2025 Volume 74 Issue 2 Pages 304-311
【目的】血中のα-アミラーゼ(AMY)活性測定は,唾液腺疾患や膵疾患などの診断に用いられる。我々は,AMY活性測定法であるGal-G2-CNPとEt-G7-pNPで相関試験を行った際,活性値が大きく乖離した検体を経験した。そこで測定試薬の基質間の特性,およびその値が乖離した原因の調査を行った。【方法】AMY,P-AMY測定試薬について相関性を評価し,アイソザイムの違いやα-グルコシダーゼ阻害剤の影響による基質間の反応性を調査した。さらに,大きく乖離を認めた検体について,PEG処理を実施した。【結果】相関性はAMY,P-AMYとも強い相関を示した。乖離率を3群に分けた結果,P-AMYの割合が低くなるほど有意にGal-G2-CNP,Et-G7-pNP間で乖離率が増加した(p < 0.001)。α-グルコシダーゼ阻害剤は基質に対して影響を認めなかった(p = 0.703)。大きく乖離を認めた検体にPEG処理を行い,マクロアミラーゼであると疑われた。【考察】Gal-G2-CNPおよびEt-G7-pNPのAMY,P-AMY測定試薬で強い相関を認めた。しかし,基質間でAMYはP-AMYの割合により反応性が異なっていた。PEG処理によって乖離検体はマクロアミラーゼであったことが示唆されたが,大きく乖離した原因の解明には至らなかった。今後本邦において,AMY測定の標準化法への移行が進めば,今回のような乖離事例で臨床に混乱を与える可能性は低くなると考える。
[Introduction] α-Amylase (AMY) is essential for diagnosing salivary gland and pancreatic diseases. During our correlation test using Gal-G2-CNP and Et-G7-pNP methods, we found significant discrepancies in AMY values for a specific sample. Therefore, we investigated substrate characteristics in the AMY measurement reagents and the reasons for discrepancy in the specific sample. [Method] We evaluated AMY and P-AMY measurement reagents, assessing reactivity differences due to isozyme variations and α-Glucosidase inhibitor effects between substrates. Moreover, the sample with significant discrepancies underwent PEG treatment. [Results] The correlations were strong for AMY. When the divergence rate was categorized into three groups, decreasing P-AMY proportion significantly increased the deviation rate between Gal-G2-CNP and Et-G7-pNP (p < 0.001). The α-Glucosidase inhibitors had no observed effect on the substrates (p = 0.703). The significant discrepancies sample had undergone PEG treatment, and suggesting macro-AMY as a possible cause. [Discussion] The AMY and the P-AMY reagents for Gal-G2-CNP and Et-G7-pNP showed strong correlations and yielded good results. However, AMY reactivity between substrates varied with P-AMY proportion. PEG treatment suggested macro-AMY as a possible cause for the divergence, but did not clarify the underlying reason for such significant deviation. In the future in Japan, as standardized methods for AMY become more prevalent, the likelihood of clinical discrepancies like this one is expected to decrease.
