6 60.4 1.5
SD(/μL) 2.17 2.31 1.42 2.42 1.46 0.32 0.26 8.71 2.78 2.54 6.21 0.52
CV(%) 20.0 13.4 19.7 14.4 13.9 33.3 26.3 12.4 79.1 26.5 10.3 34.4
高濃度 mean(/μL) 394.4 776.4 21 60.3 24.2 14.4 30.6 1,0201.3 34.1 199.3 181.2 105.4
SD(/μL) 14.96 41.87 3.33 2.47 2.1 1.19 1.68 251.98 9.97 11.2 13.2 7.79
CV(%) 3.8 5.4 15.8 4.1 8.7 8.3 5.5 2.5 29.3 5.6 7.3 7.4

*WBCC:白血球塊

Table 1-2  Repeatability of low concentration (semi-quantitative value)
RBC
(/HPF)
WBC
(/HPF)
WBCC 扁平上皮
(/HPF)
非扁平上皮
(/HPF)
硝子
(/100 LPF)
他の円柱
(/100 LPF)
細菌 結晶 酵母 粘液糸 精子
1 1–4 1–4 (−) 1–4 1–4 1–4 1–4 (−) (−) (−) (−) (−)
2 1–4 1–4 (−) 1–4 1–4 1–4 1–4 (−) (−) (−) (−) (−)
3 1–4 1–4 (−) 1–4 1–4 1–4 1–4 (−) (−) (−) (−) (−)
4 1–4 1–4 (−) 1–4 1–4 1–4 1–4 (−) (−) (−) (−) (−)
5 1–4 1–4 (−) 1–4 1–4 1–4 1–4 (−) (−) (−) (−) (−)
6 1–4 1–4 (−) 1–4 1–4 1–4 1–4 (−) (−) (−) (−) (−)
7 1–4 1–4 (−) 1–4 1–4 1–4 1–4 (−) (−) (−) (−) (−)
8 1–4 1–4 (−) 1–4 1–4 1–4 1–4 (−) (−) (−) (−) (−)
9 1–4 1–4 (−) 1–4 1–4 1–4 1–4 (−) (1+) (−) (−) (−)
10 1–4 1–4 (−) 1–4 1–4 1–4 1–4 (−) (−) (−) (−) (−)

2. 室内再現精度

10日間測定した際のCV%は低濃度,高濃度ともに10.0%以内,かつメーカー設定の管理幅内であり,良好な成績であった(Table 2)。

Table 2  Intermediate precision
Low(/μL) High(/μL)
1 33.0 1,747.3
2 36.3 1,798.8
3 35.0 1,804.7
4 38.3 1,855.5
5 33.0 1,830.5
6 31.7 1,726.8
7 35.6 1,746.0
8 37.0 1,727.5
9 38.9 1,788.2
10 37.6 1,757.8
mean 35.64 1,778.31
SD 2.443 44.168
CV(%) 6.85 2.48

3. 希釈直線性

赤血球,白血球ともに低濃度では陰性陽性のカットオフの25/μL付近(赤点線),高濃度では(3+)の500/μL付近(赤点線)まで,良好な直線性が確認された(Figure 2)。

Figure 2 Linearity

赤血球,白血球ともに低濃度と高濃度において,良好な直線性が確認された。

4. 検出感度

赤血球,白血球の検出感度はそれぞれ,2.3/μL,4.1/μLであり,カットオフ値である25/μL付近よりも低値における検出能を有していた(Figure 3)。

Figure 3 Detection limit

赤血球,白血球の検出感度はそれぞれ,2.3/μL,4.1/μLであった。

5. キャリーオーバー試験

赤血球と白血球において,高濃度検体測定後に精製水を測定すると,10/μL以下の低値であったことから,持ち越し検体がないことが確認できた(Table 3)。

Table 3  Carryover test
赤血球(/μL) 白血球(/μL)
1 12,134.4 3,180.9
2 3.2 0.0
3 12,597.7 3,362.8
4 4.1 0.0
5 12,119.8 3,455.1
6 3.2 0.0
7 11,940.8 3,503.8
8 7.3 0.0
9 11,982.1 3,600.3
10 8.1 0.0

