Japanese Journal of Medical Technology
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Questionnaire survey on the outsourcing of microbiological testing in the Kyushu–Okinawa and Kinki regions
Makiko KIYOSUKEYasushi KIBETomokazu KUCHIBIROTaeko HOTTADongchon KANG
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2022 Volume 71 Issue 3 Pages 485-492

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Abstract

国内の多くの医療機関が微生物検査を外部委託に依頼しているが,感染症専門医および微生物検査技師が不在な施設では検査結果を十分に利用できていない可能性が考えられる。2021年4~9月の期間,九州沖縄と近畿地区において外部委託施設の微生物検査に関し,E-mailを介したアンケート調査を行った。九州沖縄地区からは8県77施設,近畿地区からは6府県51施設の回答が得られた。集計対象施設は200床未満が83%(107/128),200–499床が16%(20/128),900床以上が1%(1/128)であった。感染防止対策加算1取得は15%(19/128),加算2は67%(86/128),加算なしは18%(23/128)であった。外部委託契約の定期的な見直しがない又はほぼないが約6割であり,一度契約した内容の見直しが実施されていない状況が判明した。検体の品質管理は,病院側と外部委託側でそれぞれ3割実施されていた。品質管理の記載がない報告書が約5割であり,総合コメントや薬剤耐性菌に関するコメントがある割合は約5割であった。常在菌の感受性検査を実施しないことを契約しているという回答は約3割であり,多くの施設は外部委託側に任せている状況であった。今回のアンケートを通じて,外部委託側と依頼する病院側の葛藤や難しい課題も見えてきた。今後,感染症の地域連携の仕組みを活用し,加算連携施設間で外部委託契約の見直しや監修,品質管理のルール作りや職員教育用教材の提供などに取り組む必要があると考えられた。

Translated Abstract

Although many hospitals in Japan outsource microbiological testing, there is a possibility that test results are not fully utilized in facilities without infectious disease specialists or microbiology technicians. We conducted a questionnaire survey on facilities outsourcing microbiological testing via e-mail in the Kyushu–Okinawa and Kinki regions from April to September 2021. We received responses from 77 facilities in eight prefectures in the Kyushu–Okinawa region and 51 facilities in six prefectures in the Kinki region. Eighty-three percent of the facilities had less than 200 beds, 16% had 200–499 beds, and 1% had more than 900 beds. The percentages of the facilities that obtained additional reimbursement for infection prevention 1 and 2 were 15% and 67%, respectively, and 18% did not obtain additional reimbursement. In about 60% of the facilities,there was no or almost no periodic review of the outsourcing contract, indicating that the contract was not reviewed once it was signed. Quality control of specimens was conducted in only 30% of hospitals and outsourcing companies. About 50% of the facilities did not mention quality control in their reports, and about 50% of the facilities made comprehensive comments or some comments on drug-resistant bacteria. About 30% of the facilities agreed not to perform susceptibility testing for normal bacterial flora, and many facilities left it to the outsourcing company. Through this questionnaire, we could see the problems and difficult issues encountered in both the outsourcing companies and requesting hospitals. In the future, it will be necessary to review and supervise outsourcing contracts by utilizing the regional collaboration system on infectious diseases.

I  はじめに

2016年にWHOよりASTを含む微生物学的診断の実践を支援するためのDSガイド1)が作成され,国内におけるAntimicrobial Resistance(AMR)対策やAntimicrobial Stewardship Team(AST)の活動においてAntimicrobial Stewardship(AS)と組み合わせたDiagnostic Stewardship(DS)の実践が求められている。DSは4つのRightから成り,感染症診療において必要な患者に検査を実施し(Right Patient),適切な検体採取や品質管理を行い(Right Test),迅速で感度の高い検査の実施(Right Time)と臨床に有用な報告まで(Right Report)を含む診断支援である。しかし,世界の多くの地域でもDSの概念はまだ十分に認識されておらず,日常の臨床現場に組み込まれていないのが現状である1)。また,わが国における自施設での微生物検査の実施施設は約半数であり,多くの施設は微生物検査を外部委託に依頼しているのが現状である。実施場所に関わらず,微生物検査の実施においてDSの実践が重要なことは変わりがないが,外部委託で微生物検査を実施している施設の場合,感染症専門医および微生物検査技師が不在なことが多く,微生物検査結果を十分に利用できていない可能性も考えられる。今回,我々は九州沖縄地区と近畿地区において,外部委託施設の微生物検査に関するアンケートを実施し,現状と課題について調査を行った。

