2022 Volume 71 Issue 4 Pages 704-711
JICA(Japan International Cooperation Agency)海外協力隊(以下,海外協力隊)には多くの臨床検査技師が開発途上国の臨床検査の発展に寄与すべく派遣されている。派遣された臨床検査技師の多くは開発途上国の臨床検査の発展に尽力するだけでなく,日本では学ぶことのない様々な経験をすることになる。しかし,各方面からの評価が高いと思われる海外協力隊であるが,隊員は政治・宗教・文化などの違い,さらに開発途上国特有の事情もあり,派遣目的に沿った成果を上げることが難しいことも現実である。そこで派遣経験者を対象として開発途上国の臨床検査の状況,課題等について調査を行った。結果は開発途上国の臨床検査技師の検体検査を主とする職務領域のものであった。ほとんどの国で日本を含む他国から機材の提供を受けていたが,提供後の継続的な試薬の購入,メンテナンス体制の構築,故障時の対応等について課題が認められた。JICAや日本臨床衛生検査技師会(以下,日臨技)への要望としては「日本での研修の機会」,「海外で活動できる日本の臨床検査技師の育成」,「外国語対応の臨床検査に関するテキストの提供」等が挙げられ知識や技術を共有する必要性が示唆された。今回の調査から,日本は開発途上国に「モノ・カネ」だけを提供するのではなく,そこに「ヒト」が継続的に知識や技術を共有していくことが重要であることが示唆された。
Clinical laboratory technologists have been dispatched to the Japan International Cooperation Agency’s (JICA) Japan Overseas Cooperation Volunteers program to contribute to the development of clinical laboratories in developing countries. Many of them have experiences that are different from their experiences in Japan. Japan Overseas Cooperation Volunteers have difficulties in achieving results owing to differences in politics, religion, culture, and particular agendas in developing countries. In this study, we investigated the clinical laboratory status and issues in developing countries encountered by Japanese clinical laboratory technologists. The clinical laboratory technologists mainly conducted tests on specimens. Most of the countries received aid from other countries, including Japan; however, issues regarding the ability to continuously purchase reagents after assistance, the establishment of a maintenance system, and the response to failures were identified. The following suggestions were made for JICA and the Japanese Association of Medical Technologists: “opportunity for training in Japan”, “cultivation of Japanese clinical laboratory technologists who can work overseas”, and “providing textbooks on clinical tests in foreign languages”. Furthermore, it was suggested that technology should be provided. Using the survey, we found that it is considered important for Japan to provide “skilled people and material and financial assistance” to developing countries and to continuously share knowledge and technology with them.
