Journal of Information and Communications Policy
Online ISSN : 2432-9177
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ISSN-L : 2432-9177
Germany’s national public television broadcaster and tele-media offerings
SHUJI SUGIHARA
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2020 Volume 3 Issue 2 Pages 71-94

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要旨

ドイツにおける公共放送のオンライン・コンテンツ規制は、2009年6月1日発効の第12次改正放送州際協定によって制定された。しかしながら、同規制の適法性をめぐっては当初から判例・学説において激しく議論がなされており、またその後も、メディア利用環境の変化に適した公共放送のあり方が議論されてきた。そして、2009年の改正法から10年の時を経て、2019年5月1日に、公共放送のオンライン・コンテンツに関する責務、すなわち「テレメディア任務」の改革に関連する改正法である第22次改正放送州際協定が発効した。

本改正法は、一方で、公共放送のテレメディア任務の制約を緩和し、その範囲を大幅に拡大した。例えば、同改正法によって、旧法において課せられていた放送後7日未満というテレメディアコンテンツの閲覧期間の制約が原則として撤廃された。また、公共放送事業者は、リニア放送後だけでなく、リニア放送前に自己の放送プログラムのオンデマンドの番組をオンラインで提供できるようになった。さらに、公共放送事業者は、テレメディアコンテンツのために制作された独自の祖聴覚コンテンツをオンラインで提供できるようになった。

他方で、本改正法は、公共放送事業者に対してより厳格な制約も課している。例えば、改正法では、新しいまたは本質的な変更がなされたテレメディアコンテンツはすべて三段階テストが課せられるとともに、原則としてすべてのテレメディアコンテンツに、「プレスとの類似性」の禁止の原則が適用されることとなった。

本稿は、このような公共放送のテレメディア任務に関する重要な改革を行った第22次改正放送州際協定を分析し、公共放送のあり方につき検討を行うものである。

1.はじめに

2019年5月1日、ドイツにおいて、第22次改正放送州際協定(22. Rundfunkänderungs- staatsvertrag)が発効した。同協定は、公共放送事業者のオンライン・コンテンツに関する責務、すなわち「テレメディア任務」(Telemedienauftrag)の改革に関連する改正法である2。従来のドイツにおける公共放送のオンライン・コンテンツ規制は、2009年6月1日発効の第12次改正放送州際協定(12. Rundfunkänderungsstaatsvertrag)によって制定されたものであったが3、同規制の適法性をめぐっては制定当初から判例・学説において激しい議論がなされており、またその後も、メディア利用環境の変化に適した公共放送の任務のあり方が議論されてきた。実際にも本改正が合意に至るまでには長い議論が行われたが、第12次改正放送州際協定の発効から10年の時を経て、ようやく新たな改正法が成立するに至った。

本改正法は、一方で旧法に比し公共放送のテレメディア任務の範囲を大幅に拡大するとともに4、他方で公共放送事業者に対してより厳格な規制を課すなど5、公共放送のオンライン任務につき多くの重要な変更を行った。そこで本稿は、本改正の経緯および背景(第2章)、ならびに特に重要と思われる改正事項を取り上げ(第3~9章)、本改正法の内容につき分析を行うことにしたい。

2.改正の経緯および背景

第22次改正放送州際協定の改正内容を検討する前提として、本章は、本改正に至った経緯およびその背景について詳述することにする。

2.1.改正の経緯

2018年6月14日、各州の首相らはベルリンでの会議において、ドイツの公共放送事業者であるドイツ公共放送連盟(ARD)、第二ドイツテレビ(ZDF)、ドイツ・ラジオ(Deutschlandraio)の「テレメディア任務」に関する改革を行うことで合意に達した6。この合意は、「ドイツ連邦共和国における歴史的な瞬間である」(Reiner Haseloff (CDU))と評価される一方で、「真の妥協」(Tobias Hans (CDU))とも評価された7。なぜなら、この合意に達するまでに、実際には数ヶ月にも及ぶ長い議論が行われたからである。その原因は、公共放送のオンライン・コンテンツの「プレスとの類似性8」(Presseähnlichkeit)の問題につき、当事者の間で合意が得られなかったことにある。すなわち、新聞および雑誌出版社は、従来から、州に対して、公共放送事業者のオンライン業務に明確な制約を課すべきであると主張していたのに対して、公共放送事業者は、2009年の第12次改正放送州際協定以来既に10年が経過したテレメディア任務を、現在のメディア利用環境に適合するよう改正すべきと要請していたのである9

このようなテレメディア任務に関する改革の合意がなされた後、各州首相は、2018年10月24日から26日にかけてハンブルクで開催された評議会において放送州際協定の改正法に署名し10、16の州議会における批准手続が開始した。その後、2019年4月末までにすべての州議会がこの新しい州際協定に同意し、同年5月1日に第22次改正放送州際協定が発効した。

2.2.改正の背景

「第22次改正放送州際協定に関する立法理由書」(以下、「立法理由書」と略記)は、第一次的に、連邦憲法裁判所の放送判決のうち2018年7月18日に下された直近の判決 (BVerfGE 149, 222)に触れ、同判決に基づき、テレメディア任務の改正の必要性を説いている11。すなわち、立法理由書は、「公共放送の機能に関する連邦憲法裁判所の不変のかつ直近の判例(直近のものとして、BVerfG, Urteil vom 18. Juli 2018 – 1 BvR 1675/16, 745/17, 836/17, 981/17 を参照)の背景の下では、第22次改正放送州際協定においてテレメディア任務を改正することは、とりわけメディアの新技術およびデジタル化に基づけば、憲法上必要でありかつ理由がある。連邦憲法裁判所は、まさに〔メディアの〕このような変更された枠組み条件の下でも、公共放送の意義というものを強調する12」と述べる。具体的には、連邦憲法裁判所は同判決において以下のように述べている。

公共放送は「民間放送事業者に対するバランサーとして、経済的な刺激からではなく合理的決定から生み出される提供コンテンツ(Leistungsangebot)、つまり放送プログラム制作の独自の可能性に道を開く提供コンテンツをもたらす責務を有している。自由な市場を介してのみでは〔放送の〕内容上の多様性は保障されえないため、公共放送は、この内容上の多様性に寄与するものでなければならない」(Rdnr. 77)。

「民間放送と公共放送の併存体制にあっては、異なる合理的決定が相互に作用し合うことが可能となる(vgl. BVerfE 114, 371 (387 f.); 119, 181 (217); 136, 9 (30 Rn. 32))。このような作用の可能性は、新しい技術が、コンテンツ、配信形式、配信方法の拡大および分化をもたらしたこと、ならびに放送プログラムに関連する新しいサービス提供(neuartige programmbezogene Dienstleistungen)を可能にしたことによって、さらなる重要性を帯びてくる(vgl. BVerfGE 119, 181 (214 f.); 136, 9 (28 Rn. 29))」(Rdnr. 78)。

公共放送による「このような提供コンテンツは、通信技術の発展、およびとりわけインターネットを介した情報配信によって疑問視されるものではない(vgl. BVerfG 57, 295 (322 f.); 73, 118 (160); 95, 163 (173); 119, 181 (217); 136, 9 (28 Rd. 29))。民間放送による配信コンテンツおよび多様な〔コンテンツ〕提供者が存在するという状況のみをもって、放送における質および多様性が導き出されるわけではない。(それとは逆に)メディアのデジタル化、とりわけソーシャル・ネットワークを含むインターネットのネット・エコノミーおよびプラットフォーム・エコノミー(Netz- und Plattformökonomie)は、コンテンツ内容(Inhalte)の提供者、配信者、仲介者の集中化および独占化の傾向を助長するものである。仮にコンテンツがその大部分において広告収入を受けていた場合、当該コンテンツは、必ずしもジャーナリズム上の競争(publizistischer Wettbewerb)を促進するわけではない。すなわち、インターネットにおいても、広告業界にとって関心のある大きな射程範囲というのは、大衆に魅力的な放送プログラムによってのみ達成しうるものである。加えて、(アルゴリズムの助けもあって)コンテンツ内容がユーザーの関心および好みに応じて編集され、それによって同一方向にある世論が一層強化されてしまう危険も発生する。そのようなコンテンツは、意見多様性を指向するものではなく、〔むしろ〕一方的な関心事を介して、または〔コンテンツの〕閲覧期間をユーザーのために可能な限り最長化し、またそれによってプラットフォームの広告価値を顧客のために高めようとするビジネスモデルの経済的合理性を介して、決められるものである。その限りで、検索エンジン結果も一部は広告収入を受け、一部は『クリック数』(„Klickzahlen“)に依拠することによって、事前フィルターに掛けられているのである。加えて、〔インターネット上では〕ジャーナリスティックな中間編集作業(Zwischen-aufbereitung)のない、ジャーナリズムではない提供者(nicht-publizistische Anbieter)がより多く出現する」(Rdnr. 79)。

