Journal of Environmental Chemistry
Online ISSN : 1882-5818
Print ISSN : 0917-2408
ISSN-L : 0917-2408
Review
Ecological Impacts and their Evaluations Concerning Per- and Polyfluoroalkyl Substances (PFAS) on Fish Species
Hiroshi ISHIBASHI
Author information
JOURNAL OPEN ACCESS FULL-TEXT HTML

2026 Volume 36 Issue Special_Issue Pages s50-s58

Details
要約

ペル及びポリフルオロアルキル化合物(PFAS)の生態毒性情報は,残留性有機汚染物質(POPs)に関するストックホルム条約の対象物質であるペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)やペルフルオロオクタン酸(PFOA),近年POPsに追加されたペルフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS)や長鎖ペルフルオロカルボン酸(PFCA)については蓄積されつつある。一方で,PFOSやPFOAと類似の構造的特徴をもち,1万種類以上あるとされる代替及び新規PFASの生態毒性情報は極めて少ない。水環境はPFASを含めさまざまな化学物質が流入するため,水環境中に生息する水生生物に対する毒性影響やリスク評価は喫緊の課題である。本稿では,小型魚類(ゼブラフィッシュ,ミナミメダカ)を中心に,in vivo試験によるPFASの神経系,免疫系,肝臓・脂質代謝系,甲状腺ホルモン及び生殖系に及ぼす影響と,それぞれの影響メカニズムや遺伝子・タンパク質の発現変化を解析した研究事例を整理した。また,ECOTOXデータベースから抽出された魚類に対する毒性閾値や影響濃度と公共用水域等の指針値を比較するとともに,PFASの生態影響に関する今後の課題と展望について提言した。

Summary

In Japan, ecotoxicity testing of chemical substances, including per- and polyfluoroalkyl substances (PFAS), is conducted on algae, crustaceans, and fish in accordance with the test guidelines established by the Organization for Economic Cooperation and Development (OECD) or the Law Concerning the Evaluation of Chemical Substances and Regulation of Their Manufacture (Chemical Substances Control Law). Among PFAS, perfluorooctanesulfonic acid (PFOS) and perfluorooctanoic acid (PFOA) are regulated both domestically and internationally under the Stockholm Convention on Persistent Organic Pollutants (POPs) and the aforementioned law, resulting in the accumulation of substantial ecotoxicity data. The POPs Convention, a recent treaty, encompasses PFOA and PFOA. Additionally, perfluorohexanesulfonic acid (PFHxS), newly designated under the POPs Convention, and long-chain perfluorocarboxylic acids (PFCAs), which are being evaluated as potential candidates for regulation under the Convention, are subjects of ongoing ecotoxicity data collection. This review presents the findings of these studies with a primary focus on fish. Furthermore, it has been noted that existing PFASs impact various biological functions, including the nervous, immune, and endocrine systems, as well as lethality and growth inhibition, which have been utilized as endpoints in ecotoxicity tests. This review also provides examples of studies on the effects reported in existing PFAS, as well as on alternative and new PFAS.

1. はじめに

我が国では,ペル及びポリフルオロアルキル化合物(PFAS)をはじめとする化学物質の生態毒性試験は,経済協力開発機構(OECD)の定めたテストガイドラインまたは化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)に定めるテストガイドラインに基づき,藻類,甲殻類,魚類及び底生生物などを用いて実施されている。PFASのうち,ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)とペルフルオロオクタン酸(PFOA)については,残留性有機汚染物質(POPs)に関するストックホルム条約(POPs条約)や化審法において国内外で規制されており,多くの生態毒性データが報告されている1。また,新たにPOPs条約の対象物質に指定されたペルフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS)や,PFOA(炭素数:C8)よりも炭素数の多い長鎖ペルフルオロカルボン酸(PFCA, C9~C21)に関しても,生態毒性データが蓄積されつつある。