日本は円借款,無償資金協力,技術協力など,様々な基本構想を組み合わせることにより開発途上国を支援している1)。その中にあって,独立行政法人国際協力機構(JICA)が行っている海外協力隊は,国民参加型の開発途上国支援であり,他の基本構想とは異なる特色を有している2)。臨床検査領域においても,海外協力隊には多くの臨床検査技師が開発途上国の臨床検査の発展に寄与すべく派遣されている。派遣された臨床検査技師の多くは開発途上国の臨床検査の発展に尽力するだけでなく,日本では学ぶことのない様々な経験をすることになる。しかし,各方面からの評価が高いと思われる海外協力隊であるが,隊員は政治・宗教・文化などの違い,さらに開発途上国特有の事情もあり,派遣目的に沿った成果を上げることが難しいことも現実である3),4)。
そこで派遣における実態を把握するために派遣経験者を対象として開発途上国の臨床検査の状況,課題等について調査をしたので報告する。
臨床検査技師は2021年9月30日現在の派遣実績として,青年海外協力隊/海外協力隊に366人(女性281人),シニア海外協力隊に18人(女性12人)が参加している5)。そこでわれわれは個人情報に配慮し,2019年8月から2020年3月末までの期間で,2019年9月時点で派遣されている隊員にはJICAからメールで,派遣経験者については,われわれからメールにてアンケートを配布し9名から回答を得た。
調査内容は下記に示し,回答は選択肢を設定したが選択肢にないものは記述していただいた。
1.派遣概要及び活動部署について
2.派遣国における臨床検査の状況について
3.現地での活動状況について
4.熱帯医学・感染症について
5.派遣国における臨床検査の課題について
6.活動に際してのJICAや日臨技への要望について
7.派遣国の臨床検査から日本が学ぶべきことについて
8.配属先からの要求事項について
9.派遣終了後の進路,仕事について
の計9項目について質問した。
Figure 1にアンケート調査にご協力を頂いた9名の派遣概要及び活動部署を示す。派遣地域はアフリカ地域が4名,アジア地域が2名,大洋州が3名であった。使用言語は英語が5名,フランス語が2名,ポルトガル語・ラオス語が各々1名であった。派遣者の活動部署は病院が7名,血液センターが1名,技師養成校が1名であった。活動内容は医療施設では運営・管理・人員教育,技師養成校では授業の実施・病院実習指導・実習室整備であった。
Figure 2に医療施設に派遣された臨床検査での活動部署を示す。多くの者が複数の部署で活動をしていた。生理検査を担当した隊員がいないのは,臨床検査の職務領域が日本と異なるためと考える。
派遣国における臨床検査に関する教育状況及び業務範囲を調査した。Table 1に臨床検査技師の育成機関を示す。臨床検査技師養成機関は大学が3ヶ国,専門学校が5ヶ国,専門とする養成機関がないのは1ヶ国であった。
臨床検査技師の育成機関(複数回答可) | 国数 |
---|---|
大学 | 3 |
専門学校 | 5 |
臨床検査を専門とした育成機関はない | 1 |
Table 2に資格認定制度を示す。臨床検査技師に関する資格認定制度については国家試験が1ヶ国,指定科目を履修したうえでの登録制が4ヶ国,他国の養成機関で研修を受けるが1ヶ国であった。
臨床検査技師に関する資格認定制度 | 国数 |
---|---|
国家試験 | 1 |
指定科目を履修した者のみ登録制 | 4 |
学会等の認定試験 | 0 |
その他 他国の養成機関で研修を受ける | 1 |
臨床検査技師の育成機関はほとんどの国で何らかの教育機関はあるが,1ヶ国だけが専門の教育機関はなかった。これは理科系の高等教育を受けたものが,病院に就職して臨床検査室に配属され,検査室での業務を通じて臨床検査の業務内容を理解した後に,他国で専門の研修を受ける教育体制をとっていた。
Figure 3に臨床検査技師の業務範囲を示す。担当業務に生理検査を含むとした国は1ヶ国であった。担当業務に生理検査を含まない国の一例としてアフリカのガボン共和国では心電図検査は放射線技師,超音波検査は医師が担当していた。今回の派遣国では,尿・便・体腔液などを担当する一般検査部門はなく検体や検査内容によって,臨床化学検査や細菌検査が担当していた。一部の国では,日本では臨床検査技師の業務となっていない「水質検査・食品検査(食塩)」や「献血血液から輸血用血液製剤の調製」も含まれていた。
