Japanese Journal of Medical Technology
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Original Articles
Comparison of COVID-19 infection status using PCR and NGS in three areas (Matsusaka City, Tokyo and Osaka)
Miho NISHIOKentaro ITOYuki FUJIWARASaki INAGAKIKanako NAKASHIMAHaruka NISHIMURAKengo USHIROOsamu HATAJI
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2024 Volume 73 Issue 1 Pages 61-68

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Abstract

【目的】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は,2019年末以降2023年5月8日まで2類感染症として世界に脅威を与え続けた。当院ではリアルタイムPCRとNGS装置を導入し,第二種感染症指定医療機関としてSARS-CoV-2の検査を積極的に行っている。今回約2年間のSARS-CoV-2検査結果を集計し,松阪市の感染状況をまとめたので報告する。【方法】2021年1月から2023年4月までに当院においてリアルタイムPCR検査が陽性となった9,007検体の結果について,陽性者数や各流行波のピークまでの立ち上がり,主な変異株の発生時期を東京都や大阪府と比較した。またそのうちの64検体についてNGSを用いた全ゲノム解析も行った。【結果】それぞれの陽性数のグラフを比較すると,当院のデータは松阪市の陽性数を反映していると考えられた。また三重県とは同様のグラフ曲線を示していたが,東京都や大阪府と比較すると各波の感染ピークまでは時間がかかっていることがわかった。変異株の発生も東京都や大阪府の方が早期に発見されていた。また全ゲノム解析においては,松阪市独自で変異したと考えられる変異株は存在しなかった。【結論】都市部の感染状況を把握することで感染対策を行う時間が確保できるものと考えられた。リアルタイムPCRとNGSを兼ね備えている当院検査室は,今後も松阪市の感染対策への貢献が期待される。

Translated Abstract

COVID-19 had continued to threaten the world as a category 2 infectious disease from the end of 2019 to May 8, 2023. Our hospital has introduced real-time PCR and NGS, actively conducting tests for SARS-CoV-2. In this report, we have compiled the results of SARS-CoV-2 testing over the past two years and summarized the infection situation in Matsusaka City. The results of 9,007 specimens that tested positive by real-time PCR at our hospital from January 2021 to April 2023 were analyzed. We compared the number of positive cases, the onset until the peak of each epidemic wave, and the emergence period of the main variants with Tokyo and Osaka prefectures. Additionally, we conducted a full genome analysis using NGS on 64 of those samples. Comparing the graphs of the respective positive counts, it was thought that the data from our hospital reflected the number of positive cases in Matsusaka City. While it showed a similar curve to Mie Prefecture, when compared to Tokyo and Osaka, it took longer to reach the peak of each infection wave. The occurrence of mutant strains was also detected earlier in Tokyo and Osaka. Furthermore, there were no variants that could have mutated uniquely in Matsusaka City. By understanding the infection situation in urban areas, it is believed that more time can be secured for implementing infection control measures. Our testing laboratory, equipped with both real-time PCR and NGS, is expected to contribute to Matsusaka City, infection control efforts in the future.

I  序文

新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)は,2019年12月に中国武漢で発生後,世界中へ感染拡大を認め,2020年3月には世界保健機構(WHO)よりパンデミックに位置付けられた1)。日本では2020年1月に最初の感染者が報告され,以降約3年間収束の目途もつかず脅威を与え続けたが,2023年5月8日より感染症法における位置付けが2類から5類へ引き下げられた2)。松阪市では,2020年4月に最初の感染者が報告され,2023年5月8日時点で約4万人(人口約15万人)の感染が報告されている3)

当院では2020年9月末にアプライドバイオシステムズ QuantStudioTM 5DxリアルタイムPCR装置を導入,同年11月末に新型コロナウイルスを扱えるPCR検査室を整備し,同年12月よりSARS-CoV-2検査を開始した。また,院内検査のみならず,松阪地区医師会や松阪市と連携し,2020年1月から2023年4月までに21,184件の検査を行った。2021年10月には次世代シーケンサー(以下,NGS)装置を導入し,SARS-CoV-2の全ゲノム解析も可能となった。