一方で,PFOSやPFOAなどと構造的特徴などの類似したPFAS代替物質あるいは新規に開発されたPFASが多数存在することが指摘されている2。例えば,OECDは,2018年に4,730種類のPFASのケミカル・アブストラクツ・サービス(CAS)番号を特定し3,米国環境保護庁(USEPA)は,12,000種類以上のPFASをリスト化・情報公開している4。しかし,これら膨大な数の代替及び新規PFASは既存のPFOSやPFOAと比較して,物性,環境動態,ばく露及び毒性影響に関する情報は極めて少ない。特に河川や湖沼,海洋などの水環境は,PFASを含めさまざまな化学物質が流入するため,水環境中に生息する水生生物に対する毒性影響やリスク評価は喫緊の課題である。

小型魚類であるゼブラフィッシュ(Danio rerio)やミナミメダカ(Oryzias latipes)は,実験室内で飼育・産卵が可能なため,約3ヶ月程度と世代時間が短く,透明な胚を用いて卵から孵化までの発生過程を観察できる。そのため,発生生物学,遺伝学,細胞生物学,環境毒性学など様々な分野で用いられており,OECDや化審法の生態毒性試験においても推奨魚種として使用されている5。また,特定の遺伝子を欠損/導入したトランスジェニック系統も各種開発されており,医薬品などの作用メカニズムの解明にも応用されている6。本報では,PFASの魚類を中心とした生態毒性試験などin vivo試験系を用いた影響評価に関する研究事例を紹介する。

2. PFASの影響評価

2.1 神経系

神経伝達物質であるドーパミンは,運動制御,意欲,不安,認知,学習,記憶,その他の行動に関与することが知られており,ドーパミン作動系は神経毒性物質へのばく露に敏感なため,多くの神経毒性物質の共通の標的となる可能性がある7。PFOAやPFOSについても,これまで行動異常との関与が指摘されている発達神経毒性,特にドーパミン神経系への影響が示唆されている。Yuら(2021)8は,PFOAの胚期(受精後2時間)ゼブラフィッシュばく露がドーパミン神経細胞の発達及びドーパミン機能に及ぼす影響を調査している。受精卵に10,100及び 1,000 μg/LのPFOAを7日間ばく露した結果,仔魚の運動活動は減少し,ドーパミンの生成に関与するチロシン水酸化酵素(th)1/2やドーパミントランスポーター(dat)のmRNAレベルが増加し,中脳アストロサイト由来神経栄養因子(manf)のmRNA及びタンパク質発現レベルの減少を報告している。Wuら(2022)9は,ゼブラフィッシュ胚(受精後2時間)を0.032,0.32及び 3.2 mg/LのPFOSに120時間ばく露し,発達エンドポイントと運動行動,活性酸素種(ROS)レベル,ドーパミン含量,神経発達及びドーパミンシグナル伝達に関連する複数の遺伝子及びタンパク質発現レベルを調査している。仔魚の頭部におけるROSレベルの上昇が神経発達障害に関与する可能性を示唆し,PFOSばく露によって生じたと考えられる遊泳の速度や軌跡など自発運動の亢進は,0.32及び 3.2 mg/LのPFOSばく露で観察された。また,ドーパミン関連遺伝子th及びdatやそれらタンパク質の発現増加がみられ,3.2 mg/LのPFOSばく露でのドーパミン含有量の増加と関連があった。このように,PFOAやPFOSはゼブラフィッシュ脳内のドーパミンシグナル伝達経路をかく乱することにより,神経行動学的変化を誘発すると考えられる。

Leeら(2021)10は,PFOSの発達神経毒性の分子メカニズムを包括的に評価するため,0.1~20 μM(0.05~10 mg/L)のPFOSばく露(120時間)下におけるゼブラフィッシュ仔魚の運動行動を評価するとともに,トランスクリプトミクス,プロテオミクス及びメタボロミクス解析を行っている。PFOSのばく露により多動性及び低動性を引き起こすことが明らかとなった。また,個別オミクス解析により,PFOSばく露が神経機能,酸化ストレス,エネルギー代謝の経路に影響し,統合オミクス解析では,軸索変形,神経炎症刺激,カルシウムイオンシグナル伝達の調節異常などの神経毒性関連経路への影響が明らかとなった。

