Japanese Journal of Medical Technology
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Original Articles
Comparison of serotype and susceptibility of Streptococcus pneumoniae isolated from respiratory materials before and after vaccine introduction
Fumika MARIKONaoya OGURARika CHISHIMAToshihiro TAKAHASHISatomi TAKEIMitsuru WAKITAYoko TABEAyako NAKAMURA
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2023 Volume 72 Issue 4 Pages 499-505

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Abstract

Streptococcus pneumoniaeは免疫機能が低下した小児や高齢者に重症感染症を引き起こす。本研究は,その侵入門戸となり得る呼吸器材料に限定して,本菌の血清型と薬剤感受性をワクチン導入前後で比較した。2007年から2009年をワクチン導入前,2016年から2018年をワクチン導入後とし,それぞれ375株と150株について解析した。その結果,沈降13価結合型ワクチンに含まれる19型,14型,9型は顕著な減少が認められたが,23価ポリサッカライドワクチンに含まれる型は変化がなかった。一方,非ワクチン型である35型,34型,Non type(NT)は増加した。薬剤感受性検査では,ワクチン導入後にPCG,CTX,CFPMの感性率に有意な上昇が認められた。また,PRSP(pbp1apbp2xpbp2b変異)の頻度が32.4%と高かった。これは,PRSPが高率に出現する23型や35型,NTが減少していないことに起因した。呼吸器材料ではNTや非ワクチン型が多く,PRSPの出現率が高いことが明らかになった。NTは非典型集落を形成することが多く,検査室での釣菌や菌種同定において注意が必要である。さらに,PRSPは依然として高率に出現していることから,検査室での適正な薬剤感受性検査の実施とこれを踏まえた抗菌薬の選択が重要である。

Translated Abstract

Streptococcus pneumoniae causes severe infections in immunocompromised children and elderly patients. To examine the effects of pneumococcal vaccines, serotypes and drug susceptibility of S. pneumoniae in respiratory specimens were compared before and after the introduction of vaccines. Analyses included 375 strains collected between 2007 and 2009 (prevaccination) and 150 strains collected between 2016 and 2018 (postvaccination). Because serotypes 19, 14, and 9 being covered by the pneumococcal conjugate vaccine (PCV13), they were seldom found postvaccination. However, regarding the pneumococcal polysaccharide vaccine (PPV23), the serotypes included were similarly observed during pre- and postvaccinations. In contrast, serotypes 35 and 34, and non-type (NT), which were not covered by the vaccines, increased after vaccination. Furthermore, the drug susceptibility rates of PCG, CTX, and CFPM were significantly increased after vaccination. The frequencies of mutations in pbp1a, pbp2x, and pbp2b were comparable between pre- and postvaccinations (approximately 32.4%). This was due to the appearance of penicillin-resistant S. pneumoniae (PRSP) whose serotypes 23, 35, and NT did not decrease. The respiratory strains of S. pneumoniae postvaccination were found to include a higher percentage of NT strains and a higher frequency of PRSPs than those before the vaccine introduction. Since NTs often form atypical colonies, careful examination is necessary. Furthermore, because PRSPs continue to occur at a high rate, it is important to conduct appropriate drug susceptibility testing.

I  はじめに

Streptococcus pneumoniaeは,無症候に鼻咽頭や上気道に定着しているが,宿主の状態によって肺炎や中耳炎などを引き起こし,敗血症や髄膜炎など重症感染症の起炎菌として高率に検出される。特に小児や高齢者では,免疫機能の未熟・低下が感染に対する抵抗力の減弱を招き,侵襲性重症感染症に発展するため,死亡率が高く,救命し得ても聴覚や視覚などに後遺症を残すことがある1),2)。このような背景から,S. pneumoniaeに対するワクチン開発が世界的に進んだ。本邦では2010年に沈降7価結合型ワクチンの小児への接種が開始され,2013年には沈降13価結合型ワクチン(13-valent pneumococcal conjugate vaccine; PCV13)が導入された。さらに,2014年には高齢者を対象に23価ポリサッカライドワクチン(23-valent pneumococcal polysaccharide vaccine; PPV23)接種が開始されている。

