Journal of Environmental Chemistry
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Review
Outline of PFAS Issues
— With a Focus on Fluorinated Surfactants —
Yasuyuki SHIBATA
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2026 Volume 36 Issue Special_Issue Pages s2-s8

Details
要約

PFOS,PFOAを含むレガシーPFAS並びに代替,未規制PFASの主な化学構造と特徴,用途について,その歴史的発展並びに規制の経緯とともにまとめた。データギャップや研究ニーズを指摘し,管理における課題についても考察した。

Summary

Major chemical forms, specific properties and applications of legacy PFAS, such as PFOS and PFOA, as well as PFAS alternatives / non-regulated PFAS are summarized together with the outline of their history of development and regulation. Data gaps and research needs are listed, and future management options are briefly discussed.

1. PFASとは?

PFAS(Per/polyfluorinated alkyl substances)は完全にフッ素化されたメチル基(CF3-)ないしメチレン基(-CF2-)を一つ以上含むアルキル化合物で,低分子から高分子まで1万種類以上の様々な物質を含む1,2。強固なC-F結合で覆われたアルキル鎖は,化学的,生物学的に安定なだけでなく他物質との相互作用が弱く,水や油ともなじまず(撥水撥油性),低粘性,高潤滑性,非粘着性を示す。また,高い透明性や耐候性,絶縁性などの様々な特徴的性質を持ち,それらを長期間発揮することから,近年の産業活動や日常生活の様々な局面で広く活用されてきた3,4。一方,長期にわたって環境中に残留することから,永遠の化学物質(Forever Chemicals)とも呼ばれる。

有機フッ素化合物の利用は,アンモニアに代わる安全な冷媒としてのフロンの開発に始まる(注:フロンはPFASの定義2に含まれない)。その後ポリテトラフルオロエチレン(テフロン)が偶然に発見され,フッ素系高分子の優れた特性が注目されるようになった。20世紀後半には,PFOS(Perfluorooctane sulfonic acid)を始めとするフッ素系界面活性剤も含めて数多くの有機フッ素化合物の開発と利用が進められた4。一方,環境残留性,生物蓄積性に加え長期毒性が認められて3M社によるPFOSの製造が2002年に中止され5,2009年には残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(以下条約と略記)の規制対象に追加された。その後PFOA(Perfluorooctanoic acid)が2019年に,PFHxS(Perfluorohexane sulfonic acid)が2022年にそれぞれ条約に追加され,長鎖PFCAs(ペルフルオロアルキルカルボン酸)の追加も2025年の第12回締約国会議で決定された6。この間,米国では2015年を目途にPFOA及び長鎖PFCAsの製造,使用を中止する管理責任(Stewardship)プログラムが推進された7。さらに欧州化学品庁ECHAがPFASの一斉規制を検討する2など,21世紀になって一転してPFAS規制の動きが強まっている。こうした経緯を国内の主な活動8,9を含めてFig. 1 にまとめた。以下,フッ素系界面活性剤を中心としてPFAS問題を概観する。

Fig. 1 Major producers/suppliers and regulation of PFAS surfactants in Japan, US and the world3,4,5,6,7,8,9

Vertical straight arrows indicate timing of major applications. Horizontal open arrows show production periods. Dotted lines show locations of factories of major producers/suppliers in Japan. See ref. 8 for more details about Japanese PFAS production histories except DIC, which was shown in ref. 9.

2. PFOS, PFOAなど規制対象物質,候補物質(レガシーPFAS)の構造と用途

フッ素系界面活性剤の製造方法には,ECF(電解フッ素化:Electrochemical Fluorination)とテロメリゼーション(Telomerization)がある10。PFOS,PFHxSなどのPFSAs(ペルフルオロアルキルスルホン酸)はECF法で,これらの代替物質である6:2 FTSなどはテロメリゼーション法で作られた。PFOAなどの製造にはどちらも使われている。ECF法はシンプルだが様々な副反応が起きる。3M社の報告11によれば,ECF法によるPFOS直鎖体の割合は35~40%で,残りは様々な分岐異性体,長さの異なる直鎖体,アルカン類やエーテル類,タール成分からなる。これを精製して直鎖体70%,分岐体30%程度を含む製品を出荷した。