2.2 免疫系

免疫系は,侵入した病原体などに対する最初の防御機構であり,発生,成長,炎症反応,組織修復など,様々な生理的プロセスにおいて恒常性の維持に重要な役割を果たしている11。Guoら(2019)12は,0~0.08 mg/LのPFOSに7,14及び21日間ばく露した3ヶ月齢の雄ゼブラフィッシュについて,成長,組織微細構造,免疫関連の酵素活性及び遺伝子発現に対する影響を評価している。PFOSばく露により,肝臓の正常な構造,免疫関連の酵素活性,免疫調節関連遺伝子の発現が変化し,成長や免疫系への阻害を示唆した。また,PFOSばく露によって生じたと考えられる肝細胞の炎症促進効果が観察され,その作用にはNF-Bシグナル伝達経路が関与することを示唆した。Yuら(2022)13は,1~100 μg/LのPFOAを用いて,ゼブラフィッシュ初期胚発生(受精後2~30時間)に対する免疫毒性を評価している。25 μg/L以上のPFOAばく露は,心拍数と運動行動に影響を与え,シングルセルRNAシーケンシングの結果,PFOAばく露は心臓細胞,マクロファージ,水晶体細胞,イオノサイトなどの細胞集団に影響し,マクロファージでは,脂肪酸代謝,PI3K-AKTシグナル伝達,Th1 及びTh2 分化の変化が確認された。Yang(2010)14は,雄のミナミメダカ成魚(年齢不明)に10,50及び 100 mg/LのPFOAを7日間ばく露し,サイトカインに及ぼす影響を調査している。いずれのばく露濃度においても,生存率,肝臓及び生殖腺対指数,コンディションファクター(成長の指標)への影響は認められなかった。しかし,TNF-α(10 mg/L<),IL-6 及びIL-1β(50 mg/L<)などの炎症性サイトカインのmRNAレベルが増加したことから,PFOAは炎症や組織損傷に関与する可能性を示唆した。

一方で,Yaoら(2024)15は,PFOAとPFOSの代替としてそれぞれ使用されているヘキサフルオロプロピレンオキシドダイマー酸(HFPO-DA,商品名GenX)とペルフルオロエチルシクロヘキサンスルホン酸(PFECHS)について,ゼブラフィッシュ胚(受精後6時間以内)に 0.01~100 μg/Lの濃度で96時間ばく露し,発生影響,酸化ストレス,免疫細胞数の変化,免疫関連遺伝子の発現変化などの免疫毒性を明らかにした。

以上のように,魚類における免疫毒性は,PFASばく露の影響として指摘されており,さらにRNAシーケンシングによりPFAS誘発性の遺伝子発現変化に関連する免疫関連の生物学的経路が推定されている16