6. バージョンアップ前後による一致率の推移

バージョン1.06の初期設定からメーカーによる2度のバージョンアップにて精度が向上し,鏡検法との相関も良好となった。一致率の推移についてTable 4に示した。バージョン1.06から1.08にかけて赤血球の感度は20.0%,硝子円柱の特異度は14.1%,細菌の特異度は11.9%それぞれ有意に向上していたが,硝子円柱の感度は20.4%,細菌の感度は21.9%低下していた。

Table 4  Transition of match rate before and after version upgrade
Ver 変化
1.06 1.07 1.08 1.06→1.07 1.07→1.08
赤血球 一致率(%) 完全 57.1 62.2 63.6 * +5.1 +1.4
±1ランク 85.9 94.1 93.3 ** +8.2 −0.8
感度 49.0 69.9 69.0 ** +20.9 −0.9
特異度 93.3 93.6 95.1 +0.3 +1.5
陽性陰性 83.4 90.6 90.9 ** +7.2 +0.3
白血球 一致率(%) 完全 39.9 43.7 42.9 +3.8 −0.8
±1ランク 88.7 93.4 93.4 ** +4.7 ±0.0
感度 60.2 48.6 60.9 ** −11.6 ** +12.3
特異度 99.2 98.5 99.4 −0.7 * +0.9
陽性陰性 88.1 90.4 90.9 +2.3 +0.5
扁平上皮細胞 一致率(%) 完全 67.3 72.6 72.0 * +5.3 −0.6
±1ランク 95.9 93.8 96.1 * −2.1 * +2.3
感度 31.6 39.1 34.1 ** +7.5 * −5.0
特異度 99.5 100.0 99.6 * +0.5 * −0.4
陽性陰性 75.0 81.3 79.4 ** +6.3 −1.9
硝子円柱 一致率(%) 完全 61.7 66.8 65.3 * +5.1 * −1.5
±1ランク 96.7 98.4 99.4 * +1.7 * +1.0
感度 73.0 55.1 52.6 ** −17.9 * −2.5
特異度 63.3 78.3 77.4 ** +15.0 −0.9
陽性陰性 66.1 69.8 68.1 +3.7 −1.7
細菌 一致率(%) 完全 70.4 80.6 77.8 ** +10.2 * −2.8
±1ランク 97.6 99.9 99.1 ** +2.3 −0.8
感度 70.4 52.1 48.5 ** −18.3 * −3.6
特異度 81.9 92.3 93.8 ** +10.4 +1.5
陽性陰性 77.8 83.1 85.3 * +5.3 +2.2

**p < 0.01,*p <0.05

7. 鏡検法と尿沈渣分析装置AI-4510との相関

2回のバージョンアップを実施した後(Ver. 1.08),基本的な5項目である赤血球,白血球,扁平上皮細胞,硝子円柱,細菌における鏡検法とAI-4510との相関をTable 5に示した。なお,カットオフは「尿沈渣検査法2010(JCCLS GP1-P4)」に準拠した「日本臨床検査標準協議会 尿沈渣検査法指針提案の目指すもの」5)に従って設定し,赤血球と白血球は1~4個/HPFまでを陰性,5~9個/HPF以上を陽性(赤線で区別),扁平上皮は1個未満/HPFを陰性,1~4個/HPF以上を陽性(赤線で区別),硝子円柱は鏡検法では0個/WFを陰性,1~4個/WFを陽性,AI-4510では0個/100 LPFを陰性,1~4個/100 LPF以上を陽性として評価した(赤線で区別)。細菌は各視野にみられるもの以上を陽性として評価した(赤線で区別)。また,完全一致部分を濃い青で,±1ランク一致部分を薄い青で示した。基本的5項目の一致率は以下の通りであった。

Table 5 Correlation between microscopic examination and analyzer AI-4510

1) 赤血球

完全一致率63.6%,±1ランク一致率93.3%であり,2ランク差以上は1,369件中92件(6.7%)であった(Table 5)。AI-4510において偽陽性,偽陰性がみられたため,AI-4510における赤血球の判定画像を確認したところ,偽陽性の要因として真菌,シュウ酸カルシウム,マルベリー小体,糸球体赤血球における赤血球破片などを赤血球として分類していたこと,偽陰性の要因として,脱ヘモグロビンを呈した赤血球やゴースト状の赤血球が判定できないことなどが考えられた。