PFOSは水溶性で,撥水性を長持ちさせるために繊維との相互作用を強めたり共有結合させたり高分子化して表面を覆う目的で様々な誘導体が作られた(Fig. 25,12。PFOS単体は水成膜泡消火剤(AFFF),半導体製造,金属メッキ液ミスト防止,掘削潤滑剤,撥水スプレーなどに使われた。N-MeFOSE,N-EtFOSEは紙や食品包装の表面加工に使われ,じゅうたんや皮革製品,衣類,繊維製品などの防汚加工にはアクリル酸などと結合して高分子化したものが使われた。なお,N-EtFOSA(Sulfluramid)のハキリアリ殺虫剤用途はまだ代替がなく,条約の下で限定利用が認められている。

Fig. 2 Production and major uses of PFOS and its derivatives5,12

Chemical name is written in bold, and the major use (s)12 is listed under the name (s) on the same gray rectangular tile. Production amount of each category (circled by dotted lines) in US (or the world in parenthesis) in 20005 is written in bold italic.

一方,PFOAなどPFCAsにも撥水加工,離型剤,フッ素系高分子の重合時の分散剤など多くの用途が報告されている。PFCAsは分析操作中のコンタミも甚だしかった13。フッ素系高分子製の容器やチューブ(分散剤)のほか,これらの素材の部品やフィルムなどを使うLCポンプやデガッサー,一部のゴムやプラスチック製品(離型剤),クリーンシューズ(防汚加工),液体窒素デュワーの表面塗料(撥水加工),さらにはクリーンルームや簡易クリーンベンチのHEPAフィルター(通気性向上)など様々な汚染源が見つかり,PFCAsの広範な利用実態を認識させられた13

テロメリゼーション法ではテトラフルオロエチレンを次々重合させてゆき,最後にエチレンをつなげて末端を水酸基に変えたFTOH(フルオロテロマーアルコール)を中間体として生成する。撥水撥油剤として使われたのは出発物質が炭素数2の場合で直鎖体のみを含む。炭素数3からスタートすると直鎖体と末端分岐体(イソ体)の2つの異性体の混合物となる10。末端をカルボン酸に変えて単体利用したほか,アクリル酸などと結合させ高分子化したりリン酸エステル化して衣類や食品包装紙の表面加工などに使われた14。なお,FTOHはN-MeFOSEなどのスルホンアミド誘導体と同様に揮発性を持ち,大気経由の地球規模汚染を引き起こす。

一方,短鎖ペルフルオロアルキル基をエーテル結合でつなぐ繰り返し構造をもつPFPEs(ペルフルオロポリエーテル)も多く作られ使われた。これらは上記と異なりHFPO(ヘキサフルオロプロピレンオキサイド)の重合反応やヘキサフルオロプロピレン,テトラフルオロエチレンの光酸化反応などで作られる15。化学的,熱的安定性や低粘性などの特徴を持ち,グリースや潤滑剤,ポンプオイルなど様々な用途に使われたが15,レガシーPFAS規制後はPFPEsを基本骨格とする代替PFASが作られてFTOH及び類縁化合物とともに利用されている。

3. 代替PFAS,未規制PFAS

製造中止や管理責任プログラム推進,条約追加に伴い,代替物質の開発と利用が進められてきた。レガシーも含めて主なPFASの構造をFig. 3 にまとめる。PFOSの代替として短鎖のPFHxSやテロマー系の6:2 FTS,それらの誘導体など(AFFF,金属メッキ),塩素及びエーテル結合を有する9Cl-PF3ONS(金属メッキ),環状構造のPFECHS(航空機作動油添加剤)などが各用途に開発,使用されている。PFOAなどの代替としてはFTOHやPFPEs及びそれらの誘導体などがフッ素系高分子の重合時の分散剤や表面処理などに使われている。例えばHFPOの重合体(HFPO-DA(類縁物質を含めてGenXとも呼ばれる)やHFPO-TA),DONA,PFMPA,PFMBA,一連のペルフルオロポリエーテルカルボン酸(CF3(OCF2nCOOH),テロマーカルボン酸(5:3 FTCAなど)など多くのテロマー系,エーテル系PFASがフッ素化学工場周辺などで見つかっている16。また食品包装紙の表面コート,ラミネート,サイズ剤にもフッ素系高分子を含む多くのPFASが使われており17,PFCAsやPFSAs,monoPAPを始めとするリン酸/ホスホン酸誘導体,その他テロマースルホン酸,テロマーカルボン酸など数多くの界面活性剤の利用が報告されている18。こうした代替PFASの中で,HFPO-DA,9Cl-PF3ONS,C6O4,OBS,HEP(Fig. 3 参照)などは毒性面からも注目されている19,20