2.3 肝臓・脂質代謝系

PFOSや長鎖PFCAは,ニジマス(Oncorhynchus mykiss17やヨーロッパブナ(Carassius carassius18の肝臓に蓄積することが知られており,特に長鎖PFCAは,ペルフルオロアルキル鎖長の増加に伴い,生物濃縮係数(BCF)が増加することが明らかにされている。このことは,肝臓はPFASの毒性ターゲットの一つであることを示唆している。Yiら(2019)19は,PFOSとその新規塩素化代替物質をゼブラフィッシュ胚(受精後6時間)に7日間ばく露し,肝毒性に及ぼす影響を評価している。PFOS,塩素化ポリフルオロオクタンスルホン酸(Cl-PFOS)及び2種類の塩素化ポリフルオロアルキルエーテルスルホン酸(6:2 Cl-PFES:中国で製造されるPFOSの代替物質F-53B,8:2 Cl-PFESA)をそれぞれ 1 μM(522~671 μg/L)単独ばく露した結果,脂肪肝,空胞化,総コレステロール及びトリグリセリド値の上昇,低密度リポタンパク質値の減少などの肝毒性が観察された。また,遺伝子発現解析により,脂肪酸合成(アセチルCoAカルボキシラーゼ:acacb)及びβ酸化(シトクロムP450 1A:cyp1a,ペルオキシソームアシルCoA酸化酵素1:acox1,アシルCoA脱水素酵素:acadm)発現の増加がみられた。さらに,分子ドッキング解析の結果,8:2 Cl-PFESAは他の物質と比較してペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPARα, PPARβ, PPARγ)に対する高い拮抗作用を示し,これは脂肪酸β酸化に応答する遺伝子の発現を阻害する結果と対応していた。Santら(2021)20は,ゼブラフィッシュ胚(受精後3時間)に対して発生段階(受精後1~5日)または亜慢性(受精後1~15日)のいずれかにより 16 μMまたは 32 μMのPFOSへのばく露を行い,受精後4日でラウリン酸(C12:0)及びミリスチン酸(C14:0)飽和脂肪酸レベルを上昇させ,PPAR遺伝子発現が減少することを明らかにした。また,15日齢仔魚及び30日齢稚魚において,膵島形態異常,主要膵島面積及び脂肪蓄積の増加を明らかにした。

Liao ら(2024)21は,受精後1時間以内のゼブラフィッシュ胚を用いて,PFOSより短鎖のPFHxS(ばく露濃度:0.01,0.1,1及び 10 μg/L)を5日間ばく露し,肝脂肪変性や局所性肝壊死などの潜在的な肝毒性を明らかにした。また,形態学的,組織学的,生化学的及びトランスクリプトーム解析により,肝細胞病変,肝臓病理,相対的な肝臓の大きさ,生化学的パラメータ及び肝機能関連遺伝子の有意な変化を明らかにした。さらに,in silicoバイオインフォマティクスによって特定したPPARを介した毒性メカニズムを検証するため,拮抗薬とPPARモルフォリノノックダウンの同時ばく露をしたところ,PFHxS誘発性の肝臓への影響が軽減され,アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST),アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT),総コレステロール及び総トリグリセリドのレベルの低下を明らかにした。Heら(2024)22は,PFHxSばく露による毒性の分子メカニズムを解明するため,環境中濃度に近い比較的低濃度(0.01,0.1,1及び 10 μg/L)のPFHxSを受精後2時間以内のゼブラフィッシュ胚に5日間ばく露し,脂質組成及びトランスクリプトーム解析している。その結果,PFHxSはグリセロリン脂質,脂肪酸,グリセロ脂質,スフィンゴ脂質,プレノール脂質,ステロール脂質の調節異常により脂質恒常性を著しく阻害することが示された。また,バイオインフォマティクス解析では,PPARシグナル伝達経路の変化,ならびにレチノール,リノール酸,グリセロリン脂質代謝の下流の遺伝子群に変化がみられた。PPARの機能を評価するため,さらに,分子ドッキングシミュレーション解析により,PFHxSはPPARαの内因性アゴニストであるオレイン酸よりも高い結合親和性を示すことが示され,PPAR拮抗薬の同時ばく露により,PFHxSによって低下したグリセロホスホコリン濃度は回復がみられた。これらのことから,PPARαの活性化がPFHxSにおける重要な分子的開始イベントである可能性が示唆された。Gongら(2022)23は,短鎖ペルフルオロブタンスルホン酸(PFBS)及び長鎖PFCAのペルフルオロノナン酸(PFNA)の 20 μMをそれぞればく露したゼブラフィッシュ胚(受精後3時間)の孵化後120時間後の試料において,RNAシーケンシング(RNA-seq)及びKEGGパスウェイ解析により,脂肪酸代謝などPPAR経路に関与する発現変動遺伝子(DEG)の増加を明らかにした。

