Japanese Journal of Medical Technology
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Original Article
Regarding the usefulness of pleural effusion CEA in pleural effusion cytology
Yukinori SAKATAChiho MIZOHATAToshitaka OKUMURAAiko SHINTANIRyuko NAKAYAMAKazuo ONO
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2024 Volume 73 Issue 4 Pages 631-637

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Abstract

がん性胸膜炎に対して胸水CEA(以下,PF-CEA)は診断の補助に,胸水細胞診(以下,細胞診)は診断に広く用いられている。今回われわれは過去に細胞診で悪性と報告し,病理組織学的にも悪性が確認され,がん性胸膜炎と診断された悪性胸水202例の細胞診報告時判定について,PF-CEAを考慮した細胞診再判定を行うことによって成績が向上することを確認した。細胞診再判定に際しては,当院における192例についてがん性胸膜炎に対するPF-CEA検査精度(カットオフ値5.1 ng/mL,感度70.8%,特異度94.2%)を確認し,悪性胸水202例の病理組織診断別PF-CEA結果を検討して得られた知見を考慮した。悪性胸水202例のうち,悪性中皮腫5例および悪性リンパ腫6例はすべてPF-CEA陰性であった。多くの腺癌や扁平上皮癌ではPF-CEA陽性であったが,卵巣漿液性癌では陽性率が約27%と低かった。これらを考慮して細胞診再判定した結果,腺癌,悪性中皮腫,悪性リンパ腫の判定数が増加し,鑑別困難がなくなった。以上より,PF-CEAは細胞診判定に有用である。

Translated Abstract

Pleural effusion CEA (hereinafter referred to as PF-CEA) is widely used to aid in the diagnosis of cancerous pleuritis, and pleural effusion cytology (hereinafter referred to as cytology) is widely used in the diagnosis of cancers. In this study, we examined the determination of 202 cases of malignant pleural effusions that were previously reported to be malignant by cytology and histopathological confirmation and diagnosed as cancerous pleuritis. We confirmed that re-examination improves grades. When redetermining cytology, we confirmed the accuracy of the PF-CEA test for cancerous pleuritis (cutoff value of 5.1 ng/mL, sensitivity of 70.8%, and specificity of 94.2%) in 192 cases at our hospital. After that, we considered the findings obtained by examining the PF-CEA results of the 202 cases of malignant pleural effusions by histopathological diagnosis. Among the 202 cases, five cases of malignant mesothelioma and six cases of malignant lymphoma were all negative in PF-CEA. Although many adenocarcinomas and squamous cell carcinomas were positive in PF-CEA, the positivity rate was low at approximately 27% in ovarian serous carcinomas. As a result of rediagnosing the cytology considering these factors, the number of cases diagnosed as adenocarcinomas, malignant mesothelioma, and malignant lymphoma increased, and the difficulty in differentiation was eliminated. The above showed that PF-CEA is useful for determining cytology.

I  はじめに

がん性胸膜炎はがん細胞を含む胸水の存在,又は胸膜播腫の存在により引き起こされる病態で,一般的に予後は不良とされている。癌胎児性抗原(carcinoembryonic antigen; CEA)は消化管粘膜などの上皮細胞の細胞膜に局在する分子量約20万の糖蛋白で,胸水CEA(以下,PF-CEA)はがん性胸膜炎に対する診断の補助として用いられている。カットオフ値に関しては2.9~5.2 ng/mLとした場合,感度は65~72%,特異度は90~97%とされている1),2)。一方,胸水細胞診(以下,細胞診)はがん性胸膜炎などの悪性胸水の診断に広く用いられており,特異度は高いが感度は46~70%とされている3)~5)。細胞診にて悪性細胞が出現していた場合はPF-CEAが高値な場合が多いが,中には低値な症例を経験することがある。さらに悪性胸水の場合,原発の検査歴など細胞診依頼情報が有用な所見となるが,中には原発不明で発見されることもあり,このような場合は組織型の推定もより困難な場合がある。本研究ではPF-CEAの検査精度を確認し,PF-CEAを考慮することで細胞診判定の成績向上を確認したので報告する。

