Japanese Journal of Medical Technology
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Effectiveness of online off-the-job training in attracting participants and video-on-demand streaming in improving work–life balance: A study focusing on medical technologists
Takuya IKEJIMANaoko YAMAGUCHIShigenobu TATSUMIKazuto OHMAEYoshinari CHAGINoriyuki ABEFumitaka KOBAYASHISang-Tae LEE
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2023 Volume 72 Issue 4 Pages 628-635

Details
Abstract

奈良県臨床検査技師会では,COVID-19パンデミックを機に2020年度よりオンライン型Off-JTを導入している。本研究では従来の対面型とは異なる特徴を持つオンライン型Off-JTを評価した。まずオンライン型の開催数と受講者数から対面型と集客力を比較した。その結果,オンライン型は対面型よりも開催数が40.8%(116対196)下回っていたものの平均受講者数は105.4%(39.7対19.3)上回った。次に受講者の利便性向上を目的としてライブとvideo on demand(VOD)を併用した配信をYouTubeで限定的に行いオンライン調査によりその有用性をwork-life balance(WLB)で評価した。その結果WLB改善効果は回答者の81.9%(458/559)で示された。視聴方法別のWLB改善効果は,VOD:84.1%(376/447),ライブ:73.2%(82/112)となった。オンライン型Off-JTにおける集客力の向上は,インターネット接続端末での視聴による移動の負担の消失が主な要因と考える。ライブとVODの併用によるWLB改善効果は,視聴時間の自己調整が可能となったことによる自由時間の確保がその実感に繋がったと考える。オンライン型Off-JTと VOD配信による地理的・時間的制約からの解放は,受講者の利便性を向上させ前向きな効果を生むことが示された。

Translated Abstract

The Nara Association of Medical Technologists has introduced online Off-Job Training (Off-JT) starting from FY2020 in response to the COVID-19 pandemic. In this study, we aim to evaluate the online Off-JT, which differs from the traditional face-to-face format. First, we compared the online Off-JT and face-to-face Off-JT formats in terms of their ability to attract participants. Despite having fewer training sessions (40.8% less), the online format had an average attendance of 105.4% higher (39.7 vs. 19.3) than that of the face-to-face format. To enhance participant convenience, we offered a limited number of live and video-on-demand (VOD) sessions on YouTube and evaluated their usefulness through an online survey focusing on work–life balance (WLB). The survey results showed that 81.9% (458/559) of the respondents reported an improvement in WLB. The effect on WLB improvement varied depending on the viewing method, with VOD sessions showing an 84.1% (376/447) improvement and live sessions showing a 73.2% (82/112) improvement. We believe that the increased capability of the online Off-JT to attract participants is mainly due to the elimination of travel burdens through internet-connected devices. The combination of live and VOD sessions on YouTube allowed participants to adjust their viewing time, leading to a better allocation of free time and improved WLB. The online Off-JT and VOD delivery have been shown to enhance convenience for participants by eliminating geographical and time constraints, resulting in positive effects.

I  緒言

2020年より始まった新型コロナウイルス感染症2019(coronavirus disease 2019; COVID-19)の世界的パンデミックを機に,日本社会は半ば強制的にデジタルトランスフォーメーション(digital transformation; DX)が推進され,テレワークやオンライン教育の普及に繋がった。医療業界を含むさまざまな産業では,on-the-job training(OJT)やoff-the-job training(Off-JT)が,これまでの対面型からオンライン型に置き換わった。臨床検査技師の代表的なOff-JTである日本臨床衛生検査技師会(Japanese Association of Medical Technologists; JAMT)の生涯教育研修制度(生涯教育)においても,各都道府県臨床検査技師会で様々な運用方法が検討・導入されたと考えられる1)。奈良県臨床検査技師会(Nara Association of Medical Technologist; NrAMT)では2020年9月から2023年3月まで有料のプラットフォームであるネクプロウェビナー(株式会社ネクプロ)とZoomミーティング(Zoom Video Communications, Inc.)を用いて主な配信が行われてきた。パンデミックを契機に導入されたオンライン型Off-JTは,対面型とは異なる利点を持つため,主催者と受講者の両方に前向きな影響をもたらすことが期待されている。しかし,その取り組みに関する報告がほとんどなく,都道府県技師会で得られた知見の蓄積もない。このため,NrAMTにおいて導入から2年以上経過したオンライン型Off-JTの効果を,対面型との集客力の比較により評価した。また,受講者の利便性の更なる向上を目的とした新たな試みとして,ライブとビデオオンデマンド(video on demand; VOD)を併用した配信を限定的に行い,オンライン調査によりその有用性を評価した。