2) 白血球

完全一致率42.9%,±1ランク一致率93.4%であった(Table 5)。鏡検法で5–9/HPF,10–19/HPFの検体をAI-4510では50–99/HPFと判定した検体が3件あり乖離がみられた。これは回腸導管の患者検体における腸上皮を白血球として誤分類していたための偽陽性であった。一方,鏡検法で50–99/HPFや100/HPF以上の検体をAI-4510では< 1/HPFから5–9/HPFと判定した検体が4件あり乖離がみられた。これらはいずれもアメーバ状の白血球の形態変化を認識できず白血球に分類できなかったための偽陰性であった。

3) 扁平上皮細胞

完全一致率72.0%,±1ランク一致率96.1%であり,鏡検法と分析装置AI-4510での ±1ランク一致率は良好であった(Table 5)。鏡検法で1–4/HPFと判定される少数検体をAI-4510では検出できないため,感度が低い結果となった。赤血球や白血球のように大きく乖離した検体はなかったが,鏡検法よりもAI-4510で低く判定された要因のひとつとして,円形または類円形を呈する傍基底の扁平上皮細胞を分類不能や白血球として判定されたことがあげられた。

4) 硝子円柱

完全一致率65.3%,±1ランク一致率99.4%であり,鏡検法と分析装置AI-4510での ±1ランク一致率は良好であった(Table 5)。鏡検法とAI-4510とで大きく乖離した検体は少なかったが,粘液糸を円柱として検出したため鏡検法と比較してAI-4510で高く判定されていたり,鏡検法では全視野で1,2個の硝子円柱を観察できる程度の場合はAI-4510では感度以下になることが多いためAI-4510で低く判定されていたりしたケースがみられた。

5) 細菌

鏡検法では細菌は(±)を設けているが,集計上は(+)に含めた。完全一致率77.8%,±1ランク一致率99.1%であった(Table 5)。鏡検法で(−)と判定したものをAI-4510では(2+)で判定した検体が6件みられた。これは細かい粘液糸や無晶性塩類を細菌として誤分類していたためであった。一方,鏡検法で(2+)から(3+)と判定した検体をAI-4510では(−)と判定した検体が7件みられた。これはAI-4510において球菌を検出ができなかったため乖離したものであった。

V  考察

尿沈渣検査は腎・泌尿器疾患の病態把握において必要不可欠な検査であり,従来は鏡検法のみで尿沈渣を判定していたが,尿沈渣分析装置の導入により効率的な検査業務が可能となっている。現在,尿沈渣分析装置にはフローサイトメトリー法1),2)と画像解析法3),4)とがあり,専用の染色を施す機器が多い。今回,アークレイ社より,未染色かつプレパラート作製による静止画ではなくシース液中に流れる有形成分を直接撮影することで細胞分類を行う機器が開発されたため,その導入に向けて基礎的な性能評価を行った6)。なお,性能評価のためにシスメックス社製のUF-50001),2)や東洋紡社製のUSCANNER3),4)を参考機器とした。

AI-4510での測定結果は再現性があり直線性や検出感度も日常検査において十分な性能を有していた。高濃度検体の測定後は自動でシース液による追加洗浄が入るため洗浄時間が若干延長するが,検体の持ち越しも確認されなかった。鏡検法とAI-4510との相関を検討したところ,初期設定では乖離検体が多く,その時点で臨床活用することは困難であったが,1つの成分に対する解析法・判定のフローの見直し,誤分類が多かった成分の判定最適化,判定アルゴリズムの修正といった3点を主体とするバージョンアップが行われたところ,解析能は向上し鏡検法との相関も改善された。