今回約2年間のSARS-CoV-2検査結果を集計し,東京や大阪の都市部との感染状況を比較し把握することで,第二種感染症指定医療機関でもある市中病院として今後同様の感染症が流行した際に松阪市の感染対策に役立つと考え,まとめたので報告する。

II  対象および方法

1. 対象

2021年1月から2023年4月までに当院でリアルタイムPCR検査を行い陽性と判定された9,007検体を対象とした。

本研究は,松阪市民病院臨床研究倫理審査委員会の承認(IRB承認J-150-211008-3-3)を得て実施した。

2. 検査方法

1) SARS-CoV-2核酸増幅検査

唾液検体は約500 μLの1 × PBSに検体約500 μLを添加し,1分間のボルテックス処理を行い,30分間室温にて静置させた後の上清を抽出操作に使用した。遠心処理は不要であるが,沈渣成分が多い場合は3,500 rpm,5分遠心後の上清を使用した。鼻咽頭ぬぐい液検体は約2 mLの滅菌生理食塩水に綿球部分を懸濁させたものを使用した。

抽出試薬にはMagMAXTM Viral/Pathogen Nucleic Acid Isolation Kit(サーモフィッシャーサイエンティフィック)を使用し,自動抽出・精製システムであるKingFisher Duo Prime(サーモフィッシャーサイエンティフィック)を使用してRNAの抽出・精製を行った。PCR試薬は2022年の6月まではTaqPath新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)リアルタイムPCR検出キット(サーモフィッシャーサイエンティフィック)を使用し,7月以降はSARS-CoV-2 Detection Kit​-Multi-(TOYOBO)を使用した。PCR装置はアプライドバイオシステムズQuantStudioTM 5 Dx(サーモフィッシャーサイエンティフィック)を使用した。

2) 変異株スクリーニング検査

2021年1月~2022年6月までの間にSARS-CoV-2核酸増幅検査にて陽性と判明した検体について変異株スクリーニング検査を行った。SARS-CoV-2核酸増幅検査と同様の方法で再度抽出を行い,2022年1月頃までは,アルファ株を中心に認められたN501Y変異4)とデルタ株に認められたL452R変異5)について,それぞれのプライマープローブを用いて変異株スクリーニング検査を行った。また,2022年2月以降のオミクロン株流行後は,TaqPath新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)リアルタイムPCR検出キットの特徴の一つであるS gene target failure(SGTF)の有無でL452R変異の有無を予測しオミクロン株を推測した6)

3) NGS検査

対象検体の中から,その時の流行の背景や臨床症状などを加味した上で呼吸器内科医師と相談し,NGSを施行する検体を選別した。具体的には各波の流行初期,ピーク時,終期から均一に選別し,リアルタイムPCRで変異株の予測が困難であったものや再検査が必要となり再抽出から行った結果,初回検査と結果に乖離が生じた検体,さらには院内クラスターの検体など,合計64検体を選別してNGS検査を行った(Figure 1)。SARS-CoV-2核酸増幅検査と同様の方法で再度抽出を行い,PCR検査におけるCycle Threshold(以下,CT値)からコピー数を推測し,核酸投入量の参考にするためPCR検査にてCT値を確認の上,NGS検査を行った7)。NGSに使用した試薬はIonAmpliSeqTM SARS-CoV-2 Insight Research Panel GX(サーモフィッシャーサイエンティフィック)で,NGS装置はIon Torrent GenexusTM Intergrated Sequencer(サーモフィッシャーサイエンティフィック)を使用した。解析にはWebツールであるPangolin8)およびNextclade9)を使用した。

