2025 Volume 74 Issue 3 Pages 621-627
カルバペネマーゼ(carbapenemase; CP)産生腸内細菌目細菌が産生するCPには様々な種類があり,海外では地域によって優勢な型が異なっている。今回,海外渡航歴のない高齢日本人で,ニューデリーメタロ-β-ラクタマーゼ-5(New Delhi metallo-β-lactamase-5; NDM-5)を産生し,ペニシリン結合蛋白3の変異を持つEscherichia coliによる腎盂腎炎を経験したので報告する。患者は,左腎盂尿管移行部狭窄症がある介護施設入所中の84歳男性で,発熱と腹痛のため入院した。身体所見と腹部CT検査から左閉塞性腎盂腎炎と診断し,尿管ステント留置とセフトリアキソン投与を行った。入院翌日には症状が改善したものの,入院時に採取した血液培養と尿培養からCP産生E. coliを検出したため,入院4日目より抗菌薬をホスホマイシン静注に変更し,入院18日目まで投与した。検出したE. coliは,シーケンス型がST410で,blaNDM-5遺伝子を持ちそれがIncX3型プラスミド上に存在し,ペニシリン結合蛋白3に変異(p.P333_Y334insYRIN)があった。国内で検出されるE. coliのうち,ST410に属するもの,およびペニシリン結合蛋白3に変異があるものの疫学調査はほとんど行われておらず,今後調査が必要と考える。
The predominant types of carbapenemase (CP) produced by CP-producing Enterobacterales vary by region. Here, we report a case of pyelonephritis caused by Escherichia coli producing New Delhi metallo-β-lactamase-5 (NDM-5) and having a mutation in penicillin-binding protein 3 (PBP3) in an elderly Japanese who had never traveled abroad. An 84-year-old man residing in a nursing home and having left pyeloureteral junction stenosis was hospitalized because of fever and abdominal pain. Physical examination and computed tomography scanning showed findings consistent to left obstructive pyelonephritis. A ureteral stent was placed and administration of ceftriaxone started empirically, which improved the patient’s symptoms on the next day. The administered antibiotic was switched to intravenous fosfomycin on day 4 because CP-producing E. coli was detected in the blood and the urine collected from the patient on admission, which was given until day 18. The isolated strains, whose sequence type was ST410, had the blaNDM-5 gene located on an IncX3-type plasmid and a mutation of p.P333_Y334insYRIN in PBP3. Because epidemiological data of E. coli ST410 and that with PBP3 mutations have been limited in Japan, further studies are needed to characterize these groups of E. coli in this country.
