Japanese Journal of Medical Technology
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Original Articles
Electrocardiogram education for EMTs and paramedics by clinical laboratory technicians: Current status and improvement based on questionnaire survey of EMTs and paramedics in fire departments in Shimane prefecture
Tatsuya SUGIHARATakayuki YAMARIKUMiyuki YAMAMOTOKazue FUJITAYoko KADONAGAYasushi ASHIDA
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2023 Volume 72 Issue 3 Pages 349-357

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Abstract

心電図について講義を行った救急救命士および救急隊員に対しアンケート調査を実施し,救急現場における疑問点や需要を明らかにした。対象は島根県内の消防本部に所属する救急救命士62名,救急隊員20名。病院前12誘導心電図(PH-ECG)の現状と重要性,モニターおよび12誘導心電図の装着方法とコツ,頻出する心電図の判読,急性心筋梗塞の心電図判読,頻脈性不整脈の心電図判読について講義を実施した。アンケート内容については,上記講義内容の理解度についての回答とST変化の評価,脚ブロックとの鑑別,鏡面現象の理解について回答を設定した。職種別の認知度と理解度の違いは,全ての質問項目において救急隊員に比べ救急救命士が有意に高値であった。項目別の認知度の違いは,ST変化の評価に比べ,脚ブロックとの鑑別は有意に低値であった。救急救命士と救急隊員は共通してST変化の評価は理解できているが,脚ブロックとの鑑別における知識は不十分な傾向にあり,救急現場で誤った判読をしてしまう可能性もある。理解度が低かった項目に重点を置いて講義内容を作成し,理解を深め,救急救命士および救急隊員と病院間における報告や連携の質の向上に繋げていく。

Translated Abstract

A questionnaire survey was conducted among the EMTs and paramedics who gave a lecture on electrocardiography to clarify questions and demands in the emergency field. The subjects were 62 EMTs and 20 paramedics belonging to fire departments in Shimane Prefecture. Lectures were given on the current status of prehospital 12-lead electrocardiogram, how to apply the monitor and 12-lead electrocardiogram and its tips, the reading of frequent electrocardiograms, the reading of electrocardiograms of acute myocardial infarction, and the reading of electrocardiograms of tachyarrhythmias. The questionnaire was designed to determine the comprehension level of the EMTs and paramedics about the above lecture content, evaluation of ST changes, and differentiation of ST changes from leg block, and their understanding of the specular phenomenon. Differences in recognition and understanding by occupation were significantly higher for EMTs than for paramedics for all questions. The recognition by item was significantly lower for the differentiation of ST changes from bundle branch block than for the evaluation of ST changes. Although EMTs and paramedics commonly understood the evaluation of ST changes, they tended to have insufficient knowledge in differentiating ST changes from the bundle branch block, which may lead to incorrect interpretation at the scene of an emergency. We will prepare a lecture focusing on the items that were poorly understood to deepen understanding and improve the quality of reporting and collaboration among EMTs, paramedics, and hospitals.

I  はじめに

ST上昇型急性心筋梗塞に対する早期の再灌流療法は,ガイドラインで示されており,発症から再灌流までの総虚血時間をいかに短縮するかが重要とされている1),2)。そのためには病院到着から再灌流までの時間(door to balloon time; DTBT)の短縮が課題とされており,本邦の急性心筋梗塞レジストリー研究では,発症2時間以内に来院した患者はDTBTが90分以内であれば,死亡やうっ血性心不全の発症リスクが有意に低下することを報告している3)

病院前12誘導心電図(pre-hospital ECG; PH-ECG)は発症から病院到着の間に救急救命士によって実施され,急性心筋梗塞の再灌流時間短縮や適切な治療施設への搬送判断に有効とされている4),5)。しかし日本,特に地方においてはPH-ECGは十分に浸透されておらず,その理由として金銭面と教育面の問題点が挙げられている6),7)

当院では地域の救急医療向上に役立てるため,救急救命士の研修を受け入れており,臨床検査技師がその内30分程度の心電図講義を行っている。今回PH-ECG導入に向けて教育面を充実させるために,松江・安来地区メディカルコントロール協議会より,島根県内の消防本部(以下,県内消防本部)に所属する救急救命士および救急隊員に対して心電図講義の依頼があった。