開発途上国では医療インフラの整備が整っていないことが予想された。そこで臨床検査の領域において他国から資材・機材の支援を受けていたか,と問うと,ほとんどの国で日本を含む他国から様々な支援を受けており,その内容をTable 3にまとめた。
・院内LAN設備とオンライン発注システム |
・心電図計,心電図モニター,血圧計,体温計など |
・ドライケミストリー【試薬不足で使用不可】 |
・免疫化学発光分析機 |
・生化学自動分析装置,フローサイトメーター,血球計測器 |
・遠心機,冷蔵庫,顕微鏡など |
・ビーカーやメスシリンダーなどの備品 |
それでは,「機器が故障した時の対応について」という問いには,1ヶ国だけが自分たちでどうにかしようと最善を尽くす,と回答し,他は「機器修理を依頼するがその項目の検査はしない」または「何もせず,医師に壊れたから検査できないと伝える」であった。これから資材・機材の提供だけでなく運用方法・メンテナンスにも課題があると考えられた。
4. 熱帯医学・感染症について活動中に3大感染症及び顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases;以下,NTDs)について罹患患者を経験したものをTable 4にまとめた。
アフリカ地域 | アジア地域 | 大洋州地域 | ||
---|---|---|---|---|
3大感染症 | マラリア | 3 | ||
結核 | 1 | 1 | ||
HIV感染症 | 3 | 1 | ||
顧みられない熱帯病 | デング熱 | 2 | 1 | |
チクングニア熱 | 1 | |||
ハンセン病 | 1 | |||
住血吸虫症 | 2 | |||
リンパ系フィラリア(象皮病) | 2 | 1 | ||
土壌伝播寄生虫症 | 1 | |||
ヘビ咬傷 | 1 |
(数字は経験した隊員数を示す)
配属された医療施設に,どのような感染症に対する簡易検出キットが用意されていたかを問いTable 5にまとめた。
迅速キット | アフリカ地域 | アジア地域 | 大洋州地域 |
---|---|---|---|
デング熱 | 1 | 1 | |
インフルエンザ | 1 | ||
マラリア | 4 | 2 | |
HIV | 4 | 1 | 1 |
HBV | 4 | 1 | 1 |
HCV | 3 | 1 | 1 |
ツツガムシ(Scrub typhus) | 1 | ||
梅毒(TPHA/STS) | 4 | 2 | 1 |
フィラリア |
マラリアの罹患患者を経験した隊員はアフリカ地域で,デング熱やチクングニア熱はアジア・大洋州地域に認められた。肝炎ウイルス,HIV,梅毒用キットは配属された医療施設の全てで認められたが,マラリアを検出するキットはアフリカ地域に,デング熱を検出するキットはアジア・大洋州地域で用意されていた。調査数が少ないが,これは地域における感染症分布による差と考えられた。また寄生虫検査においてもアフリカ地域に派遣された隊員はタイ肝吸虫,回虫,鉤虫,糞線虫,鞭虫,無鉤条虫,有鉤条虫,小型条虫,蟯虫,ビルハルツ住血吸虫,マンソン住血吸虫などを日常的に経験していた。
アフリカ地域では医師の処方箋が必要ではあるが,抗マラリア薬,抗寄生虫薬等が一般の薬局で購入できるということは,公衆衛生に様々な課題があることが示唆された。
開発途上国には,まだまだその土地の伝統の治療法(薬草・呪術師等)が残っていることも考えられた。そこでそれらを経験したことがあるか自由記述にて問いTable 6にまとめた。開発途上国には,まだまだその土地の伝統の治療法が残っていることが示唆された。
・呪術師にあった際,写真と名前があれば祈ることができる。エイズもマラリアもすべて治ると言っていた。現地人も森の中にはすべての薬がある,自然の薬だと言っていた。 |
・インフルエンザになったら,お茶にレモンと蜂蜜を入れて飲めば治るという。 |
・マーケットでは,薬草を販売していた。村には,呪術師がおり,病気にかかった人の体から悪霊を追い払う儀式があると聞いたことがある。 |
・同時期に派遣された仲間がケガをした時に,村人からの呪術を断り切れずに受けて,治癒するまでに余計に時間を要した。 |
各隊員が考える派遣国における臨床検査の課題を上位3つ挙げていただきTable 7にまとめた。
派遣国における臨床検査の課題は | 人数 |