2.4 甲状腺ホルモン

甲状腺ホルモン(TH)は,魚類の正常な発育と生理機能に重要な役割を果たしている。PFOAやPFOSは,ゼブラフィッシュの発生過程において甲状腺をかく乱する作用を持つ24,25。特に多くの研究がPFOSやPFOAによる視床下部―下垂体―甲状腺(HPT)系に影響を与える可能性を指摘している。Shiら(2009)26は,ゼブラフィッシュ胚(受精後2時間)を100,200及び 400 μg/LのPFOSにばく露し,受精後15日目に遺伝子発現解析を実施している。副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRF),甲状腺刺激ホルモン(TSH),ナトリウム/ヨウ化物共輸送体(NIS),チログロブリン(TG),甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO),トランスサイレチン(TTR),ヨードチロニン脱ヨウ素酵素(Dio1及びDio2),甲状腺受容体(TRα及びTRβ)のHPT系に関与する遺伝子のいずれかの発現は200あるいは 400 μg/LのPFOSばく露により有意な増加あるいは減少がみられた。また,全身チロキシン(T4)含量は変化しなかったが,全身トリヨードチロニン(T3)含量は有意な増加がみられた。Chenら(2018)27も 250 μg/LのPFOSを受精後120日間ばく露したゼブラフィッシュ胚(受精後8時間)において,甲状腺ホルモン(T3及びT4)量,甲状腺濾胞細胞の構造,甲状腺ホルモン関連遺伝子発現の変化を報告している。Godfreyら(2017)24は,4.7 ppm(4.7 mg/L)のPFOA(LC50の1%相当濃度)を6日間あるいは28日間ばく露したゼブラフィッシュ胚(受精後4.5時間)において,浮袋の表面積の変化と,浮袋形成の甲状腺制御に関与する遺伝子の発現レベルが変化することを明らかにした。また,これらの結果は,甲状腺ホルモンをばく露した陽性対照群の結果と一致することも明らかにした。

Wangら(2023)28は,PFOAに加えて,その代替物質であるヘキサフルオロプロピレンオキシドダイマー酸(HFPO-DA)及びヘキサフルオロプロピレンオキシドトリマー酸(HFPO-TA)のゼブラフィッシュ胚(孵化後2時間)に対する影響を調査している。PFOA,HFPO-DA及びHFPO-TAをそれぞれ5及び 500 μg/Lで5日間ばく露した結果,行動異常,酵素活性(アセチルコリンエステラーゼ及び酸化ストレス関連酵素),ATP含有量,HPT軸及び脂質代謝の関連遺伝子の発現が変化した。特にHFPO-DAばく露により,脂質代謝,HPT軸,神経発達に対する特異的な影響がみられた。Wangら(2020)29は,PFOAの新たな代替物質であり,工業生産において広く使用されているペルフルオロポリエーテルカルボン酸(PFECAs, CF3(OCF2nCOO, n=2~5)について,ゼブラフィッシュ胚(受精後5時間)に5日間ばく露し,発生毒性と甲状腺ホルモンとの関連を調査している。パーフルオロ(3,5,7-トリオキサオクタン)酸(PFO3OA),パーフルオロ(3,5,7,9-テトラオキサデカン)酸(PFO4DA),パーフルオロ(3,5,7,9,11-ペンタオキサドデカン)酸(PFO5DoDA)などのPFECAsの発生毒性をPFOAと比較した結果,PFO5DoDA > PFO4DA > PFOA > PFO3OA の順で発生毒性が強くなり,最も頻繁に観察された奇形は膨張していない後部浮袋であった。また,これらPFECAsは甲状腺ホルモン(T3 及びT4)濃度を著しく低下させ,さらに甲状腺ホルモン代謝に関連する遺伝子であるUDPグルクロン酸転移酵素1ファミリーa, b(ugt1ab)の転写を増加させた。この研究ではPFECAの毒性は構造骨格のOCF2 数によって増加したことから,PFECAsはPFOAの代替として安全ではない可能性を示唆した。