カルバペネム系抗菌薬は,グラム陽性菌からグラム陰性菌・嫌気性菌まで幅広い抗菌スペクトラムを持つβ-ラクタム系抗菌薬で,短時間で殺菌効果を示すこと,様々なβ-ラクタマーゼに対して安定なことなどから,重症・難治性感染症における切り札的治療薬として使用されることが多い。しかし現在,カルバペネムを分解するカルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌(carbapenemase-producing Enterobacterales; CPE)が世界中に広まっており,公衆衛生上の大きな問題になっている。CPEが産生するカルバペネマーゼには様々な種類があり,地域によって優勢なカルバペネマーゼの型が異なっている。日本で検出されるCPEは,ほとんどがimipenemase(IMP)型カルバペネマーゼを産生するものだが,近年,Klebsiella pneumoniae carbapenemase(KPC)型やニューデリーメタロ-β-ラクタマーゼ(New Delhi metallo-β-lactamase; NDM)型といった,従来海外で流行していたカルバペネマーゼ型CPEの検出事例が増加している1),2)。
NDMは,2009年にスウェーデンから初めて報告されたカルバペネマーゼで,2007年にインドのニューデリーの病院に入院歴のある患者の尿から分離したKlebsiella pneumoniaeから検出された3)。このカルバペネマーゼは,モノバクタム系を除くほとんどのβ-ラクタム系抗菌薬を加水分解し,アビバクタム,クラブラン酸,スルバクタム,タゾバクタムといった現在臨床使用できるβ-ラクタマーゼ阻害薬でその活性を阻害することができない。NDMには,1~数個のアミノ酸配列の違いにより,約25の亜型がある。そのうちNDM-5型は,NDM-1型と比べて2か所のアミノ酸変異(V88L, M154L)があり,試験管内でのカルバペネマーゼ活性がNDM-1型より高い4),5)。
NDM型CPEは,NDM以外のβ-ラクタマーゼも産生するなど,他の様々な薬剤耐性機序を同時に保有していることが多い。このため,感染症を起こした場合,治療薬の選択に難渋する。アメリカ感染症学会(Infectious Diseases Society of America; IDSA)および欧州臨床微生物感染症学会(European Society of Clinical Microbiology and Infectious Diseases; ESCMID)のガイドラインでは,アズトレオナム(aztreonam; AZT)とセフタジジム/アビバクタム(ceftazidime/avibactam; CAZ/AVI)の併用,あるいはセフィデロコル(cefiderocol; CFDC)の投与を推奨している6),7)。前者は,モノバクタム系抗菌薬であるAZTが,NDMでは分解されにくいのに対し,同時に産生しうる基質拡張型β-ラクタマーゼ(extended-spectrum β-lactamase; ESBL)やAmpC型β-ラクタマーゼなどで失活するため,アビバクタムでこれらのβ-ラクタマーゼ活性を阻害させることを目的に併用する。後者は,CPE感染症に対する治療薬として,現在単剤で使用可能な唯一の抗菌薬である。
今回我々は,海外渡航歴がない高齢日本人で,NDM-5産生Escherichia coliによる閉塞性腎盂腎炎を経験した。本症例の経過および検出した菌の薬剤耐性メカニズムについて報告する。
患者:84歳,男性。
主訴:発熱,腹痛。
既往歴:左腎盂尿管移行部狭窄症,認知症,躁うつ病。
海外渡航歴:なし(家族より聞き取り)。
現病歴:約1年前より介護療養型医療施設に入所中。2日前より発熱,前日より腹痛が出現したため,入所施設でセフトリアキソン(ceftriaxone; CTRX)を投与された後,救急搬送された。
2. 入院時現症来院時のバイタルサインは,体温37.3℃,血圧145/82 mmHg,脈拍数83/分(整),呼吸数20回/分,SpO2(room air, rest)96%だった。身体所見では,腹部がやや膨満しており,腹部全体(左側部優位)に圧痛を認め,左の肋骨脊柱角叩打痛が陽性だった。血液検査では,白血球数5.9 × 103/μL,ヘモグロビン11.5 g/dL,血小板数300 × 103/μLで,血清C反応蛋白(CRP)の上昇(21.5 mg/dL)および軽度の腎機能障害(血中尿素窒素20.7 mg/dL,血清クレアチニン0.99 mg/dL)を認めた。尿のグラム染色では,白血球とグラム陰性桿菌を認めた。搬送元の施設で撮影した腹部単純CT検査では,左水腎および左腎臓周囲の毛羽立ち(Figure 1),および腸管内のガス貯留を認めたが,明らかな腸管の狭窄は認めなかった(Figure 2)。
左水腎(黒矢印)および左腎臓周囲の毛羽立ち(白矢印)を認める.
腸内のガス貯留(白矢印)を認める.