---|---|
分析機器等のメンテナンス | 5 |
精度管理に対する意識・知識 | 4 |
臨床検査技師育成システム | 3 |
電力・水等のインフラの未整備 | 2 |
分析試薬の不足 | 2 |
学会・研修会からの情報 | 2 |
卒後教育システム | 2 |
「電力・水等のインフラの未整備」や「分析試薬の不足」というハードウェアに関する事項があるものの,「分析機器等のメンテナンス」や「精度管理に対する意識・知識」が上位となり,知識,技術というソフトウェアの供与の必要性が示唆された。
6. 活動に際してJICAや日臨技への要望について活動をしていく中でJICAや日臨技への要望事項も出てくるのではないかと考え,その結果をTable 8にまとめた。
今後,開発途上国を支援するに際してJICAや日臨技に要望したい事項 | 人数 |
---|---|
臨床検査に関するテキスト | 6 |
コンピューターシステム | 3 |
日本人の継続的な派遣支援 | 3 |
インターネット環境 | 2 |
分析試薬・資材 | 2 |
財源 | 2 |
分析機器 | 1 |
その他 | |
・機器を寄付したとしても,継続して試薬を買えるか,メンテナンスはどうするか,故障した際どうするのか等フォローアップ体制が必要。 | |
・日本での研修会の実施(どんなに説明するよりも実際を見た方が理解が早いし,彼らの施設に必要なものが彼ら自身で発見できるはず) | |
・医療用廃棄物等の処理,遠隔医療のインフラ整備 | |
・人や機械を送るのはいいと思うのですが,先の事を考えて持続可能な方法を考えて国際協力に参画してほしいです。 |
「5.派遣国における臨床検査の課題について」の回答内容と同様に“臨床検査に関するテキストの提供”が最も多く自由記述欄も合わせて考えると,継続的な臨床検査に関する研修やメンテナンス等の技術の供与の必要性が示唆された。
7. 派遣国の臨床検査から日本が学ぶべきことについて派遣国の臨床検査から日本が学ぶべきことについて3つ挙げていただきTable 9にまとめた。
派遣国の臨床検査から日本が学ぶべき事は「上位3つ」 | 人数 |
---|---|
感染症対策 | 2 |
感染症検査手技 | 2 |
測定法の選択 | 2 |
保健・医療体制 | 1 |
臨床検査室の管理体制 | 0 |
ISO15189の導入 | 0 |
基準値・基準範囲の設定 | 0 |
その他 | |
日本で行っている検査方法が必ずしも世界標準とは限らない。むしろ現地で採用されている方法は日本以外の国から伝わっていて,そちらのほうが世界標準ということもありうる。 |
日本が派遣国の臨床検査から学ぶべきことについては「感染症対策」,「感染症検査手技」が挙げられた。これは公衆衛生が,比較的整った日本では経験することが少なくなったが,逆に派遣国から学ぶことが多いと考える。またその他として,「日本で行っている検査方法が必ずしも世界標準とは限らない。むしろ現地で採用されている方法は日本以外の国から伝わっていて,そちらのほうが世界標準ということもありうる。」という意見があった。
また総蛋白質と赤血球数の測定単位を問うたところ回答を得た4ヶ国すべてで総蛋白質はSI単位6),7)である「g/L」であったが,赤血球数は慣用単位である「106/μL」が用いられていた。これは開発途上国では日本以外にも欧米・中国等からの多くの支援を受けいれており,支援を受けるタイミングによっては,支援する国の技術や標準化の状況により異なってくることが示唆された。
8. 配属先からの要求事項について開発途上国における臨床検査の状況は「ヒト・モノ・カネ」というすべての資源が少ないことが考えられる。そこで,活動中に日本に対して「ヒト・モノ・カネ」での貢献を期待されたかについて問うたところ,Figure 4に示すように9人中6人が期待されていたという結果を得た。
それでは,あなたが考える「ヒト・モノ・カネ」を除いた臨床検査における日本らしい活動(自由記述で)とは,について問い,その結果をTable 10にまとめた。
・医療人としての意識の啓発をすること。作業や学問としての臨床検査技術ではなく,人の命に関わっていることを意識してもらう。 |
・最初はマンパワーであったとしても,倫理観を含めた仕事の意義について現地人が日本人から感じ取ってもらえるよう,地道な草の根活動を行うことが大事である。 |
・時間の考え方 |
・整理整頓,自分で掃除をする,細かい作業 |
・病んでいる患者を中心とした診療体制の中の臨床検査技師という立場で治療に必要な検査情報を迅速かつ的確に伝えるための日々の努力を伝えること。 |