II  方法

1. オンライン型Off-JTの集客力

2017年1月から2023年3月までにNrAMTで行ったJAMT生涯教育に準じたOff-JTデータを都道府県技師会専用サイトから抽出し,11分野の開催数と受講者数から,一講習会当たりの平均受講者数を算出した。これらをNrAMTが対面型Off-JTを中断した2020年3月を基点として,その前後を比較した。対象としたOff-JTの形式は講演会のみとし,実技や学術集会などは含めなかった。講師や司会,実務委員は,受講者数に含めた。

2. VODによるWLB改善効果

NrAMT学術部検査研究部門の微生物検査分野と病理検査分野,輸血・移植検査分野,遺伝子・染色体検査分野において,2022年12月から2023年3月の期間に,視聴とJAMT生涯教育点数付与の期間を21~30日間に設定した3つのOff-JT(Table 1)を企画・実施した。これらは講演会形式で行われた。配信は無料のプラットフォームであるYouTube(Google LLC)を用いて行い,ライブとVODをシームレスに提供した。対象は,当該Off-JTにJAMT会員サイトから事前申し込みを行ったNrAMT会員とJAMT会員とした。JAMT生涯教育点数付与のための受講登録フォームはGoogleフォーム(Google LLC)で作成した。ここでは受講者の氏名・会員番号と共に,「いつでも観れる環境によるワークライフバランス(work-life balance; WLB)の改善」と「受講費無料の好ましさ」,「ライブ視聴の有無」についての質問を行い,複数回答を可能とした。また,受講者の事前申し込みや参加登録データから地域分布も調査した。3つのOff-JTにおける受講者の重複は,考慮しなかった。講師や司会,実務委員は,調査対象に含めなかった。

Table 1 Number of participants in three off-the-job trainings offered on YouTube by the Nara Association of Medical Technologist

JAMT code Section Title Period Number of participants
•220014021
•220015932
•Microbiology
•Genetics, Chromosomology
“How to Use Genotypic Antimicrobial Susceptibility Testing for Antibiotic Resistant Bacteria” 16/12/2022–15/1/2023 142
•220020062
•220023223
•Pathology
•Genetics, Chromosomology
“Considering Cancer Genomic Medicine - Towards
the Future of Genetic Testing”
22/2/2023–21/3/2023 198
•220025977 •Blood transfusion “Irregular Antibody Screening testing and
Identification: How is Your Facility Doing?”
23/3/2023–13/4/2023 219

III  結果

1. オンライン型Off-JTの集客力(電子付録1)

対象期間における対面型とオンライン型の開催数はそれぞれ196と116となり,オンライン型が40.8%下回っていた。一方,受講者数は3,786と4,603,一講習会当たりの平均は19.3と39.7となり,オンライン型がそれぞれ21.6%,105.4%上回った。平均受講者数は10分野でオンライン型が上回り,その内6分野が100%以上の増加率を示した。オンライン型の平均受講者数の最大値は112.4,最大増加率は311.3%に達した(Table 2)。

Table 2 Comparing the number of events and participants in face-to-face and online off-the-job training