II  対象と方法

1. 対象

1) PF-CEA検査精度の確認

当院で2020年9月から2021年9月までにPF-CEAが施行され,最終的にがん性胸膜炎と診断された悪性胸水72例とがん性胸膜炎を否定された良性胸水120例,合わせて192例(平均74.5歳,男性137例,女性55例)を対象とした。

2) 悪性胸水のPF-CEA結果の確認および再判定

2015年1月~2023年3月までにPF-CEAが施行され,細胞診class IVおよびV,かつ胸水のセルブロックや胸膜生検または臨床的に原発とされる臓器での組織診で組織型が確認され,がん性胸膜炎と診断された悪性胸水202例(平均70.4歳,男性92例,女性110例)を対象とした。

なお,本研究は日本赤十字社和歌山医療センター倫理委員会の承認を得て実施した(受付番号:996)。

2. 測定機器および原理

PF-CEAは2015年1月から2019年3月までは和光純薬工業株式会社のSphereLight Wakoにて化学発光酵素免疫測定法により測定を行い,2019年4月から2023年3月まではロシュ・ダイアグノスティクス株式会社のcobas 8000にて電気化学発光免疫測定法により測定を行った。

3. 方法

1) PF-CEA検査精度の確認

192例のPF-CEAについて,カットオフ値を決定し,がん性胸膜炎に対する感度,特異度を求めた。

2) 病理組織診断別PF-CEA結果

202例の悪性胸水PF-CEAをカットオフ値からPF-CEA陽性とPF-CEA陰性に分け,組織型と原発別にPF-CEA結果をまとめ,検討した。

3) 細胞診報告時判定別PF-CEA結果

細胞診報告時判定別に病理組織診結果とPF-CEA結果をまとめた。

4) 細胞診再判定別PF-CEA結果

報告時細胞診結果をブラインドとし,細胞診報告時の依頼書情報と標本(Papanicolaou染色,PAS染色,一部Giemza染色)を用い,病理組織診断別PF-CEA結果の検討から得られた知見を考慮して再鏡検を行った。その後,再判定結果別に病理組織診結果とPF-CEA結果をまとめ,細胞診報告時判定と比較検討した。

統計処理には有意差検定(Mann-WhitneyのU検定)を用い,p < 0.05を有意差ありとした。

III  結果

 1)PF-CEA検査精度確認

192例のPF-CEAは,悪性胸水72例の平均606.7 ng/mL,良性胸水120例の平均2.9 ng/mLで,悪性胸水例が有意に高値であった(p < 0.01)(Figure 1)。カットオフ値を5.1 ng/mLとした場合,PF-CEA陽性58例,PF-CEA陰性134例であった。偽陽性は7例(膿胸2例,肺炎随伴性胸水1例,外傷1例,心不全1例,胸水貯留原因不明だが明らかに悪性所見が認められないものが2例),偽陰性は21例(腺癌10例,悪性中皮腫3例,悪性リンパ腫3例,小細胞癌3例,扁平上皮癌2例)であり,感度は70.8%,特異度は94.2%であった。組織型別にみると,腺癌が陽性46例/陰性10例,扁平上皮癌が陽性2例/陰性2例であり,悪性中皮腫3例および悪性リンパ腫3例は全例陰性であった。腺癌を主な原発別にみると肺が陽性32例/陰性3例,乳腺が陽性4例/陰性1例,胃が陽性5例/陰性0例,卵巣が陽性1例/陰性4例であった。

Figure 1  良性胸水群と悪性胸水群のPF-CEA結果

 2)病理組織診断別PF-CEA結果

202例の内訳はPF-CEA陽性が157例,PF-CEA陰性が45例であった(Table 1)。組織型別にみると,腺癌167例が最も多く,次いで扁平上皮癌が11例であった。悪性中皮腫と悪性リンパ腫は全例PF-CEA陰性であった。原発別では,肺128例,乳腺22例,卵巣15例,胃11例,リンパ節6例,胸膜5例,食道3例,舌1例,膀胱1例,その他10例であった。卵巣癌は全て漿液性癌であり,他の腺癌に比べPF-CEA陰性症例を多く認め,陽性率は約27%と低かった。感度である70.8%以上の陽性率を示すのは漿液性癌を除く腺癌と扁平上皮癌であった。肺腺癌,肺扁平上皮癌,肺小細胞癌,悪性中皮腫,悪性リンパ腫についてPF-CEAを比較すると,肺腺癌では肺扁平上皮癌に比べPF-CEAが有意に高値であった(Figure 2)。肺癌,乳癌,胃癌,卵巣癌についてPF-CEAを比較すると,卵巣癌はPF-CEAが有意に低値であった(Figure 3)。