赤血球については,感度が著しく向上し,それに伴い ±1ランク一致率も向上したが,バージョンアップ後も真菌,シュウ酸カルシウム,マルベリー小体,糸球体型赤血球における赤血球破片などを赤血球として誤分類していることから,更に特異度を向上させるためアルゴリズムの変更が必要と考えられた。シュウ酸カルシウムや真菌による赤血球の誤分類についてはUF-5000でも報告されており1),AI-4510のみの課題ではなく両機器の共通測定原理における課題であると考えられた。一方,UF-5000では脱ヘモグロビンを呈した赤血球の検出が良好との報告があるが1),AI-4510では脱ヘモグロビン状の赤血球やゴースト状の赤血球は過小評価や検出されていなかったことから,AI-4510での改善がなされるまでは潜血陽性検体に関しては鏡検法で確認することが望ましいと考えられた。また,糸球体型赤血球は,鏡検法では個々の細胞および全体の形態変化について総合的に判定するが5),機器では個々の細胞判断しかできないため,どの範囲までを糸球体型赤血球と判定するのかといった基準設定が判定に影響を与えたものと考えられた。脱ヘモグロビン状の赤血球の判定やヘモグロビンを保有している糸球体型赤血球の検出が良好なUF-5000においても,脱ヘモグロビン状の非糸球体型赤血球判定には課題があると報告されており7),尿沈渣分析装置全般において精度が改善されることを期待したい。

白血球については,腸上皮やアメーバ状白血球との鑑別が困難であった。白血球と腸上皮は形状や大きさが類似しているため,鏡検法ではプレスコット・ブロディー染色などで白血球のペルオキシダーゼ反応を確認することで鑑別しているように,未染色かつ流動検体中で正確に両者を鑑別することは容易でないことが予想され,AI-4510で粒子数や白血球が多いという判定が出た際には,その後必ず鏡検法で確認することが望ましい。白血球として誤分類されやすい細胞質内封入体2)は異型細胞とともに観察されることが多いが8),AI-4510では異型細胞の分類がなく未分類細胞として分類されるため,その場合も細胞質内封入体を念頭に鏡検法で確認することが望ましいと考えられた。

扁平上皮細胞については,鏡検法と明らかな乖離検体はみられなかったが,傍基底の扁平上皮細胞は円形または類円形を呈するため分類不能や白血球として判定されるためAI-4510の方が低くなっていた。鏡検法では傍基底の扁平上皮細胞は鑑別が困難な細胞ではないため,AI-4510にN/C比を含めた特徴を認識させることで分類が可能であると考えられた。

硝子円柱については,鏡検法は(−)AI-4510は(+)と判定された乖離検体がみられた。鏡検法での偽陰性も考えられたが,画像を確認したところ大半は粘液糸を円柱として検出していたことから,AI-4510の偽陽性によるものと考えられた。同一検体ではないため一概に比較はできないが,USCANNERにおいて硝子円柱の検出率が低いとする報告4)と比べると,AI-4510はバージョン1.06で検出率73.0%と良好であるがため偽陽性が発生しやすいとも考えられる。しかしこの点はバージョン1.07と1.08で改善され特異度が向上していた。また,鏡検法で(+)AI-4510で(−)と判定した乖離検体が244件あった。円柱のカウント方法はlow power field(LPF)とwhole field(WF)の2種類があり,100視野のLPFとWFとが同等という概念に基づいている5)。そのため鏡検法でWFに1個の硝子円柱を見つけたものが,AI-4510のLPF換算での1個に相当するかという感度の問題が影響を及ぼしていると考えられ,AI-4510における低値での感度を上げることが可能であれば一致率は大きく改善すると考えられた。

細菌については,鏡検法で(−)AI-4510で(2+)と判定した検体が6件みられたが,これは細かい粘液糸や無晶性塩類を細菌として誤分類していたためであった。一方,鏡検法では(2+)から(3+)AI-4510では(−)と判定した検体が7件みられたが,AI-4510では桿菌は検出できるが球菌は形状が異なるため検出ができないための乖離であったと考えられた。UF-5000にはグラム陽性菌/グラム陰性菌を判定する細菌弁別判定機能が標準搭載されており9),近年では精度が向上し付加価値のある報告も可能になっているため,AI-4510においても今後の課題として改善が望まれる。それまでは機器の特性や乖離する理由を把握したうえで,鏡検法での確認や白血球の確認なども含め総合的に判断することが重要であると考えられた。

VI  結語

バージョンアップを重ねた尿沈渣分析装置AI-4510は,鏡検法と比較しても遜色のない基本的性能を有しており,日常検査への導入が可能な機器である。

COI開示

本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。

文献
 
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