「これらのことすべては、事実と意見との間、ないしはコンテンツ内容と広告との間の困難な分離性をもたらすだけでなく、情報源および評価の信憑性に関して新たな不確実性をもたらすものである。個々のユーザーは、伝統的にはプロフェッショナルによる選別のフィルター、または責任を伴ったジャーナリスティックな活動を介してなされていた、〔コンテンツの〕加工ないしマスメディア評価を請け負わなければならない。このような〔通信技術の〕発展に鑑みれば、放送負担金を財源とする公共放送に課せられている責務、すなわち、事実と意見を区別した情報であって、綿密に調査された信頼すべき情報によって歪曲することなく真実を描写し、センセーショナルな出来事を全面に出さず、むしろ多様性を確保しガイドラインを提供するようなバランサーを形成する、といった責務の意義が増している」(Rdnr. 80)。

3.「テレメディアコンテンツ」の定義(第2条2項19号)

旧法では、「テレメディア」および「コンテンツ」という概念が用いられていたが、公共放送の「テレメディアコンテンツ」(Telemedienangebote)の概念は、明確な定義なしに各条項で用いられていた(旧11d条2項2号、同11d条3項、同11f条3項)13。これに対して第22次改正放送州際協定は、第一次的に、旧法では定義されていなかった、公共放送によって提供される「テレメディアコンテンツ」の概念を定義したうえで、「テレメディア」および「コンテンツ」の用語と概念上明確に区分した14

3.1.第22次改正放送州際協定2条2項19号の規定内容

改正法は、「テレメディアコンテンツ」の概念を同2条2項19号において以下のように定義し、とりわけ公共放送のオンライン・コンテンツについては「テレメディアコンテンツ」の概念を使用することとした。

第22次改正放送州際協定2条2項19号

公共のテレメディアコンテンツ(öffentlich-rechtliche Telemedienangebote)とは、以下のように解される:ARDを構成する地方放送事業者、ZDF、およびドイツ・ラジオによって、それぞれ第11f条4項に従って実行される手続の基準に基づき提供されるテレメディアのうち、ジャーナリスティックかつエディトリアルに指示され、制作されたもの、画像、音声、動画、テキスト、およびインターネット固有の制作方法(internetspezifische Gestaltungsmittel)を含みうるもの、ならびにこれらを相互にリンクさせているもの〔をいう〕。

ところで、旧法では2条2項19号は「番組に関連するテレメディア」(sendungsbezogene Telemedien)の概念を定義していが、改正法では、同規定の内容は同じく当該概念の内容に触れていた旧11d条2項1文2号とともに、第11d条7項において規定されることとなった(後述7章を参照)。

3.2.「コンテンツ」、「テレメディア」、「テレメディアコンテンツ」の区分

上述した3つの概念のうち、「コンテンツ」については、第22次改正放送州際協定11a条1項1文が「公共放送のコンテンツ(Angebote)とは、放送プログラム(ラジオプログラムおよびテレビプログラム)、ならびに本州際協定および各州法の諸規律の基準に基づくテレメディアコンテンツをいう」と定義している。すなわち、同条項は、公共放送の「コンテンツ」を、下位概念である「放送プログラム」および「テレメディアコンテンツ」の上位概念であると位置付けている。旧11a条1項1文では、ここでいう「テレメディアコンテンツ」の文言が「テレメディア」と規定されていたのに対して、改正法では、両者の明確な区分に基づき前者の概念が用いられた。

また、「テレメディア」の概念については、第2条1項3文が、以下の①〜③の例外を除く「あらゆる電子情報・コミュニケーションサービス」をいうと規定している。すなわち、同条項によれば、①例えば、インターネット・アクセスプロバイダーやメールプロバイダーのような、主たるサービス内容が「テレコミュニケーション・ネットワークを介した信号の送受信」にある「テレコミュニケーションサービス」(テレコミュニケーション法3条24号)、②例えば「0900-」等の電話の特別ナンバーのような、「テレコミュニケーションに依拠するサービス」(テレコミュニケーション法3条25号)、さらに③「リニア情報・コミュニケーションサービス」と定義される「放送」(第2条1文)はテレメディアにあたらず、それ以外の「あらゆる電子情報・コミュニケーションサービス」がテレメディアであるとされる。この定義は旧法とまったく同じである。

以上の二つの概念に対して、第22次改正放送州際協定2条2項19号は、とりわけ公共放送によって提供されるテレメディアを「テレメディアコンテンツ」と呼び、同概念を、①同11f条4項にいう三段階テストに合格したテレメディアであり、加えて、②ジャーナリスティックかつエディトリアルに指示され、かつ制作されたもの、③画像、音声、動画、テキスト、およびインターネット固有の制作方法を含みうるもの、ならびに④これらを相互にリンクさせているもの、と定義した。

ところで、この「テレメディアコンテンツ」の定義に際して、同条項は、「インターネット固有の制作方法」という新しい概念を導入している。この点につき立法理由書は、同概念によって「公共のテレメディアコンテンツが、インターネットにおける技術的な発展に動的に適合しうること、ないしは適合しなければならないことが示されている」と述べている15。さらに立法理由書は、このインターネット固有の制作方法の具体例として、マルチメディア表現(multimediale Darstellung)、検索サジェスト機能(Suchvorschläge)によるサポート、リンキング(Verlinkung)、ライブアップデート(Live-Aktualisierung)、アニメーション(Animation)、個別化および個人化(Individualisierungen und Personalisierungen)、メディア媒体の時間主権的な利用(zeitsouveräne Nutzung von Medieninhalten)、視聴覚利用(Video- und Audionutzung)のその他の可能性、視覚障害者向けの音声ガイド機能(Audiodeskription)、字幕制作(Untertitelung)、インタラクティブ要素(interaktive Elemente)、などを挙げている。

ただし、以上のような「テレメディアコンテンツ」の定義に対しては、旧法と同様に、テレメディアコンテンツが当該コンテンツの個々の内容に関連するものをいうのか、または当該コンテンツ全体に関連するものをいうのかがいまだ不明確である、という批判も唱えられている16

4.公共放送の「テレメディア任務」に関する一般原則(第11d条3、4項)

第22次改正放送州際協定11条1項17は、公共放送事業者の任務に関する一般原則について規定している。それに加えて、同11d条3項および4項は、公共放送の「テレメディア任務」、すなわちテレメディアコンテンツに関する公共放送の特別な任務について規定している。第11条1項は旧法から全く変更がなされていないが、同11d条3項および4項は改正法によって大幅に修正された規定である。

4.1.第11d条3項にいうテレメディア任務

このうち第11d条3項は、以下のように改められた。

第22次改正放送州際協定11d条3項

(3)テレメディアコンテンツの時代に即した制作(zeitgemäße Gestaltung)を介して、すべての国民に対して、情報社会への参加が可能とされ、ガイドラインが提供され、インタラクティブ・コミュニケーション(interaktive Kommunikation)の可能性が提供され、あらゆる世代および少数派の技術上・内容上のメディアリテラシーが促進されなければならない。テレメディアコンテンツのこの制作〔に際して〕は、障害者の利益、とりわけ(insbesondere)、音声ガイド(Audiodeskription)付き〔のテレメディア〕、マニュスクリプト(Manuskript)の提供、または簡単な言葉で制作されたテレメディアが、特に(besonders)考慮されなければならない。

旧法では、第11d条3項1文は「テレメディアコンテンツを介して、すべての国民に対して、情報社会への参加が可能とされ、ガイドラインが提供され、あらゆる世代および少数派の技術上・内容上のメディアリテラシーが促進されなければならない」と規定されていた。これに対して、改正後の同項1文は、新たに、テレメディアコンテンツの「時代に即した制作」および「インラタクティブ・コミュニケーションの可能性〔の提供〕」という文言を追加した。

立法理由書によれば、このうち「時代に即した制作」とは、「テレメディアコンテンツの制作が、インターネットの特に技術的および内容的なダイナミズム(Dynamik)を指向すべきこと」を意味するという。また、公共放送のテレメディア任務が新たに「インラタクティブ・コミュニケーションの可能性」の提供にまで拡大された理由は、「とりわけ、〔公共〕放送事業者が独自のチャットやコメント機能(Kommentarfunktion)といったコンテンツを提供し、さらにいわゆる『ソーシャルメディア』をテレメディアコンテンツに取り込んでいることに鑑みて、ユーザーの需要および使い勝手の良さのために、〔このインタラクティブ・コミュニケーションの可能性が〕要請されている」からだという18

同項2文も、本改正によって新たに付け加えられた規定である。すなわち、同項2文は、テレメディアコンテンツの制作に際して、視聴覚障害者の利益を考慮すべきことを強調している。その際、同条項は、「とりわけ」①視覚障害者のための音声ガイド付きテレメディアコンテンツを提供すること、②聴覚障害者のためにコンテンツの内容を解説したマニュスクリプトを作成・提供すること、または③視聴覚障害者のために簡単な言葉で制作されたテレメディアコンテンツを提供することが「特に考慮されなければならない」とする。ただし、立法理由書によれば、ここで「とりわけ」という文言を使用していることから、障害者のために考慮すべきコンテンツの形式は上記の3つに限るものではなく、例えば、聴覚障害者のために字幕や手話を付したコンテンツを提供することも考慮されうる、という19