ワクチンの普及は本邦の感染症の様相を大きく変貌させた。2022年現在,小児のほぼ100%がPCV13を接種しており,化膿性髄膜炎発生数はワクチン導入前の30%以下に減少し1),3),侵襲性肺炎球菌感染症の発生や死亡数の著明な減少,病原性に関与する血清型の変化,薬剤耐性株の減少が報告されている1),4),5)。加えて,23価ワクチンは高齢者の約25%が接種し,重症肺炎の抑制に寄与している6),7)

本邦における重症感染症(血液・髄液)由来S. pneumoniaeの疫学は,Ubukataらが長年にわたって調査しているが1),8)~10),本検討ではS. pneumoniaeの定着部位である呼吸器材料に限定して血清型と薬剤感受性を調査し,ワクチン導入前後の変化を後方視的に検証した。

II  対象及び方法

1. 対象

調査対象期間は2007年1月から2009年12月(ワクチン導入前)と2016年1月から2018年12月(ワクチン導入後)の2期間とした。これらの期間中に順天堂大学医学部附属順天堂医院で呼吸器系材料から検出されたS. pneumoniaeについて調査した。対象菌株は,ワクチン導入前が375株(喀痰241株,鼻漏100株,咽頭粘液21株,気管支洗浄液ほか13株),ワクチン導入後が150株(喀痰117株,鼻漏16株,咽頭粘液10株,気管支洗浄液ほか7株)である。

2. 方法

1) S. pneumoniaeの菌種同定

当院にて−80℃で保存されている菌株を5%ヒツジ血液加トリプチケースソイ寒天培地(日本ベクトン・ディッキンソン)に分離した。菌種の確定は,オプトヒン感受性試験陽性(オプトヒンディスク;栄研化学),かつ自己融解酵素をコードするlytA遺伝子を有するものとした11)

2) 血清型

対象菌株の血清型は,莢膜膨化試験とマルチプレックスPCR法による血清型遺伝子検出法の2法を用いた。まず前者を行い,型別できなかった株について後者で確認した。

① 莢膜膨化試験12)

対象菌株について大塚生食注(大塚製薬)0.5 mLを用いてMcFarland No. 0.5の濁度菌液を作製した。これにレフレルメチレンブルー染色液(メルク)を25 μL添加して菌体を染色し,スライドグラスに1 μLずつ3箇所に塗布して乾燥させた。抗莢膜血清(Pneumococcal Diagnostic Antisera; Statens Serum Institute)をそれぞれに1 μL載せてスライドグラス上で反応させたのち,カバーグラスをかけて1,000倍で観察した。型特異抗体による莢膜膨化が認められた場合に血清型を決定した。

② 血清型遺伝子の検出

Jourdainら13)のマルチプレックスPCR法に準拠し,S. pneumoniaeの血清型遺伝子を決定した。PCR用酵素にはTAKARA EX Taq Hot StartTaq(タカラバイオ)を使用した。

3) 薬剤感受性試験

薬剤感受性はMicroScanWalkAwayMF7Jパネル(Beckman Coulter)を用いて最小発育阻止濃度(MIC)を判定した。使用薬剤および感性のブレイクポイントはClinical and Laboratory Standards Institute M100-S2714)に準拠し,penicillin G(PCG):≤ 0.06 μg/mL,cefotaxime(CTX):≤ 0.5 μg/mL,cefepime(CFPM):≤ 0.5 μg/mL,meropenem;(MEPM):≤ 0.25 μg/mL,erythromycin(EM):≤ 0.25 μg/mL,clindamycin(CLDM):≤ 0.25 μg/mL,levofloxacin(LVFX):≤ 2 μg/mL,vancomycin(VCM):≤ 0.5 μg/mLとした。

4) ペニシリン結合タンパク遺伝子の検査

β-ラクタム系薬の耐性に関与するペニシリン結合タンパク(penicillin binding protein; PBP)遺伝子変異の検出は,Ubukataら11)の方法に準拠して行った。ワクチン導入後の145株を対象としてTable 1に示すプライマーを用いたPCR法によりpbp1apbp2xpbp2bを検出した。