・「モノ・カネ」で貢献するのではなく,お互いの持っている技術,知識を交換し,足らないところを補い合う。 |
「医療人としての倫理観」をもつ,「整理整頓・時間を守る」等の日常管理から,臨床検査領域における「知識・技術の交流」を通してお互いに補い合う,というのが日本らしい活動であると思われた。
そして,実際に開発途上国の臨床検査の現状を経験することで,臨床検査技師がどのような形で国際協力に貢献できると考えるかを問い,その結果をTable 11にまとめた。
・臨床に即した臨床検査技術の向上に向けた知識の伝達。他職種ボランティアへの寄生虫や食中毒の知識や感染対策の伝達をすることによって,各隊員の活動先での公衆衛生の向上につなげる。 |
・臨床検査技師が日本で培った知識やスキルを基に,現地の医療制度や公衆衛生上の問題を考察し,研究や活動によって発信すること。 |
・コントロールを使わない,精度管理を行わない,試薬や資材が発注するたびに違う業者に変わる。常に試薬があるわけではない。期限切れは当たり前。パソコンが検査室に一台もなく使える人がいない。日本の常識とはかけ離れた環境の中での活動で,日本の常識を押し付けるのではなく一緒に何が必要か考えていくプロセスが大事だと思って活動している。 |
・1つの病院の中にとどまる技師もいいですが,他の病院や地域に出て行って地域の感染症対策などにも貢献できると思う。 |
日本とは異なる環境の中での活動で,一緒に何が必要か考えることが重要であるとの意見が多かった。
9. 派遣終了後の進路,仕事について海外協力隊に参加し,開発途上国の臨床検査を経験してみたいと考える臨床検査技師も多いのではないかと考える。しかし,長期の派遣となると現在の職場に迷惑をかけることとなり,なかなかチャレンジできないことも現実であると思われる。そこで,派遣終了後の進路,仕事について問い,その結果をTable 12にまとめた。
帰国後の進路,仕事について | 人数 |
---|---|
現職場に復帰 | 2 |
職場は変わる | 2 |
進学する | 2 |
教育機関で勤務 | 2 |
回答のあった8名において,現在の施設を退職し派遣終了を機に他の施設(病院,教育期間)もしくは進学と進路を変えているものが6名,「現職場に復帰」が2名であった。
このアンケート調査は,まず筆者および海外協力隊経験者の友人計12名に配信し,さらにその友人を紹介していただき調査数を確保しようと企画した。しかし結果的に9名しか回答を得ることはできなかった。これは個人情報保護の観点から,連絡先等の情報を得ることが難しいため,このような標本数の限られた調査となってしまった。しかし回答内容は実際の経験を基にしたもので,開発途上国における臨床検査の現状を垣間見ることができ,貴重であると考える。
開発途上国における臨床検査技師の育成機関,資格認定制度,担当業務は日本とは異なる部分が認められた。臨床検査室は他国から様々な援助を受けていたが,物資を援助するだけでなく,その運用方法・メンテナンスも含めた支援が必要であると考えられる。この事項については,工藤らの調査結果8)からも同様な事案が指摘されており,日本は開発途上国に「モノ・カネ」だけを提供するのではなく,そこに「ヒト」が継続的に知識・技術を伝えていくことが重要であると考えられた。
逆に開発途上国の臨床検査からは「感染症対策」,「感染症検査手技」について学ぶことが多いと考えられた。また「日本で行っている検査方法が必ずしも世界標準とは限らない。」という意見は,川合9)も指摘しており,派遣された隊員にとって世界と日本の差を認識することとなり,将来,日本の標準化を如何に進めるべきかを考える貴重な経験になったと考える。
このように様々な経験ができる海外協力隊ではあるが,現職場に復帰する人が少ないことより,現実的には休職措置等で身分を所属先に残して参加できる人は少ないと考える。
海外協力隊員は開発途上国と同じ目線にたち課題解決に向けて活動を行っている。まさしく開発途上国で現地の人々と共に生活して活動するということは,異文化や多様性を理解し,相手の立場で考え,同じ目線で,他者と協働して開発途上国の課題解決に貢献する経験をすることができると考える。また帰国後は,日本の臨床検査の現状が認識でき,日本をはじめ様々な国や分野で,派遣時の経験を生かした貢献を期待したい。
本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。
本アンケートを実施するにあたり,派遣隊員への窓口となっていただいたJICA海外協力隊事務局の方々,アンケート調査にご協力いただいたJICA海外協力隊の皆様に深謝いたします。