以上のように、第22次改正放送州際協定によって、公共放送のテレメディアコンテンツには、同11条の根本規範に加えて、①時代に即した制作、②国民に対する、情報社会への参加、ガイドラインの提供、インタラクティブ・コミュニケーションの可能性の提供、および、あらゆる世代と少数派のメディアリテラシーの促進、ならびに③視聴覚障害者への配慮、という要素が任務として課せられることが明確となった。

4.2.第11d条4項にいうテレメディア任務

第11d条4項は、旧法では、「ARDを構成する地方放送事業者、ZDF、およびドイツ・ラジオは、電子ポータルサイトで自己のコンテンツを提供し、かつ電子番組表の下で自己の放送プログラムを統合する」と規定されるのみであった。これに対して、第22次改正放送州際協定は、同条項の内容を以下のように大幅に修正し、公共放送のテレメディア任務を詳細に規定した。

第22次改正放送州際協定11d条4項

(4) ARDを構成する地方放送事業者、ZDF、およびドイツ・ラジオは、可能な限りバリアフリー対応の電子ポータルサイトで自己のコンテンツを提供し、かつ電子番組表(Programmführer)の下で自己の放送プログラムを統合する。このことが、ジャーナリスティックかつエディトリアルな理由から、〔コンテンツの〕ターゲットへの到達のために要請されている限りにおいて、ARDを構成する地方放送事業者、ZDF、およびドイツ・ラジオは、各々が設置した独自のポータルサイト以外においても、テレメディアを提供することができる。ARDを構成する地方放送事業者、ZDF、およびドイツ・ラジオは、ジャーナリスティックかつエディトリアルな理由からふさわしいとされる自己のテレメディアを、とりわけリンキング(Verlinkung)を介して、相互にネットワーク化しなければならない。ARDを構成する地方放送事業者、ZDF、およびドイツ・ラジオは、学術的および文化的な機関(Einrichtung)が提供し、ジャーナリスティックかつエディトリアルな理由からテレメディアコンテンツにふさわしいとされるコンテンツ内容にも、リンクを設定しなければならない。

第11d条4項1文は、上述した同11d条3項に加えて、障害者の利益のために、公共放送事業者に対して「可能な限りバリアフリー対応の」電子ポータルサイトで自己のコンテンツを提供することを義務付けた。

また、本改正によって新たに挿入された第11d条4項2文は、公共放送事業者に対して、自己のポータルサイト以外でもテレメディアを提供することを可能とした。ただし、同条項によればこのような提供は無制約に行われうるものではなく、それが「ジャーナリスティックかつエディトリアルな理由から、〔コンテンツの〕ターゲットへの到達のために要請されている限りにおいて」のみ許される、とされる。この制約は、とりわけ民間のプラットフォーム事業者に配慮したものである。また、後述するように、公共放送事業者がこのような形式で自己のコンテンツを提供する場合には、その理由につき、テレメディアコンセプトの中で説明することが要請されることとなった(第11f条1項3文)20

さらに、第11d条4項3文および4文は、公共放送事業者に対して、ジャーナリスティックかつエディトリアルな理由からテレメディアにふさわしいとされる自己のテレメディアコンテンツを相互にネットワーク化すること(3文)、ならびに、学術的および文化的な機関が提供し、ジャーナリスティックかつエディトリアルな理由からテレメディアコンテンツにふさわしいとされるコンテンツ内容にリンクを設定すること(4文)、を義務付けた。ここでいう「学術的および文化的な機関」とは、例えば大学、単科大学、研究機関、博物館、劇場、図書館、財団法人などの機関をいうとされる21

立法理由書によれば、このうち本項4文の規定は、第11条1項が「公共放送事業者の任務は、個人および公の自由な意見形成のプロセスのメディアおよびファクターとして、自己のコンテンツの制作および頒布を介して影響力を行使し、さらにそれを介して、社会の民主的、社会的、文化的な需要をみたすことにある」(1文)、公共放送事業者の「コンテンツは、とりわけ文化のためのオンライン報道を提供しなければならない」(5文)と規定していることに基づくものであり、また、公共放送の文化財としての存在、およびその文化的な任務に適合するものであるという22。加えて、本規定は、上述した第11d条3項にいう「テレメディアコンテンツの時代に即した制作を介して、すべての国民に対して、情報社会への参加が可能とされ、ガイドラインが提供され」ることにも寄与するという。すなわち、立法理由書によれば、本規定によって、各々のテレメディアコンテンツ内の学問的で文化的なコンテンツ内容を、リンキングという方法を介して、多様かつ安価な方法で国民に提供することが可能となる、という23

5.公共放送の「テレメディア任務」の具体的内容(第11d条1、2項)

第22次改正放送州際協定は、旧法に引き続き、第11d条1項および2項において、公共放送の「テレメディア任務」を具体化している。もっとも、改正法では、本条項の内容が大幅に修正されて、以下のように規定された。

第22次改正放送州際協定11d条1項、2項

  1. (1) ARDを構成する地方放送事業者、ZDF、およびドイツ・ラジオは、第2条2項19号の基準にいうテレメディアコンテンツを提供する。
  2. (2) 第1項にいう任務は、とりわけ(insbesondere)、〔以下にいうコンテンツを〕含む。
  3.  1. 自己の放送プログラムの、放送前および放送後のオンデマンドの番組、ならびに独自の視聴覚コンテンツ内容(audiovisuelle Inhalte)、
  4.  2. 委託制作でない、購入された劇映画およびテレビ連続番組の購入されたエピソードの作品のうち、放送後30日未満のものであり、かつそのオンデマンドの提供可能性が原則としてドイツ国内に限定されている欧州の作品の、自己の放送プログラムのオンデマンドの番組、
  5.  3. 開催後7日未満に提供される、第4条2項にいう大イベント、およびブンデスリーガ1部と2部の試合の、自己の放送プログラムのオンデマンドの番組、
  6.  4. 情報伝達的、教育的、文化的なテレメディアを伴う、現代史的および文化史的なアーカイブ。
  7. その他、第16a条から16e条までを基準とするコンテンツは、影響を受けない。

ところで、旧11d条2項1文では、第1号から4号に列挙されたテレメディアのみがテレメディア任務の具体的内容であるとされていた24。これに対して、改正法の第11d条2項1文は旧法とは異なり「とりわけ」という文言を挿入しているため、第1号から4号に列挙されたテレメディアコンテンツは「最終的な」ものではなく、法律でとくに明記された例示事項ということになる25。その限りにおいて、改正法は、公共放送のテレメディア任務を大幅に拡大している。

このように、公共放送のテレメディア任務が拡大する一方で、改正法は、本条項で列挙されたテレメディアコンテンツを含め、新しいまたは本質的な変更がなされたテレメディアコンテンツはすべて三段階テストに服するものとされた(第2条2項19号、第11f条3、4項参照)26。すなわち、旧法は三段階テストに服することなくオンラインでの提供が許されるテレメディアを列挙していたが、改正法では、公共放送の(新しいまたは本質的な変更がなされた)オンライン・コンテンツはすべて、三段階テストに合格しなければオンラインでの提供が許されないこととなった。とりわけ、本条項が公共放送のテレメディア任務に含まれるものとして列挙するテレメディアコンテンツは、以下の五つである。

5.1.「ジャーナリスティックかつエディトリアルに指示され、制作された」テレメディアコンテンツ(第11d条1項)

第22次改正放送州際協定は、旧法に引き続き第11d条1項において、公共放送のあらゆるテレメディアコンテンツはジャーナリスティックかつエディトリアルに指示され、制作されなければならないことを明記する27

ところで、改正法では、第11d条の見出しは、従来の「テレメディア」から、「テレメディアコンテンツ」に変更された。これは、第2条2項19号が新たに「テレメディアコンテンツ」という概念を定義したことと整合性を図ったものである。これに伴い、第11d条1項も、この「テレメディアコンテンツ」という概念を使用するだけでなく、「〔公共放送事業者は〕第2条2項19号の基準にいうテレメディアコンテンツを提供する」と明記された。

また、旧11d条1項は、公共放送事業者は「ジャーナリスティックかつエディトリアルに指示されたテレメディア、およびジャーナリスティックかつエディトリアルに制作されたテレメディアを提供する」と規定していた。「ジャーナリスティックかつエディトリアルに指示され、制作された」という文言は、改正後は、前述した第2条2項19号で明記されることとなった。しかしながら、上述のように第11d条1項が公共放送事業者は「第2条2項19号の基準にいうテレメディアコンテンツを提供する」と規定しているため、本項においても引き続き、「ジャーナリスティックかつエディトリアルに指示され、制作された」テレメディアコンテンツは、公共放送の任務に含まれることが明記されることとなった。