Figure 1  NGSを行った64検体

対象検体(9,007検体)の中から,その時の流行の背景や臨床症状などを加味した上で呼吸器内科医師と相談し,NGSを施行する検体を選別した。

III  結果

1. 当院の陽性数との比較3),10),11)Figure 25
Figure 2  松阪市民病院と松阪市との陽性数の比較

第7波まではほぼ同じ曲線を示している。第7波の8月以降は陽性数の開きが大きくなっているが,その動向はほぼ同じであった。

Figure 3 松阪市民病院と三重県との陽性数の比較

松阪市との比較とほぼ同様で,第7波まではほぼ同じ曲線を示している。第7波の8月以降は陽性数の開きが大きくなっているが,その動向はほぼ同じであった。

Figure 4 松阪市民病院と東京都との陽性数の比較

各波の流行初期の立ち上がりは,松阪市民病院の方がなだらかな傾向にあることがわかった。感染の終息はほぼ変化がないことがわかった。

Figure 5 松阪市民病院と大阪府との陽性数の比較

東京都の比較と同様で,各波の流行初期の立ち上がりは,松阪市民病院の方がなだらかな傾向にあり,感染の終息はほぼ変化がないことがわかった。

松阪市や三重県のグラフと比較すると,第7波まではほぼ同じ曲線を示している。第7波の8月以降は陽性数の開きが大きくなっているが,その動向はほぼ同じであった。

東京都や大阪府との比較をみると,各波の流行初期の立ち上がりは,当院の方がなだらかな傾向にあることがわかった。感染の終息はほぼ変化がないことがわかった。

各波の感染ピークをまとめたものをTable 1に示す。当院での陽性件数が比較的多かった第6波,第7波を比較すると東京都や大阪府の方がそのピークは1~4週早かった。

Table 1 松阪市民病院と各県との波別のピーク週

松阪市民病院 松阪市 三重県 東京都 大阪府
第5波 R3.8.16~8.22 R3.8.16~8.22 R3.8.23~8.29(−1週) R3.8.16~8.22 R3.8.23~8.29(+1週)
第6波 R4.2.14~2.20 R4.2.14~2.20 R4.1.31~2.6(−2週) R4.1.31~2.6(−2週) R4.2.7~2.13(−1週)
第7波 R4.8.22~8.28 R4.8.15~8.21(−1週) R4.8.15~8.21(−1週) R4.7.25~7.31(−4週) R4.7.25~7.31(−4週)
第8波 R4.12.19~12.25 R5.1.2~1.8(+2週) R4.12.19~12.25 R5.1.2~1.8(+2週) R5.1.2~1.8(+2週)

( )内は松阪市民病院を基準としてのずれの週数

2. 当院の変異株発生状況(Figure 6
Figure 6  松阪市民病院における変異株スクリーニングの陽性数

当院では,N501Y変異は2021年3月上旬,L452R変異は2021年7月下旬,オミクロン株は2022年1月中旬にそれぞれ初めて確認された。

当院でN501Y変異が初めて確認されたのは,2021年3月上旬であった。また,L452R変異は2021年7月下旬,オミクロン株疑いは2022年1月中旬に初めて確認された。

3. NGSによるゲノム解析結果

9,007検体中64検体のNGS検査を行い(Figure 1),Pangolinによる系統分類を行った(Table 2)。アルファ株(B.1.1.7系統)は2021年の3月から9月頃まで確認された。東日本を中心に流行したE484K変異を有するR.1系統12)も4月と6月に確認された。第5波の主流株であったデルタ株(AY.29系統,AY.29.2系統)は2021年7月末から2022年1月頃まで確認された。2022年1月以降のオミクロン株で確認された亜系統はBA.1,BA.2,BA.5系統で,さらに下位の子孫系統は,BA.1はBC.1,BA.1.1.2,BA.2はBA.2.3,BA.2.3.1,BA.2.3.11,BN.1.2,BN.1.3.2,BA.5はBA.5.2,BA.5.2.1,BA.5.10,BF.5,BF.7.15であった。