Table 1 病理組織診断別PF-CEA結果

組織型 原発 症例数 PF-CEA陽性 PF-CEA陰性
腺癌 乳腺 22 167 16 6
11 10 1
卵巣 15 4 11
その他 10 8 2
128 109 103 6
非小細胞癌 4 3 1
小細胞癌 6 3 3
大細胞神経内分泌癌 2 1 1
扁平上皮癌 7 11 5 2
食道 3 2 1
1 1 0
尿路上皮癌 膀胱 1 1 0
悪性中皮腫 胸膜 5 0 5
悪性リンパ腫 リンパ節 6 0 6
合計 202 157 45
Figure 2  肺癌組織型別,悪性中皮腫,悪性リンパ腫のPF-CEA結果
Figure 3  主な原発別PF-CEA結果

 3)細胞診報告時判定別PF-CEA結果

202例の細胞診報告時判定は腺癌154例,扁平上皮癌2例,小細胞癌6例,悪性中皮腫3例,悪性リンパ腫3例,組織型の鑑別困難が合わせて34例あり,その内訳は扁平上皮癌と腺癌の鑑別を要して低分化癌を疑った鑑別困難(低分化癌)23例,悪性中皮腫と腺癌の鑑別を要して悪性中皮腫を疑った鑑別困難(悪性中皮腫)6例,悪性リンパ腫と小細胞癌の鑑別を要して悪性リンパ腫を疑った鑑別困難(悪性リンパ腫)5例であった(Table 2)。腺癌では陽性129例/陰性25例であり,病理組織診で悪性中皮腫や扁平上皮癌だった症例も含まれた。鑑別困難(低分化癌)のPF-CEAは陽性20例/陰性3例で,22例が腺癌または扁平上皮癌,1例がPF-CEA陰性の悪性中皮腫であった。鑑別困難(悪性中皮腫)のPF-CEAは陽性4例/陰性2例で,6例は腺癌または扁平上皮癌であり悪性中皮腫例はなかった。鑑別困難(悪性リンパ腫)のPF-CEAは陽性1例/陰性4例で,悪性リンパ腫が3例,小型細胞からなる大細胞神経内分泌癌が2例であった。組織型鑑別困難に腺癌例が多く含まれることで,病理組織診断腺癌例167例に対して報告時判定腺癌は154例と少なかった。

Table 2 細胞診報告時判定別PF-CEA結果

細胞診 病理組織診 症例数 PF-CEA陽性 PF-CEA陰性
腺癌粘液(+) 腺癌 154 28 129 28 25 0
腺癌粘液(−) 腺癌 123 99 24
悪性中皮腫 1 0 1
扁平上皮癌 1 1 0
尿路上皮癌 1 1 0
扁平上皮癌 扁平上皮癌 2 0 2
小細胞癌 小細胞癌 6 3 3
悪性中皮腫 悪性中皮腫 3 0 3
悪性リンパ腫 悪性リンパ腫 3 0 3
鑑別困難(低分化癌) 腺癌 23 12 20 11 3 1
扁平上皮癌 7 7 0
非小細胞癌 3 2 1
悪性中皮腫 1 0 1
鑑別困難(悪性中皮腫) 腺癌 6 4 4 3 2 1
扁平上皮癌 1 0 1
非小細胞癌 1 1 0
鑑別困難(悪性リンパ腫) 悪性リンパ腫 5 3 1 0 4 3
大細胞神経内分泌癌 2 1 1
合計 202 157 45