II  対象と方法

2021年4~9月の期間,地域の感染防止対策加算1(以下,加算1)の取得施設の臨床検査技師に協力を依頼し,関連する感染防止対策加算2(以下,加算2)施設や地域連携施設にE-mailを介してアンケート調査を依頼し,結果回収を行った。アンケート調査の施設基本情報として病床数,感染防止対策加算取得状況,外部委託施設における微生物検査実施状況について調査した。外部委託に関する設問は16問作成し,該当する回答を選択する形式で行い,フリーで記載できる欄も設けた。アンケート集計データを扱う際にはデータの漏洩等のセキュリティ対策を徹底するとともに,施設名が特定できないよう配慮し調査を行った。

III  結果

1. 施設基本情報

九州沖縄地区からは8県,77施設(福岡県16施設,佐賀県5施設,大分県22施設,長崎県12施設,熊本県10施設,宮崎県3施設,鹿児島県7施設,沖縄県2施設),近畿地区からは6府県,51施設(大阪府 11施設,兵庫県13施設,奈良県2施設,滋賀県3施設,福井県11施設,和歌山県11施設)の回答が得られた。集計対象の施設は,200床未満が83%(107/128),200–499床が16%(20/128),900床以上が1%(1/128)であった。感染防止対策加算の取得状況は,加算1取得は15%(19/128),加算2は67%(86/128),加算なしは18%(23/128)であった。また,ほとんどの施設が塗抹,培養・同定,感受性検査の組合せで検査を依頼していた(Table 1)。

Table 1  アンケート回答施設における,微生物検査の外部委託項目(九州沖縄地区:77施設,近畿地区:51施設,合計:128施設)
設問1.外注委託している一般細菌検査の項目を教えてください。 九州沖縄地区 近畿地区 合計
塗抹 70施設 48施設 118施設
培養・同定 74施設 51施設 125施設
感受性 72施設 51施設 123施設
その他 9施設 5施設 14施設

2. 外部委託に関する回答

九州沖縄地区,近畿地区,合計にわけて集計した14県,128施設からの回答結果をTable 2に示す。合計の結果として,外部委託との契約に関し,定期的な見直しがない又はほぼないが58%,定期的な見直しがあるは37%であった【設問2】。また,契約内容について感染症医や加算1施設や近隣の教育施設に監修してもらっているかに関し,監修無しが71%であり,監修ありと回答した施設が19%であった【設問3】。病院側で品質管理を実施している施設は41%であり,確認している材料は喀痰や髄液の外観チェックが実施されていた。品質管理を行っていない施設は59%であった【設問4】。また,外注側でなんらかの品質管理を実施していると回答した施設は31%であった。品質管理を行っていないは23%であり,わからないは43%であった。外注側が実施している品質管理はほとんどが喀痰であった【設問5】。不適切検体に関し,なんらかの基準を決めている施設は47%であり,基準を決めていないは54%であった。基準を決めている施設は乾燥検体,不適切容器を確認していた【設問6】。リジェクションルールは51%が導入しており,48%が導入していなかった【設問7】。外注からの報告書になんらかの品質管理の記載ありは34%であり,品質管理の記載がないは50%であった。品質管理が行われている材料は主に喀痰であった【設問8】。また,不適切検体に関して報告書になんらかの記載ありは24%であり,コメント記載がないは44%,わからないは23%であった【設問9】。常在菌の感受性検査に関し,感受性検査を実施しないことを契約しているは28%であり,契約していないや対応できないは16%であった。外注先に任せている施設が多く,50%であった【設問10】。薬剤耐性菌の検査依頼を行っているは48%,一部依頼しているは9%,外注先のルールに従う施設が多く39%であった【設問11】。なんらかの薬剤耐性菌に関する情報が記載されているは36%,記載されていないは63%であった【設問12】。報告書になんらかの総合所見が記載されているは54%,記載されていないは45%であった【設問13】。アンチバイオグラムを作成しているは61%,作成していないは34%であった【設問14】。アンチバイオグラムを作成している施設のうち,国内のガイドラインに従って作成しているは33%,わからないは40%であった【設問15】。定期的に職員教育や周知を行っているは16%であり,入職時に新入職員にのみ行っているのは31%,行っていないは40%であった【設問16】。ミスリードすると感じる機会がまれにあるは13%,わからないは54%であった。ミスリードすると感じないは28%であった【設問17】。

