2022 Volume 71 Issue 4 Pages 690-697
採血・注射処置室の受付は無人受付を導入していたが,無人受付のみで対応できないことや注射処置室の受付ができないなどの問題点があった。今回,電子カルテシステムの更新に伴い,これらの問題点の解消に加えて採血・注射処置室の受付方法の見直し,受診者サービスの向上や受付業務の効率化を目指して無人受付から有人受付へと変更した。主なシステムの改善点は,1.異なるオーダ種を同一画面で確認して受付できる統合受付システムを構築した。その中で採血室,注射処置室に受診者の情報を伝えるコメント送信機能や採血室と注射処置室の受付の連携の仕組みを作成した。2.外来検尿(検体,細菌,病理)の尿カップラベルの1枚化をした。3.各部門と診察室を含む場所で受診者の診療の進捗管理と所在確認ができる統合進捗確認システムの構築をした。その結果,受付の処理の単純化,業務の効率化,受診者サービスの向上に繋がった。また,採血室,注射処置室の連携した運用や受診者の診療の進捗と所在を確認するツールができ,受診者の動線の見える化ができるようになった。
In our hospital, the blood sample collection and injection treatment rooms share the same reception area. However, the current system has a limitation in that while unattended reception is possible for blood sample collection, it cannot be implemented in injection treatment rooms. By updating the electronic medical record system, in addition to solving these problems, we aimed to review the reception method for blood sample collection and in injection treatment rooms, improve patient service, and improve reception efficiency. Therefore, we changed from unmanned reception to manned reception and built the following system. 1. We built an integrated reception system that enables checking different order types on the same screen and accepts them. We also built a comment sending function that conveys patient information to the blood sample collection and injection treatment rooms and a mechanism that links the reception of these rooms. 2. Urinalysis cup labels (specimens, bacteria, pathology) for outpatient urinalysis were put together on one sheet. 3. We developed an integrated progress confirmation system that allows each department and consultation room to manage the progress of patients’ treatment and confirm the whereabouts of patients. This consequently simplified reception processing, enhanced work efficiency, and improved patient service. Additionally, we visualized patient flow lines by providing tools for checking the progress and whereabouts of patients and coordinated the operations of the blood sample collection and injection treatment rooms.
外来受診者の多くは来院後診察前検査のために採血室に来室し,後に他の検査や診察を受ける。そのため,採血室においてより良い受診者対応,快適な環境,待ち時間の短縮など質の高い受診者サービスが求められている1)。