しかし臨床検査技師による救急救命士および救急隊員への心電図教育に関する先行研究は検索した範囲では見つけられず,講義内容が救急現場における需要を満たせない可能性がある。本研究の目的は,アンケート調査を通じて救急現場における疑問点や需要を明らかにし,今後の講義内容の改善に繋げ,実践で心電図判読に役立ててもらうことである。

II  方法

1. 心電図講義方法と内容

心電図講義方法はZoomミーティングを用いて実施した。事前に講義資料とアプリケーションをダウンロードしてもらい,視聴後は二次元バーコードよりアンケートフォームに回答してもらうようにした。また講義終了後は1ヶ月間アーカイブ機能で繰り返し視聴できるようにした。

心電図講義内容は「病院前12誘導心電図の現状と重要性」「モニター・12誘導心電図の装着方法とコツ」「頻出する12誘導心電図の判読」「急性心筋梗塞の12誘導心電図判読」「頻脈性不整脈の12誘導心電図判読」とした。資料作成は当院での救急救命士研修の際に聞き取りをし,実態に即した内容になるよう努めた。講義は著者(日本不整脈心電学会が認定するJHRS認定心電図専門士と心電図検定1級取得者)が担当した。

病院前12誘導心電図の現状と重要性(以下「PH-ECG」と表記)は,日本におけるPH-ECGの予算面や教育面の課題,都市部と地方における導入率や実施率の違い,自動解析機能の信頼性について文献を用いて示した。モニターおよび12誘導心電図の装着方法とコツ(以下「装着方法」と表記)は,筋電図混入や基線動揺の影響を減らすための工夫,電極装着位置やトラブル対応について示した。頻出する12誘導心電図の判読(以下「頻出心電図」と表記)は,心房期外収縮・心室期外収縮・右脚ブロック・左脚ブロック・心房細動・完全房室ブロック・ST上昇型心筋梗塞について典型例を示し,最後に確認問題で理解を深めてもらうようにした。急性心筋梗塞の12誘導心電図判読(以下「急性心筋梗塞」と表記)は,モニター心電図でのST変化の鑑別の限界と12誘導心電図での確認の重要性,冠動脈の狭窄部位と心電図変化の関係,鏡面現象の考え方について示した。頻脈性不整脈の12誘導心電図判読(以下「頻脈性不整脈」と表記)は,致死性の頻脈性不整脈,心室頻拍とアーチファクト,脚ブロックおよび顕性WPW症候群による偽性心室頻拍の鑑別について示した。

2. アンケート調査

対象は県内消防本部に所属し,アンケート調査の意義に同意した救急救命士62名,救急隊員20名の計82名。経験年数は10年未満が29名,10~19年が40名,20年以上が13名であった。

質問内容は,モニター・12誘導心電図におけるST変化の評価の可否(以下「ST変化の評価」と表記),心筋梗塞とそれ以外(脚ブロックや早期再分極),鑑別(以下「脚ブロックとの鑑別」と表記),梗塞部位とST変化の関連(鏡面現象:ミラーイメージ)の理解(以下「鏡面現象の理解」と表記)について「できる・どちらかと言えばできる・どちらかと言えばできない・できない」と回答を設定した。心電図講義の理解度は,PH-ECG,装着方法,頻出心電図,急性心筋梗塞,頻脈性不整脈の講義内容について「理解できた・だいたい理解できた・あまり理解できなかった・理解できなかった」と回答を設定した。自由記載欄は,心電図について救急現場で疑問に思っていることや今後の要望などについて記入してもらった(Table 1)。

Table 1  アンケート調査内容
Q1 職種を選択してください。
Q2 経験年数を選択してください。
Q3 モニター心電図または12誘導心電図でST変化の評価ができますか?
Q4 ST変化から心筋梗塞とそれ以外(脚ブロックや早期再分極)の鑑別が適切にできますか?
Q5 心筋梗塞の狭窄部位とST変化の関連(鏡面現象:ミラーイメージ)が理解できますか?
Q6 病院前12誘導心電図の現状と重要性について理解できましたか?
Q7 モニター心電図または12誘導心電図の装着方法とコツについて理解できましたか?
Q8 頻出する12誘導心電図の判読と確認問題について理解できましたか?
Q9 急性心筋梗塞の心電図判読について理解できましたか?
Q10 頻脈性不整脈の心電図判読について理解できましたか?
Q11 救急現場で心電図について疑問に思っていることや今後の要望があれば記入してください。