5.2.自己の放送プログラムのオンデマンドの番組と独自の視聴覚コンテンツ(第11d条2項1文1号)

第11d条2項1文1号は、「自己の放送プログラムの、放送前および放送後のオンデマンドの番組、ならびに独自の視聴覚コンテンツ内容」が公共放送の任務に含まれると規定する。

ところで旧法は、この点につき、同11d条2項1文1〜3号において、①放送後7日未満に提供される自己の放送プログラムのオンデマンドの番組、および②放送後7日未満に提供される「番組に関連するテレメディア」は、三段階テストに服することなくオンライン上で提供が可能であり、加えて、③放送後7日を超えて提供される番組、④放送後7日を超えて提供される「番組に関連するテレメディア」、および⑤「番組に関連しないテレメディア」は、三段階テストに合格した場合にのみネット上での提供が可能である、と規定していた。すなわち、旧法は、テレメディア任務の基本方針として、放送後7日という閲覧期間の制限を設けていたうえ、「番組に関連するテレメディア」と「番組に関連しないテレメディア」を明確に区別していたのである。

これに対して、改正法は、①まず、公共放送の任務を、従来から認められていた(リニア)放送の後に提供される自己の放送プログラムのオンデマンドの番組に加えて、(リニア)放送の前に提供される自己の放送プログラムのオンデマンドの番組にも拡大し、これにより、公共放送の当該コンテンツがより多くの視聴者に提供されうることとなった28。②次に、改正法では、公共放送の任務が、テレメディアコンテンツのために制作された、放送プログラムの番組ではない独自の視聴覚コンテンツにも拡大された。③さらに、改正法では、旧法で規定されていた放送後7日未満という期限が削除された。立法理由書によれば、この改正の理由は、インターネットの利用状況の変化に鑑みれば、このような期限を設けることはもはや「時代に即したものではない」からだという29。④最後に、改正法は、「番組に関連するテレメディア」と「番組に関連しないテレメディア」の区別を放棄した。この点でも、公共放送は自己のコンテンツをより自由に提供できることとなった。ただし、この区別は完全に放棄されているわけではなく、後述のように、「プレスとの類似性」の禁止の原則に関しては両者は依然として区別されている(第11d条7項を参照)。 

5.3.委託制作でない欧州作品のオンデマンドの番組(第11d条2項1文2号)

第11d条2項1文2号は、公共放送の任務を、「委託制作でない、購入された劇映画およびテレビ連続番組の購入されたエピソードの作品」のオンデマンドの番組に拡大した。

ところで、旧法は、「購入された劇映画およびテレビ連続番組の購入されたエピソードのオンデマンドのコンテンツで、委託制作でないものは許されない」(旧11d条5項2文)と規定し、委託制作ではない「購入された劇映画」および「テレビ連続番組の購入されたエピソード」をオンデマンドで提供することを絶対的に禁止していた。禁止の理由は、公共放送のコンテンツが、民間放送事業者のオンデマンド・コンテンツおよびレンタルビデオと競合することを回避すること、さらには配信のための高額な使用料を回避することにあった30。これに対して改正法では、このようなコンテンツは、非委託作品であっても、①放送後30日未満のものであり、②かつそのオンデマンドの提供可能性が原則としてドイツ国内に限定されている欧州の作品であれば、オンラインでの提供が可能であるとされた。

このように、改正法では、上述の2つの制限の範囲内で、非委託作品のオンデマンドの番組の提供が可能となった。立法理由書によれば、このうち前者の「放送後30日未満」という制限は、公共放送事業者に対して常に30日間の閲覧期間を確保することを義務付けているわけではなく、とりわけ経済的理由で閲覧期間を30日未満で設定することも可能としているという趣旨であるという。また、後者の「提供可能性が原則としてドイツ国内に限定されている〔欧州の作品〕」という制限は、これによって権利者が当該即品をドイツ国外で利用することを可能とするために設定されたという。さらに、「原則として」という文言からは、ARDとZDFが、欧州の公共放送事業者とともに総合テレビプログラム「arte – Der Europäische Kulturkanal」を、オーストリアの公共放送であるORF(Österreichischer Rundfunk)およびスイスの公共放送であるSRG(Schweizerische Radio- und Fernsehgesellschaft)と共同で、主として文化をテーマとして扱う衛星放送の総合テレビプログラムである「3sat」を運営していることに鑑みて、当該作品のオンラインでの提供が例外的にドイツ国外でも可能であることを意味しているという31。 

5.4.開催後7日未満に提供される大イベント等の番組(第11d条2項1文3号)

第11d条2項1文3号は、開催後7日未満に提供される大イベントおよびブンデスリーガ1部と2部の試合の、自己の放送プログラムのオンデマンドの番組を、オンライン上で提供することが許されるとする。

旧法では、このような大イベントおよびブンデスリーガの試合のオンデマンドの番組は、「開催後24時間未満」でのみ、三段階テストに服することなく提供が許され、「開催後24時間を超えて」提供される当該番組はその提供が絶対的に禁止されると規定されていた32(旧11d条2項1文1号後段)。これに対して改正法では、この閲覧期間が大幅に拡張され、「開催後7日未満」に提供される当該番組は、三段階テストに合格すればオンラインでの提供が許されるとされた。ただし、立法理由書によれば、本規定は公共放送事業者に対して、常に7日間の閲覧期間を保障するよう義務付けているわけではなく、これを短縮して提供することも許されているという33

5.5.「情報伝達的、教育的、文化的なテレメディアを伴う、現代史的および文化史的なアーカイブ」(第11d条2項1文4号)

第11d条2項1文4号は、「情報伝達的、教育的、文化的なテレメディアを伴う、現代史的および文化史的なアーカイブ」が公共放送の任務に含まれると規定する。旧法は、単に「現代史的および文化史的な内容コンテンツを伴うアーカイブ」は公共放送の任務に含まれると規定していたが(旧11d条2項1文4号)、改正法は、公共放送の任務を特徴づける情報・教育・文化という要素を取り入れている。すなわち、前述のように第11条1項4文および5文が、公共放送の一般的任務につき「公共放送事業者のコンテンツは、教育、情報、コンサルティング、娯楽に寄与するものでなければならない。同コンテンツは、とりわけ文化のためのオンライン報道を提供しなければならない」と規定していることに伴い、本条項も上記のように改正されたのである34

6.テレメディアコンテンツ内の禁止されたコンテンツ(第11d条5、6項)

第22次改正放送州際協定11d条5項は、旧法に引き続き、テレメディアコンテンツ内において提供が禁止されているコンテンツ内容について規定している。本条項で列挙されたコンテンツ内容については、旧法に比し大きな変更はなされていない。もっとも、同11d条6項は改正法によって新たに挿入された規定であり、公共放送事業者は、自己のポータルサイト以外でテレメディアを提供する場合にも、第5項1号にいう「商業広告およびスポンサリング」の禁止を遵守すべきことを明記している。

第22次改正放送州際協定11d条5、6項

  1. (5) テレメディアコンテンツにおいて以下の〔内容を〕提供することは許されない:
  2.  1. 商業広告およびスポンサリング、
  3.  2. 第2項1文2号であげられた欧州の作品を除く、購入された劇映画およびテレビ連続番組の購入されたエピソードのオンデマンドのコンテンツで、委託制作でないもの、
  4.  3. 全域的なローカルニュース報道、
  5.  4. 本州際協定の附則で列挙されているコンテンツの形式。
  6. (6) ARDを構成する地方放送事業者、ZDF、およびドイツ・ラジオは、自己のテレメディアが、各々が設置した独自のポータルサイト以外で配信される場合には、第5項1号の遵守に配慮しなければならない。この配信手段の利用を介して、ARDを構成する地方放送事業者、ZDF、およびドイツ・ラジオは、商業広告およびスポンサリングによる収入を得てはならない。

6.1.商業広告およびスポンサリングの禁止(第11d条5項1号、6項)

第11d条5項1号は、旧11d条5項1文を引き継いだ規定であり、テレメディアコンテンツ内の商業広告およびスポンサリングを禁止する。加えて、改正法では第11d条6項が追加され、公共放送事業者が自己のポータルサイト以外でテレメディアを配信する場合にも、公共放送事業者は商業広告およびスポンサリングの禁止を遵守すべきことが明記された(同項1文)。さらに、民間のプラットフォームでは商業広告およびスポンサリングが行われることが一般的であることから、同6項2文は、公共放送事業者が自己のポータルサイト以外でテレメディアを配信する場合でも、商業広告およびスポンサリングによる収入を得てはならないことを明記した35

6.2.委託制作でないオンデマンドの番組(第11d条5項2号)

旧法は、第11d条5項2文において、「購入された劇映画およびテレビ連続番組の購入されたエピソードのオンデマンドのコンテンツで、委託制作でないものは許されない」と規定していた。この文言は改正法の第11d条5項2号においても踏襲されたが、改正法では、「第2項1文2号であげられた欧州の作品を除く」という文言が付け加えられた。すなわち、同条項は、旧法と同様に非委託作品のオンデマンドの当該コンテンツを禁止するが、このような非委託作品であっても、第11d条2項1文2号にいう、①放送後30日未満のものであり、②かつそのオンデマンドの提供可能性が原則としてドイツ国内に限定されている欧州の作品であれば、例外的にオンラインでの提供が可能であることを確認している。