Section Off-JT Participants Average number of participants
Face-to-face* Online** Increase Face-to-face* Online** Increase Face-to-face* Online** Increase
Microbiology 16 10 −37.5% 251 355 41.4% 15.7 35.5 126.3%
Immunology 5 3 −40.0% 87 185 112.6% 17.4 61.7 254.4%
Hematology 9 9 0.0% 332 552 66.3% 36.9 61.3 66.3%
Clinical chemistry 7 5 −28.6% 125 233 86.4% 17.9 46.6 161.0%
Pathology 6 3 −50.0% 124 187 50.8% 20.7 62.3 201.6%
Cytology 56 26 −53.6% 436 223 −48.9% 7.8 8.6 10.2%
Physiology 65 28 −56.9% 1,578 1,000 −36.6% 24.3 35.7 47.1%
Urinalysis, etc. 16 20 25.0% 314 706 124.8% 19.6 35.3 79.9%
Blood transfusion 9 3 −66.7% 271 287 5.9% 30.1 95.7 217.7%
Genetics, Chromosomology 3 7 133.3% 82 787 859.8% 27.3 112.4 311.3%
Management 4 2 −50.0% 186 88 −52.7% 46.5 44.0 −5.4%
Total 196 116 −40.8% 3,786 4,603 21.6% 19.3 39.7 105.4%

*January 2017–February 2020 (38 months)

**March 2020–March 2023 (37 months)

2. VODによるWLB改善効果(電子付録2)

オンライン調査は,46都道府県559名から回答を得た。回答者数の上位6カ所は,東京都77(13.8%),大阪府41(7.3%),奈良県37(6.6%),愛知県36(6.4%),神奈川県と埼玉県32(5.5%)の順であった(Figure 1)。WLBの改善効果は,回答者の81.9%(458/559)で示された。また,WLBは受講費無料:67.1%(375/559)よりも注目されていた。ライブ配信に参加したとの回答は,20.0%(112/559)であった(Figure 2)。視聴方法別のWLBの改善効果は,VOD:84.1%(376/447),ライブ:73.2%(82/112)となった(Figure 3)。

Figure 1 Geographic distribution of online survey participants

The participants in the online survey were distributed among 46 prefectures, and 559 respondents were obtained. The top five locations with the highest number of participants are listed below; Tokyo, 77 (13.8%); Osaka, 41 (7.3%); Nara, 37 (6.6%); Aichi, 36 (6.4%); and Saitama, Kanagawa, 32 (5.5%).

Figure 2 The importance of work-life balance, free admission, and live streaming for participants in online off-the-job training

In the online off-the-job training that used a combination of live and video-on-demand streaming, participants were more interested in improving their work-life balance than in free admission. This was consistent across the three off-the-job trainings. Additionally, we found that approximately 20.0% of the participants participated in the live streaming, while more participants chose to use the video-on-demand streaming option.

Figure 3 Comparison of the improvement rates of work-life balance between video-on-demand streaming and live streaming in online off-the-job training participants

In online off-the-job training, the rate of improvement in work-life balance was greater for video-on-demand streaming than for live streaming, but improvement was also observed for live streaming. This may be attributed to repeated viewing.

IV  考察

World Digital Competitiveness Rankingの2022年のレポート2)において日本は29位と報告され,順位は年々下降している3)。このような情勢において,パンデミックの影響とはいえ,教育機関だけでなくあらゆる分野・階層のOJTとOff-JTでDXが進んだことは,臨床検査における遺伝子検査機器の普及拡大4)と共に,日本社会の大変革といえる。医療従事者におけるオンライン型Off-JTは,臨床研修指導医講習会のオンライン開催5)や救急医療の現場とオンラインで繋ぎVRで体験する試み6)が報告されている。JAMT生涯教育においても,パンデミック当初に,オンライン化による受講者の利便性向上を示す報告がなされている1)。ただし,国際成人技能調査(Programme for the International Assessment of Adult Competencies; PIAAC)において,日本では学習活動に参加する成人がOECD(Organisation for Economic Co-operation and Development)平均よりも少ない7)とされている現状を鑑みると,今後もオンライン型Off-JTの取り組みを後退させることなくさらなる進化を目指すべきであると考えたことが本研究の動機である。