Table 2 NGSによる系統分類結果

No 日付 Pango系統 Clade
1 2021/1/6 B.1.1.214 20B
2 2021/1/21 B.1.1.214 20B
3 2021/3/11 B.1.1.7 20I (Alpha, V1)
4 2021/4/8 B.1.1.7 20I (Alpha, V1)
5 2021/4/9 B.1.1.7 20I (Alpha, V1)
6 2021/4/9 B.1.1.7 20I (Alpha, V1)
7 2021/4/15 R.1 20B
8 2021/5/10 B.1.1.7 20I (Alpha, V1)
9 2021/6/10 R.1 20B
10 2021/7/27 AY.29 21J (Delta)
11 2021/7/27 B.1.1.7 20I (Alpha, V1)
12 2021/8/3 B.1.1.7 20I (Alpha, V1)
13 2021/8/16 B.1.1.7 20I (Alpha, V1)
14 2021/8/16 AY.29 21J (Delta)
15 2021/9/7 B.1.1.7 20I (Alpha, V1)
16 2021/10/19 AY.29 21J (Delta)
17 2021/10/29 AY.29 21J (Delta)
18 2021/11/2 AY.29 21J (Delta)
19 2022/1/1 AY.29.2 21J (Delta)
20 2022/1/11 BA.1 21K (Omicron)
21 2022/1/12 AY.29.2 21J (Delta)
22 2022/1/20 AY.29.2 21J (Delta)
23 2022/1/20 BA.1.1.2 21K (Omicron)
24 2022/1/25 BA.1.1.2 21K (Omicron)
25 2022/2/28 BA.2 21L (Omicron)
26 2022/3/9 BA.1 21K (Omicron)
27 2022/3/22 BA.2.3.1 21L (Omicron)
28 2022/3/22 BA.1.1.2 21K (Omicron)
29 2022/4/5 BC.1 21K (Omicron)
30 2022/4/7 BC.1 21K (Omicron)
31 2022/4/7 BA.2.3 21L (Omicron)
32 2022/4/7 BA.2 21L (Omicron)
33 2022/4/15 BA.2 21L (Omicron)
34 2022/4/28 BA.2.3.11 21L (Omicron)
35 2022/5/18 BA.2 21L (Omicron)
36 2022/5/27 BA.2 21L (Omicron)
37 2022/5/30 BA.2 21L (Omicron)
38 2022/6/7 BA.1.1.2 21K (Omicron)
39 2022/6/7 BA.2 21L (Omicron)
40 2022/6/8 BA.2.3.11 21L (Omicron)
41 2022/6/27 BA.2.3 21L (Omicron)
42 2022/7/28 BA.5.10 22B (Omicron)
43 2022/8/2 BA.5.2.1 22B (Omicron)
44 2022/8/2 BA.5.2.1 22B (Omicron)
45 2022/8/3 BA.5.2.1 22B (Omicron)
46 2022/8/4 BA.5.2.1 22B (Omicron)
47 2022/8/19 BA.5.2 22B (Omicron)
48 2022/8/20 BA.5.2 22B (Omicron)
49 2022/8/20 BA.5.2 22B (Omicron)
50 2022/8/21 BA.5 22B (Omicron)
51 2022/8/22 BF.5 22B (Omicron)
52 2022/9/2 BA.5.2.1 22B (Omicron)
53 2022/10/7 BF.5 22B (Omicron)
54 2022/11/2 BA.5.2.1 22B (Omicron)
55 2022/12/1 BF.5 22B (Omicron)
56 2022/12/22 BF.5 22B (Omicron)
57 2023/1/4 BF.5 22B (Omicron)
58 2023/1/11 BN.1.3.2 22D (Omicron)
59 2023/1/14 BN.1.3.2 22D (Omicron)
60 2023/1/18 BN.1.3.2 22D (Omicron)
61 2023/1/18 BN.1.3.2 22D (Omicron)
62 2023/1/20 BF.7.15 22B (Omicron)
63 2023/1/25 BN.1.2 22D (Omicron)
64 2023/1/31 BF.5 22B (Omicron)

Ⅳ  考察

当院におけるSARS-CoV-2検査結果を集計し,都市部との感染状況を比較した。

流行の立ち上がりは当院と松阪市のデータを比較すると第5~7波まではほぼ同じであり,当院のデータは松阪市の陽性数を反映していると考えられた。第7波後半以降,とくに第8波で両者の陽性数の差が大きくなっているのは,感染拡大に伴う検査要請件数の増加で当院のみならず開業医をはじめ,検査を実施する施設が増えたことが考えられるが,その動向は両者で同様である。また,三重県とのデータと比較してもその立ち上がりやカーブ曲線は同様の傾向にあるため,当院のデータは松阪市のみならず三重県とも同様の動向であると考えられる。