Table 1 Drug resistance-related genes for Streptococcus pneumoniae and PCR primer to use

gene Nucleotide sequence of primer PCR
product size
lytA 5' TGA AGC GGA TTA TCA CTG GC 3'
5' GCT AAA CTC CCT GTA TCA AGC G 3'
273 bp
pbp1a 5' AAA CAA GGT CGG ACT CAA CC 3'
5' AGG TGC TAC AAA TTG AGA GG 3'
430 bp
pbp2x 5' CCA GGT TCC ACT ATG AAA GTG 3'
5' CAT CCG TCA AAC CGA AAC GG 3'
292 bp
pbp2b 5' CAA TCT AGA GTC TGC TAT GGA 3'
5' GGT CAA TTC CTG TCG CAG TA 3'
77 bp

5) データ解析

各血清型の検出状況,年齢別の血清型,薬剤感受性について,ワクチン導入前とワクチン導入後の結果を比較した。ワクチンはPCV13とPPV23を対象とし,それぞれに含まれる血清型について解析した。有意差はスチューデントのt検定で評価し,p < 0.05を有意差ありとした。

III  結果

1. 血清型の比較

血清型別の検出状況をFigure 1に示した。ワクチン導入前は19型が16.0%と最も高率で,次いで6型が15.5%,3型と23型が11.2%,15型が7.2%の順であった。血清型が特定できなかったNTは14.4%の頻度であった。一方,ワクチン導入後はNTが19.3%と最も高率であり,次いで6型が14.7%,19型,23型,15型が9.3%,3型が8.7%であった。ワクチン導入後に2倍以上の上昇を認めた型は11型,22型,33型,12型,35型,34型,24型,31型であった。

Figure 1 Comparison of serotypes for Streptococcus pneumoniae between 2007–2009 and 2016–2018

NT; non type

PCV13が対象とする血清型9種(PCV13型)の検出頻度は,ワクチン導入前は64.0%であったが,ワクチン導入後には43.3%に低下した。これに対し,PCV13型を除くPPV23が対象とする血清型7種(PPV23型)およびワクチンが対象としない血清型(非ワクチン型)は,有意差はないもののそれぞれ10.4%,10.3%上昇した。

2. ワクチン関連血清型の年齢別比較

調査菌株の血清型をPCV13型,PPV23型,非ワクチン型に分け,これらの検出頻度を患者の年齢別に比較した(Figure 2)。0~19歳の群では,ワクチン導入前はPCV13型が70.3%を占めていたが,ワクチン導入後は28.6%に低下し,非ワクチン型が57.1%と優勢となった。PPV23型はワクチン導入前13.5%,導入後14.3%と明らかな変化は認められなかった。20~49歳の群においても0~19歳群と同様の傾向であった。50~69歳群と70歳以上群では,ワクチン導入後にPCV13型の検出頻度の低下が認められ,PPV23型の占める割合がワクチン導入前のおよそ2倍に上昇した。

Figure 2 Streptococcus pneumoniae serotypes comparison by age

3. 薬剤感受性の比較

主要抗菌薬8剤に対する感受性検査の結果をワクチン導入前後で比較し,Table 2に示した。PCG,CTX,CFPMの感性率は,ワクチン導入前ではそれぞれ43.5%,76.0%,56.0%であったが,ワクチン導入後は60.7%,93.8%,75.2%と有意に上昇した(p < 0.001)。MEPM,EM,CLDM,LVFXに対する感受性については,有意差は認められなかったもののワクチン導入後に感性率の上昇がみられた。

Table 2 Comparison of drug susceptibility for Streptococcus pneumoniae between 2007–2009 and 2016–2018