Off-JTとは,外部の専門家が講師となり通常業務で経験できない知識や技術,最新情報などを共有する目的で,仕事または職場から離れた場所で行われるものであり,職場での仕事を行いながら上司や先輩等の指導のもとで仕事を覚えていくOJTとは異なる8)。受講者がOff-JTへの参加を決断する要素として,テーマや講師などの実施内容や参加費用と共に「開催日時と場所」が重要と考える。これは,対面型Off-JTが,受講者自身の自由時間を費やして移動・受講することが前提となっている実状から言える。PIAACでは,日本の成人がOff-JTなどの職業関連トレーニングに参加できなかった主な理由として,「仕事の都合で時間がない(OECD平均22%に対し,日本は29%)」,「育児や家庭の都合で時間がない(OECD平均20%に対し,日本は27%)」,「研修が都合の悪い時間や場所で行われた(OECD平均10%に対して,日本は19%)」などの地理的・時間的な制約が挙げられている7)。これらは対面型Off-JTに起因する事象であり,「ワークライフの不均衡」(work-life imbalance; WLI)9)を齎す要因となっていると考えた。一方で,オンライン型Off-JTはこれらを是正させたと考えるが,それを検証,評価した研究や運営方法の提示などはこれまでなかった。

都道府県技師会におけるOff-JTのオンライン化の当初は,運営の知識や設備,配信に携わる人材育成の不足から主催側のリソースの充実が優先されていたと考えられる。これは,パンデミック初期に行われた都道府県技師会によるJAMT生涯教育のオンライン化の報告1)において,デメリットの約半数が「音声の問題」,「受講者の反応がわからない」,「誰が参加しているのかわからない」,「金銭の受け渡し」「時間の縛りがルーズ」など主催側に関連する事項であったことから推察される。しかし3年以上が経過した現在は,都道府県技師会の規模による差を考慮しても,リソースなどがある程度整ったと考えられ,今後は主催側と同様に「受講者の利便性」への配慮も求められる。この「利便性」を,集客力やVODの有用性,WLBへの影響から検証し,オンライン型Off-JTを評価した。

まず,オンライン型Off-JTは,開催数が対面型の半数程度であったにも関わらず,受講者数は倍増していた。シンガポールの最終学年の医学生を対象とした研究では,毎年開催しているワークショップを2020年からオンラインに移行した結果,受講者数が前年の236名から1,911名に増加したと報告されており10),集客力の向上はオンライン化そのものの効果と言える。これは,対面型とオンライン型の違いが,前者は「体験」,後者は「コンテンツ」を提供していることが要因と考える。講演会形式のOff-JTは主に「語り」で構成されており,「体験」よりも「コンテンツ」との相性が良い可能性があり,それが受講者をオンライン型へと円滑に移行させたと考える。また,インターネットに接続したパソコンや,スマートフォンなどの携帯端末による視聴が可能となったことにより,受講者を地理的制約から解放し,移動負担を消失させたことが,受講機会の損失を大きく減少させたと考える。さらには,2021年4月よりJAMT会員の受講費を,パンデミック以前の3,000円から,NrAMT会員と同様の「無料」に変更し,一部のOff-JTをJAMT会員サイトで事前申し込みを行えるようにしたことも挙げられる11)。本研究のVODに関する調査では,回答者(受講者)のうち93.4%(522/559)がJAMT会員であった。また67.1%が受講費無料を歓迎していたことから,地理的制約の消滅と相乗効果が生じたと考えられる。JAMT生涯教育の運営面では,集客力は「生涯教育研修会助成金」を最大限活用する上で重要となる。これは,NrAMTのような中小規模の都道府県技師会や,受講者数が少ない特定の検査分野にとって顕著であると考えられ,その向上は主催者側の大きな利点と言える。

次に,YouTubeで実施した「JAMT生涯教育点数が付与されるVOD配信」は,受講者のWLBを改善させていた。NrAMTのオンライン型Off-JTは,ライブでのみ提供しており,採用したプラットフォームの特性上,タイムシフトや開催日時以降の視聴はできない。また,視聴時間が3分の2以上の場合のみをJAMT生涯教育点数付与の条件としているため,例えば60分のOff-JTにおいて開始から21分後に視聴を始めた場合は,最後まで視聴しても厳密には点数が付与されないことになる。当日以外での視聴は,不定期にアップロードされるVODがあるが,開催期間外であるため生涯教育点数付与の対象とならない。このような受講環境に対して,YouTubeによるライブ配信は,開始時間から遅れて参加してもタイムシフトにより初めからの視聴が可能であり,ライブが終了してもそのままVODに切り替わるため中断することなく最後まで視聴できる。また,JAMT生涯教育点数付与の条件を,視聴時間ではなく講演内容に関連した設問への正答とし,付与期限をVOD配信期間に合わせることで,受講者は開催期間内で視聴時間を自由に調整することができる。日本の薬学部の学生を対象とした研究では,知識修得を目的とする科目はVODを望む傾向がかなり強いとしており,その理由として学習時間の自己調整も含めた予習・復習の利便性への高い支持があると報告している12)。本調査では,WLB改善効果がVODだけでなくライブ視聴者の半数以上でも示されており,VODを活用した視聴時間の分割や再視聴などの自己調整による自由時間の確保が,ライブ視聴者でも行われていたことが推測された。つまり受講者は,ライブとVODを併用した時間的制約がない自由度の高い受講環境により,WLIが是正されWLBの改善効果を実感するに至ったと考える。このため,講演会形式のOff-JTでは,VODの有用性が高いと言える。