経過および入院時の所見から,左閉塞性腎盂腎炎および麻痺性イレウスと診断した。閉塞性腎盂腎炎に対して,尿管ステントを留置し,CTRX 2 g/日の投与を継続した。また,麻痺性イレウスに対して,絶食および補液管理を行った。入院2日目には解熱し,腹痛も軽減したため,3日目から食事摂取を再開した。入院4日目の血液検査では,血清CRP値が5.59 mg/dLに低下していたが,入院時に採取した血液および尿からCTRX耐性のE. coliを検出したため,薬剤感受性試験の結果(Table 1)をふまえ,抗菌薬をホスホマイシン(fosfomycin; FOM)2 g/日静注に変更した。その後,血清CRP値は引き続き低下し,入院18日目に抗菌薬治療を終了した。患者は,退院調整後,入院97日目に介護老人保健施設へ退院となった。退院3年後に患者家族に確認したところ,腎盂腎炎の再発は起こしていなかった。
抗菌薬 | 最小発育阻止濃度 (μg/mL) |
判定 |
---|---|---|
アンピシリン | > 16 | R |
セファゾリン | > 16 | R |
セフトリアキソン | > 2 | R |
セフェピム | > 16 | R |
セフメタゾール | > 32 | R |
ピペラシリン/タゾバクタム | > 64 | R |
イミペネム/シラスタチン | > 2 | R |
メロペネム | > 2 | R |
アズトレオナム | 8/ > 8* | I/R* |
アミカシン | ≤ 2 | S |
ミノサイクリン | 4 | S |
ST合剤 | > 2/38 | R |
レボフロキサシン | > 4 | R |
ホスホマイシン | ≤ 4 | S |
セフィデロコル | 4 | S |
*TMCH206048/TMCH206037に対する最小発育阻止濃度および判定
S:感性,I:中間,R:耐性
来院時に採取した尿を,ヒツジ血液寒天/BTB寒天分画培地(日本ベクトン・ディッキンソン,東京)に接種し,好気条件下で35℃,24時間培養したところ,グラム陰性桿菌が純培養状に発育した。血液は2セット採取し,それぞれをBDバクテックTM23F好気用レズンボトルPとBDバクテックTM22F嫌気用レズンボトルPに接種後,BDバクテックTMFXシステム(日本ベクトン・ディッキンソン)を用いて培養した。培養開始11時間後および13時間後にそれぞれのセットが陽性になり,どちらのボトル内容液にもグラム陰性桿菌を認めたため,ボトル内容液をヒツジ血液寒天/BTB寒天分画培地に接種し,好気条件下で35℃,24時間培養した。
2. 同定・薬剤感受性検査尿および血液培養ボトル内容液から培養された菌株(それぞれTMCH206048およびTMCH206037)について,Neg Combo EN4JパネルおよびMicroScan WalkAway 96 plus(ベックマン・コールター,東京)を用いて同定したところ,どちらもE. coliと同定された。分離菌に対する各種抗菌薬の最小発育阻止濃度(minimum inhibitory concentration; MIC)を,同じくNeg Combo EN4JパネルおよびMicroScan WalkAway 96 plus(基準濁度法)で測定した。また,CFDCのMICを,塩野義製薬MICドライプレートCFDC(塩野義製薬,大阪)で測定した。これらのMIC値を,米国臨床検査標準協議会(Clinical and Laboratory Standards Institute; CLSI)M100第33版8)の基準に従って判定したところ,測定したβ-ラクタム系抗菌薬のうち感性だったのはCFDCのみだった(Table 1)。
TMCH206048およびTMCH206037株のカルバペネマーゼ産生能を,NG-test® CARBA-5(島津ダイアグノスティクス,東京)を用いて調べたところ,どちらの株もNDMのみが陽性だった。また,TMCH206048およびTMCH206037をそれぞれミュラーヒントン寒天培地(Becton Dickinson and Company, Sparks, MD, USA)に塗布した後,各寒天培地上にAZT 30 μg含有ペーパーディスク(BDセンシ・ディスクTM,日本ベクトン・ディッキンソン,東京)を2枚ずつのせ,片方に3-アミノフェニルボロン酸(スギヤマゲン,東京)500 μgを添加して37℃で一晩培養したところ,ディスク周囲の発育阻止円径は全て19 mmと,3-アミノフェニルボロン酸添加による差を認めなかった。