Antibiotics 2007–2009 (n = 375) 2016–2018 (n = 145) p-value*
MIC range (μg/mL) MIC50 (μg/mL) MIC90 (μg/mL) Susceptibility (%) MIC range (μg/mL) MIC50 (μg/mL) MIC90 (μg/mL) Susceptibility (%)
Penicillin G ≤ 0.03 – > 4 0.25 2 43.5 ≤ 0.03 – 2 0.06 2 60.7 < 0.001
Cefotaxime ≤ 0.12 – > 2 0.25 1 76.0 ≤ 0.12 – > 2 0.25 0.5 93.8 < 0.001
Cefepime ≤ 0.5 – > 2 ≤ 0.5 2 56.0 ≤ 0.5 – 2 ≤ 0.5 1 75.2 < 0.001
Meropenem ≤ 0.12 – 2 ≤ 0.12 0.5 79.7 ≤ 0.12 – 1 ≤ 0.12 0.5 84.8 0.170
Erythromycin ≤ 0.12 – > 2 > 2 > 2 15.5 ≤ 0.12 – > 2 > 2 > 2 15.9 0.382
Clindamycin ≤ 0.12 – > 1 1 > 1 47.2 ≤ 0.12 – > 1 0.25 > 1 54.5 0.103
Levofloxacin ≤ 0.25 – > 8 1 1 97.6 ≤ 0.25 – > 8 1 1 98.6 0.995
Vancomycin ≤ 0.12– 1 0.5 0.5 100.0 ≤ 0.12– 1 0.5 0.5 100.0 0.068

*Calculated from the MIC values of 2007–2009 and 2016–2018

4. ワクチン導入後のPBP変異の出現状況

ワクチン導入後の分離株を対象としたPBP変異の出現状況をFigure 3に示した。pbp2x単独変異が最も多く37.2%,次いでpbp1apbp2xpbp2bの3箇所変異が32.4%であった。変異が認められなかった株は14.5%であった。

Figure 3 Penicillin binding protein mutation site and ratio

また,PBP変異を血清型別に調査しFigure 4に示した。3箇所に変異を認める株は,6型,19型,23型,35型,NTで高率に出現していた。これに対し,変異なしまたはpbp2x単独変異株は3型,11型,22型,34型で優位に認められた。3箇所変異の出現率をワクチン対象血清型別にみると,PCV13型は59.6%,PPV23型は2.1%,非ワクチン型は38.3%であった。

Figure 4 Occurrence of penicillin binding protein mutation by serotype

IV  考察

S. pneumoniaeによる敗血症や髄膜炎において,その侵入門戸は一般に気道や鼻咽頭などの呼吸器粘膜である。本研究では重症感染症の起点である呼吸器材料から検出されたS. pneumoniae株について,肺炎症例に限定することなく総合的に肺炎球菌ワクチン導入前後の血清型と薬剤感受性を比較検討した。その結果,血清型については,PCV13に含まれる19型や14型,9型がワクチン導入後に大きく減少し,3型にはほとんど変化が認められないことが明らかになった。これらの結果は,重症感染症を来した血液や髄液由来S. pneumoniaeの疫学報告と一致していた1),8)~10)。しかしながら,今回の検討では,PCV13型のうち6型と23型の減少は有意でなく,過去の報告とは相違していた。PCV13が対象とする血清型は6Aと6B,23Fであり15),16),これに含まれない6Cや23Aのワクチン導入後の顕著な増加が報告されている8)。今回,6型と23型がほとんど減少していなかったことは,6Cと23Aの増加に起因すると考えられた。

一方,本邦ではワクチン導入後にPPV23型および非ワクチン型の減少が認められないことが報告されている8),16)。特に,小児・成人ともに12型,15型,22型,35型の増加が報告されており8),10),本研究でも同様の結果であった。このうち顕著な増加を示す非ワクチン型の35型は,80%が組織吸着性の線毛を有すること,70%がPRSPであることから10),今後の動向に注意が必要と考えられる。

小児を対象としたPCV13は,多糖体とトキソイドタンパクの結合体によって免疫が発現され,高い免疫原性を有している。一方PPV23は莢膜多糖体を抗原とし,抗体産生はT-cellに依存する15)。そのため前者に比べて免疫原性が低く,5年後の再接種が推奨されている。また小児のワクチン接種率はほぼ100%だが,高齢者は30%以下である6),7)。今回,PCV13の血清型が低年齢層で有意に低下していたものの,全年齢でPPV23の血清型が減少していなかったことは,このような背景も一因と考えられた。