本研究の限界は,第一に,学習効果からオンライン型Off-JTを評価しなかったことにある。学習効果の測定には,成績の向上を評価するためのテストや長期間の追跡調査が必要となる。さらに,対面型Off-JTの学習効果の研究自体がこれまで行われておらず,比較対象の準備も必要であったことから,調査を断念した。第二の限界として,臨床検査技師とWLBの関係が不明であるため,実状を踏まえた改善効果の評価ができなかったことが挙げられる。また,他職種における類似の研究もないため比較もできなかった。これらは今後,臨床検査技師を対象とした調査・研究が進めば精査されると考える。

オンライン型Off-JT とVOD配信による,地理的・時間的制約からの解放は,受講者の利便性を向上させ,主催者も含めて前向きな効果を生むことが示された。WHOのパンデミック宣言13)から約2ヵ月後の2022年5月28日に,JAMTから生涯教育のオンライン運用についての通知14)が発行されたが,配信方法や集金方法の指定など,運営に関して厳密な基準は示されていなかった。これは,文書内に「暫定処置」との前置きがあることから,パンデミックによる一時的な対応との前提があったためと考えられるが,結果として都道府県技師会の環境構築に自由度を与え,DXを推進させるものであったと言える。この自由度を,主催者が受講者の実状やニーズに寄り添いながらOff-JTの価値に反映させることが重要と考える。Off-JTの価値とは受講者の学びの中で生まれるものであり,それを提供する過程で得られる経験や教訓などは主催者の価値となる。同様に,臨床検査業務においても検査結果の価値は診断や治療に活かされることにあり,その過程で得られる経験や学びは臨床検査技師の価値と言える。つまり,研究や検証から得られた臨床的意義に基づいた臨床検査業務と同様に,都道府県技師会においても,主催者側の前例踏襲や直感的な価値基準だけでなく,受講者側のアウトカムに基づいたOff-JT運営が望まれると考える。これには,臨床検査業務で用いられるPDCA(Plan-Do-Check-Act)CycleやOODA(Observe-Orient-Decide-Act)Loopなどのフレームワークを導入し,客観的なレビューに基づいた段階的な改善を行うことが必要である。また,得られた知見を都道府県技師会全体で共有し蓄積を行うことによるノウハウの並列化も,JAMT生涯教育のDXをさらに推進させる上では望ましい。本研究は,会員数が700名前後の規模であるNrAMTが主催するOff-JTのみを対象とした限定的なものであったが,JAMT生涯教育を含む臨床検査技師関連Off-JTの今後の在り方を議論するための材料の一つになり得るという意味において意義があったと言える。

奈良県臨床検査技師会では,今後も社会的な課題を的確に捉えてそれに応じた事業を行い,臨床検査の発展に貢献したい。

V  結語

本研究では,NrAMTで導入されたオンライン型Off-JTの効果を検証した。その結果,従来の対面型と比較して集客力が105.4%向上していた。また,ライブとVODを組み合わせたOff-JTの配信は,視聴方法に限らず,受講者の81.9%でWLBを改善させていた。オンライン型Off-JTの導入は,主催者と受講者に前向きな効果を示した。

COI開示

本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。

謝辞

オンライン調査にご協力いただいた受講者の皆様に深謝いたします。

文献
 
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