当院における第5~7波のピークは,東京都や大阪府のピークに比べて1~4週遅れていたが,第8波では逆に当院の方が早い傾向にあった。この原因としては,前述のように検査を実施する施設が増加し,松阪市の検体が当院以外にも分散したことにより松阪市の正確なピークを当院のデータのみでは把握できなくなった可能性が考えられる。また松阪市や三重県のグラフでは第7波と第8波のピーク時の陽性件数は同じくらいであるにもかかわらず東京都や大阪府では第8波のピークは第7波より少ない状況であった。これは感染者の急増や国民の意識変化に伴い積極的に検査を行わない国民が増加したことが予想され,都市部においてもこれまでのように正確なピークをとらえられていない可能性がある。また,2022年4月頃からは経済活動と感染予防対策の両立から特別な行動制限が発令されていない13)だけでなく,同年10月からは新たな旅行支援が開始14)されており,このような社会的背景も影響している可能性が考えられる。

東京都や大阪府との比較では,流行の立ち上がりにタイムラグが見られたことから都市部での感染状況を素早く察知し把握することで,前もって感染対策を行える可能性が示唆された。また,行動制限が厳しかった時期ほど,当院での流行の立ち上がりはなだらかであることから,感染症における人流の影響を窺い知ることができた。

新たな変異株の発見の時期に関してもN501Y変異は関西地域では2021年2月上旬から,関東地域では同年2月中旬から検出され始めていた4)。L452R変異は関東地域では2021年5月中旬から,関西地域では同年6月上旬から検出され始めていた5)。オミクロン株を疑うL452R変異陰性は東京都では2021年12月中旬から15),大阪府では2022年1月上旬から16)確認されており,いずれも当院の発見時期より早かった。N501Y変異およびオミクロン株を疑うSGTFの発見時期の間隔はいずれも関東圏とおよそ1か月間のタイムラグであり,変異株の発見に関しては今回の調査からは感染者数や人流制限に関わらずタイムラグが存在するものと考えられた。

NGSを用いた全ゲノム解析で明らかとなった変異株は全国での流行とほぼ同じ17)であり松阪市で独自に変異したと考えられる変異株は存在しなかった。R.1系統は東日本で多くみられた変異株であるが,松阪市でも少なからず存在することがわかった。

リアルタイムPCRは高感度かつ効率的に多検体の検査が実施できることや検査時間がNGSに比較すると短いことなどの利点がある。また,各種変異株に特異的な既知の変異のプライマープローブを組み合わせて用いることで,リアルタイムPCR法でも比較的詳細な変異株の推測が可能18),19)である。例えばL452R,N501Y,E484Aの変異の有無を検出することで,オミクロン株,デルタ株,アルファ株のいずれに該当するか推定することが可能で,オミクロン株でも特異的な変異を選択してPCR検査を行うことで系統を判別することが可能18),19)であり,どの変異を検出すればより感度よく変異株を検出できるかという報告20)もある。一方で検査の簡便さや時間短縮の点では,現在では抗原定量検査が有用であるとの報告21)があるが,未知の感染症における早期段階での感染拡大抑制にはより感度の良い検査かつ迅速性が必要であり,リアルタイムPCRは有用であると考えられる。

一方でNGSは1件当たりのコストが高いことや解析結果の判明までに時間がかかることが欠点としてあげられるが,その代わりに得られる情報量は多く,特にオミクロン株のような広範な変異株の解析には不可欠である。また,未知の変異株の早期発見や集団感染における感染経路の推測など,感染対策に重要な情報提供が可能である。

Ⅴ  結語

今回の調査では,都市部の感染状況を素早く察知することで感染対策を行う時間が確保できるものと考えられた。リアルタイムPCRとNGSを共に兼ね備えている当院検査室は,これからも松阪市の感染対策に大いに貢献できるものと考える。

COI開示

本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。

文献
 
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