 4)細胞診再判定別PF-CEA結果

202例の再判定は腺癌180例,扁平上皮癌3例,小細胞癌8例,悪性中皮腫5例,悪性リンパ腫6例であった(Table 3)。再判定では角化異型細胞や細胞間橋を認めた場合は扁平上皮癌,粘液(+)や核・細胞質所見で腺癌の特徴を認めた場合は腺癌と判定した。特徴が明らかではない症例はPF-CEA陽性であれば腺癌とした。また,PF-CEA陽性であれば悪性中皮腫と悪性リンパ腫を否定した。PF-CEA陰性であれば悪性中皮腫と悪性リンパ腫の可能性も考慮し,否定できた症例は腺癌や小細胞癌と判定した。腺癌は陽性152例/陰性28例となり,悪性中皮腫は陽性0例/陰性5例,悪性リンパ腫は陽性0例/陰性6例となった。細胞診報告時判定と比較すると粘液産生性腺癌28例に変化はみられなかったが,非粘液産生性の腺癌は126例から152例に増加した。悪性中皮腫および悪性リンパ腫の判定数も増加し,鑑別困難はなくなった。しかしながら,腺癌に含まれた扁平上皮癌が1例から8例に増加した。

Table 3 細胞診再判定別PF-CEA結果

細胞診 病理組織診 症例数 PF-CEA陽性 PF-CEA陰性
腺癌粘液(+) 腺癌 180 28 152 28 28 0
腺癌粘液(−) 腺癌 139 113 26
非小細胞癌 4 3 1
扁平上皮癌 8 7 1
尿路上皮癌 1 1 0
扁平上皮癌 扁平上皮癌 3 1 2
小細胞癌 小細胞癌 8 6 4 3 4 3
大細胞神経内分泌癌 2 1 1
悪性中皮腫 悪性中皮腫 5 0 5
悪性リンパ腫 悪性リンパ腫 6 0 6
合計 202 157 45

IV  考察

PF-CEAのがん性胸膜炎に対する感度は65~72%,特異度は90~97%とされている1),2)。当院での検査精度の確認でも特異度は94.2%で文献と同程度であり,PF-CEAが陰性の場合は良性胸水の可能性が高い。一方感度も70.8%と文献と類似した結果であったが,感度を低下させる要因はPF-CEA陰性となる悪性リンパ腫と悪性中皮腫,PF-CEA陽性率が低い神経内分泌癌と漿液性癌の存在であった。

悪性胸水202例の病理組織診断別PF-CEA結果より,悪性中皮腫および悪性リンパ腫では全例PF-CEA陰性であることから,細胞診報告時判定で悪性中皮腫や悪性リンパ腫と癌の鑑別を要した例は,PF-CEA陰性が重要な情報となり,細胞診再判定では悪性中皮腫5例と悪性リンパ腫6例は全て判定可能となった。さらに,肺腺癌ではPF-CEAが肺扁平上皮癌より有意に高値であった。扁平上皮癌ではPF-CEAが腺癌より低いことが報告されており6),矛盾のない結果となった。本検討でも全202症例中PF-CEAが1,500 ng/mLを超える腺癌症例は32例みられたが扁平上皮癌症例では認めなかった。このことより,高値であればより腺癌を疑うことで正確な組織型判定を行える可能性も示唆されたが,本検討では扁平上皮癌の陽性率は約72.7%,腺癌は約84.4%と両者の鑑別に用いるのは困難であった。全て漿液性癌であった卵巣癌15例は肺癌,乳癌,胃癌に比べPF-CEAが有意に低値で,陽性率も低かった。漿液性癌は免疫組織化学的にCEA陽性像が乏しいとの報告があり7),PF-CEAを考慮してより高度な細胞診判定を行っていくためには,各組織型における血中CEA値,原発腫瘍のCEA免疫組織学的所見,胸水中腫瘍細胞のCEA免疫細胞学的所見などの知見や関連性も理解する必要があると考える。