Table 2  微生物検査の外部委託に関するアンケート集計結果(九州沖縄地区:77施設,近畿地区:51施設,合計:128施設)
設問2.外注検査との契約の見直し頻度を教えてください。 九州沖縄地区 近畿地区 合計
見直しはない 17% 8% 13%
ほぼ見直ししない 44% 45% 45%
数年ごと 22% 25% 23%
毎年 13% 16% 14%
その他 4% 6% 5%
設問3.契約時に,感染症医や加算1施設や近隣の教育施設に契約内容を監修してもらっていますか。 九州沖縄地区 近畿地区 合計
監修あり 14% 25% 19%
監修なし 71% 71% 71%
不明 14% 4% 10%
設問4.検体提出時に,病院側で検体の品質管理を行っていますか。(回答は一部の材料についてでも可)例)喀痰の肉眼的評価法(Miller & Jones分類),便の状態を判別するブリストルスケール,脳脊髄液の混濁や保存状況の確認等 九州沖縄地区 近畿地区 合計
行っている 9% 2% 6%
一部行っている 39% 29% 35%
行っていない 52% 69% 59%
設問5.提出時に,外部委託側で検体の品質管理を行っていますか。(回答は一部の材料についてでも可) 九州沖縄地区 近畿地区 合計
行っている 17% 10% 14%
一部行っている 16% 20% 17%
行っていない 18% 31% 23%
わからない 48% 35% 43%
未記入 1% 2% 2%
その他 0% 2% 1%
設問6.検体量不足以外の不適切検体の基準を決めていますか。例)唾液や乾燥した検体など 九州沖縄地区 近畿地区 合計
決めている 9% 8% 9%
一部決めている 45% 25% 38%
決めていない 45% 67% 54%
設問7.不適切検体の場合,リジェクションルール(再提出を依頼する)を導入していますか。 九州沖縄地区 近畿地区 合計
導入している 56% 43% 51%
導入していない 43% 55% 48%
未記入 1% 2% 2%
設問8.外注からの報告書に検体の品質が記載されていますか。例)混濁あり・なし,MJ分類,便のブリストールスケール等 九州沖縄地区 近畿地区 合計
記載されている 18% 4% 13%
一部記載されている 14% 31% 21%
記載されていない 51% 49% 50%
ルールがない 4% 4% 4%
わからない 13% 12% 13%
その他 0% 0% 0%
設問9.不適切検体の場合,その旨のコメントが報告書に記載されていますか。例)未滅菌容器での採取,乾燥検体等 九州沖縄地区 近畿地区 合計
記載されている 19% 16% 18%
一部記載されている 3% 12% 6%
記載されていない 42% 47% 44%
ルールがない 8% 6% 7%
わからない 27% 18% 23%
その他 1% 2% 2%