α-アミラーゼ(AMY)は生体内において,膵臓,唾液腺に高濃度で存在しており,膵臓で産生される膵型アミラーゼ(P-AMY),唾液腺で産生される唾液型アミラーゼ(S-AMY)で構成される。多糖類のα-1,4-グリコシド結合を加水分解する酵素であり,血中のAMY活性測定は,唾液腺疾患や膵疾患などの診断において用いられる検査項目である1)。AMY活性測定試薬はこれまで,基質を構成するグルコースの単位を変えることにより,様々な試薬が開発されてきた。しかしその反面で,アミラーゼアイソザイムに対する反応性の違いが生じ,測定法間差が問題となった。1998年に国際臨床化学会(IFCC)から,測定法の標準化に向けEt-G7-pNP(G7)を基質とするAMY測定の勧告法(IFCC勧告法)が発表され,これを受けて日本臨床検査標準協議会(JCCLS)は,2004年にIFCC勧告法をJCCLS-標準操作法(SOP)として認証している2)~4)。しかし,2023年度の医師会サーベイランスの調査では,年々割合は増えているものの,G7を用いたAMY測定試薬を使用している施設は全体の7割ほどに留まっており,未だ国内における標準化には至っていない。我々の施設においても,AMY及びP-AMYの測定には,Gal-G2-CNP(G2)を基質とした試薬を使用していた。
今回,AMY測定法を標準法であるG7へ移行することが当院検査部で決定され,従来試薬であるG2との比較検討を行った。この際,相関試験において,活性値が大きく乖離した検体が1例(G2:AMY 1,422 U/L, G7:AMY 186 U/L)認められた。我々はAMY測定試薬の基質間での特性,およびその検体が乖離した原因についての調査と考察を行った。
益田赤十字病院において診療目的に採取された血清検体202例を対象に,AMYおよびP-AMY測定を実施した。
2. 測定試薬と機器LABOSPECT 6(株式会社日立製作所)を測定機器として用いた。AMYの測定はG2として従来試薬のデタミナーL AMY G2(ミナリスメディカル株式会社)を利用し,対象試薬としてG7のデタミナーL AMY G7(ミナリスメディカル株式会社)を使用した。P-AMYの測定はデタミナーL P-AMY G2(ミナリスメディカル株式会社),及びG7のデタミナーL P-AMY G7(ミナリスメディカル株式会社)を用いた。
3. AMY測定試薬原理 1) デタミナーL AMY G2検体中のAMYが,2-クロロ4-ニトロフェニル4-0-α-ガラクトピラノシルマルトシド(Gal-G2-CNP)を加水分解し,2-クロロ-4-ニトロフェノール(CNP)を遊離させ,CNPの吸光度増加量を測定する(Figure 1)。
Sample AMY degrades the substrate, and the absorbance increase of the chromophore released during the degradation is measured to obtain the active value. The AMY assay regent using G7 contains α-Glucosidase as a conjugating enzyme.
非還元末端を修飾保護したエチリデン-パラニトロフェニル-α-D-マルトヘプタオシド(Et-G7-PNP)を基質として,検体中のAMYより生成するPNP-G2~PNP-G4に共役酵素であるα-グルコシダーゼ(α-GH)を作用させる。その結果,パラニトロフェノール(PNP)を遊離させ,PNPの生成に伴う吸光度の増加速度を測定する(Figure 1)。
4. 検討内容 1) 相関性の評価血清検体202例を対象に,AMY,P-AMYの測定を実施し相関性を評価した。
2) アミラーゼアイソザイムの割合による乖離G2,G7の試薬間でAMYの乖離率を求め,AMYに対してP-AMYの割合が与える影響について評価した。G2で測定したAMYを真値とし,G7との乖離率(%)を求め,乖離率をA:±10.0%以下,B:±10.1–15.0%,C:±15.1%以上に分類し有意差を確認した。また,AMYに対するP-AMYが50%以上の際に,2基質間でAMYの乖離率がどのような分布を取るか評価した。※乖離率については,次式より算出した((G7 − G2)/G2 × 100)。
3) α-グルコシダーゼ阻害剤の影響糖尿病内科へ通院中で,α-グルコシダーゼ阻害剤を内服している患者の検査後血清(n = 35)を対象とした。G2とG7を用いてAMYを測定し,比較を行った。
4) PEG処理乖離検体にPEGを添加し,マクロアミラーゼを沈降させ,上清を検体としてG2およびG7で測定を行った。200 μLの検体に50% PEG6000を50 μL加えた後,10秒間ボルテックスで撹拌し,1,710 gで10分間遠心分離を行い,その上清を測定に用いた。結果は回収率(%)=PEG処理後の測定値 × 1.25/処理前の測定値 × 100で,回収率が40.0%以上であれば免疫グロブリン以外の可能性,40.0%未満であれば免疫グロブリンの影響があったと判定した。
5. 統計処理統計処理はEZR(Easy R)version 1.68を使用し,Spearmanの相関で相関性を評価した。回帰式はPassing-Babloc回帰を用いて求めた。AMYに対して,P-AMYが占める割合が与える影響について,Kruskal-Wallisの多重比較検定で3群の比較を行った。
G2及びG7間でAMY,P-AMYの相関性をFigure 2に示す。相関性はそれぞれAMYで(r = 0.971, y = 1.089x − 5.067),P-AMY(r = 0.992, y = 1.036x − 4.955)となり,G2に比較してG7で高値となる系統誤差を認めたが,どちらの項目も基質間で強い相関性を示した。また,この相関試験の際に大きく乖離を認めた検体が1例確認された(G2:AMY 1,422 U/L,P-AMY 276 U/L,G7:AMY 186 U/L,P-AMY 64 U/L)。
(a), (b), those amylase and p-amylase measuring reagents of correlation. Both reagents were observed strong correlation between G2 and G7 (AMY: r = 0.971, P-AMY: r = 0.992). In one of the sample was observed a large divergence (G2: AMY 1,422 U/L, P-AMY 276 U/L, G7: AMY 186 U/L, P-AMY 64 U/L).