当院は採血室,注射処置室の受付は同場所にあり,採血室の受付では検体検査オーダ(採血,尿)のみをテクノメディカ社製の無人受付機で受付をしていた。その他のオーダ(注射・点滴・処置,細菌検査,病理検査)がある場合は,無人受付機より有人受付へ案内する運用となっており,無人受付のみで対応できなかった。
有人受付の場合は,注射処置室(注射・点滴・処置)の依頼はシステム受付を行わず,注射処置室に受診者を案内して受診者が来たことを注射処置室に知らせていた。さらに,受付時の受診者情報等を各現場に伝える仕組みがないためメモ書きで手渡し運用を行っており,受付者の手を煩わすことがあった。また,オーダの種類(以下,オーダ種)が異なる場合には個別の受付画面を起動し確認しなくてはならず,受付に時間を要することがあった。
オーダ種に関連する問題点は尿検査でも発生していた。それは異なるオーダ種の尿検査の場合,1個の尿カップに複数枚のラベルを貼付する点であった。複数のラベルが存在するため,検査技師の到着確認時にラベル読み取り漏れ発生などで検査実施漏れが発生していた。
電子カルテシステムでは,放射線検査室,内視鏡室,生体検査室,検体検査の各々でオーダ進捗を十分に把握する有効なツールはなかった。そのため,患者の所在や各種検査の進捗状況の確認に電話を使用せざるを得ず,業務が煩雑となっていた。
2020年1月に電子カルテシステムの更新を迎え,これを機に問題点改善に取り組み,採血・注射処置室の受付方法の見直し,受診者サービスの向上,受付業務の効率化を目指して,無人受付から有人受付へと変更し,システム構築したので報告する。
1)電子カルテシステムはHOPE/EGMAIN-GX(富士通)OS Windows 10,コメント発行用プリンタ(採血室,注射処置室 各1台),統合受付システム,統合進捗確認システムで構成されている。
2)検体検査システム,細菌検査システムはHOPE Life Mark-LAINS(富士通)(以下LAINSとする),検体ラベル用プリンタ3台(採血・注射処置室 受付2台,採血室1台)
3)病理検査システムはPATH Dimension(フィンガルリンク社)
4)採血支援システム(テクノメディカ社)は,自動採血管準備システム1台(BC・ROBO-8000),アシストソリューション(採血情報・認証端末)7台,ハルンカップラベラー(HARN-710)2台受付設置,整理券発行プリンタ3台(採血・注射処置室受付2台,注射処置室1台)の構成である。
2. システム構築内容異なるオーダ種を同一画面で確認,受付できる統合受付システムと各部門,診察室を含む場所で受診者の診療の進捗管理と所在確認ができる統合進捗確認システムを電子カルテ内に構築した。統合受付システム内には,採血室,注射処置室に受診者の情報を伝えるコメント送信機能を作成し,コメント発行用プリンタを採血室,注射処置室に1台ずつ設置した。検査ラベルの発行はLAINSが管理し,外来検尿(検体,細菌,病理)の尿カップラベルの1枚化を実装し,ハルンカップラベラーから出力できるようにした(Figure 1)。
An overview of how inspection requests are linked to the inspection system.
電子カルテシステム内の受付画面には各部門(採血・注射処置室,生体検査室,放射線検査室,内視鏡室,透析室)に対応した受診者の各オーダを同一画面で表示できるようにした。受付処理を行うと受付情報を各部門システムへ送信する。また,検索条件選択より任意のオーダを選択することで各部門のオーダを絞り受付することを可能にした(Figure 2)。さらに採血・注射処置室は,以下のシステム構築を行った。
Screen details of the integrated reception system.
画面右側に検体・細菌・病理オーダ,左側に注射・点滴・処置オーダを表示し,スクロールせず一視野の中で全オーダを確認してワンクリックで受付できるようにした(Figure 3)。
A reception screen that displays the order of the blood sample collection and injection treatment rooms on the same screen, and a function that can send information and precautions of the examinee to the blood sample collection and injection treatment rooms.
採血室と注射処置室は受付と離れているため,受診者の情報や注意事項等を伝達できるように受付画面に採血室と注射処置室用コメント入力欄を設け,採血室,注射処置室に設置したコメント発行用プリンタから情報印刷できるようにした。また,コメント入力欄は次回以降にも引き継がれる「採血コメント(引継ぎ)」,「処置コメント(引継ぎ)」と単回使用の「採血コメント」,「処置コメント」の2種類を設けた(Figure 3)。
③採血・注射処置室受付の運用採血と点滴が同時に依頼された場合の受付機能と採血室,注射処置室の連携する仕組みを構築した。
