Japanese Journal of Medical Technology
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Technical Articles
Performance evaluation of the fully automated urine analyzer US-3500 with improved algorithm for determining urine color tone
Aki OKAHiroko MATSUNOYohei KATOMariko ISHIDAYohei SHIRAKAMITakatomo WATANABERyosuke KIKUCHIHiroyuki OHKURA
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2023 Volume 72 Issue 3 Pages 390-394

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Abstract

尿定性検査における尿色調の判定は,装置判定と実際の色調に差異が生じるケースがある。特に「RED」および「OTHER」と判定される例で実際の色調と異なることが課題となっていた。そこで我々は,栄研化学株式会社が改良した色調判定アルゴリズムを適用した全自動尿分析装置US-3500の色調判定機能の性能評価を行った。当院検査部に提出された1,190検体を対象とし,測定した色調結果の収集および測定後の検体の色調をデジタルカメラにて撮影し,改良前後の判定を比較した。1,190検体中「RED」判定となったのは従来アルゴリズム(以下,従来)で7検体,改良アルゴリズム(以下,改良)で3検体,「OTHER」判定となったのは従来で12検体,改良で3検体であった。次に従来で「RED」または「OTHER」と判定された計19検体について撮影画像を確認した。従来で「RED」と判定された7検体のうち,改良でも「RED」と判定された3検体は赤色の色調を認めた。残りの4検体は「DARK BROWN」と「AMBER」で画像と相違ない判定であった。また従来で「OTHER」判定された12検体のうち9検体は,改良により「AMBER」,「YELLOW」,「STRAW」,「LIGHT YELLOW」に判定された。以上の結果から,改良アルゴリズムの適用により,特に「RED」および「OTHER」判定の精度向上が認められた。

Translated Abstract

There are cases in which the actual color tone differs from the device’s judgment of the urine color tone in the urine qualitative test. In particular, the cases in which “RED” and “OTHERS” are determined to be different from the actual color tone have been a problem. Here, we evaluated the performance of the color tone judgment function of the fully automatic urine analyzer US-3500, which uses a color tone judgment algorithm improved by Eiken Chemical Co. We collected color tone results from 1,190 specimens submitted to our laboratory and photographed the color tone of the specimens after measurement using a digital camera, and we then compared the algorithm judgments before and after the improvement. Of the 1,190 specimens, seven specimens were judged “RED” by the conventional algorithm (hereinafter referred to as “conventional”), three specimens by the improved algorithm (hereinafter referred to as “improved”), and 12 specimens by the conventional algorithm and three specimens by the improved algorithm were judged “OTHERS”. Next, we checked the images of a total of 19 specimens that were judged “RED” or “OTHERS” by the conventional method. Of the seven specimens that were judged “RED” by the conventional method, three specimens that were judged “RED” by the improved method also showed a red color tone. The remaining four specimens were determined to be “DARK BROWN” and “AMBER,” which were consistent with the images. Nine of the 12 specimens judged as “OTHERS” by the conventional algorithm were judged as “AMBER,” “YELLOW,” “STRAW,” or “LIGHT YELLOW” by the improved algorithm. Overall, the improved algorithm improved the accuracy of “RED” and “OTHERS” judgments in particular.

I  はじめに

尿定性検査における尿色調の判定は,大まかな腎・泌尿器疾患や病態の推定,種々の薬剤の影響による着色を疑う1)~3)など,色調を観察することは重要であり,色調を的確に臨床へ報告する意義は大きい。

全自動尿分析装置US-3500(以下,US-3500:栄研化学株式会社)は,フローセルを用いた色調判定が行われており,その判定は分光吸収測定法により行われ,同時に混濁補正も行われている。測光に用いる各波長の吸光度等から尿の色調を「LIGHT YELLOW」,「STRAW」,「YELLOW」,「AMBER」,「DARK BROWN」,「RED」,「OTHER」のいずれかに分類している。US-3500による色調判定を行う中で,強度混濁尿や着色尿で装置判定と目視判定による色調に差異が生じるケースがある。特に「RED」および「OTHER」と判定される例で実際の色調と異なることが課題であった。このような状況から,栄研化学株式会社は各波長の吸光度を用いた尿色判定演算式,および判定値の適正化を行い,特殊な尿の判定により適した色調判定アルゴリズムを開発した。

今回我々は,栄研化学株式会社が改良した色調判定アルゴリズムを適用したUS-3500の色調判定機能の性能評価を行った。

II  US-3500色調判定の原理と改良点

US-3500における尿色調判定は,フローセル吸光度演算,データからランク分類等を行い,各種補正後に尿色調判定となり,その結果「RED」判定となった場合は追加判定が実施される流れとなっている。

今回の適正化では,フローセル吸光度による判定基準の変更,およびフローセル吸光度から「RED」と判定された際に尿潜血判定値などの情報を加味して総合的に判定する機能が追加された。

III  対象および方法

1. 対象

2019年12月11日から2019年12月20日に提出された入院及び外来患者1,190例の検査後残尿を用いた。なお,本研究は岐阜大学医学部生命倫理委員会の承認を得て施行した(承認番号:2019-082)。