6.3.「全域的なローカルニュース報道」の禁止(第11d条5項3号)

第11d条5項3号は、テレメディアコンテンツ内での「全域的なローカルニュース報道」を禁止している。本条項は旧11d条5項3文を踏襲したものであるが、立法理由書は、その根拠を「ローカル新聞の保護のため」としている36

6.4.「ネガティブリスト」に掲載されたコンテンツ(第11d条5項4号)

第11d条5項4号は、旧法に引き続き、「本州際協定の附則で列挙されているコンテンツの形式」すなわち「ネガティブリスト」に掲載されているコンテンツを、テレメディアコンテンツ内で提供することを禁止する。もっとも改正法は、このネガティブリストの内容についても以下のような修正を行っている。

第一に、改正法は、附則1号、3号、4号、および6号につき、「ポータルサイト」(Portal)という文言を「セクション」(Rubrik)に変更した。すなわち、改正法は、「広告ポータルサイト」を「広告セクション」に(1号)、「料金比較ポータルサイト」を「料金比較セクション」に(3号)、「サービス、設備、製品に対する評価ポータルサイト」を「サービス、設備、製品の評価のためのセクション」に(4号)、「アドバイザーポータルサイト」を「アドバイザーセクション」に(6号)、それぞれ変更した。立法理由書によれば、この変更の理由は、「時代に即した概念へのエディトリアルな適応」のためであるという37

第二に、改正法は、附則6号、14号、15号、および17号において、従来の「ohne Sendungsbezug」(「番組と関連性のない」)を、「ohne Bezug zu Sendungen」ないし「ohne Bezug zu einer Sendung」という文言に置き換えた。また、同16号では、「sendungsbezogene」(「番組に関連した」)という文言が「auf eine Sendung bezogene」という文言に変更された。

第三に、改正法では、附則12の内容が変更された。旧法では、附則12号は、「エディトリアルな審査を受けていないリンキング〔は許されない〕;リンキングは、自己の(または持分会社の)コンテンツの直接的な補完、深化、解説にのみ寄与しなければならず、また直接的に購買促進をするものであってはならない」と規定していた。これに対して、改正法は、「民間の子会社(kommerzielle Tochtergesellschaft)の独自の視聴覚コンテンツ内容へのリンキングを除き、エディトリアルな審査を受けていないリンキング、および直接的に購買促進をするリンキング〔は許されない〕」と規定した。すなわち、改正法は、一方で、旧法に引き続きエディトリアルな審査を受けていないリンキング、および直接的に購買促進をするリンキングは許されないとし、他方で、公共放送事業者の民間の子会社が制作する、例えばテレビ連続番組のDVDコンテンツといった独自の視聴覚コンテンツへのリンキングについては、例外的に許されるとした38

第四に、改正法は、附則13号において、他社の商業用の音楽作品の音楽ダウンロードに関して変更を行った。すなわち、附則13号は、旧法に引き続き、音楽を制作、頒布、管理する民間企業の保護のために、公共放送事業者が他社の音楽作品のダウンロードサービスを提供することを禁止しているが、例外的に、音楽作品をダウンロードするためのコンテンツであって、音楽作品の広告宣伝活動に関連し、時間的に期限が付されているものであれば、他社の音楽作品のダウンドードも許されるものとした。

7.「プレスに類似の」テレメディアのコンテンツの禁止(第11d条7項)

旧法は、第11d条2項1文3号において、「番組に関連しない、プレスに類似のコンテンツは許されない」と規定していた。すなわち、旧法では、「番組に関連する」コンテンツは原則としてオンラインでの提供が許されていたが、「番組に関連しない」コンテンツは、それが「プレスに類似する」とみなされた場合、その提供が絶対的に禁止されていた。加えて、旧法は、「プレスに類似のコンテンツ」の概念につき、第2条2項20号において、「プリントメディアの電子版だけでなく、形式および内容という点で新聞または雑誌に相応する、ジャーナリスティックかつエディトリアルに制作されたあらゆるコンテンツをいう」と定義していた。

これに対して、改正法は、確かにプレスとの類似性の禁止は維持したが、新たに挿入された第11d条7項において、その内容を大きく修正した。すなわち同条項は、①第一に、旧法に比し、プレスとの類似性の内容をより具体化した(1〜3文)。②第二に、改正法は前述のように「番組に関連した」コンテンツと「番組に関連しない」コンテンツの差異を原則として放棄したが、本条項にいうプレスとの類似性の禁止に関してはこの区別は放棄されておらず、番組に関連した一定のテレメディアコンテンツは当該禁止の影響を受けない、と規定された(4文および5文)。③第三に、本条項は、こうしたプレスとの類似性が争われたケースで当該事件に介入しうる「調停委員会」の設置について新たに規定した(6文)。 

第22次改正放送州際協定11d条7項

  1. (7) テレメディアコンテンツは、プレスに類似してはならない。同コンテンツは、動画または音声に重点を置いて(im Schwerpunkt)制作されなければならず、その際、テキストが中心となってはならない。コンテンツの概要、大見出し、番組のトランスクリプト(Sendungstranskript)、各々の放送事業者についての情報、およびバリアフリーの目的のための措置は、影響を受けない。加えて、その時々の番組のために使用された資料および情報源が用いられ、さらに当該コンテンツがテーマ上および内容上この番組を支援し、当該番組に付随し、かつ当該番組を現実化する限りにおいて、出来事の背景にある情報(Hintergrundinformation)を含めて、ある具体的な番組からの内容を精錬(Aufbereitung)することに寄与するテレメディアも影響を受けないが、その際、ある特定の番組との時間的および内容的な関連性(Bezug)が、それぞれのテレメディアコンテンツのなかで証明されなければならない。第4文にいうテレメディアについても、可能な限り、動画または音声の積極的関与(Einbindung)がなされなければならない。第1文から5文までの適用のためには、公共放送事業者およびプレスの各協会(Spitzenverbände der Presse)によって、調停委員会(Schlichtungsstelle)が設置されなければならない。

7.1.「プレスとの類似性」の内容と判断基準(第11d条7項1〜3文)

本条項は、まず、「テレメディアコンテンツは、プレスに類似してはならない」(1文)と規定する。本条項は、第2条2項19号にいう「テレメディアコンテンツ」という概念を使用しているため、後述する第11f条4項にいう三段階テストに基づき許可されたテレメディアが本条項の適用を受けることになる。また、本条項の要請は、各々の公共放送事業者が設置した独自のポータルサイト以外で提供されるテレメディア(第11d条4項2文、同6項)や、「ティーザー」などのユーザーを公共放送事業者の独自のポータルサイトに誘導することを目的とするコンテンツにも妥当するとされる39

さらに、本条項は、テレメディアコンテンツは「動画または音声に重点を置いて制作されなければならず、その際、テキストが中心となってはならない」(2文)と規定し、第1文にいう「プレスとの類似性」の内容を具体化している。本条項は「動画または音声」と規定していることから、本条項にいうテレメディアコンテンツは、動画および音声の両者を含むテレメディアだけでなく、そのうちの一方のみを用いて制作されたテレメディアも含む、とされる40。また、本項2文後段は「その際、テキストが中心となってはならない」と規定しているが、立法理由書は、前段との関係につき、各々のテレメディアコンテンツが動画または音声に重点を置いて制作されていることが明確であればあるほど、同コンテンツ内でテキストが中心となっているという根拠は弱くなっていく、と説明している41

ただし、同7項3文は、同2文の規定にもかかわらず、プレスとの類似性の禁止の例外を規定している。すなわち、「コンテンツの概要、大見出し、番組のトランスクリプト、各々の放送事業者についての情報、およびバリアフリーの目的のための措置」といった特定のコンテンツは、インターネットにおいてもテキストのみで表示することに意味があるものであるため42、それがテキストまたは画像を中心に制作されたものであっても、「プレスとの類似性」の判断の際しては問題視されない43

7.2.番組に関連するテレメディアコンテンツ(4文および5文)

本条7項4文は、「その時々の番組のために使用された資料および情報源が用いられ、さらに当該コンテンツがテーマ上および内容上この番組を支援し、当該番組に付随し、かつ当該番組を現実化する限りにおいて、出来事の背景にある情報を含めて、ある具体的な番組からの内容を精錬することに寄与するテレメディア」は、第3文にいうコンテンツと同様に、それがテキストまたは画像を中心とする内容で制作されていたとしても、「プレスとの類似性」の判断に際しては問題視されないとする44