2.5 生殖系

Duら(2009)30は,受精後14日齢のゼブラフィッシュに10,50及び 250 μg/LのPFOSを70日間ばく露し,その後さらに30日間の清浄水による回復試験を行っている。その結果,ばく露期間中に死亡は観察されなかったものの,250 μg/Lばく露では成長抑制(体重と体長)が観察された。また,50及び 250 μg/Lばく露では,雌の生殖腺対指数(GSI)を低下させ,雄の肝臓では脂肪滴蓄積がみられた。さらに,肝臓ビテロゲニン(VTG)遺伝子発現は,雄と雌で有意に増加したが,性比に影響はみられなかった。Wangら(2011)31は,PFOSへの長期ばく露がゼブラフィッシュの生殖に及ぼす影響を調査している。受精後8時間から5ヶ月間,0,5,50及び 250 μg/LのPFOSにばく露した結果,250 μg/L区では成長抑制や雌の割合の増加がみられ,雄の生殖腺の発達は,ばく露濃度依存的な阻害がみられた。雌の繁殖力に影響はなかったものの,250 μg/Lのばく露を受けた雌と非ばく露の雄を交配させたF1胚は,初期発生段階で重度の奇形を呈し,受精後7日には100%の幼生死亡率を示した。また,胚中のPFOSの定量により,F1 子孫における幼生生存率の低下はPFOSの体内負荷量と相関しており,幼生致死は母体から卵へのPFOSの移行によることが示された。さらに仔魚は明暗行動試験において基礎遊泳速度の亢進がみられた。

Jantzenら(2017)32は,PFOAへの慢性ばく露(受精後3~120時間の胚:2.0 nM PFOA,受精後30日の仔魚:1~6ヶ月間 8.0 pM PFOA添加飼料)により,ゼブラフィッシュの発育,生存,及び繁殖への影響を評価している。ゼブラフィッシュの総重量と体長は有意な減少がみられ,遺伝子発現解析により,トランスポーター遺伝子(slco2b1, slco4a1, slco3a1 及びtgfb1a)の有意な発現の減少と,slco1d1 遺伝子の有意な発現の増加がみられた。また,産卵数が有意に減少し,F1 世代の生存率の低下と発育段階の遅延もみられた。

Kangら(2019)33は,ミナミメダカ成魚(16±2週齢)に対するPFOA(10 mg/L)あるいはPFOS(1 mg/L)の繁殖能力及び二次性徴と,VTG遺伝子(VTGI, VTGII),VTGタンパク質及びコリオゲニン遺伝子(ChgH, ChgHm, ChgL)発現に及ぼす影響を調査している。21日間のばく露により,PFOAとPFOSは繁殖能力を著しく低下させ,ばく露時間の経過(7,14,21日後)とともに遺伝子発現の変化を引き起こした。また,そのパターンは化学物質あるいは性別毎に異なり,雄魚におけるVTG及びChg遺伝子の転写調節が異なったことから,PFOAとPFOSは生殖への影響において異なる作用機序があることを示唆した。

Leeら(2017)34は,PFAS混合物の多世代にわたるエストロゲン活性を明らかにするため,PFOS,PFOA,ペルフルオロブタンスルホン酸(PFBS)及びペルフルオロノナン酸(PFNA)の混合物(混合物組成1:1:1:1)を3世代(238日間)のミナミメダカにばく露し,ビテロゲニン(VTG)発現,成長指標,組織学的変化,繁殖力,孵化率,仔魚生存率,性比及び体内蓄積に及ぼす影響を調査している。その結果,F1 及びF2 世代のPFAS蓄積レベルは,低濃度(0.5 mg/L)及び高濃度(5 mg/L)の両方で,PFOS > PFNA > PFOA > PFBSの順であったが,性別または世代に基づく体内蓄積量の有意差は検出されなかった。PFAS混合物のばく露後,F2 世代のVTG発現の有意な増加とF1 世代の生殖腺体指数(GSI)の低下が観察された。また,PFAS混合物または17β-エストラジオールへのばく露は世代が進むにつれて,対照と比較して繁殖率の抑制レベルが増加し,F1 世代では孵化率の阻害が観察された。PFASの高濃度のばく露は,F1 世代の性比に有意な変化を引き起こした。これらのことから,PFAS混合物がミナミメダカに対して複数世代にわたる内分泌かく乱作用を示すことが示唆された。