呼吸器材料に限定した本検討において,ワクチン導入前後ともNTが14%,19%と高率であった。明らかな成人肺炎例由来株を用いたShojiら17)の検討においてNTは2~6%,これとは逆に小児の咽頭由来株を用いた魚住ら18)の検討では50%以上がNTであり,この点は大きく相違していた。NTのほとんどは非莢膜株であり,気道への無症候性保菌が20%以下に認められている19)。本検討は呼吸器系全般の総合的なワクチン導入前後比較が目的のため,肺炎症例に限定しなかった。NT高率の要因は,保菌例が一定数含まれるためと考えられた。また,S. pneumoniaeの非莢膜は集落性状にも影響し,中央陥没していない,Rough型など非典型集落を形成することが多い20)。日常業務では,一般にα溶血した自己融解集落を釣菌するため,非典型集落はS. pneumoniaeの鑑別検査に至らず見逃されることが懸念される。ワクチンの普及がNTの増加,すなわち非莢膜株を助長していると考えられ,S. pneumoniaeの集落観察はこのことを念頭において慎重に行うべきであろう。

ワクチン普及の最も大きな成果は重症感染症の減少であるが,同時にPCG感性率の上昇も明らかな成果である。これは,penicillin-resistant S. pneumoniae(PRSP)の優位菌型である6型,19型,23型(いずれもPCV13型に含まれる)の減少が大きく影響している8),17)。本研究においても,ワクチン導入後にPCG,CTX,CFPMの感性率が有意に上昇していた。

PBP変異の出現状況については,pbp1apbp2xpbp2bの3点変異株,すなわちPRSPはワクチン導入後に減少することが知られており,2015年以降のPRSPの頻度は,大西ら21)は15%,Ubukataら8)は小児で11%,成人で13%と報告している。一方,本研究ではワクチン導入後にPRSPを32.4%の頻度で認めており,これらの報告とは一致しなかった。その要因として,PRSPが多くを占める6型と23型の検出が減っていないこと,非ワクチン型かつPRSP出現率が高い35型とNTの検出が増えていること,が挙げられる。PRSPでは選択抗菌薬が限定され,時に治療の遷延が報告されている22)。呼吸器材料由来株においてはワクチン導入後もPRSPが依然として多いことに留意し,薬剤感受性結果を踏まえた抗菌薬選択が必要である。

肺炎球菌ワクチンの普及は,小児科領域に多くの成果をもたらし,高齢者の入院期間の短縮や軽症化にも寄与している7)。集団免疫としての効果は現れていると推測される。一方で成人,特に高齢者に対する課題も指摘されている。高病原性かつ薬剤耐性度が高い35型の急速な増加10),17),3型ムコイド株の耐性化と高齢者での増加23)といった点は,本研究においても明らかであった。本邦に先んじてワクチン接種が開始された米国では,近年,非ワクチン型の増加と耐性化が問題視されている22)。このような背景から,従来のコンジュゲートワクチンに対し,血清型に依存しないユニバーサルワクチンの開発が進んでいる22),24)。本邦でも新規ワクチンの早期実用化が望まれる。

V  結語

肺炎球菌ワクチン導入前後で呼吸器材料に認められた血清型と薬剤感受性の変化について検討した結果,①低年齢層でPCV13型の頻度が低下,②PPV23型および非ワクチン型の頻度が上昇,③β-ラクタム系薬の感性率が上昇,④PRSPの頻度は依然として高い,という4点が明らかとなった。今後,耐性度が高い血清型の台頭が懸念される一方で,NTの増加は釣菌・同定のあり方に大きく影響するため,検査室での適正な検査と薬剤感受性結果を踏まえた抗菌薬選択が重要と考えられる。

本文の要旨は,第31回日本臨床微生物学会総会・学術集会(2020年,金沢)で発表した。

順天堂大学医学部附属順天堂医院病院倫理委員会にて承認済み(受付番号19-029)。

COI開示

本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。

文献
 
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