設問10.常在菌の感受性検査を実施しないことを契約していますか。 九州沖縄地区 近畿地区 合計
契約している 27% 29% 28%
契約していない 13% 12% 13%
外注先のルールで対応できない 4% 2% 3%
外注先に任せている 52% 47% 50%
不明 4% 6% 5%
その他 0% 4% 2%
設問11.薬剤耐性菌の検出・同定を依頼していますか。例)感受性パターンから耐性菌が推定される場合,耐性菌確認検査まで実施するもしくは,耐性菌も鑑別できる薬剤感受性パネルを使用しているなど 九州沖縄地区 近畿地区 合計
依頼している 43% 55% 48%
一部依頼している 9% 8% 9%
依頼していない 5% 0% 3%
外注先のルールに従う 42% 35% 39%
未記入 1% 2% 2%
設問12.検出された薬剤耐性菌の意味と対策が報告書に記載されていますか。例)ESBL産生菌が検出されました。ペニシリン系,セフェム系,モノバクタム系は無効です。等 九州沖縄地区 近畿地区 合計
記載されている 25% 12% 20%
一部記載されている 17% 16% 16%
記載されていない 56% 73% 63%
未記入 3% 0% 2%
設問13.報告書に総合した検査所見(コメント)は記載されていますか。例)常在菌と考えられます。等 九州沖縄地区 近畿地区 合計
記載されている 39% 29% 35%
一部記載されている 18% 20% 19%
記載されていない 42% 51% 45%
未記入 1% 0% 1%
設問14.アンチバイオグラム(主要病原菌の抗菌薬に対する感性:Sの割合を表示した一覧表)を作成していますか。 九州沖縄地区 近畿地区 合計
作成している 62% 59% 61%
作成していない 34% 33% 34%
その他 1% 8% 4%
未記入 3% 0% 2%
設問15.アンチバイオグラムはアンチバイオグラム作成ガイドライン*に従った方法で作成されていますか。*問14で作成していると回答した施設のみを対象に集計 九州沖縄地区 近畿地区 合計
作成している 28% 41% 33%
作成していない 24% 31% 27%
わからない 48% 28% 40%
未記入 0% 0% 0%
設問16.院内の職員に対し,検体提出時の注意事項(容器や保存条件など)について定期的な教育や周知を行っていますか。 九州沖縄地区 近畿地区 合計
行っている 17% 16% 16%
新入職員のみ 36% 24% 31%
行っていない 32% 51% 40%
その他 10% 8% 9%
未記入 4% 2% 3%
設問17.外注検査からの報告書で,臨床医が「ミスリードするのではないか」と感じることはありますか。 九州沖縄地区 近畿地区 合計
よくある 0% 0% 0%
まれにある 12% 14% 13%
ない 31% 24% 28%
わからない 55% 53% 54%
その他 0% 8% 3%
未記入 3% 2% 2%