Fig. 3 Examples of legacy/alternative/non-regulated PFAS16,18,19,20,29,30,31,32

PFOSに代わるAFFF成分として,6:2 FTS誘導体をはじめ様々な誘導体が作られ使われた。米軍のAFFFに含まれるPFASの報告例をFig. 4 に示す21。米国NISTは4種類の米軍AFFFをそれぞれ希釈して参照物質を作成し,ターゲット分析による参照値とノンターゲット分析の同定結果を報告している22。報告されたPFASの中にはまだ分析標準がなく確実な定性や定量が困難なものもあり,AFFF由来の汚染実態解明の障害となっている。なお,フッ素フリーの泡消火剤(F3:Fluorine-Free Foams)開発も推進されており23,米軍も2025年10月1日を目途に調達作業を進めている24

Fig. 4 Major PFAS used in US military AFFFs21

Company name is written in decorative characters, while a common name of each chemical is written in gray bold italic. In addition to those in the figure, a variety of PFAS were found in AFFF22.

半導体製造工程におけるPFASの使用例をFig. 5 に示す。フォトレジストのパターン形成に用いられるPAG(Photoacid Generator)は,フッ素の強い電気陰性度により超強酸の性質を示す短鎖のペル/ポリフルオロアルキルスルホン酸を紫外光の照射で放出する25。その後のウェットエッチングプロセスではPFOS(FC-95)が使われ,製造中止後はNOVEC 4200,4300などが使われた26,27。乾燥工程で表面張力によるパターンの崩壊を避けるためのPFAS(C4F9OCH3)利用も報告されている27。半導体製造には他にもパッケージングや絶縁体としてのフッ素化ポリイミド,フッ素化ポリベンゾキサゾール,各層の反射防止コートに欠かせない低屈折率のフッ素系高分子,さらにはナノインプリンティング法での製造時に使われるフッ素系離型剤など,様々な目的でフッ素系の界面活性剤や高分子などが開発,利用されている25。ECHAのPFAS規制の動き2に対応して業界もコンソーシアムを立ち上げ,情報集約作業を進めている28。その他,先述の繊維産業29や食品包装18のほか,塗装関連30における界面活性剤や高分子,化粧品31,32における界面活性剤,揮発性物質など様々なPFASの使用が報告されている。

Fig. 5 PFAS used in semiconductor production

(A) PFAS used as PAG (photoacid generators)25

(B) Fluorinated surfactants for wet etching process26,27

代替物質は,炭素鎖長を短くする/分岐する/途中にエーテル結合を入れる/フッ素の鎧の一部を水素や塩素に置き換える,などの方法で,生物濃縮性や化学的/生物学的安定性を下げている。しかしながら,毒性が認められたり毒性情報の不十分さが指摘された代替物質もある19,20。代替PFASについては海外での調査報告が多く,国内での使用実態やサブスタンスフローの解明,主な排出源の把握を進め,排出源周辺並びに一般環境の監視を行い,実態把握に努めることが重要だろう。

4. PFAS汚染の特徴

PFASの主な環境汚染源として,以下のようなものがあげられる。

1)PFAS製造工場

2)PFAS使用工場

3)AFFF使用施設

4)1),2)からの排水処理施設,廃棄物埋立処分場

5)その他(使用製品の利用などを通じたヒトへのばく露や環境放出)