採血・注射処置室受付は,2名で統合受付システムを使用して対面受付を行う。採血は採血整理番号を発行し,注射,処置,点滴が依頼されている場合は,注射処置室の整理券発行プリンタから処置受付票を発行する。採血整理番号は受付順に001番から発行する採血室独自の番号を使用し,処置受付票は病院の通し番号(4桁)を使用するようにした。採血・注射処置室受付は様々な受付パターン(Table 1)があるため,システム上で判断できるようにパターンをプログラム化し,受付者は受付ボタンを押下するだけの仕組みとした。採血のみの場合は採血室に案内し,注射,点滴,処置オーダのみの場合は注射処置室に案内する。以下に採血と注射,点滴,処置の両方の依頼がある場合の運用について説明する。
採血オーダ | 注射・点滴・処置オーダ | 判定 | システム仕組みと運用 | 採血整理 番号 |
処置 受付票 |
採血室コメント 発行用プリンタ |
採血トレイ | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 〇 | ― | 採血室 | 受付で採血整理番号を発行し採血室で実施 | 〇 | ― | ― | ― |
2 | ― | 〇 | 注射処置室 | 注射処置室に処置受付票を発行し注射処置室で実施 | ― | 〇 | ― | ― |
3 | 〇 | 〇 点滴オーダ *条件付き |
注射処置室(同時採血) | 注射処置室に処置受付票を発行する 受付した際に受付画面に「同時採血あり」とポップアップ表示される 採血室は採血管を注射処置室へと運ぶ |
― | 〇 | 「同時採血あり」のコメントが発行 | 「点滴orポート採血あり」のラベルが出力 |
4 | 〇 | 〇 (3以外) |
採血室 | 受付では採血整理番号のみ発行する 採血終了後,アシストソリューションで採血終了ボタンを押下した時,注射処置室の整理券発行プリンタより処置受付票が発行される |
〇 | 〇 採血 終了後発行 |
― | 「採血後に注射/処置あり」のラベルが出力 |
*点滴オーダ(条件付き)は,看護師と協議し,点滴ルート確保時に採血が可能な条件の場合
⑴採血+点滴オーダの場合(注射処置室にて採血が可能)
両方のオーダがあり注射処置室にて採血が可能な場合,注射処置室へ案内する。点滴を行う際に採血が可能かどうかは看護師と協議して決定した。注射処置室にて採血が可能か否かを自動で判断するシステムを作成し,採血管を注射処置室へと運ぶ運用とした(Figure 4)。
Overview of system linkage and operation when there are orders for both blood collection and injection, and IV and therapy.
⑵採血+注射,点滴(注射処置室にて採血が不可能),処置オーダの場合
採血終了後に注射処置室へ案内する。採血終了時に注射処置室の整理券発行プリンタより処置受付票が発行されるシステムを作成した。また,注射処置室への案内漏れがないように採血トレイに「採血後に注射/処置あり」のラベルが出力されるようにした(Figure 4)。
2) 外来検尿(検体,細菌,病理)の尿カップラベルの1枚化検体検査,細菌検査,病理検査オーダは,異なるオーダ種である。前システムでは複数枚の尿ラベルが発行されていた。尿ラベルを1枚化するためにシステム更新では細胞診検査用の尿採取依頼をLAINSに連携した。
3) 統合進捗確認システム外来受診者の診療の進捗と所在を確認するツールとして以下の4項目の機能を有した統合進捗確認システムを構築した。
①統合進捗確認システムの利用院内のすべての電子カルテ端末から進捗を閲覧できるよう外来受診者全員を検索でき,検索条件選択よりオーダ単位でも検索できるようにした(Figure 5)。
Screen details of the integrated progress confirmation system.
進捗確認は,依頼〇,受付◆,実施済み●に統一し簡潔化した。また,診察状況も把握できるよう受付到着済み◆,診察中断(再診察待ち)▲,診察中◎,診察終了●の表記にした(Figure 6)。実施済みに関しては,電子カルテシステム内では結果報告された時点で実施済みとなるが,検査終了してから結果報告までには時間を要し,リアルタイムの進捗と所在を把握するには時間のずれが生じることがある。この対策として,検体検査では採血終了後に検査室のLAINSで検体到着した時点で実施済みとした。画像系の放射線検査室,内視鏡室,生体検査室では,部門からの実施情報,検査画像,レポートが電子カルテに送信されるタイミングが各部門で一様でないため,いずれかの検査情報を電子カルテ側で受けた時点で実施済みとした。
Order progress confirmation, pop-up display, latest update display function in the integrated progress confirmation system.