3. 遺伝子検査陽性となった血液培養ボトル内容液を,Verigene®血液培養グラム陰性菌・薬剤耐性核酸テスト(BC-GN)(日立ハイテク,東京)とFilmArray®血液培養パネル2(ビオメリュー・ジャパン,東京)で解析したところ,NDMとE. coliの遺伝子を検出し,他の薬剤耐性遺伝子は検出しなかった。
ヒツジ血液寒天培地(日本ベクトン・ディッキンソン)上で一晩培養したTMCH206037株を,半コロニー程度Tris-EDTAバッファー100 μLに懸濁し,10分間煮沸後,10分間遠心して上清を回収し,PCR反応のテンプレートとした。PCR増副産物の塩基配列は,BigDyeTM Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kitおよび3500xL Genetic Analyzer(サーモフィッシャーサイエンティフィック,東京)を用いて,ダイレクトシーケンス法で調べた。カルバペネマーゼ遺伝子の有無を,シカジーニアス®カルバペネマーゼ遺伝子型検出キット(関東化学,東京)で調べたところ,blaNDM groupのみ陽性だった。このため,blaNDM遺伝子全体をコードする領域をPCRで増幅し9),増幅産物の塩基配列からアミノ酸配列を推定してBasic Local Alignment Search Tool(https://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)で検索したところ,NDM-5のアミノ酸配列(accession番号:WP_023408309.1)と一致した。CTX-M型,TEM型,およびSHV型β-ラクタマーゼの遺伝子10)は検出されなかった。また,ftsI遺伝子の塩基配列解析11)から,ペニシリン結合蛋白3(penicillin-binding protein3; PBP3)のP333位後にYRINの4アミノ酸挿入(p.P333_Y334insYRIN)を認めた。シーケンス型12)はST410であった。
TMCH206037からアルカリ法でプラスミドを抽出し,ヒートショック法でE. coli DH5αに導入して,アンピシリン耐性の形質変換体を作成した13)。得られた形質変換体のうち,PCRでblaNDM-5遺伝子陽性を確認できたものは,全てIncX3陽性14)であった。
本症例の患者は,左腎盂尿管移行部狭窄症があり,左水腎症を伴う発熱を起こして入院したが,尿管ステント留置により速やかな全身状態の改善を認めた。入院時に採取した尿および血液からblaNDM-5遺伝子を持つNDM産生E. coliを検出したことから,この患者はNDM-5産生E. coliによる閉塞性腎盂腎炎および菌血症を起こしていたと診断した。
現在NDM型CPEは,世界中で検出されているが,その検出率は地域によってばらつきがあり,南アジア,バルカン地方,北アフリカ,中東で検出率が高い4)。日本では,54歳男性が2009年にインドでギランバレー症候群を発症し,人工呼吸器管理のまま帰国した1か月後に採取した血液からNDM産生E. coliを分離した事例15)が,最初の報告である。カルバペネム耐性腸内細菌目細菌病原体サーベイランスによると,日本では2022年に33株のNDM型CPEの報告がある2)。そのうちの31株は,本症例と同様に海外渡航歴のない者から分離されており,元々海外で流行していたNDM型CPEが,日本国内でも拡散しつつあると考える。
本症例で検出したNDM-5型カルバペネマーゼは,日本のCPEから検出されるNDMのうち,NDM-1型と並んで報告が多い亜型である2)。NDM-5をコードする遺伝子は,今回検出した株のように,IncX3型プラスミド上に存在することが多い4)。NDM-5遺伝子を持つIncX3型プラスミドは,遺伝型の異なるヒト由来と海水由来のE. coliの間で伝播する16),菌種を超えた院内伝播を起こす17)など,NDM-5遺伝子の拡散に寄与していることが報告されている。本症例では,患者は海外渡航歴がないと患者家族が述べていることから,国内でNDM-5型CPEを獲得した可能性が高い。しかし,搬送元の介護施設などの環境調査を行っておらず,今回検出した菌がどのような経路で患者に伝播したのかは不明である。今後NDM-5型CPEの分子疫学情報が蓄積されると,国内伝播事例の感染経路を推定できるようになるかもしれない。