長鎖PFASの代替として,短鎖PFASであるPFBSの魚類における生殖毒性が調査されている。Santhiら(2025)35は,成魚(年齢不明)のゼブラフィッシュを0.14,1.4,または 14 μMのPFBSに28日間ばく露し,14 μMのばく露では産卵率と孵化率が著しく低下することを明らかにした。また,PFBS は精巣と卵巣のスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)活性を低下させ,雄の脂質過酸化と一酸化窒素レベルを上昇させた。PFBSばく露は視床下部―下垂体―性腺―肝(HPGL)系を介して内分泌かく乱を引き起こし,雄ではエストロゲン,雌ではテストステロンのレベルをそれぞれ上昇させた。cyp19b を含む HPGL 系遺伝子発現は著しく変化した。組織病理学的検査により,PFBS ばく露群の精巣では精子が減少し,卵巣では卵黄形成後期の卵母細胞が減少していた。これらの結果は,PFBS ばく露が雌雄のゼブラフィッシュにおいて酸化ストレスを誘発し,ホルモン合成及びHPGL系遺伝子発現のかく乱により,生殖毒性を引き起こすことを示唆している。HPGL軸に対する影響は,PFNA36(5ヶ月齢ゼブラフィッシュの雌雄に0.01,0.1 及び 1.0 mg/Lを180日間ばく露),PFDA及びペルフルオロトリデカン酸(PFTrDA)37(ゼブラフィッシュ受精卵(年齢不明)に0.01,0.1,1及び 10 mg/Lを120日間ばく露),8:2フルオロテロマーアルコール(FTOH)38(4ヶ月齢ゼブラフィッシュの雌雄に10,30,90及び 270 μg/Lを4週間ばく露),6:2 FTOH39(18週齢ゼブラフィッシュの雌雄に0.03,0.3及び 3.0 mg/Lを7日間ばく露)でも明らかにされている。

筆者の研究グループ40は,6:2及び8:2 FTOHとPFOS,PFOA,PFNA,PFDA及びペルフルオロウンデカン酸(PFUnDA)(0.01~1,000 μM)について,酵母two-hybridアッセイによりメダカエストロゲン受容体α(ERα)に対する相互作用を調査し,6:2及び8:2 FTOHはメダカERαを活性化することを明らかにした。また,6:2及び8:2 FTOHを8時間あるいは3日間ばく露した孵化後3ヶ月齢の雄ミナミメダカにおいて,肝臓中VTG遺伝子及びタンパク質の発現もそれぞれ有意な増加を示し,これらFTOHのエストロゲン様作用を明らかにした。エストロゲン様物質は,魚類の繁殖などの生殖系に影響する可能性があるため,今後有害性を明らかにする必要があるだろう。

3. PFASの影響濃度と公共用水域等の指針値

USEPAは,水生生物,陸域植物,野生動物に対する化学物質の生態毒性データについて,ECOTOXデータベースとしてインターネット上で公開している1。そこでこれら生物種のうち,魚類を対象に,PFOS(CAS: 1763-23-1),PFOA(CAS: 335-67-1)及びPFHxS(CAS: 355-46-4)について検索した(2025年12月3日アクセス)。検索結果を参照し,半数致死濃度(LC50)/半数影響濃度(EC50)と最小作用濃度(LOEC)をFig. 1 に示した。

Fig. 1 Ecotoxicity data of PFOS, PFOA, and PFHxS obtained from ECOTOX database

PFOSは51件のLC50/EC50 があり,それらのエンドポイントのほとんどは致死毒性であった。また,LOECは1,114件あり,それらのエンドポイントは,発生,成長,形態,(給餌)行動,遺伝子,免疫,組織,生理,繁殖など多岐にわたっており,最も低濃度で影響がみられたのは,20 ng/Lを4日間ばく露したゼブラフィッシュ胚(受精卵)における成長ホルモン及びインスリン成長因子関連遺伝子の発現変化41であった。このLOECは,公共用水域・地下水におけるPFOS及びPFOAに関する指針値(PFOS及びPFOAの合計値で 50 ng/L)を下回っていた(Fig. 1)。