各オーダのアイコンをクリックするとオーダ内容がポップアップ表示されるようにし,依頼日時,依頼診療科,オーダ項目,ステータスの更新時間を確認できるようにした(Figure 6)。
④最新更新表示対象部門の中で最後に更新された部門と最終更新時間を表示するようにし,現在の進捗,所在を把握できるようにした(Figure 6)。
統合受付システムの構築により異なるオーダ種を同一画面で確認や受付ができるようになり,採血・注射処置室受付で注射処置室の受付が可能となった。前システム時は無人受付機で受付できないオーダ(注射・点滴・処置,細菌検査,病理検査)の場合は,無人受付機で有人受付への案内が発行され有人受付カウンターで再度受付操作を行う運用を行っていたが,有人受付化にしたことで受付処理が単純化でき業務の効率化に繋がった。また,採血室,注射処置室への情報共有するコメント送信機能を新規に構築したことで,有人受付での目や耳が不自由などの受診者情報をいち早く伝達できるようになった。
オーダ種の異なる外来検尿(検体,細菌,病理)の尿カップラベルの1枚化を行ったことで,尿カップに手貼りする業務が簡素化された。また,検査室にてLAINSで到着確認処理を実施し,各オーダ種別にラベル発行したことで,読み忘れによる検査漏れや検査結果の遅延などの防止になった。
統合進捗確認システムの構築により各オーダの進捗,更新時間など詳細な情報を見ることが可能となり,外来受診者のリアルタイムな情報を把握できるようになった。その結果,受診者の所在確認で各部署に連絡を取る必要がなく,受診者への伝言なども簡素化され外来受診者の診療の進捗,所在を確認するツールとなった。
当院は,採血・注射処置室の受付を同じ場所で行っている。以前の仕組みの課題として,無人受付機を導入していたが,異なるオーダ種の受付が一度では難しいこと,再度有人受付でオーダ種の異なるオーダを確認するのに個別の受付画面を起動し確認しなくてはならず,非常に複雑であることなどがあった。今回のシステム更新でこれらの課題を解消することを目標とした。対人での受付は,受診者にとって相談などコミュニケーションが取りやすいといったメリットがあると考え,統合受付システムを構築し有人のみの受付へと変更した。以前は受付に時間がかかる場合もあったが更新後は,受付業務が円滑になったと考える。また,受付者は受付業務の複雑さが軽減されたことで受診者案内や対応に余裕を持つことができるようになったと考える。
採血室においては,安全かつ的確に採血業務を遂行する中で受診者を観察して状態把握することは重要であり,様々な事故やミスなどを防ぐことに繋がる2),3)。今回,採血室,注射処置室へのコメント送信機能を実装した結果,採血・注射処置室受付との連携がしやすくなり受診者の情報共有が円滑となった。受診者の状態をこれまで以上に早く把握することで適切な対応ができるようになり,安全に配慮した業務の遂行ができるようになったと考える。
採血と注射,点滴,処置オーダが両方ある場合の処理に関しては,統合受付システム,LAINS,採血支援システムの3つのシステムを密に連携し,優先順位も含め注射処置室にて採血が可能か否かを自動で判断するシステムを構築した。様々な受付パターンに対応し,受診者の動線を最適化する仕組みができたと考える。
今回の電子カルテ更新を機に,受付業務の効率化,受診者情報のコメント送信機能,受診者の動線を考えた仕組み,受診者の診療の進捗と所在を確認するツールが構築できた。採血室の円滑な運営の一助となり,受診者サービスの向上に繋がったと考える。
本論文の要旨は第69回日本医学検査学会にて発表した。
本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。
臨床検査室の皆様には,電子カルテシステムの更新にご協力いただきました。心より感謝申し上げます。
本論文を執筆するにあたり,ご助言を賜りました藤田医科大学病院 松浦秀哲先生に深謝申し上げます。