アンケート結果の評価方法は,[ST変化の評価・脚ブロックとの鑑別・鏡面現象の理解]の認知度と,[PH-ECG・装着方法・頻出心電図・急性心筋梗塞・頻脈性不整脈]の理解度として,職種別の違いや項目別の違い,経験年数別の違いについて統計学的に評価した。なお経験年数別の違いについては,10年未満(救急救命士18名,救急隊員11名),10年~19年(救急救命士34名,救急隊員6名),20年以上(救急救命士10名,救急隊員3名)の3群に分類した。

3. 統計学的解析

各測定値については人数(百分率%)で示した。アンケート質問内容の順序尺度による2群間の比較はマンホニットニーのU検定,3群間以上の比較はクラスカル・ウォリス検定を用い,多重比較についてはボンフェローニ法を用いて評価した。統計解析はEZR ver 1.60を用い8),有意水準は5%とした。

4. 倫理的配慮

データ分析及び解析はヘルシンキ宣言に基づき,個人が特定できないように管理して実施した。本研究は松江市立病院倫理委員会の承認を得た(承認番号4B-0022)。

III  結果

全体,救急救命士,救急隊員のアンケート調査結果についてTable 2に示す。職種別の認知度および理解度の違いについて,救急隊員に比べ救急救命士は2群間比較で有意に高値であった(Figure 1)。

Table 2  アンケート調査結果
全体(n = 82)
項目(認知度) できる どちらかといえばできる どちらかといえばできない できない
ST変化の評価 17(20.7%) 52(63.4%) 11(13.4%) 2(2.4%)
脚ブロックの鑑別 3(3.7%) 32(39.0%) 36(43.9%) 11(13.4%)
鏡面現象の理解 13(15.9%) 38(46.3%) 23(28.0%) 8(9.8%)
項目(理解度) 理解できた だいたい理解できた あまり理解できなかった 理解できなかった
PH-ECG 26(31.7%) 48(58.5%) 8(9.8%) 0(0%)
装着方法 42(51.2%) 35(42.7%) 5(6.1%) 0(0%)
頻出心電図 28(34.1%) 43(52.4%) 10(12.2%) 1(1.2%)
急性心筋梗塞 26(31.7%) 50(61.0%) 6(7.3%) 0(0%)
頻脈性不整脈 13(15.9%) 51(62.2%) 17(20.7%) 1(1.2%)
救急救命士(n = 62)
項目(認知度) できる どちらかと言えばできる どちらかと言えばできない できない
ST変化の評価 16(25.8%) 42(67.7%) 4(6.5%) 0(0%)
脚ブロックの鑑別 3(4.8%) 29(46.8%) 24(38.7%) 6(9.7%)
鏡面現象の理解 12(19.4%) 34(54.8%) 12(19.4%) 4(6.4%)
項目(理解度) 理解できた だいたい理解できた あまり理解できなかった 理解できなかった
PH-ECG 26(42.0%) 34(54.8%) 2(3.2%) 0(0%)
装着方法 37(59.7%) 24(38.7%) 1(1.6%) 0(0%)
頻出心電図 28(45.2%) 30(48.4%) 4(6.5%) 0(0%)
急性心筋梗塞 26(41.9%) 35(56.5%) 1(1.6%) 0(0%)
頻脈性不整脈 13(21.0%) 40(64.5%) 8(12.9%) 1(1.6%)
救急隊員(n = 20)
項目(認知度) できる どちらかと言えばできる どちらかと言えばできない できない
ST変化の評価 1(5.0%) 10(50.0%) 7(35.0%) 2(10.0%)
脚ブロックの鑑別 0(0%) 3(15.0%) 12(60.0%) 5(25.0%)
鏡面現象の理解 1(5.0%) 4(20.0%) 11(55.0%) 4(20.0%)
項目(理解度) 理解できた だいたい理解できた あまり理解できなかった 理解できなかった
PH-ECG 0(0%) 14(70.0%) 6(30.0%) 0(0%)
装着方法 5(25.0%) 11(55.0%) 4(20.0%) 0(0%)
頻出心電図 0(0%) 13(65.0%) 6(30.0%) 1(5.0%)
急性心筋梗塞 0(0%) 15(75.0%) 5(25.0%) 0(0%)
頻脈性不整脈 0(0%) 11(55.0%) 9(45.0%) 0(0%)
Figure 1 職種別の認知度と理解度の違い