2. 検討方法

1) 改良前後の判定比較

対象1,190検体の測定した結果を収集するとともに,測定後の検体の色調をデジタルカメラにて撮影を行った。収集したデータをもとに,従来アルゴリズム(以下,従来)および改良アルゴリズム(以下,改良)による色調判定を行い,改良前後の判定を比較した。

2) 「RED」および「OTHER」判定の色調確認

改良前後の判定で色調異常の程度が強いと考えられる「RED」および「OTHER」判定の検体について,撮影画像を確認し,実際の色調との整合性を評価した。

IV  結果

1. 尿色調判定アルゴリズム改良前後の判定比較

対象1,190検体の改良前後の判定結果をFigure 1に示す。従来で「RED」・「OTHER」以外の判定となった1,171検体は,改良による判定と差異は認められなかった。しかし,従来で「AMBER」と判定された47検体のうち23検体が,改良にて「YELLOW」と判定され,従来と改良の「AMBER」の一致率が51.1%であった。一方,従来で「RED」判定となった7検体について,改良での判定は「RED」3検体,「DARK BROWN」3検体,「AMBER」1検体であり,従来と改良の「RED」の一致率が42.9%であった。また従来で「OTHER」判定となった12検体について,改良での判定は「OTHER」3検体,「AMBER」2検体,「YELLOW」3検体,「STRAW」3検体,「LIGHT YELLOW」1検体と計9検体が「OTHER」以外の判定となり,従来と改良の「OTHER」の一致率は25.0%であった。

Figure 1 尿色調判定アルゴリズム改良前後の判定結果(n = 1,190)

DK BROWN: DARK BROWN,L-YELLOW: LIGHT YELLOW

2. 「RED」および「OTHER」判定の色調評価

従来で「RED」判定となった7検体について,撮影画像をFigure 2に示す。改良でも「RED」と判定された3検体は画像においても赤色の色調を認めた。「DARK BROWN」および「AMBER」と判定され従来と判定が不一致であった4検体は,画像においても改良の方が実際の色調と差異ない判定であることが確認された。次に,従来で「OTHER」判定となった12検体の中で,改良でも「OTHER」と判定された3検体(検体No. 17,18,19)について実際の色調を評価した(Figure 3)。

Figure 2 従来アルゴリズムで「RED」と判定された検体

改良アルゴリズムでも「RED」と判定された検体No. 1,2,3は赤色を呈していた。

DK BROWN: DARK BROWN

Figure 3 従来アルゴリズムで「OTHER」と判定された検体

改良アルゴリズムでも「OTHER」と判定された検体No. 17,18は異常な着色は認めず,検体No. 19は赤褐色を呈していた。

L-YELLOW: LIGHT YELLOW

その結果,検体No. 17,18は画像において異常な着色は認められず,検体No. 19は赤褐色を呈していた。「AMBER」,「YELLOW」「STRAW」,「LIGHT YELLOW」と判定され従来と判定が不一致であった9検体は,画像においても改良の方が実際の色調に応じた判定が行われていることが確認された。

V  考察

従来で「RED」判定となった7検体については,改良での判定と画像による目視判定の結果,実際の色調に応じた判定が確認され,改良により色調判定の精度向上が認められた。また,Figure 2には混濁と潜血の情報を表示しているが,7検体全て潜血反応は「3+」であり,血尿例であることが示唆された。

従来で「OTHER」判定となった12検体のうち,改良でも「OTHER」と判定された3検体について,検体No. 17,18は異常な着色は認めなかった。この点に関しては,尿色判定の部分において,他の色調との判定境界域付近ではないかと推察される。また,検体No. 19は赤褐色の強度混濁尿であることから装置判定が困難であったと考えられる。改良で結果が変化した9検体は画像による実施の色調と差異ない判定であり,この点においても改良後の精度向上が認められた。

今回の検討で従来と改良にて判定不一致が多かった色調判定に「AMBER」があった。従来にて「AMBER」と判定された47検体中,23検体が改良にて「YELLOW」と判定され半数近くが変化した為,追加で画像確認を行った(data not shown)。画像確認では異常な着色は認められず,改良にて「YELLOW」と判定された検体は,実際の色調と差異ない判定であることが確認された。このことから,判定境界域付近の為,改良アルゴリズムを適用したことにより,より的確な判定がなされていることが示唆された。改良アルゴリズムの適用により特に「RED」および「OTHER」判定の精度向上,実際の目視判定との差異軽減が認められた。

実際当検査室では,「LIGHT YELLOW」,「STRAW」,そして「YELLOW」の結果以外に関しては再検ロジックを設定しており,その際は目視にて確認を実施している。今回の検討において,再検対象件数としては従来67件から改良36件と50%近く減少しており,特に「OTHER」の判定数が減少している。この点は,業務の改善および負荷軽減につながっていると考えられる。

VI  結語

尿色調判定改良により,判定の精度向上が認められ,臨床へ有用な結果情報の提供が可能になったと考える。尿検体を実際に目視確認できない臨床側へ,これからも的確な尿色調結果報告を行っていきたい。

COI開示

本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。

文献
 
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