細胞診報告時判定では腺癌と扁平上皮癌,腺癌と悪性中皮腫,小細胞癌と悪性リンパ腫などの鑑別困難34例があることで腺癌判定が少なかったが,PF-CEAを考慮して細胞診再判定することで鑑別困難をなくすことができ,腺癌,悪性中皮腫,悪性リンパ腫判定数が増加した。腺癌は26例増加し,このうち23例がPF-CEA陽性であった。PF-CEAは病理組織診断別PF-CEA結果でも多くの腺癌に陽性で,これを考慮することで腺癌の再判定が増加したと考えられる。また,PF-CEA陰性が多かった卵巣漿液性癌は全例細胞所見で腺癌判定が可能であった。一方で,原発での組織型が扁平上皮癌や非小細胞癌の症例なども腺癌に含まれた。腺癌の再判定となった扁平上皮癌症例を示す(Figure 4)。症例1は肺原発で症例2は食道原発である。

Figure 4  再判定時に腺癌となった扁平上皮癌症例の細胞所見

A–B)症例1(PF-CEA 34.5 ng/mL)(400×)

C–D)症例2(PF-CEA 350.0 ng/mL)(400×)

共に扁平上皮癌や腺癌の細胞所見が明らかではないことより細胞診報告時判定は鑑別困難(低分化癌)であり,細胞診再判定では腺癌となった。本検討ではPF-CEA陽性で明らかな角化や細胞間橋がみられない場合は腺癌を考えたため,再判定で腺癌に含まれた扁平上皮癌や非小細胞癌が増加したと考えられる。胸水中に出現する扁平上皮癌は非角化型のことが多く,診断は容易ではないとされており8),本検討でも困難であった。これらは,原発の生検が扁平上皮癌であっても腫瘍には腺癌成分が含まれ,胸水中には腺癌成分が播種している場合も考えられる。さらに肺癌におけるCEAの免疫組織化学では高分化腺癌で陽性所見が強く,低分化腺癌や扁平上皮癌では弱いという報告もあり9),PF-CEAを考慮することで腺系の性質を示す扁平上皮癌などをとらえている可能性も考えられた。

細胞診報告時に扁平上皮癌と判定できた2例は共に角化異型細胞を認め再判定でも扁平上皮癌となり,細胞診報告時に低分化癌であったPF-CEA陽性の1例は角化型の異型細胞が少数みられ,細胞診再判定は細胞所見により扁平上皮癌となった。

悪性中皮腫は2例増加し5例となった。細胞診報告時判定腺癌の1例と鑑別困難(低分化癌)の1例は,PF-CEA陰性であることから悪性中皮腫も考慮することで微絨毛の発達や多核細胞の割合の増加などの細胞学的特徴に注目することができ,細胞診再判定は悪性中皮腫とした。腺癌と悪性中皮腫の鑑別にCEAが有用であることは以前より報告されており10),免疫組織化学でも悪性中皮腫は一般的にCEA陰性である。本検討でも細胞所見で腺癌と悪性中皮腫の鑑別が必要であった症例を認めたが,再判定にて組織診組織型と矛盾のない判定が行えた。

悪性リンパ腫も3例増加し6例となった。細胞診報告時判定鑑別困難(悪性リンパ腫)に含まれた悪性リンパ腫3例は,PF-CEA陰性を考慮し細胞診再判定で悪性リンパ腫とした。

大細胞神経内分泌癌の2例は小型異型細胞主体で裸核細胞も多く悪性リンパ腫と小細胞癌で鑑別困難であったが,1例はPF-CEA陽性であり細胞診再判定では悪性リンパ腫を否定し小細胞癌とした。PF-CEA陰性の1例はわずかに結合性もみられ,細胞診再判定では細胞形態より小細胞癌とした。一方で,本検討では小細胞癌での陽性率は50%と決して高くはなく,PF-CEA陰性の小細胞癌の頻度も高いことには注意が必要である。

さらに,今回は血清中のCEAの検討はできていないが,血清中のCEAとPF-CEAが相関するという報告もあり6),PF-CEAのみではなく,血清中のCEAも組織型判定の有用所見となる可能性も考えられる。

V  結語

PF-CEAを考慮して細胞診判定を行うことで,細胞診判定の成績向上につながることが確認できた。PF-CEAは細胞診判定に有用である。

COI開示

本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。

文献
 
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