G2で測定したAMYは,P-AMYが占める割合が高くなるほどG2,G7間の乖離率が±10%以内に収まる傾向であり,P-AMYが40%以上になると,ほとんどの検体で乖離は認めなかった(Figure 3a)。乖離率を3群に分けた結果,A群(median: 49.8, range: 19.3–95.9, n = 164),B群(median: 23.9, range: 9.6–96.7, n = 23),C群(median: 9.4, range: 4.3–31.2, n = 15)とAMYに対してP-AMYの占める割合が低くなるほど有意にG2,G7間で乖離率が増加した(p < 0.001)(Figure 3b)。G2のAMYはP-AMYの割合が50%未満だとG7に比べて低くなる傾向があった(Figure 4)。また,乖離率が−86.9%と基質間で大きな乖離を認め,P-AMYの割合が50%未満にも関わらずG2の値がG7よりも高くなっており,他のどの検体とも異なる傾向を示した検体が存在した。これは相関性試験において,大きく乖離を認めたものと同一検体であった。
In (a), scatter plots were generated based on amylase deviations, categorized into three groups according to the percentage of p-amylase. According to the scatter plot, the percentage of P-AMY did not show a distribution dependent on AMY concentration. Across most samples, when p-amylase exceeded 40%, the differences in amylase values between G2 and G7 were minimal. In (b), that was compared the deviations rates across three groups. The rate of deviations between G2 and G7 decreased significantly as the percentage of p-amylase increased (p < 0.001).
The AMY measurement value of G2 tended to be lower than that of G7 when the percentage of P-AMY was less than 50%.
α-グルコシダーゼ阻害剤であるボグリボースを内服している患者のAMYを,G2およびG7で測定し比較した結果,有意差は認められなかった(p = 0.703)(Figure 5)。
For patients receiving α-Glucosidase inhibitor therapy, we compared the AMY values between G2 and G7, but no significant difference was observed (p = 0.703).
乖離検体および対象検体で回収率を確認すると,乖離検体ではG2で11.3%,G7で14.5%であった。このことから,当該検体のAMYは免疫グロブリンの影響を受けている可能性が示唆された(Table 1)。しかし,処理後の上清におけるAMYもG2で135 U/Lに対して,G7で19 U/Lと約7倍高値となっていた。
Patient serum | Control serum | |||
---|---|---|---|---|
AMY (U/L) | G2 | G7 | G2 | G7 |
Pre PEG | 1,488 | 164 | 100 | 99 |
Post PEG | 135 | 19 | 67 | 67 |
Recovery rate (%) | 11.3 | 14.5 | 83.8 | 84.6 |