小数点以下は四捨五入して表示

IV  考察

国内の外部委託施設における微生物検査の現状を把握するため,アンケート調査を行った。回答が得られた施設のうち,データ開示の了承を得られた128施設の結果を集計した。アンケート集計対象施設の基本情報は,200床未満の施設が83%であり,加算2を取得している施設は67%,加算なしは18%であり,参加施設のほとんどが塗抹,培養・同定,感受性について微生物検査を外部委託に依頼しており,本アンケートの目的に該当する施設の情報を収集することができた。

微生物検査は感染症診療において重要な役割を担い,適切なDSの実践はAS活動に有用な情報をもたらすが,一方,間違った検査データの利用や不十分な活用は患者に不利益を及ぼす。米国感染症学会(Infectious Diseases Society of America; IDSA)と米国微生物学会(American Society for Microbiology; ASM)から刊行されている“A Guide to Utilization of the Microbiology Laboratory for Diagnosis of Infectious Diseases: 2018 Update by the Infectious Diseases Society of America and the American Society for Microbiology”の中に記載されているTenets of specimen management2)では,1.質の悪い検体は検査材料として受入れない,2.医師は“発育した菌のすべて”を検査結果報告として要求すべきではない,3.可能な限り,“バックグラウンドノイズ”は避ける,4.検体採取にはスワブではなく,検体が必要である,5.検査室は手順書に沿って作業をすすめる,6.臨床微生物の検体は,抗菌薬の投与前に検体採取することが原則である,7.感受性試験は,培養された全ての菌株に実施するのではなく,臨床的意義のある株のみに行う,8.臨床へ報告される微生物検査結果は正確かつ重要であり,臨床的な関連性をもつものであること,9.技術的な微生物検査の方針は検査室にて設定すべきであり,その他の臨床スタッフの権限で決まるものではないが,両者のコミュニケーションとお互いを尊重する気持ちが協調する方針となる,10.検体ラベルは正確に記載し,詳細な部位や臨床情報がないと結果解釈に役立たないと記載されている(著者意訳)。本アンケートでは,Tenets of specimen management2)で求められているような項目やDSの実践を意識し,外部委託に関連する契約,検査前プロセスに重要な品質管理,検査後プロセスに関連する報告様式や,アンチバイオグラムの有無や職員教育についての設問を作成した。国内における保険収載の改訂は2年ごとに行われるが,外部委託契約に関して定期的な見直しを行っている施設は4割未満であり,その契約内容に関して感染症医や加算1施設や近隣の教育施設の監修ありと回答した施設は19%(24施設)であり,施設のICTと相談しているという回答が得られた。定期的な見直しがない又はほぼないが約6割であり,多くの施設において一度契約した内容の見直しが実施されていない状況が判明した。また,検査依頼時の検体の品質管理に関し,検査を依頼する病院側で管理を行っているか,外部委託側で管理を行っているかについて調査した結果,病院側では約4割で品質管理が実施されていた。外部委託側でなんらかの品質管理を実施しているという回答は約3割であり,主に喀痰が対象であったが,わからないという回答が最も多く,外部委託側で品質確認が行われているかいないかをユーザー側が理解できていない状況であった。不適切検体が提出された際に,再提出を依頼するなどの基準を設けている施設は約5割であり,基準を設けている施設は乾燥検体,不適切容器を確認していた。不適切検体に関するリジェクションルールは約5割が導入しており,リジェクションルールとしては設けていないが不適切容器や乾燥検体や唾液様検体は取り直しを依頼または相談するという回答もあった。また,常在菌の感受性検査を実施しないことを契約しているという回答は約3割であり,多くの施設は外部委託側に任せている状況であった。佐野ら3)は,細菌検査を外注から院内検査に取り組んだ報告のなかで,外部委託の検査では2菌種,3菌種の薬剤感受性実施数が多いことから,検出された菌種すべてに感受性検査を実施しているのではないかと考察している。本調査でも感受性検査の実施の有無は外部委託に任せているという回答が多く,外部委託側のルールを確認する必要があると考えられた。また,薬剤耐性菌の検査に関し,薬剤感受性パターンから推定した場合に薬剤耐性菌の確認検査まで実施することを依頼している施設は約5割であり,本回答も約4割が外部委託側に任せている状況であった。外部委託側では輸送後に受け入れた検体をリジェクトすることは難しいため,検査を依頼する病院側での不適切検体に関するルール設定やリジェクションルールが重要である。また,外部委託側は感染症医不在の施設においても微生物検査結果が正しく解釈できるような薬剤耐性菌の検査や不必要な常在菌の感受性検査を実施しないことについて契約時にルールを設けることが望ましいと考えられた。

報告書に関する調査により,品質管理の記載がない報告書が約5割であり,品質管理の記載があり,不適切な検体に関してコメントが記載されている割合は約3割であった。また,検査に対する総合コメントが記載されている割合や薬剤耐性菌に関するコメントがある割合は約5割であった。不適切検体に関するコメントが報告書にあるかの設問の回答に,わからないと回答した施設も多く,外部委託側が適切に品質管理を行っていることを依頼者が把握できるように,報告書への明確な記載が必要である。外部委託側は報告書に検体の品質状況を記載し,依頼者が検体の品質と検査結果を合わせて正しい検査結果を評価できるような記載が望ましいと考えられた。