職種別の認知度と理解度の違いは,いずれも救急隊員に比べ,救急救命士が有意に高値であった。

項目別の認知度の違いについて,救急救命士および救急隊員はいずれも3群間比較で有意差を認めた(p < 0.05)。多重比較では,救急救命士はST変化の評価に比べ,脚ブロックとの鑑別は有意に低値(p < 0.01),鏡面現象の理解に比べ,脚ブロックとの鑑別は有意に低値(p = 0.01)であった。救急隊員はST変化の評価に比べ,脚ブロックとの鑑別は有意に低値であった(p < 0.05)。

項目別の理解度の違いについて,救急救命士は5群間比較で有意差を認めた(p < 0.01)。多重比較では,頻脈性不整脈に比べ,PH-ECG,装着方法,頻出心電図,急性心筋梗塞の項目はいずれも有意に高値であった(p < 0.05)。救急隊員は5群間比較で有意差は認められなかった(Figure 2)。

Figure 2 項目別の認知度と理解度の違い

項目別の認知度と理解度の違いは,救急救命士と救急隊員ともにST変化の評価に比べ,脚ブロックとの鑑別は有意に低値であった。

経験年数別の認知度と理解度の違いについて,救急救命士および救急隊員は3群間比較で有意差は認められなかった(Figure 3)。

Figure 3 経験年数別の認知度と理解度の違い

経験年数別(10年未満,10~19年,20年以上)の認知度と理解度の違いは,救急救命士と救急隊員ともに有意差はみられなかった。

救急現場における疑問点や要望などの自由記載欄をまとめたものを,Table 3に示した。

Table 3  自由記載欄のまとめ
・女性患者の12誘導心電図記録に抵抗を感じる。何か工夫していることはありますか?
・参考書に記載されているような典型例は鑑別できるが,微妙な波形変化についてはどう判断したらよいか迷う。
・自動解析機能の過剰判断については知らなかった。自身で心電図判読することの重要性が分かった。
・救急搬送中の心電図記録に不安を感じる。搬送中の振動の影響で十分に記録できない場合はどうしたら良いか。
・搬送時点でST上昇を伝えると,病院到着時に既に心臓カテーテル検査が準備されていることがあるため,間違った情報が出せない。
・病院側が最低限どこまで心電図についての情報が知りたいのか分からない。
・PH-ECGについて救急救命士と病院側の連携や信頼関係の構築が重要だと感じるが,自信が持てない。
・12誘導心電図記録をすることで精度の高い情報を伝達するメリットと時間が取られてしまうデメリットのバランスが大切だと感じた。
・急性心筋梗塞,完全房室ブロック,致死性不整脈の3つ以外は十分な教育を受ける機会が少ない。
・QRS幅の広い頻脈を見て,驚いた経験がある。今までは心室頻拍と焦っていたが,脚ブロック+心房細動など鑑別できるようになりたい。
・今後も島根県下の消防本部を対象とした心電図教育を継続してほしい。基礎や症例を中心とした内容を徹底して欲しい。

IV  考察

救急救命士と救急隊員はST変化の評価について理解できているが,心筋梗塞と脚ブロックなどの鑑別における知識については不十分な傾向がみられた。

JRC蘇生ガイドライン2020では,病院前通知による心臓カテーテル室の準備とカテーテルチームを招集することを推奨すると記載されている2)。しかしモニター心電図上でST変化を示す心電図所見は,虚血以外に他の病態でも数多く存在する。よって救急救命士が心筋梗塞との鑑別について十分に理解していないと,誤った情報を病院側に提供してしまう恐れがある。さらに救急現場の視点でも「搬送時点でST変化を伝えた際に間違った情報を病院側へ提供してしまうことについての不安がある」「病院側が最低限どこまで心電図についての情報が知りたいのか分からない」といった自由記載があり,これらの不安要素を取り除くことが重要であると考えられた。