G2およびG7のAMY,P-AMY活性測定試薬で強い相関を認めたものの,その測定値に大きな乖離を認めた検体を経験した。我々は乖離要因として,まず2つの基質間におけるアミラーゼアイソザイム比率に対する反応性が異なる点について注目した。P型およびS型の比率によって,基質の違いによる測定値の差が指摘されており,G2ではP型に対して反応性が高くP型優位の検体ほど高値となり,G7はアイソザイム比率に関わらず,若干高値となることが報告されている5)。本検討においても,アイソザイム比率によるAMYの乖離が認められた。この事実から,乖離を認めた検体についても,アイソザイム比率に対する反応性の違いを反映している疑いを持った。しかし,G2とG7間でのアミラーゼ乖離率の分布において,G2のAMYは,P型の割合が50%以下だと,G7に比べて低くなる傾向が確認されおり,G2のAMYはG7のAMYより低値となるはずである。乖離を認めた検体ではG2でAMY 1,422 U/L,P-AMY 276 U/L,G7でAMY 186 U/L,P-AMY 64 U/Lであり,G2の値が高値となっている。このことから,アイソザイム比率による乖離現象ではないと考えられた。
次に,G2,G7の試薬組成で異なる点が可能性として挙がった。G7には共役酵素としてα-グルコシダーゼが含まれている。異常乖離を認めた検体について,試薬中のα-グルコシダーゼが何らかの作用を受け,基質間での測定値乖離を生じた可能性が想定された。その一方で,今回の検討結果から,測定試薬にα-グルコシダーゼ阻害剤が干渉し,測定値に影響を与えている可能性は否定された。通常の内服量ではα-グルコシダーゼ阻害剤は体内への吸収はないとされ,血中はもちろん尿中に移行することはなく,ほとんど影響がないといわれている。今回の結果も同様のものであるが,G7における尿中アミラーゼは,α-グルコシダーゼ阻害剤によって大きく低下する例が報告されており6),試薬中のα-グルコシダーゼは阻害剤の影響を受ける可能性があることは無視できないと考える。乖離検体について,投薬歴を確認したが,G7のAMYに影響を与えると考えられるα-グルコシダーゼ阻害剤の内服,及び他の薬剤の処方は受けていなかった。よってα-グルコシダーゼ阻害による乖離も,可能性として低いと推定された。
最後に,乖離検体においてPEG処理を行ったところ,G2,G7のAMYともに,免疫グロブリンの影響を受けている可能性がある結果となった。このことから乖離した検体について,アミラーゼ電気泳動法を行ったところ,全域でブロード状に分画され,S分画およびP分画が分離不明瞭となり,マクロアミラーゼであることが疑われた(Figure 6)。マクロアミラーゼは血中の免疫グロブリンと結合することによって,AMYが高分子化したものを指し,尿中へのクリアランスが低下することで,血中に長時間停滞するために高アミラーゼ血症となる7)。マクロアミラーゼについては未だ判明していない点が多く,G2,G7間で反応性を比較した文献は少ない。マクロアミラーゼは糖鎖の短い基質に対して親和性が高いとされており基質間で測定した結果,マクロアミラーゼ検体では,G7に比べてG2でAMYが高値を示している8)。我々が経験した検体もG7と比較してG2の方が高値を示していたが,過去の報告と比較してもその乖離度は非常に大きい。一般的にマクロアミラーゼと結合している免疫グロブリンはIgAが多く見られ,他のマクロ酵素と異なりIgG結合型は少ないといわれている7)。しかし乖離検体ではIgGが3,045 mg/dLと比較的高値であり,IgA,IgMの測定は行われていなかったが,IgGがAMYに結合していた可能性が高いと推定される。また,今回の乖離例を結合免疫グロブリンによる酵素活性阻害という観点で考察すると,G2とG7間で乖離を認めた原因の一つとして,基質間でマクロアミラーゼに対する反応性が異なり,G7が免疫グロブリンによって酵素活性阻害を受け偽低値となった可能性も考慮する必要がある。マクロアミラーゼではAMYの排泄障害から体内の活性値が高くなるため,G2の測定値が本来のAMY活性値を表しており,G7では反応阻害を受け,活性値が低下してしまった可能性も考えられた。今回の検討ではG7に対する酵素活性阻害についての証明はできなかったが,マクロアミラーゼ自体は病態を反映しないことが多く,膵炎などの誤った診断が下され,他の治療が延期されるなど臨床への影響を与える恐れがある。
In the patient sample, the inability to separate S and P fractions due to unclear boundaries resulted in a broad pattern, inferring the presence of macro-amylase.