この点につき、旧法は、第2条2項19号において、「番組に関連するテレメディア」(sendungsbezogene Telemedien)の概念を、「その時々の番組のために使用された資料および情報源が用いられ、さらに当該コンテンツがテーマ上および内容上この番組を支援的に深め、かつ当該番組に付随する限りにおいて、出来事の背景にある情報を含めて、ある具体的な番組からの内容を洗練することに寄与するコンテンツ」と定義していた。これに対して、改正法は、「番組に関連するテレメディア」という概念をもはや使用していないが、その内容は、上述のように若干の修正が加えられて本条項の中に組み入れられた。

また、本条7項4文後段は、「その際、ある特定の番組との時間的および内容的な関連性が、それぞれのテレメディアコンテンツのなかで証明されなければならない」と規定している。この点、旧法は、「番組に関連するテレメディアについては、ある特定の番組との時間的および内容的な関連性が、それぞれのテレメディアコンテンツのなかで証明されなければならない」(旧11d条3項)と規定していたが、本条項もこの旧法の規定を引き継いだものである。 

さらに改正法において新たに挿入された本条7項5文は、上記の「第4文にいうテレメディアについても、可能な限り、動画または音声の積極的関与がなされなければならない」と規定する。立法理由書によれば、同条項は、本条7項2文の規定を補完するものであり、公共放送事業者に対して、同7項4文にいうテレメディアについても、その制作に際しては、可能な限り動画および音声の「積極的関与」を行うことを促しているという45

7.3.調停委員会(Schlichtungsstelle)の設置(6文)

改正法は、新たに挿入された本条7項6文において、「第1文から5文までの適用のためには、公共放送事業者およびプレスの各協会によって、調停委員会が設置されなければならない」と規定する。すなわち、当事者の間で争いがあった場合に、問題となった公共放送のオンライン・コンテンツがプレスに類似していないか否かを明らかにするために、公共放送事業者と各出版社協会は共同で調停委員会を設置すべきとされた。この点、立法理由書によれば、同条項は、第11d条7項の諸規定をめぐる解釈につき当事者間で意見の相違が生じた場合に、当該規定の解釈問題を解決し、また可能な限り訴訟を回避するために、当事者に対して調停委員会の設置を義務付づけたものであるという46。ただし、調停委員会の決定には法的な拘束力があるわけではない47

調停委員会の構成員について明確な規定はないが、当初の計画案では、公共放送事業者と民間出版社の各々の代表らが平等に参加すべきとされている48。もっとも、現在まで同調停委員会の設置が要求されたことはなく、いまだ活動の機会がない状態である49

8.「テレメディアコンセプト」(第11f条1〜3項)

第22次改正放送州際協定11f条1項から3項までは、旧法に引き続き、「テレメディアコンセプト」について規定している。

第22次改正放送州際協定11f条1〜3項 

  1.  (1) ARDを構成する地方放送事業者、ZDF、およびドイツ・ラジオは、自己の第11d条にいう計画されたテレメディアコンテンツの内容上の方向性を、それぞれ、ターゲット、内容、方向性、閲覧期間、インターネット固有の制作方法(internetspezifische Gestaltungsmittel)の使用、および第11d条7項1文の遵守のための措置を詳細に説明したテレメディアコンセプトのなかで具体化する。期限なく提供が許されている第11d条2項1文4号にいうアーカイブを除き、コンテンツに応じて(angebotsabhängig)区分された、閲覧期間のための期限が設定されなければならない。テレメディアが、設立された独自のポータルサイト以外で提供される場合には、それについて理由が付されなければならない。その限りで計画された、青少年メディア保護、データ保護、および第11d条6項1文の遵守のための各措置については、説明がなされなければならない。
  2.  (2) すべてのテレメディアコンテンツの説明書(Beschreibung)が、KEFによる資金需要の事後審査を可能とするものでなければならない。
  3.  (3) ARDを構成する地方放送事業者、ZDF、およびドイツ・ラジオは、後述する第4項から7項までにいう手続に基づき審査されなければならない新しいテレメディアコンテンツまたはテレメディアコンテンツの本質的な変更がどのような場合に存在するのか、〔という問題〕についての一致した基準を、規則または指針のなかで規定する。本質的な変更が存在する場合とは、とりわけ、当該テレメディアコンテンツの内容上の方向性全体、または指向されたターゲットが変更された場合をいう。本質的な変更が存在する際、第4項から7項までにいう手続は、既に公表されているテレメディアコンセプトと相違する箇所にのみ関連する。

8.1.「テレメディアコンセプト」の対象となるコンテンツ

第11f条1項1文によれば、公共放送事業者は、「自己の第11d条にいう計画されたテレメディアコンテンツの内容上の方向性」を「テレメディアコンセプトのなかで具体化する」、と規定する。ところで、旧法は、三段階テストに服することなく提供が可能なテレメディアに対してもテレメディアコンセプト(「小さな」テレメディアコンセプトとも呼ばれている50)の作成を義務付けていた(旧11d条2項1文2号を参照)。これに対して改正法では、前述のように第2条2項19号が公共放送の「テレメディアコンテンツ」の概念を第11条4項にいう三段階テストに基づき提供されるテレメディアと定義していることから、公共放送のすべてのテレメディアコンテンツが、それが新しいまたは本質的な変更がなされたコンテンツである限り、三段階テストに基づき審査されるテレメディアコンセプトの作成を義務付けられることになった51

8.2.「テレメディアコンセプト」に必要な情報

テレメディアコンセプトに記載すべき事項は、第11f条1項、2項、4項で規定されている。このうち、第11f条1項および2項はテレメディアコンセプトに必要な最小限の記載事項を定める。それらのうち、①ターゲット、②内容、③方向性、④閲覧期間(以上、1項1文)、⑤コスト(2項)は、旧法でも列挙されていた項目であるが、改正法は、これに加えてさらに五つの記載事項を追加した。⑥第一は、「インターネット固有の制作方法の使用」である。「インターネット固有の制作方法」という文言は「テレメディアコンテンツ」を定義した第2条2項19号でも用いられており、そのため本条項もこの項目をテレメディアコンセプトの対象とした。⑦第二は、「第11d条7項1文の遵守のための措置」、すなわちプレスとの類似性の禁止を遵守するための措置である。⑧第三は、「コンテンツに応じて区分された、閲覧期間のための期限」である。改正法は、前述のように、第11d条2項1文1号において旧法にいう「放送後7日未満」という制限を放棄した。このため、公共放送事業者は、ユーザーの利益、コスト、技術的条件、コンテンツの利用権の存在や取得などを考慮して、当該コンテンツにつき自ら閲覧期間の期限を設定できるようになったが、公共放送事業者のこのような「放送プログラムの自律」(Programmautonomie)もテレメディアコンセプトの対象となった52。⑨第四は、公共放送事業者が自己のポータルサイト以外でテレメディアを提供する際の、ジャーナリスティックかつエディトリアルな根拠である53。⑩第五は、公共放送事業者が独自のポータルサイト以外でテレメディアを提供する際の、青少年メディア保護、データ保護、ならびに第11d条6項1項にいう商業広告およびスポンサリングの禁止の遵守のために採られた措置、である。

以上の事項に加えて、同条4項は、「新しいテレメディアコンテンツ」の制作が計画された場合、または「既存のテレディアコンテンツの本質的な変更」が計画された場合に、テレメディアコンセプトのなかで説明されなければならない記載事項について定める(後述第9章を参照)。三段階テストのなかでは、この記載事項は「コンテンツ説明書」(„Angebotsbeschreibung“)とも呼ばれている54

8.3.「新しい」または「本質的な変更」がなされたテレメディアコンテンツと「コンテンツ説明書」

第11f条3項は、旧法と同様、同1項および2項で規定されるテレメディアコンセプトと、同4項にいう三段階テストの「蝶番」と言われる規定である。すなわち、どのようなテレメディアコンテンツが三段階テストに服すのかを定めている。

この点、旧法は、「新しいまたは変更されたテレメディアコンテンツ」が三段階テストに服すべきと規定していたが、改正法は、第11f条3項において、「新しいテレメディアコンテンツ」の制作、または既存の「テレメディアコンテンツの本質的な変更」がなされた場合には当該テレメディアコンセプトは三段階テストに服すると規定した55

ところで、ここでいう「本質的な変更」の意味が問題となるが、改正法は、「本質的な変更が存在する場合とは、とりわけ、当該テレメディアコンテンツの内容上の方向性全体、または指向されたターゲットが変更された場合をいう」と規定した(第3項2文)。この点、旧法は「変更されたコンテンツが存在する場合とは、とりわけ、当該コンテンツの内容上の方向性全体、または指向されたターゲットが変更された場合をいう」と規定していたが(旧11f条3項)、改正法は、「本質的な〔変更〕」という文言を付加している。その理由につき、立法理由書は、テレメディアコンセプトを作成するコストや、テレメディアコンテンツの著しい発展に鑑みれば、既存のテレメディアのあらゆる変更をテレメディアコンセプトの作成の要件とする要請は比例的でない、と述べている56