特にモニター心電図上のST低下については,急性心筋梗塞の他にたこつぼ型心筋症,左脚ブロック,左室肥大,電解質異常,頻脈性不整脈でも認められる。そのためST低下は必ずしも虚血を反映するとは限らない。なおガイドライン上では胸部症状を有する新規の左脚ブロックもST上昇型急性心筋梗塞として扱うと記載されている1),2)。しかし救急現場では,前回値比較ができないため,左脚ブロック所見が新規か否かの判断は困難と考えられる。その点を現場でも気に留めておくことが大切であり,モニター心電図で十分に判断できない場合は,PH-ECGを実施することが重要であると考えられた。

日本においてPH-ECG実施について具体的な判断基準を示した報告はあるが9),現時点ではガイドライン上には示されていない2)。またST上昇を示す誘導は冠動脈の狭窄部位によって異なること,さらに狭窄部位が近位部か遠位部によって鏡面現象のパターンが異なることがモニター心電図の判断を複雑にしている。またST上昇を示す誘導は冠動脈の狭窄部位によって異なること,さらに狭窄部位が近位部か遠位部によって鏡面現象のパターンが異なることがモニター心電図の判断を複雑にしている。したがって冠動脈狭窄部位によってモニター心電図で十分に判断できない可能性があり,そのことを救急救命士が認識することが重要である。そこで,前述した虚血所見とその他の鑑別,冠動脈狭窄部位とモニター心電図の判断について心電図早見表を作成し,配布した(Figure 4)。1枚の両面仕様で作成し,救急現場において誰でも活用してもらえるようにした。

Figure 4 心電図鑑別の早見表

虚血所見とその他の鑑別,冠動脈狭窄部位とモニター心電図の判断について早見表を作成した。

救急隊員は,救急救命士に比べて心電図に関する基礎的な認知度や理解度が比較的低い傾向がみられた。特にPH-ECGの現状と重要性については,職種関係なく共通認識として知っておくことが望ましい。さらに職種間で認知度や理解度に差がみられたことから,今後の心電図講義の際には受講対象者に合わせて講義内容の難易度を調整していく必要がある。自由記載欄に「急性心筋梗塞,完全房室ブロック,致死性不整脈の3つ以外は十分な教育を受ける機会が少ない」「基礎や症例を中心とした内容を徹底して欲しい」といった記載があった。これは理解度が低かった項目に重点を置いた講義内容を作成し理解を深めてもらい,救急現場で早見表を使ってもらうことで,講義で学んだことを実践に活かしてもらいたい。また「救急搬送中のPH-ECG記録について救急車内の揺れの影響の対策をどうしたら良いか」「精度の高い情報伝達と時間が取られることのバランスの判断が難しい」といった記載が多数みられた。これについては臨床検査技師が心電図業務をする上で,遭遇することがない内容であった。今後も心電図講義を通して生じた疑問点については改めて文献などで調べたり,研修の際に救急救命士から直接教えてもらったりすることで,次の講義で回答できるように一緒に課題解決に繋げたい。

V  結語

心電図について講義を行った県内消防本部の救急救命士および救急隊員に対しアンケート調査を実施し,救急現場における疑問点や需要を明らかにした。

救急救命士と救急隊員は共通してST変化の評価は理解できているが,脚ブロックとの鑑別における知識は不十分な傾向にあり,救急現場で誤った判読をしてしまう可能性もある。理解度が低かった項目に重点を置いて講義内容を作成し,理解を深め,救急救命士および救急隊員と病院間における報告や連携の質の向上に繋げていく。

本研究の要旨は,第72回日本医学検査学会(2023年)で発表した。

COI開示

本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。

謝辞

今回のアンケート調査にご協力いただいた,県内消防本部に所属する救急救命士および救急隊員の皆様に厚く御礼申し上げます。

文献
 
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