今回分離したNDM-5産生E. coliは,AZT非感性だったため,そのメカニズムを調べた。その結果,代表的なESBLであるCTX-M,TEM,SHVの遺伝子を検出しないこと,シカジーニアス®カルバペネマーゼ遺伝子型検出キットで検出できたカルバペネマーゼ遺伝子がblaNDM groupのみであること,AmpC型βラクタマーゼなどの阻害剤である3-アミノフェニルボロン酸の添加によってAZTの活性が回復しないことが判明した。これに対し,PBP3をコードしているftsI遺伝子を解析したところ,p.P333_Y334insYRIN変異を認めた。このPBP3の変異は,AZTのMIC値を16倍上昇させる11)。今回,AZTを分解する全てのβ-ラクタマーゼの有無を調べたわけではないが,AZTを分解しうる代表的なβ-ラクタマーゼあるいはその遺伝子を検出しなかったことから,このPBP3の変異がAZT非感性をもたらした原因と考えた。このPBP3変異を持つNDM型CPEに対しては,AZTにCAZ/AVIを併用しても効果は期待できないと考える。また,このPBP3変異は,NDM-5産生CPEのCFDC耐性とも関連しているという報告もある18)。日本国内では,PBP3にp.P333_Y334insYRIN変異を持つE. coliの報告はほとんどなく,今後日本でも疫学調査が必要と考える。
本症例では,当初分離菌が耐性を示すCTRXで治療を開始し,翌日には患者の全身状態が改善した。このため,極期の病状コントロールには,尿管ステント挿入による尿路閉塞の解除が有効だったと考える。菌血症を合併していたため,分離菌の薬剤感受性が判明してからは,抗菌薬をFOMに変更した。これは,薬剤感受性試験で感性を示したことに加え,一次感染巣が尿路だったこと,本症例診療時まだ日本ではCFDCが保険適応になっていなかったこと,分離菌がST合剤およびキノロン系抗菌薬に耐性だったこと,高齢者でありアミノグリ誘導コシド系抗菌薬が使いにくかったこと,が理由である。FOMは尿路移行性に優れている抗菌薬だが,in vitroでは耐性化をしやすい19)。CPE感染症の治療にFOMを使用することの評価はまだ十分定まっていないが7),尿路感染症であれば治療薬として使用できるかもしれない。
本症例で検出したST410のE. coliは,2010年頃から,世界各地で行われるヒトおよび動物を対象とした薬剤耐性E. coliサーベイランスで流行が報告されるようになった,新興クローンである20)。特に,今回のように,カルバペネマーゼ産生E. coliの中で検出される頻度が高い。E. coli ST410の薬剤耐性は,キノロン耐性決定領域の変異,blaCMYおよびblaCTX-M-15遺伝子の獲得,blaOXA-181遺伝子の獲得,と段階的に進化するとされている。しかし今回検出した株は,キノロン系抗菌薬に耐性を示したものの,blaCTX-M-15およびblaOXA-181遺伝子を持っておらず,薬剤耐性の進化のどの位置に該当するのかは不明である。日本でのE. coli ST410の疫学はまだ十分調査されておらず,このクローンが国内でどの程度拡散しているのか,今後どのような薬剤耐性を獲得していくのか,さらなる調査が必要である。
今回,海外渡航歴のない高齢者に生じた,NDM-5産生E. coliによる菌血症を伴う閉塞性腎盂腎炎症例を経験した。分離した菌は多くの抗菌薬に非感性だったが,尿路閉塞の解除とFOM投与により治療することができた。今回分離したE. coliは,NDM-5を産生する他に,PBP3にp.P333_Y334insYRIN変異を持つ,ST 410に属する,といった薬剤耐性および病原性に関連する特徴を持っていた。これらの特徴を持ったE. coliの調査は,私たちの知る限り,日本ではほとんど行われていない。このような特徴を持つE. coliが現在国内にどのくらい存在し,今後どう広まっていくのか,疫学調査が必要と考える。
倫理的配慮当院の個人情報保護方針に則り,症例報告の際の患者個人が特定化される可能性のある情報は削除し,また発表に関する同意を患者自身から取得した。
本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。