さらに、改正法では、第11f条3項3文が新たに追加され、既存のテレメディアコンテンツの本質的な変更がなされた場合には、三段階テストは既存のコンセプトと相違する部分にのみ関連する、と規定された。テレメディアコンセプトのこの部分は、「テレメディア変更コンセプト」(„Telemedienänderungskonzepte“)とも呼ばれている57。この点につき、立法理由書は、三段階テストが本質的な変更部分にのみ関わることで審査のためのコストが抑えられ、また、審査の対象が具体化することで三段階テストの透明性が高まる、と述べている58

9.「三段階テスト」(第11f条4〜7項)

第11f条4項から7項までは、旧法に引き続き三段階テストについて規定する。三段階テストは、新しいテレメディアコンテンツまたは本質的に変更されたテレメディアコンテンツが第11d条にいう公共放送のテレメディア任務に適合するか否かを審査するための制度である。

第22次改正放送州際協定11f条4〜7項

  1.  (4) 第1項にいう新しいテレメディアコンテンツ〔の制作〕、または第3項にいう既存のテレディアコンテンツの本質的な変更が計画された場合、当該放送事業者は、管轄権を有する自己の委員会(Gremium)に対して、この計画された、新しいテレメディアコンテンツまたは本質的な変更が任務に含まれていることを説示しなければならない。〔その説示には〕以下の点についての言明がなされていなければならない、
  2.  1. この新しいテレメディアコンテンツまたは本質的な変更が、どの程度、社会の民主的、社会的、文化的な需要に応じているのか、
  3.  2. この新しいテレメディアコンテンツまたは本質的な変更によって、どの範囲で、質的な観点からジャーナリズム上の競争への寄与がなされているのか、かつ、
  4.  3. この新しいテレメディアコンテンツまたは本質的な変更に対して、どのような財政上の費用が必要なのか。
  5. その際、自由にアクセスしうる既存のテレメディアコンテンツの量および質、計画された新しいテレメディアコンテンツまたは本質的な変更のあらゆる関連市場への影響力、ならびに、公共放送のテレメディアコンテンツを含む〔その他の〕自由にアクセスしうる、既存の比較可能なテレメディアコンテンツに鑑みた、その〔新しいテレメディアコンテンツまたは本質的な変更の〕意見形成作用が、考慮されなければならない。
  6.  (5) 第4項にいう諸要請につき、新しいテレメディアコンテンツまたは本質的な変更の採用前に、管轄権を有する委員会を介して、適切な方法で、とりわけインターネットによって、第三者に対して立場表明の機会が与えられなければならない。この立場表明の機会は、〔審査手続実施の〕企図の公表後、少なくとも6週間以内に実施される。当該放送事業者の管轄権を有する委員会は、受領された当該立場表明を審査することができる。管轄権を有する当該委員会は、決定を下すために、独立した専門家による専門的助言を、各々の放送事業者の負担により要請することができるが、〔とりわけ〕あらゆる関連市場への影響力については、専門的助言を徴しなければならない。専門家の氏名は公表されなければならない。専門家は、さらに別の情報および立場表明を入手することができるが、〔そのうち〕立場表明については、専門家に直接送付することができる。
  7.  (6) 新しいテレメディアコンテンツまたは本質的な変更の採用が第4項にいう諸要件に適合しているか否かの決定には、管轄権を有する委員会の出席構成員の3分の2の多数が必要であり、かつ、少なくとも同委員会の法律上〔規定された〕構成員の過半数が必要である。当該決定には理由が提示されなければならない。当該決定理由においては、受領された立場表明および入手された鑑定書に配慮した上で、新しいテレメディアコンテンツまたは本質的な変更が〔公共放送の〕任務に含まれているか否かが説示されなければならない。各々の放送事業者は、業務上の秘密を遵守した上で、〔審査手続実施の〕企図の公表と同様の方法で、自己の審査結果を、入手された鑑定書を含めて公開しなければならない。
  8.  (7) 法の監視の管轄権を有する官庁に対しては、当該公表前に、法の監視のための審査に必要なあらゆる情報が付与され、かつ資料が送付されなければならない。新しいテレメディアコンテンツまたは本質的な変更の説明書は、第5項および6項にいう手続が終了した後、ならびに法の監視の管轄権を有する官庁による審査の後、ARDを構成する地方放送事業者、ZDF、およびドイツ・ラジオのウェブサイト(Internetauftritt)によって公表されなければならない。同時に、各々の放送事業者のウェブサイトにおける当該公表は、関連する州の官報のなかで指摘されなければならない。 

本条項は、旧法に比し大きく改められたわけではないが、とりわけ審査基準およびテレメディアコンセプトの公表方法につき若干の変更を行っている。第一に、改正法は、三段階テストの審査項目のひとつを、「計画された新しいテレメディアコンテンツまたは本質的な変更のあらゆる関連市場への影響力(Auswirkungen auf alle relevanten Märkte)」(同4項3文)と規定した。すなわち、旧法は「計画されたコンテンツの市場の影響力(marktliche Auswirkungen)」と規定していたが、改正法では「あらゆる関連市場」と変更された。この点につき立法理由書は、同条項は水平的および垂直的市場が三段階テストに参入されなければならないことを明確にした、と述べている59。第二に、旧法は、三段階テストに合格したコンテンツ説明書は州の官報によって公表されなければならないと規定していたが(旧7項2文)、改正法では、同説明書は各々の公共放送事業者の「ウェブサイト」で公表され、かつ、当該公表は官報のなかで「指摘」されなければならない、と規定された(同7項2文、3文)。この点につき立法理由書は、本改正によって、旧法に引き続きテレメディアコンセプトの公表前に官庁による審査が確保されるとともに、当該コンセプトに関心のある個人が公共放送事業者のウェブサイトでこれを閲覧できるために審査の透明性が高められ、ひいては従来の手続に比し脱官僚化が進む、と述べている60

10.むすびにかえて

以上、本稿は、第22次改正放送州際協定の内容につき分析を行った。確かに、本改正では、テレメディアコンセプトおよび三段階テストに関しては大きな変更はなされていないものの、とりわけ公共放送のテレメディア任務については多くの重要な改正が行われている。その要点をまとめると以下のようになる。

本改正法は、第一次的に、公共放送のテレメディア任務の制約を緩和し、その範囲を大幅に拡大した。その例を挙げれば以下のようになる。すなわち、①改正法は、第一に、旧法において課せられていた「放送後7日未満」という閲覧期間の時間的制約を原則として撤廃した。これによって公共放送事業者は、閲覧期間を自己の裁量によって決定でき、その結果、自己の放送プログラムのオンデマンドの番組を従来よりも長くインターネット上で提供することができるようになった。②第二に、公共放送事業者は、リニア放送後だけでなく、リニア放送前の自己の放送プログラムのオンデマンドの番組をオンラインで提供できるようになった。③第三に、公共放送事業者は、テレメディアコンテンツのために制作された独自の視聴覚コンテンツを提供できるようになった。④第四に、改正法は、旧法で規定されていた「番組に関連するテレメディア」と「番組に関連しないテレメディア」の区別を放棄した。⑤第五に、旧法では絶対的に禁止されていた、委託制作でない「購入された劇映画」および「テレビ連続番組の購入されたエピソード」も、一定の要件を備えた欧州の作品であればオンラインでの提供が可能であるとした。⑥第六に、大イベント等の放送プログラムのオンデマンドの番組の閲覧期間が大幅に拡張された。⑦第七に、公共放送事業者は、自己のポータルサイト以外でも自己のコンテンツを提供しうるとされた。⑧さらに、改正法は、公共放送のテレメディア任務に含まれるコンテンツの領域を拡大した。すなわち、改正法は、旧法とは異なり、公共放送のテレメディア任務として法律で明記された事項を単なる列挙事項とみなし、それ以外のコンテンツも公共放送の任務に含まれうることを明記した。

このように、公共放送の任務が拡大する一方で、改正法によって公共放送事業者は、従前に比してより厳格な規制に服することとなった。例えば、①改正法では、新しいまたは本質的な変更がなされたテレメディアコンテンツは、すべて、テレメディアコンセプトの作成が義務付けられるとともに、三段階テストに服さなければならないとされた(第11f条を参照)。旧法では、「新しいまたは変更されたテレメディアコンテンツ」であっても一定のコンテンツについては三段階テストに服することなくオンラインでの提供が許されていたが、改正法では、新しいまたは本質的な変更がなされたテレメディアコンテンツはすべて、三段階テストが課せられることとなった。また、②改正法では、原則としてすべてのテレメディアコンテンツに、「プレスとの類似性」の禁止の原則が適用されることとなった(第11d条7項を参照)。すなわち、旧法では、「番組に関連しない、プレスに類似のコンテンツ」は絶対的に禁止されていた一方で、「番組に関連する」コンテンツは、それが「プレスに類似」するものであっても、原則としてオンラインでの提供が許されていた。これに対して改正法では、公共放送のオンライン・コンテンツは、民間出版社のインターネットポータルサイトと差別化するために、動画および音声に重点を置いて制作されなければならないと規定され、テキストや画像を中心としたコンテンツは厳しく制限されることとなった。加えて、この「プレスとの類似性」につき当事者間で争いがあった場合には、当該問題を解決するために、公共放送事業者と出版社協会に対して共同で「調停委員会」を設置することが義務付けられた。