PFASの製造,使用をやめれば工場からの大気,水への排出は比較的早く下がると予想されるが,土壌や底質が汚染されると周辺の表流水や地下水の汚染が長期間継続する恐れがある。また,使用製品が使われている間はばく露も続く。さらに工場からの産業廃棄物にもPFASやフッ素を含む副生成物などが比較的高濃度で含まれる可能性があり,埋立処分場からの汚染水放出や周辺地下環境汚染が懸念される。

PFOSなどのフッ素系界面活性剤は極めて安定で,活性汚泥処理では分解されず,下水処理場に流入したPFOSの大半は除かれずに放流される33。ただし活性汚泥へも濃縮されるため34,活性汚泥の農業利用などには分析による確認が欠かせない。レガシーPFASの製造/使用工場の排水やその処理を行った下水処理場の放流水による汚染33,35,36,工場周辺の地下水汚染や大気経由の拡散36,PFOS含有AFFFの使用や訓練に起因する空港周辺の水質汚染35など,国内の主要な汚染源や汚染実態はPFOSの条約追加の前後までにある程度明らかにされていた37,38。最近各地で報告が相次ぐ汚染事例も,規制以前の使用,排出に起因するものが多いと考えられる。特にAFFFは散布後土壌にしみ込んで極めて長期にわたりPFAS汚染を継続する恐れがあり39,またコンクリートやアスファルトに浸透,蓄積されて二次的汚染源ともなる40。汚染水は活性炭などで処理できるが,定期的な交換と汚染活性炭の適正処理が必要となる。PFAS含有排水や汚染土壌,汚染コンクリート,汚染活性炭などのコストや実用性に優れた処理方法の開発と社会実装が求められる。

一方,代替PFAS,未規制PFASについては化学構造や使用実態も含めてまだ不明の点も少なくなく,毒性情報も限られる。代替物質は生物蓄積性や安定性を下げる方向で開発されているものの,毒性が見つかって海外で規制対象に追加される物質もでてきており,早急な実態把握が求められよう。PFASは種類が多いだけでなく,これまでにわかったPFASの毒性も多岐にわたる。少しずつ構造の異なる多くの物質が作られ使われており,PFASの複合ばく露評価の必要性も指摘されているが,毒性情報不足に加えて毒性発現機構が多岐にわたるため,ダイオキシンのように共通の指標で毒性強度を評価し総和で管理するのは困難とされる41。飲料水の基準/目標に関し,対象PFASの種類や組み合わせ,規制値などの設定が国ごとに異なる42のも,こうした毒性評価の難しさが背景にあると思われる。近年,利用の必要不可欠性を規制の判断基準とするエッセンシャルユースの考え方が提案され,ECHAのPFAS規制案を含め化学物質管理への適用が検討されている43。今後の動向が注目される。

5. まとめ

PFASの中で特に毒性情報,環境濃度,ヒトばく露実態から注目されるフッ素系界面活性剤を中心に,主な化学形態と使用実態,規制についてまとめた。フッ素系界面活性剤はその優れた撥水撥油性,安定性,耐久性などの特徴から様々な用途に使われ,現代社会を支える重要な役割を担っている。毒性の見つかった物質をより安全と考えられる代替物質に置き換えつつ,こうした残留性の高い物質を環境に出さずヒトにばく露させない閉鎖的な利用体系の構築が急がれる。

フッ素フリー物質への代替も進められている。ただ,PFASの役割を考えると,代替物質にも同様の安定性などが求められる結果,たとえフッ素フリーでも長く環境に残留して思わぬ問題を起こす可能性があるかもしれない。実際,PFASと同様に広く利用されてきた界面活性剤の環状シロキサンは欧州で規制が強化されつつある44。表面処理やAFFFなど閉鎖系利用が難しい用途もあり,代替しても問題が見つかる「残念な代替」(regrettable substitution)を避けるためには,毒性発現機構の解明や丁寧な毒性試験の実施とリスク評価など,地道な努力の積み重ねも必要と考えられる。

幾多の優れた性質を持ち,現代社会に欠かせない役割を果たすPFASだが,その負の影響を抑えて管理しながら活用する,或いは適切に代替するための科学的基盤の整備・拡大と適正管理方策の策定,推進が求められている。

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