PEG処理によって免疫グロブリンによる影響を受けている可能性を挙げたが,処理後の上清検体においてもAMYはG2とG7間で約7倍もの大きな乖離を認めた。腹膜透析に用いられているイコデキストリンの長期使用により,G7を基質とした試薬では基質競合を起こし,AMYの低下を示すと報告がある9)。今回乖離を認めた患者の診療録を調査したが,腹膜透析は行っておらず,イコデキストリン使用によって生じるG7のAMY活性値低下は考えられなかった。しかしながら,PEG処理後でも大きな乖離を認めていたことから,PEGでは除去できない何らかの成分が測定系に影響を及ぼし,乖離を生じた可能性も考えられる。今回の検討では,これ以上の解析が実施できず,明確な乖離の原因を確定できなかったが,更なる推測として,試薬メーカーによって,マクロアミラーゼに対する反応性が異なっている可能性や,結合している免疫グロブリンの種類によって基質の反応性が異なること,アミラーゼ活性を有する免疫グロブリンの存在10)とその基質に対する反応性の違いによって起こる乖離を考えた。
急性膵炎の診断は,血中膵酵素の上昇のみでは確定診断に至らないが,マクロアミラーゼによる基質間の乖離が,臨床に混乱をもたらす可能性がある。今回の検討で乖離を認めた検体の患者は,数年前に他施設で高アミラーゼを認めていたことで膵炎が疑われ,予定していた手術が延期されたとの病歴が確認された。急性膵炎診療ガイドライン202111)によると,急性膵炎の診断において,一般的に迅速な測定が可能である血中アミラーゼと,血中リパーゼの測定が推奨されている。一方で,膵疾患に特異性の高いリパーゼは測定できる体制が整っていない施設が多く,2006年の文献によると,国内における急性膵炎の診断において,AMYの測定が主体となっているといわれている12)。厚生労働省が開示しているNDBオープンデータ13)によると,令和4年度においてAMYおよびリパーゼが全国で診療算定された件数は,リパーゼと比較してAMYが圧倒的に多い。また二次医療圏で算定件数を見たところ,リパーゼの算定がされていない圏域を多々認める。このことから,AMYの測定環境がリパーゼよりも整っている施設が多く,現在においても,急性膵炎の診断に,AMYの測定が主体となっている可能性がある。マクロアミラーゼの診断に有効な方法として,血中・尿中のAMYおよびクレアチニン(CRE)を測定することで,計算されるアミラーゼ・クレアチニンクリアランス比(ACCR)が知られている。今回乖離を認めた検体の患者は,半年前に高アミラーゼ血症によって膵炎が疑われた際にIgGが高値であり,自己免疫膵炎を疑われていた。しかし,ACCRは0.1%と著しく低下しており,自覚症状は無く,単純CTおよび造影CTで膵臓に異常所見を認めず,胆道系酵素の上昇を認めなかったことから,すでにマクロアミラーゼ血症と診断がついていた。今回は試薬移行中の相関性試験で,基質間で測定値に大きな乖離を認めており,膵炎による高アミラーゼ血症ではなく,マクロアミラーゼによる高アミラーゼ血症であることを偶然発見することができた。しかし,G2を基質としたAMY測定試薬を用いている他の施設から,高アミラーゼ血症で患者が紹介される際に,測定値の乖離から同様の事例が起こり,臨床側へ混乱を与えうる可能性がある。
近年,AMYの標準化法として,G7を基質とした試薬をIFCC勧告法として用いられているが,国内においても2024年時点で,G7を使用している施設の割合は約7割と,完全移行にはまだ時間を要すると考えられる。今後我が国において,AMY測定の標準化が進むことで,今回のように活性値が大きく乖離し,臨床に混乱を与えうる可能性のある事例は減少するのではないかと考える。
AMY測定試薬は,アイソザイム比率によってG2およびG7間で系統誤差が目立った。また,基質間において,α-グルコシダーゼ阻害剤の影響は認められなかった。今回,マクロアミラーゼが乖離原因の1つと思われる検体により,基質間で測定値が大きく乖離を認めた。今後わが国において,AMY測定の標準化法への移行を進めることで,施設間差がなくなり,本事例のような臨床側へ与えうる混乱も軽減すると推測される。
本研究は益田赤十字病院の倫理委員会にて承認された(承認番号:124)。
本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。