PFOAは64件のLC50/EC50 があり,それらのエンドポイントは,致死毒性以外に浮腫や奇形なども含まれていた。また,LOECは980件あり,それらのエンドポイントは,PFOSと同様に多岐にわたっており,最も低濃度で影響がみられたのは,1 ng/Lを7日間ばく露したゼブラフィッシュ胚(受精卵)におけるNa/I 共輸送体の糖鎖修飾が変化することによる甲状腺ホルモン生合成の阻害に関する報告42であった。このLOECは,公共用水域・地下水におけるPFOS及びPFOAに関する指針値(PFOS及びPFOAの合計値で 50 ng/L)を下回っていた(Fig. 1)。

PFHxSはLC50/EC50 が報告されていなかった。また,LOECは126件であり,それらのエンドポイントは,発生,行動,成長,致死,生化学,遺伝子で,最も低濃度で影響がみられたのは,10 ng/Lを5日間ばく露したゼブラフィッシュ胚(受精後2時間)におけるPPARαを介した脂質恒常性の阻害に関する報告22であった。

4. おわりに

本稿では,魚類を中心としたin vivo試験系によるPFASの影響評価の現状について概説し,それらを比較したものをTable 1 に示した。また,ヒトやマウスなど齧歯類におけるPFOSやPFOAばく露は,肝毒性,発がん,免疫系,生殖,胎児の発育への影響など,多くの健康への有害な影響と関連している可能性が指摘されている。それらのリスク評価については,我が国の食品安全委員会が実施しているためそちらを参照願いたい43

Table 1 Summary of disrupted major systems and functions observed by zebrafish or medaka exposed to PFAS

一方で,PFOSやPFOAなどと構造的特徴などの類似したPFAS代替物質あるいは新規に開発されたPFASが多数存在することが指摘されているが2,これらを個別物質ごとに評価することは極めて難しいと考えられる。そこで,代替及び新規PFASの生物影響を評価するためには,近年の技術発展が著しい機械学習などの人工知能(AI)を用いたin silico試験系の活用が有効と考えられる。In silico試験系では,タンパク質立体構造モデルと化学物質の相互作用をバーチャルスクリーニングできる。Duszaら(2022)44は,羊水抽出物の活性画分についてターゲット・ノンターゲット分析で化学物質を同定し,そのうちの毒性候補物質121化合物からエストロゲン受容体,アンドロゲン受容体及びアリルハイドロカーボン受容体への結合性予測から69物質に絞り込み,さらにin vitro試験系による活性評価から内分泌かく乱作用を有する12化合物の同定に成功している。さらに筆者の研究グループでは,PFASのヒトPPARα結合特性を優れた性能で予測できる機械学習モデルを開発し,PFOS及びPFOAと比較して高いPPARα結合親和性を示すPFASが4,000種類以上存在することを報告した45。この結果は毒性ポテンシャルの強い代替及び新規PFASが多数存在することを示唆している。本in silico試験系はヒトPPARαタンパク質だけでなく,他の毒性発現に関与するタンパク質やヒト以外の魚類を含めた様々な生物種のタンパク質に適用可能である46。このようなハイスループットなin silico予測手法やin vitro及びin vivo試験47をうまく活用しながら,PFOS,PFOA及びPFHxSの次にリスク評価・管理を実施する優先度が高い物質(群)を選定し,それらの環境モニタリングやヒトや生物への影響評価などを効率的に実施する必要がある。

謝辞

本稿の取りまとめは,環境省・(独)環境再生保全機構の環境研究総合推進費(JPMEERF20255M03)により実施した。

文献
 
© 2026 The Authors.

この記事はクリエイティブ・コモンズ[表示-非営利-改変禁止4.0国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/deed.ja
feedback
Top