2019年に国内におけるアンチバイオグラム作成ガイドラインが公表され,その対象は中小規模の病院を含めたすべての医療機関および微生物検査を行っている検査会社であることが記載されている4)。AMR対策においてもアンチバイオグラムの作成や活用が求められているが,国内におけるアンチバイオグラムの作成状況を調査したものはなく,本調査により約6割の施設が作成している現状が明らかになった。そのうち,国内のガイドラインに従い作成している施設が約3割であった。作成したアンチバイオグラムがアンチバイオグラム作成ガイドラインに従う集計で作成されたかわからないという回答も4割と多かった。我々は集計条件により感受性率に差異がでる菌種や薬剤があることを報告しており5),アンチバイオグラム作成時にはどのような条件で作成したアンチバイオグラムであるかを記載する必要がある。従って,外部委託側がアンチバイオグラムを作成した場合であっても集計条件を記載する必要がある。また,アンチバイオグラムの作成に関しては外部委託側が作成していないケースもあり,地域や施設において様々な形で作成が推進されている状況や,今後作成する予定という意見も得られた。

感染症専門医や微生物検査技師が常駐しない施設において,ミスリードされない微生物検査の報告書作成が重要である。分離された菌のすべてに感受性検査を実施しないことや,総合所見として「口腔常在菌が検出されました」のようなコメントは解りやすく必要な情報である。半数以上の施設で感受性試験の結果から薬剤耐性菌の確認試験が実施されていたが,薬剤耐性菌検出時のコメントが報告書に記載されていない割合は6割であった。ミスリードの可能性について設問を設けたが,ミスリードの可能性を感じることがまれにあるという回答は13%,わからないという回答は54%であった。ミスリードの可能性を感じないという意見を増やすためにも,検査結果を正しく理解できる報告書への工夫が重要である。また,微生物検査の実施において,適切な検体採取や運搬,保存は重要な条件であり,定期的な職員への教育や周知が必要である。定期的に教育や周知が実施されている施設は16%であり,新入職員だけでなく,定期的な教育や周知が望ましいと考えられた。

本調査は九州沖縄と近畿地区における限定的なアンケート調査結果ではあるが,本邦の微生物検査の外部委託の現状をある程度反映しているものと推察される。九州沖縄と近畿地区ではそれぞれの地域で契約してる外部委託会社があり,会社毎のサービスの違いが集計の違いとして表れた可能性も考えられる。また,佐藤ら6)が2015年に行った国公私立大学病院・技師会北日本支部所属の病院に行ったアンケート調査では,不適切な材料に対するコメントは49%・38%で報告されており,耐性菌に関するコメントも69%・61%で実施されている。しかし,グラム染色と培養同定検査の各結果を踏まえた総合コメントをいつも行っている割合は0%・8%であり,必要と判断した際に行う施設が45%・33%であったと報告している。佐藤ら6)の報告のように自施設に微生物検査を有する施設であっても検体の品質管理や報告時のコメントに関するDSの実践は十分ではなく,施設規模に関わらず国内の医療施設や外部委託会社が協力してこれらを改善していくことで検査結果の適正利用が推進され,検査の標準化に繋がっていくと考えられる。

国内において外部委託検査は多く利用されているが,その評価や課題に関して報告されているものは少ない。今回のアンケートを通じて,外部委託側と依頼する病院側の葛藤や難しい課題も見えてきた。外部委託を依頼する施設は感染症専門医や微生物検査技師が不在なため検体提出時の注意点が分からず,また,外部委託会社は依頼施設でどのように検査結果が活用されているのかが分かりにくい状況にある。今後,感染症の地域連携の仕組みを活用し,連携する加算1,2の施設間で外部委託契約の見直しや監修,品質管理のルール作りや職員教育用教材の提供などに取り組む必要があると考えられた。引き続き,感染症専門医や微生物検査技師が常駐していない施設においても微生物検査結果を用いて診療支援が実施できるように考えていく必要がある。

本調査には個人情報が含まれていないため,倫理委員会の承認は得ていない。

本調査は厚生労働科学研究費補助金新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業「細菌の薬剤耐性機構解析に基づいた多職種連携による効率的・効果的な院内耐性菌制御の確立のための研究」に関連する事業として実施した。

COI開示

本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。

謝辞

アンケート調査にご協力いただいた皆様に深謝致します。

文献
 
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