本改正法をめぐっては、現在、学説および専門家の間で様々な議論がなされているところである。しかしながら、ドイツにおける公共放送のオンライン・コンテンツ規制は、とりわけ公共放送事業者の自律や、民間放送事業者のオンライン・コンテンツとのバランスに配慮したきめ細やかな法制度となっている点に大きな特徴がある。こうした点は、2019年にインターネット常時同時配信のための放送法改正61がなされ、今まさにその存在意義をめぐって激しく議論がなされている日本の公共放送のあり方になんらかの示唆を与えてくれるものと思われるが、こうした比較検討は今後の課題としたい。

脚注

1 愛知県立大学外国語学部准教授

2 Medienkorrespondenz 23/2018, S. 12, 10/2019, S. 14.

3 第12次改正放送州際協定の内容につき、詳しくは、杉原周治「ドイツにおける公共放送のオンライン・コンテンツと法規制(一)(二・完)」愛知県立大学外国語学部紀要(地域研究・国際学編)51号117頁、愛知県立大学大学院国際文化研究家論集20号37頁(2019年)を参照。

4 Vgl. Davis, Christopher Michael, Die „dienende“ Rundfunkfreiheit im Zeitalter der sozialen Vernetzung, 2019, S. 176 f.; Cornils, Matthias, Die Perspektive der Wissenschaft: AVMD-Richtlinie, der 22. Rundfunkänderungsstaatsvertrag und der „Medienstaatsvertrag“, ZUM 2019, 89 (103). 

5 Vgl. Davis, a. a. O. (Anm. 4), S. 176 f.; Medienkorrespondenz 10/2019, S. 14.

6 epd medien 25/2018, S. 9; Medienkorrespondenz 13/2018, S. 23.

7 epd medien 25/2018, S. 9, 1-2/2019, S. 5.

8 この問題につき、杉原周治「公共放送のオンライン・コンテンツと『プレスとの類似性』の判断」慶応義塾大学メディア・コミュニケーション研究所紀要 69号39頁(2019)を参照。

9 Medienkorrespondenz 13/2018, S. 23.

10 epd medien 46/2018, S. 10; Medienkorrespondenz 23/2018, S. 12.

11 この点につき、Vgl. Krüger, Bastian, Gestaltungsvorgaben und –optionen des Gesetzgebers bei der Übertragung, Festlegung und Ausgestaltung von Online-Angeboten öffentlich-rechtlicher Runfunkanstalten, 2019, S. 335 ff.

12 Amtliche Begründung zum 22. RÄndStV, S. 1.

13 この点につき、杉原・前掲注(3)「ドイツにおける公共放送のオンライン・コンテンツと法規制(一)」119頁以下を参照。

14 Vgl. Davis, a. a. O. (Anm. 4), S. 177.

15 Amtliche Begründung zum 22. RÄndStV, S. 6.

16 Vgl. Davis, a. a. O. (Anm. 4), S. 156 f., 177 f.

17 放送州際協定11条1項は、「公共放送事業者の任務(Auftrag)は、個人および公の自由な意見形成のプロセスのメディアおよびファクターとして、自己のコンテンツの制作および頒布を介して影響力を行使し、さらにそれを介して、社会の民主的、社会的、文化的な需要を満たすことにある。公共放送事業者は、自己のコンテンツにおいて、世界、欧州、国内、地域の、あらゆる重要な生活領域で発生した事件に関して、包括的な概要を提供しなければならない。それを介して、公共放送事業者は、国際的理解、欧州統合、ならびに連邦および州における社会的結合を促進しなければらない。公共放送事業者のコンテンツは、教育、情報、コンサルティング、娯楽に寄与するものでなければならない。同コンテンツは、とりわけ文化のためのオンライン報道(Beiträge)を提供しなければならない。娯楽も、公共的なコンテンツプロフィールに適合しなければならない」、と規定する。

18 Amtliche Begründung zum 22. RÄndStV, S. 8.

19 Amtliche Begründung zum 22. RÄndStV, S. 8.

20 Amtliche Begründung zum 22. RÄndStV, S. 9.

21 Amtliche Begründung zum 22. RÄndStV, S. 9.

22 Amtliche Begründung zum 22. RÄndStV, S. 9.

23 Amtliche Begründung zum 22. RÄndStV, S. 9.

24 Vgl. Davis, a. a. O. (Anm. 4), S. 176.

25 Amtliche Begründung zum 22. RÄndStV, S. 7.

26 Vgl. Davis, a. a. O. (Anm. 4), S. 176 f., 180.

27 Vgl. Davis, a. a. O. (Anm. 4), S. 178.

28 Amtliche Begründung zum 22. RÄndStV, S. 7.

29 Amtliche Begründung zum 22. RÄndStV, S. 7.

30 杉原・前掲注(3)「ドイツにおける公共放送のオンライン・コンテンツと法規制(一)」149頁を参照。

31 Amtliche Begründung zum 22. RÄndStV, S. 7.

32 ただし、学説には、このような番組も三段階テストに合格すればオンラインでの提供が許されると主張する立場も見られる。この点につき、杉原・前掲注(3)「ドイツにおける公共放送のオンライン・コンテンツと法規制(一)」142頁を参照。

33 Amtliche Begründung zum 22. RÄndStV, S. 8.

34 Amtliche Begründung zum 22. RÄndStV, S. 8.

35 Amtliche Begründung zum 22. RÄndStV, S. 10.

36 Amtliche Begründung zum 22. RÄndStV, S. 9.

37 Amtliche Begründung zum 22. RÄndStV, S. 15.

38 Amtliche Begründung zum 22. RÄndStV, S. 15.

39 Amtliche Begründung zum 22. RÄndStV, S. 10.

40 Amtliche Begründung zum 22. RÄndStV, S. 10.

41 Amtliche Begründung zum 22. RÄndStV, S. 10.

42 Vgl. Davis, a. a. O. (Anm. 4), S. 178.

43 Amtliche Begründung zum 22. RÄndStV, S. 10.

44 Amtliche Begründung zum 22. RÄndStV, S. 10.

45 Amtliche Begründung zum 22. RÄndStV, S. 10 f.

46 Amtliche Begründung zum 22. RÄndStV, S. 11. また、ラインラント・プファルツ州首相のマル・ドライアー(Malu Dreyer)も、雑誌インタビューの中で、「すべての当事者が、法的明確性を得るために、常に裁判所に訴え、さらに多くの金、時間、神経を投入しなければならないことを、我々は、調停委員会を介して回避したい」と述べている。Vgl. epd medien 19/2019, S. 6.

47 Medienkorrespondenz 23/2018, S. 12.

48 Medienkorrespondenz 13/2018, S. 23, 23/2018, S. 12.

49 epd medien aktuell 10a/2020, S. 3.

50 「小さな」テレメディアコンセプトにつき、杉原・前掲注(3)「ドイツにおける公共放送のオンライン・コンテンツと法規制(二・完)」40頁以下を参照。

51 Vgl. Davis, a. a. O. (Anm. 4), S. 176.

52 Amtliche Begründung zum 22. RÄndStV, S. 12. また、「放送プログラムの自律」の内容につき、さしあたり、杉原・前掲注(3)「ドイツにおける公共放送のオンライン・コンテンツと法規制(一)」128頁を参照。

53 Amtliche Begründung zum 22. RÄndStV, S. 12.

54 杉原・前掲注(3)「ドイツにおける公共放送のオンライン・コンテンツと法規制(二・完)」42頁を参照。

55 なお、第22次改正放送州際協定65条は、2019年5月1日までに公表されたテレメディアコンセプトは、本改正法による影響を受けない、と規定している。

56 Amtliche Begründung zum 22. RÄndStV, S. 13.

57 Vgl. Weber, Peter, Die Perspektive der Praxis (ZDF): AVMD-Richtlinie, der 22. Rundfunkänderungsstaatsvertrag und der „Medienstaatsvertrag“, ZUM 2019, 111 (115).

58 Amtliche Begründung zum 22. RÄndStV, S. 14.

59 Amtliche Begründung zum 22. RÄndStV, S. 14.

60 Amtliche Begründung zum 22. RÄndStV, S. 14.

61 この点につき、さしあたり、鈴木秀美「NHKのインターネットによる常時同時配信」ジュリスト1536号74頁(2019)、同・「常時同時配信と受信料制度」民放2019年9月号4頁、砂川浩慶「『じわじわ』からその先へ」民放2019年9月号8頁、林秀弥「インターネット同時配信時代の『放送』とNHKの受信料制度」現代消費者法43号51頁(2019)、鈴木友紀「NHKによる常時同時配信の実施」立法と調査415号18頁(2019)を参照。

 
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